仮面を付けた悪魔
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「ん...ここは...」
目が覚めるとそこは俺が寝ているいつもの部屋だった。
俺はあのホームで突き落とされて死んだはずじゃ...コレは夢...?
そして近くにあったデジタル時計を確認すると俺がホームに突き落とされたあの日から約2週間後の日付が表示されていた
「コレは...どう言うことだ? あれ...声が...」
耳に入った声は聞き慣れた俺の声より少し低く、なんというか艶やかで所謂"イケボ"が頭の中で響いた。
ただそれよりも今置かれている状況が頭に入ってこない
「俺はあの時...コレは死んだ後の世界って奴かな...?」
そう思いながら顔を洗うために洗面所へ向かう途中ドアと天井の間の垂れ壁に頭をぶつけた
「いたっ! おかげで頭が冴えたよクソッ...!」
頭を押さえながら洗面台の鏡を見ると
「誰だお前...?」
そこに映っていたのは俺ではない全くの別人だった━━━
今起きてる出来事がまだ信じられない俺は鏡の前で頬を引っ張ったり手を動かすと鏡の俺はそれに連動する
「やっぱり俺だ...それにこの顔と髪色は...」
まるで二次元のキャラを実写イラスト化した様な異常に整った顔と透き通るような白い髪に白い肌、手足が長くすらっとした高身長な体型は俺が母さんに買ってくれたゲーム《デビルハンター》に登場する最強の裏ボス"アイラ"そのものだった。
但し服は上も下も着ていなくて生まれたままの姿だった━━━
「......前よりデカい。これは夢? でも時間はあの日よりちゃんと過ぎてるしさっきぶつけた痛み...やっぱり現実? 一体どっちだ? もし仮に夢ならアイラの技が使えるかも《オルター・エゴ》!」
俺は死後の夢だと思いふざけながらゲーム内のスキルを口走ると、何もない空間から黒い煙が現れもう1人の俺が姿を現した
「うおぉぉなんだこれ! ガチで分身じゃん! それなら解除は...《ソルヴィ》」
ゲーム内と同じ呪文を唱えると俺の分身は煙のように消えた
「もしかして俺は姿だけじゃなくて能力も使えるようにになってるのか。やっぱ夢っぽいなもう一回寝よう」
そう開き直ると玄関のドアが開き誰かの足音が聞こえる
「ここの部屋も整理しないとねぇ...それにしても真央くんが自殺なんて未だに信じられないよ...」
「この声は...!」
家に入ってきたのは伯母の瑠奈さんだった。
彼女はぶつぶつと独り言を言いながら廊下を歩いてきたので俺は洗面所から出て声を掛けた
「瑠奈さんこんにちは」
「ひいぃぃぁっ! いたっ...! 貴方誰!?」
瑠奈さんは俺の声に驚いてその場に尻餅をついてこっちを幽霊でも見るかのような顔で目を見開いていた
「俺です! 真央ですよ黒羽真央!」
「はい? 真央くんは2週間前に亡くなってるけど...? それに顔も背丈も全然似てないじゃない! 本当は誰なの!? 正直に言いなさい!」
「本当に俺なんです! 俺も死んだと思ったんですけどこの通り生きてて! えっと...俺しか知らない事...そうだ! 母の名前は黒羽晴香で、俺が中学3年の時に殺されて...瑠奈さんの旦那さんは母の兄で...瑠奈さんは28歳でそれで...」
俺の必死さが伝わったのか瑠奈さんの怒りの顔から涙目に変わって俺に近づいた
「...本当に真央くんなの...? 本当の本当に?」
「はい、母さんを火葬した後に俺の後見人になってくれた恩は今も忘れていませんよ...」
その言葉に瑠奈さんは溜めていた涙を一気に溢れさせて俺に抱きついた。
この温もりは夢ではない...間違いなく現実だ━━━
「良かった...本当に...! 生きていてくれたんだね...!」
「はい。ただ今俺全裸なんで離れてください...恥ずかしいです」
「あ、ごめん! でもなんで生き返ったの...? 顔も全然別人に変わって背も高くなってるし...一体何があったの?」
「それが俺もわからなくて混乱してて...。あの日ホームに突き落とされて死んだと思ったら突然こんな姿に...」
「突き落とされた!? 私が聞いたのは自殺だって...まさか!」
「俺は自殺なんかしてません、誰かに殺されたんです」
「そんな...でも警察の話では自殺だって...」
「そう処理されたんですよ恐らく。奴らは学生の自殺で片付けて早々に捜査を終わらせたかったんだと思います。でも俺は生き返った...誰かがくれたこのチャンスを活かして殺した奴を必ず見つけます。あと瑠奈さんには心配掛けまいと隠してたけど実は......学校でいじめられてました」
瑠奈さんの顔が涙目から再び怒りと悲しみが混ざった表情に変わる
「なんで真央くんが......気づいてあげられなくてごめんなさい。いじめなんて...私そいつら許せない!」
「僕も許せません。そいつらも俺を殺した犯人と同様に地獄の底に叩き落とします。ただそれをするに当たって瑠奈さんに少しお願いがあります」
「...どんなお願い?」
「この通り姿形が変わったので後見人じゃなくで俺を別の人間として養子縁組をして欲しいです。お願いします!」
俺が頭を下げると瑠奈さんは最初から決まっていた様に優しい声で返事をしてくれた
「うん! じゃあ早速手続きしないとね。苗字は私と同じ"明星"になるとして名前はどうする? 真央にするの?」
「いえ...名前は"亜依羅"にします」
「あいら? なんでそんな名前なの?」
「実はこの姿俺がハマってたゲームに出てくるキャラにそっくりなんですよ。コレちょっと見てください」
俺がそう言ってゲームを起動させるが何故か『ディスクは入ってません』と表示された
「あれ? 入ってるはずなんだけどな...」
俺はゲームのケースを探すが跡形もなくゲーム機本体だけが存在していた
「まあ良いよ無理に探さなくても、とりあえずよろしくね亜依羅くん。それから......女性の年齢を軽々しく言ってはいけませんよ?」
「ごめんなさい。これからよろしくお願いします瑠奈さん」
「こちらこそ。しかし本当に顔整ってるわ...これは復讐以外にも色々起こりそう━━━」
* * *
いろいろな手続きを終えた俺は今まで住んでいたアパートから離れて別のマンションに引っ越した。
瑠奈さんは自身が若くして会社経営者として活躍していてお金に余裕があったこともあり今回は俺を結構なマンションに住まわせてくれた
「前のアパートに住みっぱなしだと真央くんだった時との関係性が疑われるからね。今日から亜依羅くんは私の隣の部屋に住んでね」
「ありがとうございます! 転校の手続きも完了したし無事に明日からあの高校に通えます」
「いえいえ、でも大丈夫? やっぱり別の高校に通った方が...」
「俺...いや僕は決めたんです。黒羽真央はあの日死んで明星亜依羅として復讐をするんだと...例えどんな犠牲を払っても必ず成し遂げます。瑠奈さんに迷惑は絶対掛けませんので見守っていてください」
「分かった...でももし少しでも辛くなったら私を頼ってね」
瑠奈さんは俺の態度に覚悟を感じたのか背伸びをしながら俺の頭を撫でてくれて、それ以上言及してくることは無かった。
そして翌日を迎え制服に着替えた俺は母さんの位牌の前で手を合わせた
「母さん、僕は復讐するよ...例え天国の母さんに会えなくなる事になってもこの無念は絶対に晴らす。表では奴らと同じ偽り仮面を被り......裏では狂犬にも悪魔にだってなって必ず成し遂げてやる━━━」
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