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41恩返しがしたい

 夏期講習が本格的に始まり、マリーローズは慌ただしい毎日を送っていた。カイリと睦を始めとする普段塾に通う生徒達に加えて夏期講習のみを受ける生徒達は皆真剣にテキストに取り組み、マリーローズの解説を真面目に聞いてくれていた。


 授業が終わり、生徒達を見送り片付けをしていると、教室に残っていたカイリが遠慮がちに近づいてきた。

「マリー先生、明日の夏期講習お休みしてもいいですか?」

「ええ構わないけれど、どうしたの?」

「明日兄さんの誕生日だからご馳走を作りたいんです」

「まあ、明日はヒナタの誕生日ですの⁉︎」


 以前自分の誕生日を祝ってくれたヒナタに誕生日を尋ねた際に夏と聞いて満足してしまった。今思えば日付まで聞いておけばよかったとマリーローズは今更後悔をする。


「どうしましょう。今からプレゼントを用意出来るかしら…」

「兄さんならその辺に転がっている石でも喜びますよ」


 弟大好き人間のヒナタならカイリから石をもらっても喜ぶだろうが、自分が渡しても心から喜んでもらえないのは容易く想像できた。


「なになに?明日カイリのお兄ちゃん誕生日なの?」


 話を外から聞いていたのか、教室に戻ってきた睦にカイリは無言で頷く。


「睦さんだったらどんなプレゼントにしますか?」

「えー、いくらカイリのお兄ちゃんだからってプレゼントを贈るような関係じゃまだないから、普通におめでとうって言うだけかな」


 聞く相手を間違えてしまったようだ。マリーローズは頭を抱える。プレゼントするのは決定だ。しかし何を贈るのか。全く検討がつかなかった。


「…マリー先生は誕生日に何をもらったんですか?」


 見かねたカイリの問いかけにマリーローズは数ヶ月前の誕生日を思い出す。


「当日光さんから聞いて知ったらしく、食堂でお昼ご飯をご馳走して頂きましたわ」


 あの日ヒナタはお祝いだからとケーキまで注文して、食堂にいた神官達を巻き込み皆でバースデーソングを唄ったなとマリーローズは思い出に頬を緩める。


「じゃあマリー先生もお昼ご飯奢ればいいじゃん。解決だね。カイリ帰ろ。先生さようならー」


 否応言う前にカイリの腕を掴み睦は教室を後にした。取り残されたマリーローズは昼休憩を知らせる鐘の音が聞こえてくるなり、無性に腹が減ったので誕生日プレゼントの件は後回しにして、食堂に向かう事にした。


「あ、マリー先生だ」


 食堂の手前で旭に声をかけられた。サクヤも一緒で今日も仲良く腕を組んでいる。


「ごきげんよう。これからお昼ですか?」

「はい、料理長に用意してもらったお弁当を持ってバルコニーでご飯にするの」


 言われてみればサクヤがピクニックバスケットを手にしている。結婚式の日取りも決まり相変わらず…いや、益々熱を帯びるサクヤと旭の関係にマリーローズは喜ばしい気持ちと、羨望を覚えながら恋人達の背中を見送った。


「…そうだわ!お弁当を作りましょう!」


 今自分が出来るヒナタへの誕生日プレゼントはこれだ。プレゼントが決まったマリーローズは食堂で昼食を取りながらお弁当の内容を考え、ヒナタの笑顔を思い浮かべると自然と表情が明るくなっていた。

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