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幸せの誓い  作者: ゆうじ
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誕生祭

「私が愛する国民達よっ!! 本日、私の愛する娘……黄泉が二十歳を目出度く迎えることになるっ!! これもひとえに国民であるお前達の頑張りとも言えようっ!! 今日はその頑張りを労うための誕生祭でもあるっ……。国民の皆っ、思う存分楽しめーーーーっっっっ!!!!」


 空国王による、国民への二十歳を迎える黄泉の誕生祭開始の宣言が高々と言い放たれる。それと同時に国民達の歓声がそこら中から湧き上がり真華国全体に響き渡る。


(毎年毎年、相変わらず凄ぇな……)


 來はその国民達が歓声を上げる光景を国王から少し離れた場所で眺めていた。毎年黄泉が誕生日を迎える度に行われている誕生祭。名目上はそういう風になってはいるが実際の所は今空国王が言ったように国民達を労うための会だ。

 いつの代からか自分の子供達の誕生祭を国民達を労うための会として催しを開く風習になった。


 幼い頃の來は最初にその光景を目にして疑った、その時の記憶を今でも來は覚えている。平民や貴族、王族が身分などという垣根を超えて皆一様に食べ物を食し、水や酒を飲む。


「最初の頃はそんな空気……、慣れなかったな」


 來にとってまだこの国に訪れて間もなかったというのもあるが、戦争孤児で生きる為に人を殺し続けてきた。だから自分以外の人間は敵で分かり合うことは出来ないと、……そう思っていた。


「來〜っ、何やってんだよ」


来の背中にバシンッと音と軽い痛みが走る。來が背後を見るとニタニタと笑っている青年が立っていた。


「……悪いけど、どちら様で?」


「ひどいねえ〜、親友の顔と名前を忘れちゃうなんてっ」


 大げさな身振り手振りでわざとらしく嘆くフリをする青年。來はその光景に小馬鹿にするようにフッと笑みをこぼす。


「悪いが俺の親友にこんな変わった奴はいなくてね」


「あっ、ひっでえ事言うなぁ〜オメェはよっ」


 青年が來の髪を乱暴に撫でつける。


「おいっやめろよ……、あぁっ思い出したっ!! お前は俺のたった一人の相棒であり親友の(シン)じゃないかっ!!」


「うるせぇっ!! 調子よく言ってんなっ」


 縉と呼ばれた青年は尚も來の髪を乱暴に撫でる。そして暫くして撫でるのをやめ、來の髪から手を離しニッコリと笑う。


「良かったな、お前の愛しの黄泉様が二十歳を迎えられて」


「縉、前にも言っただろ? 俺と黄泉様はそんな間柄じゃない」


「いつも黄泉様が通りかかる度にその姿が見えなくなるまで見てる奴が言っても説得力ねぇよっ」


「……ぐっ」


 來はその言葉に言い淀み、バツが悪い表情を浮かべると再度、国民達の方へ視線を向ける。国民達は空国王の宣言に歓声を上げ終えると、食べ物を取りに行く者、水や酒を飲む者、その場で踊り出す者と様々だった。


(本当……、何でも知ってるってのも困りもんだな)


 來は隣にいる縉に目を向ける。

 縉とは、10歳にこの軍に入隊した時からの付き合いで來より8歳年上の男である。無精髭が特徴的で、腕に刀傷がある。


「まだ痛むのか?」


 來が問いかけると縉はなんの事を言ってるのか気付き自分の右腕の刀傷を一度見てから再度來に視線を戻す。


「無事に決まってんだろ……。気にすんな、お前のせいじゃないんだからよっ」


 來は縉が右腕に刀傷を浴びる原因になった3週間前のことを思い返す。とある村の巡回任務に就いていたときの事だ。

 暗い時間帯に夜盗の集団が村へと侵入してきた。思いの外数が多く暗いのもあって來は相手に手間取った。全てが終わった時には來に怪我は殆どなかったが縉は利き腕を思いっ切り斬り裂かれ負傷してしまった。


「そうかもしれねえ……。でも」


「はいはい、やめやめ……。今日は黄泉様の年に一度の誕生祭なんだ。固い話は抜きにして、少年も飲め飲めっ!!」

 

 そう言って來に酒を差し出す縉。來はそれを見て溜息を吐く。


「毎年言ってるけど、俺はまだ未成年で酒は飲めねえよ」


「ならとっとと、年を取りやがれ……。おこちゃま」


「どうやってとれってんだよっ!?」


 來と縉が口喧嘩をする様を他の兵達が微笑ましそうに眺める。二人のこのやり取りは軍の中でも名物となっていた。こうやって言い合っているのを見ると、相性が悪そうに見えるがひとたび戦場へ出ると凄まじい速さで相手を一人残らず駆逐する……。最強の二人組だ。


「にしてもよ……。來、おかしくねぇか?」


 縉が、慎重な態度で周りに目を向けながら來にそう呟く。


「やっぱり縉……、気付いたか」


 來も周りを見る。空国王の側近の姿が不自然な程に全く見えないのだ。空国王の元には必ず最低二人は側近が付く。なのに今はどこにもその姿が見当たらない。


「まぁ考えすぎって事もあるかもな、なんたって今日は黄泉様の誕生祭っ!! 気にせず飲もうぜっ!!」


 縉の言葉に呆れながらも來は近くにあった湯呑に水を注ぎ込むと縉の持っている湯呑にコツンと打ち付けた後グイッと飲み干し笑顔を浮かべるのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 複雑な人間関係なのに、理解するのが簡単でした。すごいです。 後の展開を考えてしまうのに、それが当たらない、斜め上の回答が返ってくるのに、それでも読むのをやめられない楽しさがありました!斜め…
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