表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せの誓い  作者: ゆうじ
16/18

囚人

(コウ)様っ……本当にあのような野蛮な人間を使うつもりなのですかっ!?」


 ここは、真華国の王城の地下にある牢屋。

 一階や二階のように日は差さず、常に暗く薄気味悪い場所だ。牢屋の至るところから囚人の呪いに満ちたうめき声が聞こえる。


 その中で(ユイ)(コウ)に抗議の声を上げる。


「はい、そのつもりですよ」


「ですが、相手は仲間を平気で切り捨てるような奴ですぞっ!?」


 キッパリと断言した(コウ)(ユイ)は目を剥きながら怒鳴る。


「今の真華国にはそんな最低な人間の力が必要なんです……それはユイ、貴方が一番理解している筈でしょう?」


 ユイコウの言葉に目を伏せる。

 二人はそれから無言で暫く歩くと二重に鍵が掛けられている鉄格子の前で止まる。

 鉄格子の奥では椅子に縛らりつけられている赤い髪を短くしている男がグッタリといった感じで座っていた。


「……ユイ


 コウが告げるとユイが懐から鍵を取り出す。


「どうなっても知りませぬぞ」


 そう言ってユイは鍵を開けていく。

 2つの鍵を解錠して扉を開けて入る二人。

 椅子に縛りつけられている男がビクッと体を揺らす。


「へ〜っ、こんな所に人が来るなんてなっ」


 男がニヤリと妖しい笑みを浮かべながら言う。


「釈放の時です。……ジン


 コウがそう告げるのと同時にジンと呼ばれた男は声を上げて笑う。


「貴様っ、国王陛下の前で無礼だぞっ!!」


 ユイの言葉を聞いてジンの笑い声がピタリと止まる。


「国王陛下? クウじゃねえのか?」


 神妙な顔でコウユイを交互に見て問いかける。


クウは私が殺しました」


「お前が……?」


 ジンの言葉にコウは頷く。するとまたしてもジンは盛大に笑う。


「アハハハッ、こいつは面白えっ……で? アンタはどこのどいつだ?」


 ジンの問いかけにコウは口の中に溜まっていた唾を飲み込む。そしてジンの目を真っ直ぐに捉え


「僕……私は、先々代の国王。カイの息子、コウだっ!!」


 コウの力強い声を聞きジンは啞然とする。


「なに海(海)様の息子……だと?」


 ジンコウの頭から足先まで何度も視線を逡巡させる。


「言われてみれば確かに……面影があるな」


 ジンはそう言うと不敵に笑う。


「そうか。で俺は何をすればいい?」


 コウはその言葉に柔らかな笑みを浮かべながら


「この国には今力が必要だ。その力を私の為に貸してもらいたい」


「フッ。良いだろう……力を貸してやる」 


 コウジンの言葉に頷くとユイに縄を解くよう命令させる。そしてユイジンの縄を解き終えた瞬間


「グハッ」


ジンユイの顔を殴りつけるとコウの元へと突進して腹部目掛けて蹴りを放つ。


「……っ」


 だがコウはその蹴りを両腕でブロックすると、即座にその足を掴み取る。これでジンは身動きが取れなくなった。


「へぇ〜、今のを止めるか」


 楽しそうな顔で告げるジン


「……どういうつもりですか?」

 

 コウの冷たい瞳がジンに向けられる。

 表情からは怒りの色が見受けられた。


「なに……。俺に命令をするんだ。どれ程の力を持っているのか確かめたくてなっ!!」


 そう言ってジンは掴まれてる足とは逆の足で跳び上がると空中でその足で蹴りを放つ。

 コウはすぐさま掴んでいた足を離し、後方へ飛ぶ事によりその攻撃を回避する。


「なるほどっ。確かにカイ様の息子だ。初見で今のを避けたのはあのお方だけだからな」

 

 そう言ってジンは声を上げて笑い出す。


「狂ってる。流石は仲間を殺すという大罪を犯した人間の事はありますね」


 コウの言葉に笑い声がピタリと止まる。

 そしてジンコウを見る。その瞳は怒りと憎悪の色が見て取れた。


「……っ」


 コウはその瞳から発される闘気に押し潰されそうになる。


コウっつたっけか? 今お前は俺を怒らせた……。ここまで身体強化、魔術を使ってなかったがいいだろう。本気で相手をしてやるよ」


 そう言い終わると同時に目の前のジンの姿が消える。


「どこに……っ」


 消えたジンを探すために周りに目を向けたコウの腹部に強烈な痛みが走る。なんと目の前でジンが拳を叩き入れているではないか。すぐさまコウも身体強化を使ってその場から離れる。


(くっ、今の速さはサンと同等かそれ以上じゃっ)


 コウは一旦離れた場所で態勢を立て直す。

 そしてジンに目を向けるとこれ以上ないくらいに満面の笑みを浮かべていた。


「まさかこれで終わりとか言わねえよな? 今の一撃を受けて倒れなかったのは褒めてやるけどよ」


 またジンの姿がその場から消える。

 コウは当てもなくその場から駆け出した。


「ハハッ、なるほどなっ!!」


 その声と同時にコウ目の前に突如靭ジンの姿が現れる。


「狙われるのはその場でジッとしているから。その考え方は正しい……ならっ!!」


 ジンは拳を構える。


「真剣に殺り合うとすっか!!」


 そう言い放つと同時に拳を前に向かって放つ。

 前に突き出される直前にジンの拳が赤く光った。


「……っ。まさかっ!!」


 コウは横に倒れ込むように飛び込む。するとコウの頬を熱が掠めていく。すぐさま起き上がり先程自分のいた方へ目を向けると、その場は炎で包み込まれていた。


「今のも避けるかよ」


ジン。貴方は()()()()だったのですか?」


 その言葉にニヤリと妖しい笑みを浮かべるジン


「あぁ、俺の場合はこの()……だけどな」


 真華国では魔法を使った戦闘スタイルが2つ存在する。

 1つは魔法をそのまま詠唱して使う、魔導士。そしてもう1つはその魔法を詠唱なしで己の体術や剣術などに織り交ぜて戦う魔闘士。


サンと同じか」


「なんだよ。まだサンのおっさん渋とく生きてんのかよ?」


「えぇ、この真華国の隊長です」


 その言葉を聞いてジンは盛大に笑う。


「あのおっさんが隊長っ!? アハハハ、こりゃ傑作だっ!! いいだろう……。アンタの実力も分かったし、とりあえずは従ってやるよ」


「随分見限られたものですね」


 冷たく言い放つコウジンはチッチッと舌を鳴らす。


「俺は全て理解してるぜ? まだ奥の手を隠してやがるだろ?」


 コウはその言葉に目を見開く。この短い間にそこまで見通したジンに驚く。


「アンタに付いていきゃ、とりあえずは楽しめそうだからな」


「ではジン。早速ですが命令です」


「おう。何をすればいいんだ?」


 ニッコリと微笑むジンコウは冷たく言い放つ。


「この国の反逆者であるライという男を殺しなさい」


 コウの言葉に不敵な笑みを浮かべると同時にその場から消える。コウは目を閉じこう祈った。


 早く邪魔者を消してくれ。と――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ