06-05 極振りトリオでした
ユアンから明かされた、DEX極振りという事実。それに対するジンとヒメノの反応は、他のプレイヤーとはやはり異なる。
「良いですよねぇ、極振り」
「うむ、極振りプレイヤーが他にも居て嬉しいでゴザルな」
二人は同じ様なプレイヤーの存在を、心の底から喜んでいた。
普通のプレイヤーならば、極振りというものを大小様々ながら敬遠しがちだ。ステータスというものは、プレイに相応の影響を及ぼすのだから、当然である。
STRやINTが足りないと、火力不足になる。VITが足りなければ、一撃貰っただけでも大打撃。
だからこそプレイヤーは、ステータスの振り分けに頭を悩ませるのだ。
しかしこの場に集う三人は、極振りプレイヤーにしてユニークシリーズを獲得している者達だ。
ユニークスキルがそれぞれの得意分野を強化し、足りないステータスはユニークアイテムが補う。それは極振りのメリットを生かし、デメリットを補うという事。
そうして出来上がった最速忍者と一撃必殺少女……そして、システム外スキルを乱発する黒衣の男。
この三人がパーティを組むのは、何の因果か。
「烈火の如く! 【狐火】!」
「かーらーのー……【一閃】」
「とどめです! 【パワーショット】!」
タゲを取って全て回避するジンに、攻撃に攻撃を重ねて動きを止めるユアン。そして出来た隙に、ヒメノの一撃必殺が叩き込まれる。
二層のダンジョンに出没するモンスターといえど、ユニークスキルを使いこなすこの三人の相手をするには力不足だった。さしたる苦労もなく、ジン達はボス部屋へと歩いていく。
こうして進む事数分、三人はボス部屋の前に立った。
「いよいよですね!」
「うん、お陰でサクサク進めたし……イイ感じかな」
ボス戦に向けて気合いの入っているヒメノを見て、ユアンも表情を和らげる。そんな二人に笑みを浮かべつつ、ジンはある事について聞いてみた。
「ユアン殿、ボスの情報は知っているでゴザルか?」
そんなジンの言葉に、当然とユアンは頷いてみせる。
「攻略自体は初めてのダンジョンだけど、何が出るかは予想しているよ。君達にも、縁の深い話さ」
思わせぶりなユアンの言葉に、ジンとヒメノは首を傾げる。そんな二人の様子に口元を緩め、ユアンが聞き馴染みのある単語を口にした。
「この先に居るのは、十中八九エクストラボスだ」
そう言うユアンが、腰に差した二振りの刀に手を添える。
「この刀も、エクストラボスから手に入れた物だよ……まぁ、それは君達には今更か」
二人の刀を見れば、同様にエクストラクエストを攻略した事は明らか。故にユアンは話を進める。
「第一層にあった[竜王の墓所]というダンジョンで、僕はこれをゲットした。【漆黒の竜】と一緒にね」
「それが”陰”の……DEX特化の、ユニークスキルでゴザルな?」
「あぁ、その通りだ。このダンジョンは[竜王の墓所]と似ているダンジョンでね、僕はエクストラクエストの第二段階なんじゃないかと睨んでいる」
エクストラクエストに続きがある……その推測に、ジンとヒメノは素直に驚いた。
ただでさえ、エクストラクエストで手に入ったアイテムは強力な物だった。ジンやヒメノがイベントで上位に食い込めたのは、それらの力があったからと言っても過言では無い。
そんなエクストラクエストに続きがあるならば、得られるモノは更に上という事ではないか? そして、それを守るエクストラボスは相当な難敵なのではないか? そんな予感が、二人の表情に影を落とす。
「心配は要らないよ、僕達が個々で挑んだら苦戦しただろうけど。ヒメノ君の攻撃力と、ジン君の速さ……そして僕の力が合わされば、確実に勝てる」
自信……そして確信に満ちたユアンの言葉。それを受けて、ジンとヒメノは顔を見合わせる。
そんな二人の様子に、ユアンは苦笑した。
「勿論、無理にとは言わないよ。僕の都合に付き合わせる訳だからね。君達が乗り気じゃないのなら、ここで解散でも大丈夫さ」
穏やかに語り掛けるユアンに、ジンは問い掛ける。
「その時、ユアンさんはどうするでゴザルか?」
「決まってるだろう? ソロで、ヤツを狩る」
揺らがないユアンの様子に、ジンは心を決める。しかし、一人で決断を下すわけにはいかない。
ヒメノはどうだろうか? そう思ったジンは、愛しい恋人に視線を向ける。そこには、ジンの様子を窺っている……というより、ジンをガン見している可愛い彼女さんが居た。
「ジンさん、やりたいんですね?」
「う、うむ……左様でゴザル」
「わかりました! 私も最後までお付き合いしますね」
即決するヒメノさん、迷った様子は無い。
「うん、君達は本当にいいカップルだね」
微笑ましげに二人を見ているユアンに、ジンは照れ臭そうに頬をかく。その隣に居るヒメノは、ユアンの言葉に照れ照れしている。エクストラボス戦の前とは思えない雰囲気であり、緊張感が仕事をしていない。
「それじゃあ、付き合ってくれる……という事で良いかな?」
「無論!」
「はい、私は大丈夫です!」
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その頃、ユートピア・クリエイティブ……アナザーワールド・オンラインを運営する会社での事。ゲーム管理に携わる者達のモニターに、一つの表示がポップアップした。
「おっ、エクストラ発動か」
「何処のだ? やっぱり二層か?」
一人の職員がコンソールを操作し、モニターに情報を表示させる。そこに記載された内容には、ダンジョン[竜王の寝所]に秘匿されているエクストラクエストが開始された事を示していた。
「これ、第二弾じゃねーか!!」
「[竜王の寝所]って事は、当然【漆黒の竜】持ち……もしくは【トリックスター】持ちだろ!?」
「まぁ、落ち着け……攻略者は当然、ユアン……だけじゃないっ!?」
モニターに表示された名前を見て、運営達が騒ぎ始めた。
「ジンとヒメノ!?」
「アイエエエ!?」
「ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」
「コワイ!」
中々に賑やかな職場である。
そんな騒ぎを知ってか知らずか、一組の男女が部屋を訪れた。
「賑やかだな、お前ら……何か問題か?」
「あっ、ボス!!」
「大変なんです、ボス!!」
男女に向かって慌てた様子で声を掛ける運営職員達。そんな様子に、男女は頭を抱える。
「ボスはやめい! で、どうしたんだ?」
……
「ほほう、これが例の忍者君とその彼女ちゃんか」
「あら可愛い娘。この二人もユニーク持ちなのね」
慌てる運営達に対し、男女はジンとヒメノに興味津々である。
「九尾と大蛇、更に黒竜……ね。よくもまぁ、ユニーク持ちが三人も揃ったわね。まぁ、話に聞くと【七色の橋】はユニーク持ちのオンパレードらしいけど」
「ヒメノちゃんのコレ、何だ? ≪桜吹雪≫? ふーん、プレイヤーメイドね。どれどれ、製作者は……」
三人のステータスを確認しながら、その戦いをモニターで観戦する運営達。
モニターの中ではエクストラボスが一度目のダウンを喫し、そこへジン・ヒメノ・ユアンの三人による怒涛のラッシュが叩き込まれていた。殆ど、私刑シーンである。
「何で、よりによってこの三人がパーティ組んだんだよぉ……」
「俺等の可愛いリュウオウが可哀そうだぁ……」
「いや、どっちにしろ倒させる為に作ったんだろうが。まぁ、哀れなのは解るが」
モンスターのデザインやアルゴリズムを、時間をかけて設定していった運営職員達。そんな彼等からしてみたら、今タコ殴りにされているエクストラボスは我が子同然なのかもしれない。
「まぁ、別にチートやズルをしている訳じゃないな。ボスは倒される事に意味があるんだし……」
「でも!! あんな一方的にボコられるとか!!」
「落ち着きなさい、第二層の適性レベルよ。確かにユアン一人なら苦戦する設定で、間違いが無いわ。このレベルのユニーク持ち三人が苦戦するとなれば、それは第四層レベルになってしまうじゃないの」
「くっ……主任がそう言うなら……」
この主任と呼ばれた女性は、歳の頃は若く見えるが職員達よりも上の役職らしい。反論は正論で潰されてしまった。
「しかしまぁ、この三人は面白いな……俺も一回、やり合ってみたいくらいだ」
ボスと呼ばれた男性が、そう言って笑う。そんな男性を、女性主任がジト目で見る。
「あなた? 運営側が大っぴらにプレイなんて出来ないわよ?」
「解ってますって、それくらい。俺だって真面目に運営しようって頑張ってるだろ?」
「解りますけど、あなたはたまに突拍子もない事をやらかすから……」
やって来た男女は、随分と距離感が近い。それもそのはず、この二人は夫婦なのだ。
とはいえ、ここは自宅でも二人の業務スペースでも無い。
「あのー、ボス? 初音主任? 夫婦仲がよろしいのは存じているんですが……ここ、独り身が多いもので。イチャつくなら場所を考えて頂けると助かります」
運営職員達(九割独身)から向けられる視線には、哀しみがふんだんに込められていた。
「「あ……ごめん(なさい)」」
流石に上司といえど、その視線を受けて続ける勇気は無かった。
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そんな運営達に見守られながらジンとヒメノ、そしてユアンは戦闘を続けている。相手は第一層で立ちはだかる、陰のエクストラボスの強化体。その名も、ドラゴン型エクストラボス【コントンリュウオウ】だ。
そんなコントンリュウオウ、戦闘開始から十分前後だがHPは最早二割しか残っていない。
「残り一ダウンで行けるかな?」
「はい、頑張りますね!!」
「行動パターンも変わるはず、油断は禁物でゴザル!!」
三人は声を掛け合いながら、コントンリュウオウに攻撃を仕掛けていく。その様子から、どちらが優勢なのかは一目瞭然だろう。
ダイジェストにすると、こんな感じだった。
コントンリュウオウのかみつきこうげき!!
ジンの【クイックステップ】!!
かみつきこうげきははずれてしまった!!
ユアンの【いっせん】!!
コントンリュウオウはよけられない!!
こうかはばつぐんだ!!
ヒメノの【シューティングスター】!!
ヒメノの≪さくらふぶき≫!!
ぜんだんめいちゅう!!
コントンリュウオウはダウンしてしまった!!
ユアンの【チェインアーツ】!!
ジンの【チェインアーツ】!!
ヒメノの【しゅくち】!!
かーらーの、【いっせん】!!
フルボッコじょうたいだ!!
この様にたった三人でレイド級を越えるボスを、ひたすらに殴り続けている形である。これはひどい。
最もそれは、ある意味で仕方のない事だった。何せパーティを組んでいるこの三人は、ステータス特化型のユニークスキル保有者。
得意分野に関しては突き抜けた性能の持ち主であり、三人寄らば何とやら……互いの苦手分野を補い合える組み合わせなのだ。
その上彼らは、ユニークスキルに頼り切っている訳では無い。
それぞれが、各スキルのレベルをしっかりと上げているのが要因の一つ。加えてジンやユアンは、相応の努力を積み重ねてシステム外スキルをモノにしている。
それらの要因がうまくかみ合って、こういった力技での攻略が可能になっている。
コントンリュウオウに落ち度は無く、ジン達にも瑕疵は無い。では、何が悪かったか?
単純に、コントンリュウオウは運が無かっただけだった。
しかしここで、思わぬアクシデントが発生する。
というのもヒメノの【一閃】がクリティカルになり、コントンリュウオウの残りHPを超えるダメージを与えたのだ。
「あっ……やべっ」
風林火山陰雷のエクストラボスは、対象プレイヤー以外にトドメは刺せない。そして残りHPが無くなると、最後の抵抗を開始する……ダウン状態であっても、即座に復帰してしまうのだ。
その事をジンとヒメノに伝え忘れていた事に気付き、ユアンは顔を顰める。
一撃でも当てれば、自分達の勝利……そう思ったユアンは武技を発動する。【チェインアーツ】を途切れさせない為に、選択肢は【一閃】しかなかった。
しかしダウン状態から起き上がったコントンリュウオウが、大きく飛び退いた事でその攻撃は宙を切ってしまう。
「……しくじったな」
攻撃が失敗した事で、途切れる【チェインアーツ】。そうなれば、襲い掛かってくるのは後払いにしていた技後硬直だ。ユアンの身体がシステムに縛られ、身動きが取れなくなる。
「ユアンさん!?」
動きを止めたユアンに、ヒメノが焦りの表情を浮かべる。【チェインアーツ】のデメリットは、第一回イベントにおける西門での戦いでヒメノも見ている。
「どうしよう……助けなきゃ……」
しかしどうすれば良いのか解らず、ヒメノはただただコントンリュウオウとユアンに視線を巡らせる。
こういう時に、頼りになるのがあの忍者。
「任せるでゴザル、ヒメ!!」
「ジンさん! あ……っ」
ヒメノを右腕で抱え上げたジンが、【クイックステップ】を発動する。ヒメノは頬を染めながらも、彼にしっかりと腕を回した。
【クイックステップ】もまた武技である為、【チェインアーツ】に組み込む事は可能だ。
「ユアン殿、失礼!!」
ユアンの目前に移動したジンが、彼の腹に左足をそっと当てる。
「謝罪は後程、しっかりとする故!! 【ハイジャンプ】!!」
ジンが武技を発動した瞬間。
「うおぉぉっ!?」
ユアンの身体が吹き飛ばされ、振り返りつつあるコントンリュウオウから大きく距離を離した……飛ばされて。
それはジンがマリウスを吹き飛ばす際に編み出した、【ハイジャンプ】のちょっとおかしい使い方。
これぞ【ハイジャンプ~ただし跳ぶのは相手~】である。
ジンはポピュラーな武技である【ハイジャンプ】を、サブタイ入りのオリジナル武技に昇華させたのだった。サブタイが必要か否かは、議論の余地があるのかもしれない。
コントンリュウオウが振り返った先、距離が近いのはジンとヒメノだ。しかしコントンリュウオウは、ユアンを倒す事を優先する。
それが、コントンリュウオウの最大のミスだった。
「【氷蛇】!!」
コントンリュウオウに向けられた、≪大蛇丸≫の切っ先。そこから氷の蛇が生まれ、獲物に食らい付くべく迫る。
そしてコントンリュウオウに噛み付いた瞬間、ヒメノは更なる武技を発動する。
「【蛇捕】!!」
氷の蛇がコントンリュウオウの身体を這い回り、自らの身体でコントンリュウオウを縛る。これは、【八岐大蛇】の拘束系武技である。
しかしながら、相手はエクストラボスであるコントンリュウオウ。ただで捕らえられる相手では無かった。
ジンは技後硬直を受け、ヒメノを心配そうに見守っていたが……コントンリュウオウが、徐ろに口を大きく開けてヒメノを睨む。
「やべ、息吹だ……!!」
壁に叩き付けられた状態のユアンも、ヒメノを見守るジンも技後硬直中。そしてヒメノは、必死にリュウオウを縛るので精一杯。そして三人は同じ方向に居るので、コントンリュウオウの息吹の効果範囲内にしっかり入っている。
そして運の悪い事に、ジンとユアンの技後硬直が解けるより……コントンリュウオウの息吹が放たれる方が早い。
……
「良いぞ、コントンリュウオウ!! やっちまえー!!」
運営職員達の集まる部屋で、一人の男性……コントンリュウオウのデザインに携わった職員が声を上げる。
「いやぁ、惜しかったな」
「彼らのVITやMNDじゃあ、”竜王の息吹”には耐えられないだろうな」
運営の視点からすれば、ジン達は敗北する……それが確実視された。
……
流石にジンやユアンも、これは詰んだと悟る。息吹はドラゴン系モンスターにとって、最大最強の攻撃だ。エクストラボスともなれば、その威力は桁外れだろう。
「しくったなぁ……っ!!」
「く……っ!! 動け……っ!!」
身体が動かないものかと、足掻く二人。しかし、システムによる拘束は振りほどく事適わない。それでも諦めるものかと、足掻く二人だが……。
「ジンさん、捕まっていて下さい……【縮地】!!」
ヒメノは白虎の武技を発動し、ユアンの側へと移動する。すると、ヒメノはユアンの腕を掴む。
「……おや?」
「ヒメ? 何を……」
【縮地】で同時に移動出来るのは、一人まで。ジンは助けられても、ユアンを守る事は出来ない。だからもう一手が必要だった。そこで彼女は、そのSTR値を利用し……。
「ユアンさん、ごめんなさい!! えいっ!!」
コントンリュウオウの息吹に合わせ、ユアンを思いっきりぶん投げる!!
「ヒメエェッ!?」
「えぇぇぇっ!?」
その瞬間、コントンリュウオウの口から放たれる”竜王の息吹”。そこに留まるのは、しっかりと手を繋いだままのヒメノとジン。
「行きます、ジンさん!! 【縮地】っ!!」
ヒメノはジンの身体を抱き締めると、本日最後の【縮地】を発動。コントンリュウオウの背後に回った。
咄嗟の思い付きだったが……その甲斐あって、全員が息吹の射線から逃れる事に成功した。
「はははっ!! 君のお姫様は最高じゃないか!!」
ユアンはようやく技後硬直が解け、ヒメノに投げられた状態から壁に着地……着壁? 同時に懐から抜いた、無骨な拳銃……その銃口をコントンリュウオウに向けていた。
「王手だ」
人差し指に力を込めて、引かれた引き金。銃口から吐き出された弾が、コントンリュウオウに命中した。
『エクストラクエスト【再臨の竜王】をクリアしました』
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「コントンリュウオウゥーッ!!」
立ち上がり、顔を押さえて慟哭する運営職員。気分は我が子を奪われた親の如し。
そんな職員は放置して、他の運営職員が今の一戦を振り返る。
「可愛い顔して、人を片手でブン投げるとは……」
「忍者のアレ、見たか? 【ハイジャンプ】を使ってユアンを飛ばしたぞ……」
「ユアンもユアンで、最後のトドメに銃を使ったな。確かに銃なら、エクストラボスへのトドメにはぴったりだ」
口々に戦闘シーンを再生し、ジン達の行動を批評する。
そんな職員達に、チームの責任者である男性……そして、主任と呼ばれる女性も加わる。
「固定ダメージは、防御力を無視してダメージを与えられますからね。三人が三人とも、あの一瞬で最善手を選択しましたね」
「特にヒメノちゃんかな。【オロチ】の技で、リュウオウを縛ったのが大きいな。あれで技後硬直になった二人が、復帰するまでの時間を稼げていた」
三人に対する職員達からの評価は高かった。しかし、一部からは目の敵にされている。
「クククッ……第三層ではこうはいかんぞ……!!」
「俺達の可愛いエクストラボスは、少なくともまだ一回の登場を残している!!」
「第三層がお前達の墓場だ……っ!!」
それは負け惜しみを言う、悪の組織の幹部みたいな台詞であった。
「良いか、アイツらの仕事見張っとけよ? プレイヤーがクリア出来ないボスとか、絶対に作らせるな」
「了解です、ボス」
「ボスはやめぃ」
話題の大作MMO・RPGアナザーワールド・オンラインは、今日もこうしてプレイヤーと運営の駆け引きが繰り広げられているのであった。
そんな職員達のやり取りを余所に、主任を務める女性が口元を緩める。
――それにしても、ヒメノちゃんか……ちょっと、彼女に似ているかも。随分と素敵なお友達が出来たのね、恋。
彼女はゲームの中で楽しんでいるであろう、可愛い妹に思いを馳せていた。
極振りトリオVS運営の子でした。
というか、重要人物がサラッと出て来ましたねー。
いやぁ、どんな人ナンダロウナー。(棒)
次回投稿予定日:2020/9/18