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魔導列車緊急停止 1

 辺境の村から徒歩で丸一日、ようやく魔導列車の駅がある町へ到着する。

 ここから魔導列車一本でワンダール公爵のお膝元であるクレセインへ直接、到着できればいいのだがここからの行先は反対方向の町だ。

 一度、途中下車してから別路線の魔導列車でクレセインへと向かっている。

 メディはこの魔導列車に乗っている時がたまらなく好きだった。車内で寝るのもよし、風景を眺めるのもよし。調合レシピを考えるのもよし。

 そうしているうちに目的地へ着く。いつもは一人だが今日はエルメダがいる。


「魔道列車のおかげで便利になりましたねー」

「そうだね。昔は護衛をつけて徒歩で次の町に行ってたらしいからね。移動も命がけだよ」

「大変な時代があったんですねぇ……」

「護衛依頼なんてのが儲かったらしいね。今や護衛なんて高給取りになっちゃったよ」

「なぜです?」

「護衛の必要があるのは貴族なんかの要人だけになったからだよ。一般の人が町へ移動するだけなら、魔道列車があるし護衛なんかいらないでしょ」


 メディはエルメダの話に感心した。当の彼女は護衛などつけずに辺境の村へ来ていた。

 駅から辺境の村への道にはそれなりの危険もあるのだが、ほとんど魔物に襲われなかったのだ。

 このタイミングでふとエルメダがその事実に気づく。


「メディはあの辺境の村に来るとき、護衛はつけなかったの?」

「はい。お金もありませんし歩きました」

「魔物は?」


 その時、通路を挟んだ席に座っていた冒険者の一人が立った。スキンヘッドでいかつい風貌だ。


「まったくその通りだよ。昔は護衛依頼なんかがあって儲かったらしいな」

「道中、魔物や盗賊に襲われなきゃ丸儲けだからな」

「あぁ、昔はよかったよ」


 仲間達が突然、口々に悪態をつき始める。エルメダは不躾な彼らの発言に我慢ならなかった。 


「そうは言うけどさ。あなた達だって、この魔導列車を利用してるじゃん」

「利用しない理由はないからな。おかげで俺達の腕を振るう機会が減っちまった。大して稼げもしねぇ」

「要するに魔導列車は便利だけど、稼げなくなって不満ってことだね」

「そうだ。こう見えても俺達は三級パーティでな。それなりに……」


 メディ達が突然、前のめりになってバランスを崩した。魔導列車が急停止したのだ。


「な、なに!?」

「あ、あれ魔物です!」


 車窓から見えるのはずんぐりむっくり体型で灰色の肌をした魔物、トロルだ。しかもかなりの数が魔導列車を取り囲んでいる。

 緊急停止の原因は判明したものの、この程度ならば止まる必要はない。エルメダは先頭の車両に向けて走り出した。その後ろを冒険者達が続く。


「こりゃ願ってもないハプニングだなぁ!」

「喜んでる場合じゃないでしょ! この魔導列車を停止させる何かがレール上にいるんだよ!」

「あそこのトロルどものボスだな! トロルキングなら大物だ!」


 メディもひとまずついていく。先頭車両には車掌が待機しており、数人の警備兵が車外に出ていくところだった。


「おい! あのトロルどもを討伐するならオレ達も手を貸すぜ!」

「いけません! レール上にいるのはトロルキングです!」

「だったら尚更だ!」

「お客様、冒険者ですか? 失礼ながら等級をお聞きしてよろしいですか?」

「三級だ!」


 車掌は頭を無言で左右に振る。


「いけません。トロルキングは二級……とても」

「ぐああぁぁぁぁっ!」


 警備隊の一人が魔導列車に叩きつけられた。トロルの数も多く、誰が見ても苦戦していると取れる。

 警備兵が魔法で応戦するが、なかなかトロルを仕留めるには至らない。トロルの皮膚は恐ろしく固く、生半可な魔法では通らなかった。

 その等級は三級であり、群れとなれば警備兵達だけでは対処は難しい。

 エルメダはその事実を認識して車外へと出た。冒険者達も当然、張り切ってトロル達へ戦いを挑む。


「おい、警備隊! 加勢するぜ!」

「だ、ダメだ……。トロルだけならまだしも、あそこを見ろ……」


 レールの上には両手を広げれば、魔導列車と力比べが可能な大きさのトロルキングだ。ふごふごと楽しそうに魔道列車の発進を心待ちにしている。

 冒険者達の先程の威勢もほぼ消えていた。目の当たりにした二級のトロルキングの巨体に圧倒されただけではない。

 遊びにでも興じるかのように魔導列車に立ちはだかった純粋な暴力の化身を恐れていた。


「ふごっ……ふっごっ!」


 トロルキングが潰れたような瞼の奥の瞳をジロリと動かす。その先には人間達だ。

 手下のトロル達も呼応するかのように、再び人間達に襲いかかる。トロルの固い皮膚に刃がなかなか通らず、一匹倒すだけでも精一杯だ。

 スキンヘッドの冒険者がトロルの一撃を受けてしまう。


「ぐあぁぁ……チ、チキショウ!」

「ポーションをどうぞ!」

「へ、ポーション……」


 いつものポーションと同じ感覚でスキンヘッドは飲むが、瞬時に身体へ浸透して怪我が完治する。

 喉越しといい、体内全体が潤された感覚が信じられなかった。


「なんだ、こりゃ!」

「魔物は大丈夫です! エルメダさんが何とかしてくれます!」


 スキンヘッドが見ると、数体のトロルに追跡光線(ホーミングレーザー)を放って消滅させていた。

 彼らが苦労してようやく一匹、討伐する魔物がまとめて葬られているのだ。何度、瞬きをしても信じられない。


「さぁさぁ! この正義と破壊の魔導士エルメダ様を恐れないならかかってきなさい!」


 すでに数体の討伐を完了した後であるが、エルメダはセリフを決めた。

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