(4)midnight call
「おはよう。ウォルク」
「スティール・・・、どうせまた、ろくでもないことだろう」
「機嫌悪そうね。もしかしたら、寝ているところを邪魔したかしら?」
「いや、こちらは昼の3時だ。昼と夜をひっくりかえしているのは自分のせいだから、気にしなくていい。それより、そちらこそ、真夜中じゃないのか?」
「こちらは、真夜中の2時よ。それで、少しは動きはあった?」
「いや、ここのところ相手の動きがない。ずっと夜も昼も暇を持て余している」
「そちらのハントはいつまでかかるの?」
「さあ、相手の動きが次第だ」
「そう、それで、よく聞いて欲しいの」
「聞いてるさ」
「こちらのカナリヤが一匹喰われた」
「近いのか?」
「ええ、近いわ。下部組織の構成員をそれとなく潜らせておいたの。そのうち一人が自分で頭を撃ち抜いた」
「自分でか?」
「しかも、顔じゅう笑いを浮かべながらよ。でも、目からは涙を流していた」
「コードを書き込まれたのか」
「間違いない。数日前から目をつけられていて、雨の日に襲われたのよ」
「しかし、そんなに分かりやすく仕事の痕跡を残したら、警戒が強くなって、奴らにはやりづらくなるではないか」
「まあね。でも、彼らは、私たちのことなんか少しも意に介していないのよ。潰そうと思えばいつでも潰せるってことね。それと、分かりやすく、カナリヤを潰せば、私たちが動くでしょ。それで、トゥルーの居場所を探るつもりなのよ」
「そのトゥルーを探してどうするんだ?」
「単純よ。抹殺のため。彼らにとって、唯一の脅威だから。でも、私たちには、唯一の武器なの」
「だから、5年前から極東の島国に身を沈めて、あんたらの秘蔵っ子を隠しているんだな」
「そう、あいつらは世界はとって、核兵器や生物兵器、そしてサイバーテロ以上に厄介な存在よ。そしてトゥルーは、危険すぎる兄弟たちのニュードライザー(中和剤)としてデザインされた。でも、まだ子供で兄弟たちを押さえ込む力は持たない。だから、その日までここで守らなくてはならないの」
「それは、まるで卵を抱えて巣を守り続ける母鳥だ。そして、巣の近くに蛇が現れた、と言う訳だな」
「そうよ、できれば、すぐにでもあなたの力が欲しい」
「コードライターか。厄介な相手だ」
「彼女だけじゃないわ。おそらく弟のフェーカーも一緒よ。もし、フェーカーがこの国の経済に手を出したら、考えるだけでもゾッとする」
「だが、今はこちらのハントが最優先だ。奴は必ず戻ってくる」
「だから提案があるの。マンイーターのハントをトゥルーにバックアップさせるわ」