表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/367

「護符屋のお婆さん」(後)

「ワシは光精霊(ヌールニンフ)の呪いを強化したい」

  まず、フーコツが切り出した。


「ヌールの呪いだって?! まだあんなものを(あやつ)る物好きが……、あ、あるよ、あるとも!」

お婆さんは甲高い声を出した。


次にミトラが、

「あたしは闇精霊(ブーヨニンフ)の呪いを強化したい!」

と握りこぶしを見せて言った。

「な、なんだって?! お前さんはさらに珍しいブーヨの呪い?!」

それから目の前のフーコツとミトラを交互に見ながら、

「まさか同じチームだと言うんじゃないだろうねっ!」

  と叫んだ。


「同じチームだよ、フーコツとは」

  と、フーコツを見上げるミトラ。

「うむ。この()っこいのは、チームの先輩じゃ」


「正反対の性質だよっ?! 反発しまくるはずだ。上手(うま)くやっていけるはずがない」

  動揺を隠せないセネクス婆さん。

「ふたりとも、大雑把(おおざっぱ)だから、大丈夫」

  と、ジュテリアンが一言(ひとこと)で片付けた。


それから、強化する盾を見てもらうために、全員で外に出た。


セネクスお婆さんは、やはり胸股(うえした)ともビキニアーマーだった。

  そしてヒールの高いロングブーツに赤いマント。

たぶん若い時のままの格好なのだと思う。


外は、夕方の薄闇に包まれていた。

いつの間にか、点在していた石灯籠(石灯籠)が店を囲み、辺りを照らしている。


その集合した石灯籠の群れに、

「うお?!」と声を上げて驚くロームさん。

暗くなってからこの店に来た事がないのだろう。


まず、フーコツが両手をかざして銀色(ギュミュシ)の光の盾を三層、出現させた。

  薄暮(はくぼ)に光の盾が美しく浮かび上がっている。


「すでに光の呪いで強化してあるじゃないか……」

  と、つぶやくお婆さん。


続いて、

(スヴァスティカ)!」

  を唱えて手印を切り、大型卍手裏剣に変形させる。

フーコツが手印を切ったので、苦笑するジュテリアンとミトラ。


しかしロームさんとメリオーレスさんが(うな)ったのは、その手印の所作(しょさ)が美しかったからだろう。

  ぼくは良いハッタリだと思った。


「うっ。こ、これは(エレ)(シルト)にも匹敵しそうな『(マオ)(シルト)』だね」

  息を呑む年老いたエルフ、セネクスさん。

「盾を卍に変えて攻撃するんだから、守りがなくなっちまうんだよね?」

「でも、(いち)(ばち)かの時は仕方がないよ」

  と、ミトラ。

「それに、エレの反射はさせなかったよ」

 

「エレ使いと戦ったと言うのかい?!」

  また大きな声を出すお婆さん。


フーコツはそれから、三つの卍手裏剣を光の盾に戻して消滅させた。

「術者の体力の消耗は考えに入れなくて良い。爆発力や斬撃力も高めたい」

  と、フーコツ。


「うんうん。スヴァスティカは遠距離爆撃用だものねえ」

  と、お婆さん。


遠距離爆撃?! 知らなかった。


魔族バンガウアが「黒の盾」を使ったので、対抗策としてミトラたちは()むなく「卍」を使ったのだろう。

次にミトラが紫色(ビオレータ)の闇の盾を見せると、お婆さんは、

「おや、ビオレータかい? 銀色(ギュミュシ)に格上げしてはどうだい?」

  と言った。


「いんや、ビオレータが好きなので、このまま強化したい」

  と、古代紫の(アーマー)を叩いて応じるミトラだった。

「ふむ。もちろんビオレータでも強化できるさ。しかし、エレには勝てないかも知れないよ」


「大丈夫だったよ。ビオレータの『影多身(アタムーチョコルポ)』の呪いで、エレの盾を突破したよ」

「お前さんも出鱈目だねっ。盾を(だま)して攻撃に使うなんて」


闇の呪いは本来、自分の為にしか使えないと言っていた。

が、そうか、盾は本来自分の守備に使うものだが、(だま)せば攻撃(アタック)できるんだ。


(本当に、デタラメたなあ)

  (『御意』)

(で、どうやって騙したんだい?)

  (『錯覚』)

  んなアホな。

と思ったが、それ以上の突っ込みはやめた。

不毛の討議になるだけだと思ったからである。


ミトラは荒々しく手印を切り、三層の卍手裏剣を見せた。

大袈裟(おおげさ)な手印は、フーコツとの差別化を(はか)ったのだろう。

  そして、

「チームに空を飛べる者がいないので、卍が頼りなの」

  と言った。

そしてすぐに卍を円盤盾に戻して消した。

  エナジーの消耗を避けたのだろう。


その次はジュテリアンだったが、彼女の三層の光の盾を見たお婆さんは、

金色(アウルム)(シルト)かい。汎用(はんよう)の最上級だね。やっと見慣れたヤツが出た。安心したよ」

  と笑った。

「エレに負けないように、ギュミュシに格上げしようかね?」


「いえ、退職金代わりに宮廷の宝物庫から(かす)めて来たアクセサリーのお陰で、アルジェントでもエレの反射は防げましたよ」

「あんたもかい?! 出鱈目三人娘なのかいっ」

  お婆さんは嬉しそうに興奮した様子を見せた。


そしてジュテリアンが、少し長い手印を切り、光の盾を卍に変態させるのを見たお婆さんは、絶句してしまった。

  卍手裏剣は、存在自体が大変珍しいもののようだった。


次にメリオーレスさんが、緑色(クローロン)の三層の盾を出現させると、セネクス婆さんは、

「ひょっとして、そのなんでもなさそうなクローロンの盾も、卍に変形するのかい?」

  とたずねた。


「いえ、これで精一杯です」


メリオーレスさんのその声を聞いて、お婆さんは、

「そうかいそうかい。よしよし、金色に強化しようかね!

五層は欲しいよね?!」

  と、大層嬉しそうに笑った。


呪いによる強化とか、宝物級のアクセサリーによる強化はなくても、金色の五層は充分すぎるくらい使用に耐えるのではなかろうか?



            次回「強化される盾」(前)に続く



お読みくださった方、ありがとうございます。

次回、第五十一話「強化される盾」前編は、来週の木曜日に投稿します。

後編は、金曜日に投稿予定です。


本日午後は、回文オチ形式のショートショート

  「続・のほほん」を投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ