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50 二回目の会議

 私たちが応接室に入ると、皆さんで立ち上がって迎えてくれました。

 カーティス殿下とルーカス王配殿下がほぼ同時に口を開きました。


「「リーダーと会ったんだって?」」


 さすが双子としか言いようのないほど息がぴったりです。


〈ローゼリア、僕から話すよ。伝えてくれないか?〉


〈助かったわジョアン。よろしくね〉


 おそらく私の言葉では、伝えたいことの半分も伝わらないと判断したのでしょう。

 ジョアンが私の脳内に話しかけてきました。


〈僕も参加するよ〉


〈私も入るわね〉


 サミュエル殿下とテレザ皇后陛下の声まで響いてきます。

 三人の言葉を伝えるのはかなりの難問です。

 とりあえず順番に話してもらう事にして、遠隔会話が始まりました。


「へぇ~ジョン王子がリーダーだったんだ。もう随分会ってないし、ほとんど表に出てこない引き籠りだと聞いていたのに、そういう裏があったんだね」


 ルーカス王配殿下が顎に手を当てて感心しています。


「しかし、彼の配下がその軍艦を乗っ取る形になるのは理想的な展開だったな。何度も話をして思っていたんだけど、この国の皇太子側近は正直に言って無能だね」


「まあそういう奴を選んでるんだろう。側近というのは手足と同時に頭脳なのにね。結局トラウスが無能ってことだ」


〈私は面識がないのですが、従弟ですよね?〉


「家系図的には従弟だけれど、血縁は無いんだよ。叔母上に子供はいないからね」


〈そうなの。私は子を生せなかったのよ。婚姻から一年もしないうちに王は側妃を迎えて、第一側妃が二人男の子を産んだわ。彼女は実家の力で側妃になったのだけれど、不正が発覚して没落したの。彼女も病を得て儚くなってしまったわ。それからすぐに来たのが第三王子を産んだ女性よ。彼女は側妃にはならなかったのよ。身分の問題があってね、だから第三王子は王子教育前までは私が育てたわ〉


「ええ、その関係もあって彼だけは何度か叔母上と一緒にイーリスに来ましたよね。庭で遊んだ覚えがあるな」


 カーティス皇太子が懐かしそうに言いました。


「しかし彼は王室の存続より崩壊を望んだ。何が彼を動かしたのでしょうね」


〈あの子は母親の身分が低かったから、上の二人に虐められていたの。できるだけ庇ってはいたけれど、彼だけを庇護するわけにもいかないし。なかなか難しいところだったのよ〉


「でも今回はそのお陰で作戦が進めやすくなりましたね」


〈今回の作戦はあくまでも無血開城だから。血を流すのは王と上二人の王子だけだ〉


〈私としてはあの二人の血も見たくはないの。できれば穏便に生涯幽閉で頼むわ〉


「「努力しましょう」」


 ジョアンが私の目を見て話しかけてきました。


〈まずは第三王子の力で王宮内の排除すべき人間を洗いだしてもらって、彼の配下と入れ替えてゆく。小者は放置でいい。それが終わったら国境沿いで小競り合いを起こして兵力を引き付ける。残った兵力は投降するなら不問とすることで収めたい〉


「日々観察しているけど、あまり訓練されている感じじゃないんだ。烏合の衆にさえ見える。特に酷いのは近衛だけど、唯一注意すべき部隊がある」


 カーティス皇太子が真面目な顔で言いました。

 ルーカス王配が頷きながら口を開きます。


「砲撃隊だね。あそこの部隊は精鋭揃いだ。指揮官も優秀だし兵も統率がとれている」


〈砲撃隊?それってルチアーノのところかしら?〉


「ええ、ルチアーノ大将の部隊です。他はダメだがあそこは凄い」


〈ルチアーノは国王の幼馴染よ。物凄いくらいの忠誠心を持っているわ〉


「なるほど、そうなると懐柔するのも難儀だな」


〈叔母上、その人は国王の容態は知っているのですか?〉


 サミュエル殿下の声です。


〈知っているとは思うけど?私も久しく会っていないから分からないわ〉


「叔母上、この際だ。かわいい甥たちに会いに出てきませんか?」


 楽しそうにカーティス皇太子が言いました。


〈やっぱりそうなるわよね。覚悟はしていたけれど。いいわ、早急に王宮に戻りましょう。病に臥せっている夫を放置しているのも体裁が悪いし?ほほほ〉


「じゃあ一番の危険人物は叔母上に任せよう。あとはあのバカをどこまで踊らせるかだな。マリアとエヴァンの件は国民にも知られているから、うやむやにするのは禍根が残る」


 ルーカス王配殿下も賛成のようです。


〈ルーカス王配殿下としてはマリアをどうしたいのですか?〉


 ジュリアが言いました。


「私としては正直言ってどうでも良いが、うちの奥さんは助けたいだろうな。二人だけの姉妹だしね、できれば秘密裏に逃がしてやりたいが、あの性格では平民として暮らすのは無理だろう?いまさらどこの国も貰ってはくれないし、困ったところだ」


〈もう何年も前の、しかもたった一回の恨みをまだ忘れていないくらいだから、アランのことを今でも好きなのかな?兄上もとばっちりを受けたものだね〉


 私も激しく同意しました。

 ルーカス王配が真面目な顔で言います。


「好きは好きだろうけれど、離れがたい愛情というより愛憎だね。あの子としては反対されたら手に手を取って逃避行っていうのを期待していたんだと思うけれど、アランは冷静になったんだ。諦めたというより弁えたという印象だったね」


「それに傷ついたのか?可愛いところがあるじゃないか」


 私はイラッとしました。


「可愛くなんかありませんよ!そのお陰でエヴァン様は酷い目に遭っているのですよ?逆恨みもいいところだわ!アランもアランよ!根性無しのヘタレ野郎が!」


「「ローゼリア?少し落ち着こうか」」


 双子の王子がまた声を揃えました。

 サミュエル殿下とテレザ皇后陛下の爆笑が聞こえます。

 ふと見るとジョアンが少し引いていました。


「あ…すみません」


「いや、君の言う通りだよ。アランは明日こちらに送られてくる。明日の午後には物資補給と兵の入れ替えが完了して、また沖に停泊するだろう?あいつをどう使うつもりなんだ?」


〈マリアが逃げる算段をしているのは、アランと落ち合うつもりだったのだとすると、必ずアランのところに連絡が行くはずだ。ワイドル国にニセアランは仕込んでくれた?〉


 ルーカス王配が親指を立てながら言いました。


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