↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せの誓い  作者: ゆうじ
PR
13/18

罪人

「おいおい、俺達を呼び出してなんだっていうんだ」 


 真華国の王城前に集まっていた集団の一人が声を上げる。その声を上げたのは借金をした慙の代わりに住み込みで來が働いた宿屋……春菊の主人、糶僂(セル)である。


「およしよ、アンタ……」


 それを横で嗜めるのは糶僂の女房である纜(ラン)だ。糶僂(セル)は纜(ラン)の言葉を聞きバツの悪そうな表情を浮べる。糶僂(セル)は元々貴族や王族が大嫌いな人間だ。たかだか魔力の量が多いだけ……それだけで身分を決める制度に不満を持っていた。


「静まれ、静まり給えっ!!」


 全体に響き渡った男の声……。糶僂(セル)は声の主へと目を向ける。

 その男は文官の衣装と思われる白地に胸の辺りに金で羽を模した刺繍が施されていた。

 

「皆、驚かずに聞いてほしい……。実は昨日空国王が殺されたっ!!」


 その場にいた住人達は戸惑いの声を上げる。


「そんな空国王陛下が……」


「一体誰がそんな事をっ」


 糶僂(セル)も戸惑いを顕にしていた。糶僂(セル)は貴族や王族が大嫌いだ。何故なら彼らは平民である糶僂達をバカにしてくる。それこそ虫けら同然に扱われる事なんてザラだ。


 だがそんな平民の中から英雄が生まれた……。その名は慙(サン)。真華国の軍の隊長を務める男だ。7年前の戦で頭角を表し隊長まで上り詰めた男。その時の勇姿は7年たった今でも語られる程だ。糶る僂(セル)は彼の幼馴染みである。

 だから7年前、春菊に連れてきた少年……來(ライ)を頼まれた時幼馴染みのよしみということで引き取った。


(最初出会った時のアイツ……ひどい顔してたっけな……)


 糶僂(セル)は來(ライ)に初めてあった頃の事を思い返す。初めて來(ライ)を見た時に感じた事……それは怒りだ。來(ライ)はなにかに対して怒ってるように感じた。今でも糶僂(セル)は考えるがそれがなんなのか皆目検討がつかない。


「静粛に……静粛にっ」


 文官の男が皆を静めるために声を上げ、民衆の声は次第に収まっていく。そして文官の男は一度コホンと咳払いをすると


「ここで宣言する、今この時この場所で新たな王を立てる……この方だっ!!」と言って奥から登場したのは……。



「あ、あのお方はっ!!」 


 糶僂(セル)は奥から現れた人物に驚愕する。銀の髪を肩まで伸ばし王族故か顔の造形が綺麗に整っている青年……光(コウ)。糶僂(セル)は隣にいる纜(ラン)へ目を向ける。相手も糶僂(セル)へと目を向けていた。お互い信じられないといった表情を浮かべている。



「皆さん……本日はこのような場所に来て頂き誠にありがとうございます」


 毅然とした態度で挨拶の言葉を述べる光(コウ)。 



「本来でしたら空(クウ)国王に後釜として任命されてからと思っていましたが……。このような事になり誠に残念です。……羽(ユイ)」


 文官の男……羽(ユイ)が呼ばれるとその場に跪く。


「皆さんに状況を説明するんだ」


「はっ」


 羽(ユイ)はそう言うと立ち上がり民衆へと目を向ける。


「今、王を殺した者は黄泉(ヨミ)王女を連れ逃亡中……して、その男の名は」



 糶僂(セル)と纜(ラン)はその名前を聞いてまた驚愕する。だってその名前というのは


「來(ライ)……。我が真華国の兵士だ」


(あの來(ライ)、が……)


 簡単に信じる事が出来ない糶僂(セル)……。当たり前だ。慙(サン)が來(ライ)に対して親心を抱いていたように、糶僂(セル)もまた同じように來(ライ)を実の息子のように思っていた。だからこそ來(ライ)がそんな事をするとは思えなかった。


「しかもそれだけではなく、奴は自分の相方である縉(シン)をも殺した」


 糶僂(セル)と纜(ラン)は羽(ユイ)の言葉をただ呆然と聞き、二人胸中で同じ事を思う。


 ……今目の前で言っているこの男の言葉は本当に來(ライ)がやった事なのかと――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。