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皆と大浴場とハプニング

「メディの姉御達の入浴中、マジ気合い入れて見張っておきますんで!」

「覗く奴がいたらマジ秒で沈めますわ!」

「安心してご湯治くだせぇ!」


 誰もそんな事しないですよとメディが諭すも、三人の気合いは変わらなかった。

 そもそもカイナ湯ではそのような不届きな行為が出来ないような作りになっている。

 しかしメディ達の初入浴とあって、三人それぞれ番を張っていた。更衣室の前、入口、大浴場の窓の付近。

 こんなにも守られて入浴をするのは貴族や王族くらいだ。アイリーン達を相手にそんな命知らずがいるのかと、エルメダは考える。


「悪いわね、メディちゃん。私なんか部外者なのに……」

「カノエさんには毒以外にも知ってほしいですからねぇ」

「そんな心配してたの? あなたの薬の効能はとっくに認めているのよ?」

「カノエさんは毒をうまく作れるなら薬だってうまくなります。魅力を知ってもらいたいんです」


 カノエは薬湯に足を入れてから体を沈める。痺れるような熱さだが次第に慣れて肌全体を心地よい湯が包む。

 エメラルド色の薬湯はいい意味で肌を刺激して、確実に体外から癒やしていく。

 カノエは改めて感心した。どこかとろみのある湯を手ですくいながら、とある湯と遜色ないと思った。


「これは温泉みたいね」

「温泉?」

「簡単に言うと天然の薬湯よ。私の出身国ではそこら中にあるわ」

「天然の薬湯!? 自然が薬湯を作るんですか!」


 温泉についてカノエが説明すると、メディはむむむと謎の対抗意識を燃やす。

 自分が作り上げたものが天然に存在するとなれば、自身の更なる向上を見つめたのだ。


「天然さん、すごいですねぇ……」

「いやいや、メディもすごいって。だってこんな薬湯なんて普通、作れないでしょ。ね、アイリーンさん?」

「そうだな。私もいろいろな場所を旅したが、薬湯はどこにもなかった。このカイナ湯は確実に有名になるぞ」


 アイリーンが肌に湯をかけて撫でる。彼女だからこそこの薬湯をより感じられた。

 いかに最高の肉体を持つアイリーンとはいえ、疲労の蓄積は無視できない。この湯に浸かれば、アイリーンの疲労は一瞬で吹き飛ぶ。

 一般の者でも、一日の疲れは消えるだろう。仕事終わりに湯に浸かることを習慣とすれば、能率も大幅にアップする。


「はぁ~、いいですねぇ。入浴剤、作ってよかったです」

「メディ、お前はきちんと食べているのか? ずいぶんと体が細いな」

「食べてますよ」

「いや、これでは栄養不十分だ。お前は他人の身体には敏感だが、自身の健康管理には気が回っていないな」

「そ、そんな事ないですよぉ」


 メディは薬の調合となれば寝食を忘れる事もある。自身よりも他人を優先する為、アイリーンの指摘は当たっていた。


「メディー、ちゃんと食べないとねー?」

「エルメダさんは最近、少しお肉がついてきましたねぇ」

「ウソォ!?」

「少しですよ、少し」


 エルメダが自分の腹の肉をつまんで確認している。この村に来て以来、彼女はやたらと可愛がられて食べ物をもらっている。

 小柄なせいで、熟年層から甘やかされていた。更に他人の家にお呼ばれしてご馳走になれば、無駄な肉がつくのも仕方なかった。


「なに、その程度ならば少し動けばすぐに落ちる」

「アイリーンさんの身体じゃあるまいし……」

「では少しでも無駄な水分を落としにいこう」

「まさか……」


 アイリーンが誘った先は灼熱地獄のサウナだ。エルメダは辟易したが、ダイエットに効果があると聞いて飛びつく。


「やはりもう少し熱いほうがいいかもな」

「この施設がアイリーンさん基準になったら、全員死ぬから……」

「確かに少し足りないかもしれないわねぇ」

「えっ?」


 アイリーンとカノエは汗を流しながら、実に気持ちよさそうだった。エルメダはエルメダで、流した汗の分だけ痩せると信じていたが――


「エルメダさん。水分で体重が減ってもすぐ元に戻りますよ」

「そんなぁ!」

「エルメダちゃんは少しぽっちゃりしても可愛いわよ?」

「ぽっちゃりとか言うなぁ!」


 たまらずエルメダがサウナから出て水風呂に飛び込む。


「ちいぃぃべたぁぁぁーーーいぃぃーーっ!」


 エルメダの絶叫が大浴場に響いた。冷水なのだから当然であり、出てきたアイリーンとカノエは平然と浸かった。

 床のタイルの上でのたうち回るエルメダにメディが湯をかける。


「いきなり飛び込んだら心臓に悪いですよ」

「し、死ぬかと思った……。ていうかメディも割と平気そうだね……」

「薬のレシピを考えていたら長居しちゃいましたねぇ」

「揃いも揃って化け物か」


 間もなく大浴場に足音が近づいてくる。がらりと扉を開けて飛び込んできたのはアンデだ。

 遅れてポンドやウタンもやってくる。


「姉御ォ! 今の叫び声は何が……グッ!」

「ギェッ!」

「ウギッ……!」


 三人に手刀を入れたのはアイリーンだ。更にカノエが足元をすくってタイルに転がせて一瞬で手足を布で縛られて拘束される。

 わずか秒の出来事であった。エルメダは自分の身体を手で隠すも、その早業にはコメントできない。

 その布をどこから取り出したのか、という疑問など今はなかった。


「問題ない。こいつらは何も見ていない」

「問題しかないけど!?」

「念の為に記憶も消しておこうかしら?」

「ダ、ダメですよ! 心配してきてくれたんですから! エルメダさんが叫ぶからです!」


 この後、メディが急いで大浴場から上がって三人をロウメルの治療院へ連れていく。

 ポーションなどの薬を処方するよりも、そちらのほうが早かった。当然、何があったかと聞かれたが事故以外に答えようがない。

 確かに事故だった。エルメダはこの時になって思う。アイリーンを前にして女に生まれてよかった、と。

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