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7来客の青年

「エミリア、マリーローズ嬢が困っている。分かる様に説明して差し上げなさい」


 クラークの指摘にエミリアは上品に笑った後にマリーローズに小さく手を合わせて謝った。


「まずはヒナタさんについてね。ヒナタさんの祖父様とお祖母様は私のお父様の古い友人なのよ。そして私の友人の甥っ子でもあるわ」


 つまりアンドレアナム家と深い関わりがある事は理解出来た。しかしそれとマリーローズに水鏡族で先生をする様勧める理由は分からなかった。


「ここからは俺…私が。この度、村に塾を開校するにあたり教師を確保する為に、上の命令でアンドレアナム伯爵を頼って参りました」


 学園都市なら教師になりうる優秀な人材は数多にいるので正しい選択だろう。それなのにマリーローズを推薦するエミリアの気持ちがよく分からなかった。


「水鏡族の子供達の教育水準は決して高くなくて、学校では最低限の読み書きと計算、戦闘訓練。そして冒険者として生きて行く為の知識程度しか学びません。私もその一人だったので、ハッキリ言ってバカです。なので失礼な態度を取ってたらすみません」


  明朗快活に笑い謝るヒナタに貴族だったら品がないと眉を顰める者もいるだろうが、マリーローズは親しみを感じた。もしかしたら貴族同士の付き合いに疲れていたのかもしれない。


「大丈夫ですお気になさらずに。それでどんな塾を開くのですか?」

「一言でいうと進学塾です。この国の進学制度は統一入学試験を受ける事が絶対条件ですが、村の学校教育だけでは受かるのが難しいのが現状です」


 試験を受けて基本各学校が定める点数を取らなければ入学とならない。そして定員より志願者数が多かった場合は点数の高い者から順に合格となる。


「マリーは貴族学校を入学する時に受験して満点を取ったから適役だと思うわ」


 それは王太子の婚約者として猛勉強して臨んだ試験だった。入学式には新入生代表として挨拶したのも記憶に残っている。


「ですけど、この街なら教師の資格を持っている方も、私より優秀な方もいらっしゃるわ」


 エミリアの推薦にマリーローズは自信がなく首を縦に振らない。王太子の元婚約者で優秀なのに自己評価が低い所が彼女の悪い所だった。


「まあ村までは長旅になるし、暮らしは不便だし、魔物も出るから、貴族のお姫様には酷だと思いますよ?給料も学園都市に比べたら少ないでしょうし」


 乗り気じゃないマリーローズにヒナタも助け舟を出す。デメリットを説明する彼にマリーローズは誠実さを感じた。

 

「そうね、私も友人の結婚式で訪れた事があるけれど、学園都市から村まで行くのが大変だった記憶があるわ」


 歯切れ悪く言いながらエミリアが視線を向けると、クラークは深く頷いた。


「旅行だけでも一苦労です。移住となれば同行する侍女の問題も出てくるから、マリーローズ嬢には無理でしょう」

「いいアイデアだと思ったんだけどね…」


 しょんぼりと肩を落とすエミリアにマリーローズは申し訳ない気持ちになりつつも、辺境の村行きを回避できてこっそり安堵した。


「私は適任者が見つかるまで滞在する予定ですので、引き続きご協力お願いします」

「ああ、水鏡族はアンドレアナム家の友人だ。尽力しよう。滞在中はうちに泊まるといい」

「ありがとうございます。宿代が浮くので助かります」


 ヒナタがアンドレアナム邸に泊まるのならば、最近暇を持て余していたので、水鏡族について話を聞くのもいいかもしれないと、マリーローズがぼんやり考えていると、部屋のドアが乱暴にノックされて緊迫した様子のメイドが入ってきた。


「大変です!貴族らしき若い男性が輩を従えてマリーローズ様を返せと玄関で暴れています!」


 メイドの言葉に嫌な予感がしたマリーローズはすぐ様部屋を飛び出し、玄関へと向かった。

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