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15神殿での生活

 マリーローズが水鏡族の村に来て早3日。身の回りの事は練習したのでなんとか1人で出来た。共同風呂には困惑したが神官に尋ねながら適応できた。食事も慣れた味ではないが、残す事もなかった。ベッドもマリーローズの為に上等な物に新調されていたらしく、寝心地は悪くなかった。


 それにマリーローズを心配してか、日中はヒナタがそばにいてくれた。お陰で思ったよりも早く馴染めた気がした。


 これからサクヤに誘われたティータイムだ。ヒナタに案内されて入った部屋は中央に円卓と椅子があるだけで、あとは何もなかった。


「ここが未来の進学塾だよ」

「本当に一から作るのね」

「マリーが生徒達と使う場所だからマリーの意見を中心にした塾を作りたいんだってさ。勿論俺も闇の神子も協力する」


 ひとりで始めるのは不安だが、ヒナタ達がいるならやれそうな気がする。マリーローズは期待に目を輝かせた。しばらくしてティーワゴンを引いたサクヤが先日マリーローズを案内してくれた老婆の神官と共に姿を現した。


「遅くなってすまない。鍛錬が長引いてしまった」


 サクヤは神官にお茶の用意をお願いしてから席に着いた。鍛錬と言っていたが、確かにいつも青白い顔が上気している。神子でも戦民族として訓練が必要なようだ。


「さて、マリーローズ先生。神殿の暮らしはどうかな?」

「お陰様で不自由なく過ごせています。ただ気になる点があります」

「ふむ、気にせず言って欲しい」

「はい、それは神殿で暮らしていると子供達の生活が分からないという事です」


 神殿内を歩き回った結果、村の子供達の姿を確認出来た場所は村人なら誰でも利用できる図書館ぐらいだった。しかも学校があるので時間帯が限られている。しかも塾を必要とする世代の14歳前後の子供達になると更に少なかった。


「なるほど、全く気に留めていなかった。やはりマリーローズ先生を招いて良かった。我はずっと神殿暮らしで視野が狭いからな」

「神殿暮らしで受験世代となると、闇の神子と風の神子と氷の神子三席位しかいませんしね。3人とも受験しないけど」


 この神殿には光と闇以外に炎、水、風、雷、土、氷といった属性の神子が存在するらしい。それぞれ精霊に感謝と祈りを捧げて、高い魔力を生かして魔石を大量生産して村の経済を支えているとか。また、稼いだ資金で事業を行なっている者もいるらしい。


「ですから村の学校の見学を希望します。普段受けている授業の様子を見れば、子供達の生活ぶりも分かるし、塾でどんな授業をすればいいか参考になると思うんです」

「マリーの意見ももっともだな。じゃあ俺の通ってた学校に見学を申し出てみるよ」

「頼んだぞ神官ヒナタ」


 話がひと段落ついた所でマリーローズはお茶を勧められた。王都で飲んでいた茶葉に比べると質は劣るが、優しい味で飲みやすかった。お菓子はかりんとうというらしく、クッキーより細長く硬いが癖になる味だった。


 ティータイムを終えると、善は急げという事でヒナタは母校に向かう事になった。見送る為にマリーローズも着いて行く。


「そうだ、マリーも一緒に行くか?」

「いいの?」

「いいに決まってる!学校まで少し歩くけど…馬車を用意してもらおうか?」


 ヒナタ1人だったら歩くつもりだったらしい。マリーローズはあまり負担を掛けては行けないと遠慮して一緒に歩いて学校に向かう事にした。



「舗装されている道から絶対外れないように。あと今後1人で出歩くのも禁止。神殿内は光の神子が結界を張っているから安心だけど、村は結界が施されていないから魔物が出るんだ」

「魔物…」


 実物を見たのは檻に入っている状態でしかないマリーローズは恐怖に身を震わせて、ヒナタに近寄った。


「子供達はどうされてるのですか?」

「冒険者デビューしたら1人で歩いて良いってことになっている。登下校時には通学路に自警団を中心に大人が巡回している。だからマリーも絶対1人で歩かないように!」


 つまりそれって自分はヒナタにとって子供扱いという事なのかと問い詰めたい気持ちに駆られたが、頷かれそうな気がしたので、マリーローズは何も言わずに歩みを進めた。

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