幼馴染
「たくっ、師匠の野郎……バラす必要ねぇだろうが」
謁見広間を出て少し進んだ廊下で右手の拳を壁に強く打ちつける來。
(分かってんだよ……。分不相応な恋だってことくらい)
來は、暫くその場に立ち気持ちを落ち着けると
(黄泉様を探すか)
黄泉を探す為に外へと向かう。歩きながら黄泉の母……鈴が亡くなる寸前に告げられた事が頭を過る。
『あの、こを……たの、んだっ、わよ……』
最後の力を振り絞って鈴は來に娘……黄泉を頼むと口にした。
だから來は黄泉を第一に考えるようにしている。黄泉の傷付くこと嫌がる事を絶対にしないように。その代わりに自分が傷つく事になろうとも……だ。來は迷いもせず真っ直ぐ歩く。
(黄泉様が行くとしたらあそこ以外ありえない)
來が向かった先は亡くなった黄泉の母……鈴が自分だけの花壇が欲しいということで作った庭園へと向かう。
なにか嫌な事があった時、黄泉がいつも庭園へ向かっている事を幼馴染である來は何度も目にしていた。
庭園について周りを見てみると推測どおり黄泉が庭園に置かれている椅子に腰掛けていた。來は近寄ろうとするがすぐに足を止める。
黄泉の傍に先程国王達と話していた人物がいたからだ。白銀の髪を肩まで伸ばした青年……光だ。
來は二人の姿を眺める。黄泉は幸せそうに光の事を見て微笑み光は黄泉に対して楽しそうにしている。
(俺が守らなきゃならねえのは、黄泉様……黄泉ねえの幸せだ)
來は胸に込み上げる切なさを抱えたまま幸せそうにしている黄泉を眺める。
「……あ、來っ!!」
來に気付いた光が声をあげる。黄泉が少し離れた所にいる來を見る。その顔は少しむくれた表情をしていた。
(……こりゃ邪魔しちまったな)
來は心の中でそう呟くと黄泉達の元へ歩みを進める。
「久々ですね……來」
片手をあげる光。
「久々って……前に会ったのは半年前だろっ?」
そう言いながら來は光の上げられた手に自身の手を打ちつける。
「そうだな……相変わらず背が低いままだな」
満面の笑みで來が気にしていることを言う光。
「どうやら黄泉様と光様の間では俺をおちょくるのが流行ってるみたいですね」
目を閉じ、堪えようのない激しい怒りから肩をプルプルと震わせる來。
「仕方ないじゃない。だって本当に背が低いんだから」
「背が低い低いっていい加減にしろよなっ!?」
ずっと感じていた怒りに堪えきれなくなりブチ切れる來。
それを見て笑う黄泉と光。
(いつまでもこの関係が続くと良いな)
來は二人の笑う姿を見ながらそう思った。……例え、黄泉が光と結ばれることになったとしても。




