05-02 エリアボスに挑みました
ギルドホームが出来て二日が経ち、ジン達は今後の方針を考えていた。
「まず、今の活動エリアは第一エリア……始まりの町を拠点とした探索だね。今後は、そこから先を目指していく感じでどうかな」
それはつまり、第一エリアから先のエリアへと足を踏み出そうという事である。
「第二エリア進出、ですね」
「問題は、どの方角の第二エリアに向かうかなのですが……」
AWOのマップは、東西南北それぞれから次のエリアへ向かう事が出来る。とはいえ、現状で開放されているのは第二エリアまでだ。第三エリアから先は、順次アップデートの際に追加される方針である。
ギルド【七色の橋】のホームは、北東に位置する。ここから近いのは、やはり北側だろう。
「北の第二エリアは……山ッスね」
「既に二エリアに向けて進出しているプレイヤーも、多く居るみたいですね」
当然だが第一エリアより第二エリアの方がモンスターも強力になり、ダンジョン等の攻略も難易度が上がる。その分、得られる物も格段に良い物があるだろう。
更に言えば、先日の第一回イベントで猛威を振るったプレイヤー達……つまりジン達の使う見た事が無い武器やスキルを求め、第二エリアを目指していくプレイヤーが増えたのである。
一部のプレイヤーは、ジン達が既に第二エリアに到達していると勘違いしたのだ。そう勘違いしてしまうのも、無理はあるまい。刀や銃は他のMMORPGでも人気のある装備なのである。
ともあれ、掲示板を見ると攻略情報が載っていた。
「北門から先の第二エリア……エリアボスが【ウォータードラゴン】だって」
「東が【ハリケーンドラゴン】で、南が【フレイムドラゴン】……西が【ランドドラゴン】か」
「ドラゴン時計で、四体一気に出て来そうッス」
「同時に戦ったら簡単に負けそうですね」
そんな冗談はさて置き、ジン達は方針を決めていく。
「南なら海辺、東だと岩場かな。西が砂漠みたいだ」
「他のエリアにもいずれ行きたいですが、今回は北が良いでしょうね。始まりの町を迂回して向かうのは、時間が掛かります」
フィールド上でログアウトすると、次にログインした際には復帰場所として設定されている場所から開始する事になる。つまり、街に辿り着けなければ最初からやり直しなのだ。
その復帰場所を設定するのがポータル……《ポータルオブジェクト》である。
このポータルは中々に便利な物で、他にも用途がある。例えば一度有効化したポータルは、転移先として選択が可能なのだ。
つまりポータルを使って町から町へと転移すれば、移動時間を削減出来るのである。
ただし復帰場所に選んだ場所以外に転移するのは、無償ではない。ワープ機能は有償であり、その際に消費されるのはゲーム内通貨であるゴールドコインだ。
ちなみに転移する距離が伸びれば伸びる程、かかるゴールドコインは値上がりする仕様になっている。便利なだけではないという、使いどころを選ばなければならない仕様であった。
「一番近い北から攻略を進めていって、徐々に探索範囲を広げれば良いか」
「はい、ヒイロ様。それが無難かと存じます」
シオンの言葉に、ヒイロは頷く。
「明日は定期メンテの日だし、その前に第二エリアに辿り着いてしまおうか」
「「「「「「おー!!」」」」」」
ギルド会議を終えたジン達は、北門の先に待ち受けるエリアボスの討伐に向けて準備を始めた。
************************************************************
ギルドホームを後にし、ジン達は聳え立つ山の麓を目指す。途中でいくつかの鉱山が見えるが、今回はスルーだ。
「この辺の鉱山で、ケインさん達とダイスさん、フレイヤさんが会ったらしいね」
ヒイロが言っているのは、第一回イベントの直後の事だ。
プレイヤーに囲まれるのを嫌ったダイス・フレイヤはこの辺りの鉱山でレベリングをしており、そこにギルドクエストを進めるべく訪れたケイン達に遭遇。ギルド結成の事を聞かされ、熟考の末に【桃園の誓い】に加入するに至ったのである。
ちなみに、ケイン達は先に南側へ向かうという連絡があった。ギルドホームを建設中の場所が、そちら側にある為だ。建てているのは、当然生産大好きおじさんである。
昨日、ようやく予定地が見つかったと報告があったのだ。既に遅い時間だった為、スクリーンショットで大体の風景が送られてきた。青く澄んだ海のすぐ側であり、ちょっとしたリゾート地の様な場所だった。
「完成したら、お祝いを持って行くでゴザル」
「こっちの方で取れる良い素材か、美味しい食材ッスかねー」
そんな雑談をしている合間にも、モンスターはどんどん襲って来る。それを攻撃して行くのは、主にハヤテ・アイネ・PAC達だ。
「ほらよっと」
「それ以上の接近は許可しません」
ジンから贈られた銃はエリアボス戦まで温存し、クロスボウでモンスターの足を止めるハヤテ。同様に、ロータスもクロスボウを放つ。
ハヤテとロータスの射撃によって足を止めたモンスターに、迫って行くのはアイネとリンだ。
「【一閃】!!」
勢い良く薙刀を振るって【一閃】を決めるアイネ。その薙刀捌きは、薙刀経験者だけあって綺麗なフォームだ。
「……【一閃】」
それに対し、リンは背後に回って首を狙い【一閃】を放つ。
第二エリア手前となればモンスターのレベルも上がっている。四人での連携は上達しているが、流石に瞬殺とはいかない様だった。
そしてモンスターが反撃を試みる……が、そうは問屋が卸さない。
「【セイクリッドスフィア】!!」
ヒナが発動したドーム状の防御魔法。それがアイネとリンを包み込み、モンスター達の攻撃を防ぎ止めた。これは【癒しの聖女Lv3】で習得出来る魔法で、味方を守りつつ回復が可能という正に聖女らしい性能を持つ。
「じゃ、仕留めるッス! 【エイムショット】!!」
狙い澄ましたクロスボウの射撃が、モンスターのHPを大幅に削った。ハヤテの【エイムショット】によって、クリティカルが発生したのだ。ヒットストップにより、モンスターの動きが止まる。
「流石です!! 【スティングスラスト】!!」
ハヤテが削ったモンスターを、アイネの一刺しが捉えた。モンスターは断末魔の鳴き声を上げ、倒れ伏した。
「【ラピッドショット】で御座います」
ロータスの放つ矢がモンスターに連続で命中すると、モンスターに状態異常が発生した。これは、ロータスの矢に塗られた《パラライズポーション》によるものだ。
身動きが取れなくなったモンスターに、リンが迫る。
「【デュアルスライサー】」
小太刀を一振り、二振り。それによってモンスターのダメージがほんの僅かとなり、そこへヒナが魔法で追撃する。
「【セイクリッドボール】!!」
眩い光を放つボールが、モンスターに命中。こちらも見事、討伐完了だ。
その頃、ジン達は何をしているか? 彼らもまた、モンスターを討伐していた。主に手強いモンスターをハヤテ達に割り振り、数が多い雑魚は他のメンバーで討伐しているのだ。
「雷鳴の如く!! 【狐雷】!!」
ジンの発動した【狐雷】で麻痺したモンスター達。それに向かって行くのはヒイロだ。
「【一閃】!! はあぁっ!!」
両手に握った妖刀は、長刀型。大太刀にはリーチと攻撃力で劣るが、それでも十分な威力と攻撃範囲、そして取り回しの良さを誇る。
「【蛇腹剣】!! 【スネイクウィップ】!!」
エリアボス戦まで矢を温存する為、ヒメノはメインウェポンを《大蛇丸》にして攻撃を繰り出す。お陰で【鞭の心得】もレベル4まで上がり、更に武技を習得している。
そんなヒメノに、モンスターが迫る。しかし、その接近を許すはずもない。
「させません……【覇鬼】!!」
盾で受け止めるのではなく、盾で殴り付けるシオン。使用した【覇鬼】もレベル8まで上がっている。それにより、モンスターのヘイトが尽くシオンに向けられた。
「今日の天気は、晴れ時々岩の雨です。【ロックスコール】!!」
既に【術式・陣】による【土陣】と【水陣】を発動しているレンの、範囲攻撃が降り注ぐ。岩の大きさは成人男性の握り拳くらいのサイズだが、当然当たれば痛い。
岩の雨が止めば、そこにはモンスター達だったモノが横たわっている。正に死屍累々。
AGI極振り忍者と、STR極振り巫女……そして最高INT魔法職と、最高VITの盾職。更に武器を瞬時に変化させ、霊体の鬼神を召喚する前衛職。
一人一人には弱点が存在するが、五人揃えば弱点を補い合えるのだ。
この五人に、仕上がったハヤテとアイネ、PACが加わる訳だ。この段階で、オーバーキル状態。第二エリアに向かっても、パーティで活動をしている限り苦戦する事はないだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【ジン】Lv25
■所属ギルド
【七色の橋】
■ステータス
【HP】98/98≪+40≫
【MP】34/34≪+20≫
【STR】10【-50%】≪+20≫
【VIT】10【-50%】≪+20≫
【AGI】68【+90%】≪+60≫
【DEX】10【-50%】≪+20≫
【INT】10【-50%】≪+20≫
【MND】10【-50%】≪+20≫
■スキルスロット(4/4)
【短剣の心得Lv10】【体捌きの心得Lv9】【感知の心得Lv8】【投擲の心得Lv3】
■拡張スキルスロット(5/5)
【九尾の狐Lv9】【刀剣の心得Lv10】【分身Lv4】【超加速Lv1】【達人の呼吸法】
■予備スキルスロット(4/5)
【毒耐性(小)】【体術の心得Lv3】【隠密の心得Lv2】【銃の心得Lv2】【採掘の心得Lv1】
■装備
≪闇狐の飾り布≫HP+20、MP+20【自動修復】
≪夜空の衣≫全ステータス+20【自動修復】【縮地】【朱の羽撃】
≪大商人のポーチ≫収納上限1000
≪大狐丸≫AGI+20【自動修復】
≪小狐丸≫AGI+20【自動修復】
≪狩人の投げナイフ≫DEX+2
≪生命の腕輪≫HP+20【HP自動回復(小)】
≪狩人のチョーカー≫AGI+3
≪狩人のベルト≫AGI+3
■予備装備
≪シーカーロープ≫
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【ヒイロ】Lv28
■所属ギルド
【七色の橋】
■ステータス
【HP】104/104≪+10、+30%≫
【MP】37/37≪+30%≫
【STR】28≪+40%≫
【VIT】27≪+40%≫
【AGI】15≪+6、+20%≫
【DEX】20≪+40%≫
【INT】10≪+40%≫
【MND】15≪+25、+30%≫
■スキルスロット(4/4)
【長剣の心得Lv10】【刀剣の心得Lv6】【盾の心得Lv9】【盾の極意Lv5】
■拡張スキルスロット(2/2)
【魔剣術Lv1】【千変万化Lv2】
■予備スキルスロット(2/5)
【体捌きの心得Lv2】【採掘の心得Lv1】
■装備
≪ユージンの和風装束+4≫MND+7【青の咆哮】
≪ユージンの飾り布+5≫MND+6【白の狩猟】
≪ユージンのパンツ+5≫MND+7
≪ユージンのブーツ+3≫AGI+6
≪妖装・修羅≫VIT+10%、MND+10%、HP+10%、MP+10%【強化再生】
≪大商人のポーチ≫収納上限1000
≪妖刀・羅刹≫STR+10%、DEX+10%、INT+10%【強化再生】
≪妖刀・羅刹≫STR+10%、DEX+10%、INT+10%【強化再生】
≪鬼神の右腕+1≫全ステータス+20%、HP・MP+20%【幽鬼Lv2】
≪武芸者の指輪≫技後硬直、溜め時間-10%
≪生命の首飾り≫HP+10、【HP自動回復(小)】
≪大騎士のベルト≫MND+5
■武装一式(3/3)
≪ユージンの大太刀+3≫STR+8
≪ユージンの大盾+3≫VIT+8、MND+8、HP+13
≪ユージンの小太刀+3≫AGI+5
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【ヒメノ】Lv27
■所属ギルド
【七色の橋】
■ステータス
【HP】102/102≪+50≫
【MP】36/36≪+20≫
【STR】67【+80%】≪+71≫
【VIT】10【-50%】≪+23≫
【AGI】10【-50%】≪+20≫
【DEX】10【-50%】≪+30≫
【INT】10【-50%】≪+20≫
【MND】10【-50%】≪+23≫
■スキルスロット(4/4)
【弓の心得Lv10】【刀剣の心得Lv4】【狙撃の心得Lv6】【八岐大蛇Lv7】
■拡張スキルスロット(3/3)
【鞭の心得Lv4】【ゴーストハンド】【砲撃の心得Lv3】
■予備スキルスロット(1/5)
【採掘の心得Lv1】
■装備
≪八岐の飾り布≫HP+20、MP+20【自動修復】
≪桜花の衣≫全ステータス+20【自動修復】【縮地】
≪八岐之具足≫STR+20【自動修復】【軽量】
≪大商人のポーチ≫収納上限1000
≪女神の大弓+6≫STR+11
≪覇者の矢筒+5≫DEX+10、装填上限50
≪大蛇丸≫STR+20【自動修復】
≪生命の腕輪≫HP+20【HP自動回復(小)】
≪体力の指輪≫HP+5、VIT+3
≪桜の髪飾り≫HP+5、MP+5
≪守護の首飾り≫MND+3
■予備装備
≪二門大砲・桜吹雪≫固定ダメージ50×2
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【レン】Lv29
■所属ギルド
【七色の橋】
■ステータス
【HP】106/106≪+20≫
【MP】38/38≪+60≫
【STR】10【-50%】≪+20≫
【VIT】15【-50%】≪+20≫
【AGI】15【-50%】≪+20≫
【DEX】15【-50%】≪+20≫
【INT】51【+80%】≪+95≫
【MND】15【-50%】≪+55≫
■スキルスロット(4/4)
【火魔法の心得Lv10】【水魔法の心得Lv8】【回復魔法の心得Lv6】【神獣・麒麟Lv7】
■拡張スキルスロット(5/5)
【杖の心得Lv5】【雷魔法の心得Lv10】【風魔法の心得Lv10】【刀剣の心得Lv2】【フロートLv2】
■予備スロット(3/5)
【土魔法の心得Lv3】【補助魔法の心得Lv2】【合成魔法Lv2】【聖魔法の心得Lv3】【光魔法の心得Lv3】
■未装備スキルオーブ
【HP自動回復(中)】
■装備
≪桃花の衣≫全ステータス+20【自動修復】
≪神獣の飾り布≫HP+20、MP+20【自動修復】
≪大商人のポーチ≫収納上限1000
≪鳳雛扇≫INT+20【自動修復】【朱の羽撃】
≪伏龍扇≫INT+20【自動修復】【青の咆哮】
≪大賢者の腕輪≫INT+10、MND+10、MP+10
≪精霊の指輪≫INT+5、MND+5、MP+10
≪大賢者の首飾り≫INT+10、MND+10、MP+10
≪大賢者のピアス≫INT+10、MND+10、MP+10
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【シオン】Lv28
■所属ギルド
【七色の橋】
■ステータス
【HP】104/104≪+140≫
【MP】37/37≪+20≫
【STR】20【-50%】≪+20≫
【VIT】57【+85%】≪+60≫
【AGI】15【-50%】≪+20≫
【DEX】10【-50%】≪+20≫
【INT】10【-50%】≪+20≫
【MND】22【-50%】≪+23≫
■スキルスロット(4/4)
【盾の心得Lv10】【槌の心得Lv5】【刀剣の心得Lv8】【酒呑童子Lv9】
■拡張スキルスロット(5/5)
【大剣の心得Lv8】【バーサーク】【ガーディアンLv2】【不屈の闘志】【料理の心得Lv2】
■装備
≪新緑の衣≫全ステータス+20【自動修復】
≪戦鬼の飾り布≫HP+20、MP+20【自動修復】
≪大商人のポーチ≫収納上限1000
≪鬼斬り≫VIT+20【自動修復】【軽量】
≪鬼殺し≫VIT+20【自動修復】【硬化】
≪守護の首飾り≫MND+3
≪覇王の腕輪≫VIT+15、HP+30
≪覇王の指輪≫VIT+15、HP+30
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【ハヤテ】Lv23
■所属ギルド
【七色の橋】
■ステータス
【HP】94/94≪+35≫
【MP】32/32
【STR】25≪+7≫
【VIT】23≪+24≫
【AGI】20≪+8≫
【DEX】21≪+18≫
【INT】10
【MND】10≪+25≫
■スキルスロット(4/4)
【長剣の心得Lv7】【盾の心得Lv5】【刀剣の心得Lv3】【銃の心得Lv2】
■予備スキルスロット(1/5)
【投擲の心得Lv2】
■装備
≪ユージンの和風装束+6≫MND+9
≪ユージンの飾り布+5≫MND+6
≪ユージンのパンツ+5≫MND+7
≪ユージンのブーツ+5≫AGI+8
≪大商人のポーチ≫収納上限1000
≪ユージンの打刀+4≫STR+7、DEX+6
≪オートマチックピストル≫固定ダメージ
≪守護の腕輪≫MND+3
≪覇者の指輪≫DEX+10
≪覇王の首飾り≫VIT+15、HP+30
≪闘士のベルト≫MND+3、HP+5
■予備装備
≪ユージンのクロスボウ≫DEX+5
≪ユージンの小盾+5≫VIT+9
≪狩人の投げナイフ≫DEX+2
―――――――――――――――――――――――――――――――
■プレイヤーネーム/レベル
【アイネ】Lv21
■所属ギルド
【七色の橋】
■ステータス
【HP】90/90≪+27≫
【MP】30/30
【STR】25≪+14≫
【VIT】20≪+12≫
【AGI】18≪+12≫
【DEX】21≪+22≫
【INT】10
【MND】10≪+22≫
■スキルスロット(4/4)
【長槍の心得Lv8】【体捌きの心得Lv6】【刀剣の心得Lv4】【感知の心得Lv4】
■予備スキルスロット(1/5)
【短槍の心得Lv3】
■装備
≪ユージンの和風装束+5≫MND+8
≪ユージンの飾り布+5≫MND+6
≪ユージンの軽具足+7≫VIT+9、DEX+8、HP+12
≪ユージンのスカート+6≫MND+8
≪ユージンのブーツ+6≫AGI+9
≪大商人のポーチ≫収納上限1000
≪ユージンの薙刀+7≫STR+11、DEX+9
≪体力の腕輪≫HP+5、VIT+3
≪大戦士の指輪≫STR+3
≪生命の首飾り≫HP+10、【HP自動回復(小)】
≪狩人のベルト≫AGI+3
―――――――――――――――――――――――――――――――
■PACネーム/レベル
【リン】Lv11
■契約プレイヤー
【ジン】
■所属ギルド
【七色の橋】
■ステータス
【HP】70/70
【MP】20/20
【STR】10
【VIT】10
【AGI】37≪+20≫【+13%】
【DEX】10
【INT】10
【MND】10≪+14≫
■スキルスロット(3/3)
【刀剣の心得Lv4】【短剣の心得Lv4】【スピードスターLv2】
■装備
≪ユージンの和風装束+3≫MND+6
≪ユージンの飾り布+3≫MND+4
≪ユージンのスカート+2≫MND+4
≪ユージンのブーツ+5≫AGI+8
≪ユージンの小太刀+4≫AGI+6
≪ユージンの小太刀+4≫AGI+6
―――――――――――――――――――――――――――――――
■PACネーム/レベル
【ヒナ】Lv11
■契約プレイヤー
【ヒメノ】
■所属ギルド
【七色の橋】
■ステータス
【HP】70/70≪+9≫
【MP】20/20
【STR】10
【VIT】15≪+7≫
【AGI】11≪+9≫
【DEX】11≪+20≫
【INT】20≪+15≫
【MND】20≪+16≫
■スキルスロット(3/3)
【刀剣の心得Lv2】【杖の心得Lv4】【癒しの聖女Lv4】
■予備スキルスロット(1/5)
【短剣の心得Lv1】
■装備
≪ユージンの和風装束+4≫MND+7
≪ユージンの飾り布+3≫MND+4
≪ユージンのスカート+3≫MND+5
≪ユージンのブーツ+2≫AGI+5
≪ユージンの弓具足+4≫VIT+7、HP+9
≪聖女の杖+5≫INT+15、DEX+15
≪ユージンの短刀+2≫AGI+4、DEX+5
―――――――――――――――――――――――――――――――
■PACネーム/レベル
【ロータス】Lv11
■契約プレイヤー
【レン】
■所属ギルド
【七色の橋】
■ステータス
【HP】70/70
【MP】20/20
【STR】10
【VIT】10
【AGI】21≪+12≫
【DEX】21≪+21≫
【INT】10
【MND】15≪+19≫
■スキルスロット(3/3)
【刀剣の心得Lv4】【弓矢の心得Lv5】【暗殺者の心得Lv4】
■予備スキルスロット(1/5)
【短剣の心得Lv1】
■装備
≪ユージンの和風装束+5≫MND+8
≪ユージンの飾り布+4≫MND+5
≪ユージンのパンツ+4≫MND+6
≪ユージンのブーツ+4≫AGI+7
≪ユージンの短刀+3≫AGI+5、DEX+6
≪ユージンの機弓+4≫DEX+6
≪仕込み機弓+5≫DEX+9
―――――――――――――――――――――――――――――――
そうして進む事、一時間程。ジン達はいよいよ、エリアボスの居るエリアに辿り着いた。
第二エリアへの進出を妨げるエリアボスは、事前に調べた情報通り【ウォータードラゴン】だ。その威容が、遠目にも見える。
「わぁ、硬そうですね」
「一撃の威力が重そうでゴザルなぁ」
ヒメノは純粋に驚き、ジンは嫌そうに言っている……が、それでもヒメノのSTRならば大ダメージを与えられるし、ジンのAGIならば攻撃を躱すのは容易い。
「さぁ、いよいよだ。皆、行こうか」
ヒイロの声掛けに、ギルドメンバー全員が頷く。その表情には緊張と、難敵に打ち勝つという闘志が宿っていた。
バトルフィールドに足を踏み入れると、ウォータードラゴンがジロリとジン達を睨む。その巨体を左右に揺らし、十人の挑戦者に向けて一歩足を踏み出す。ズシン……という大きな音と共に、地面が揺れた。
「よし、作戦通り行くぞ!!」
「飛燕の如く!! 【ハイジャンプ】!!」
駆け出したジンが、【ハイジャンプ】を発動してウォータードラゴンの背中に飛び乗る。ジンの役目はウォータードラゴンのタゲ取りだ。その為には接近し、攻撃し、ヘイトを稼ぐ必要がある。
「【デュアルスライサー】!!」
両手の小太刀によって四連撃に昇華された【デュアルスライサー】。ジンは予定通り、ウォータードラゴンのタゲを取る事が出来た。ジンはそのまま、武技を織り交ぜて攻撃を浴びせていく。
「それでは行きましょう……【雷剣】!!」
レンが発動したのは、【術式・剣】による雷属性付与魔法【雷剣】。ジン達全員の武器が帯電し出した。
ジンが攻撃を開始する前にバフを撒かなかったのは、支援系の魔法を使用する事でもモンスターのヘイト値が上がる為だ。ジンが十分なヘイトを稼いだ頃合いを見計らい、ようやく【七色の橋】は本領を発揮出来るのである。
「まずは、ダウンを取ろう!!」
そう言って駆け出すヒイロ。その指示に従い、シオンとアイネも走り出した。三人の前衛がウォータードラゴンに駆け寄り、武技を発動する。
「「「【一閃】!!」」」
三人が同時に発動した【一閃】が、ウォータードラゴンの左前足に叩き込まれた。
三人はスキル発動後の硬直が解けると、即座にバックステップでウォータードラゴンから距離を取る。
しかし、ウォータードラゴンの攻撃の方が早い。鬱陶しいと言わんばかりに、右前足を左右に振る。だが、その場には鉄壁メイドが居る。
「【展鬼】!!」
大盾≪鬼殺し≫が分割され、ウォータードラゴンの攻撃を防ぎ切る。シオンにも、そしてヒイロやアイネにもダメージは無い。
「よし、もう一本!!」
「はい!」
「参ります!」
前衛組が何度も攻撃を当てて行くと、当然ながらヘイト値を稼ぐ事となる。ウォータードラゴンはターゲットを、ジンから前衛三人に変更しようとする。
しかし、それを許す忍者ではない。ウォータードラゴンの背中に向けて、ロープを放った。これはユージンが≪グレイプニル≫を用いて製作した≪シーカーロープ≫という装備で、対象を【捕縛】し引き寄せる性能を持つ。
「余所見をするなでゴザルッ!!」
今回は引き寄せるのではなく、自分が相手に向かって迫っていく。こういった使い方も出来るので、ジンとしては重宝する装備になりそうだ。
そのまま勢いを保ち、使い慣れた武技を発動する。
「【一閃】!!」
ジンの【一閃】が、ウォータードラゴンの背中を斬り付ける。しかし、まだまだ終わらない。
「【スライサー】!! 【デュアルスライサー】!!」
すっかり得意技となった【チェインアーツ】で攻撃を加えていくと、ウォータードラゴンがジンを睨む。
ヘイトを稼いだジンは、ウォータードラゴンから距離を取るべくスキルを使用する。
「【ハイジャンプ】!!」
ジンはウォータードラゴンの背中を足場に、【ハイジャンプ】を発動して距離を取る。これで技後硬直が解けるまでの間、攻撃を喰らう可能性は低下する。そして技後硬直は【達人の呼吸法】によって軽減されている。
そんな戦闘の様子を見ているのは、ヒメノだ。来るべき時に備え、ある液体が入った瓶を手にして佇んでいる。
……
戦闘開始から十五分が経過した。その間、ジン達はウォータードラゴンのHPを削る事に専念する。
すると、ようやくチャンスが到来した。ウォータードラゴンのHPバーが、一割ほど黒く塗り潰されたのだ。ウォータードラゴンの動きが止まり、地面に突っ伏した。
このタイミングこそ、プレイヤーに与えられる一斉攻撃のチャンス。大型ボスモンスターには標準仕様とされている、ダウン状態である。
「畳みかけるぞ!! ヒメ、レン!!」
「はい、お兄ちゃん!!」
「ヒイロさん、お任せを」
ヒメノは瓶の中の液体を飲み干し、ウォータードラゴンに向かって弓を構える。その背中には既に≪桜吹雪≫が装備されている。レンも【雷陣】と【風陣】を発動し、強力な合成魔法の詠唱を始める。
その間に、前衛組もウォータードラゴンへ接近していく。
「【分身】!! 【空狐】!!」
ジンが四人に分身し、追加攻撃を付与する【空狐】を発動。ここで大ダメージを与える為に、手数を増やす算段である。
「【追従】せよ!! 【一閃】!! 【スライサー】!! 【デュアルスライサー】!! 【ライジングスライサー】!! 【サイクロンスライサー】!!」
ジンが繰り出せる、現時点で最高の連続攻撃である。これには、流石のエリアボスもダメージが蓄積していく。
ヒイロも両手の打刀を【千変万化】で大太刀に変化させ、【幽鬼】を発動。【一閃】を起点とする【チェインアーツ】で攻め立てる。
「【幽鬼】!! 【一閃】!!」
尚、召喚した鬼神もヒイロに合わせて両手に大太刀を持っていた。これはどうやら、ユニークスキルである【千変万化】の効果らしい。
怒涛の連続攻撃がウォータードラゴンを襲っていく。
「【展鬼】!! 【バーサーク】!!」
シオンは【チェインアーツ】を使えない為、代わりに威力の高い攻撃でダメージを出す事を選択。VITを全てSTRへ変換し、武技を発動する。
「【グランインパクト】!!」
2秒程の溜め動作を経て放たれた、強力な一撃。それによってウォータードラゴンのHPが、ガクンと大幅に減少した。
「狙い撃ちッス!! 【ロックオンバレット】!!」
ハヤテは銃を構え、ウォータードラゴンの眉間に弾丸を放っていく。固定ダメージによる攻撃といえど、ダメージ箇所に当たればクリティカルが発生するのだ。
「よっし、ガンガン行くッスよ!! 銃だけに!!」
そんな寒いジョークを飛ばすハヤテに、一人の少女がクスリと笑った。
「【スティングスラスト】!!」
槍のスキルで得られる武技、【スティングスラスト】。これは突進攻撃の扱いになり、敵との距離を一気に詰められる。それを活用して急接近したアイネは、技後硬直が解けた瞬間に技を切り替えた。
「【一閃】!!」
アイネの放った【一閃】もクリティカルヒットとなり、ウォータードラゴンのHPを削っていく。
そんな仲間達の猛攻を見て、レンは口元を綻ばせる。最前線のレイドパーティに居た時には感じなかった、ワクワクする感覚。それが楽しくて、また心地が良い。
ならば、負けてはいられない。
「さぁ、行きますよ? 【サンダーストーム】!!」
仲間達に当たらない様に、ウォータードラゴンの背中側で発動した合成魔法。放たれた魔法によって、ウォータードラゴンが苦悶の叫び声を上げる。
レンの攻撃を見て、ヒメノも弓を握る手に力が入る。皆の活躍を見て、自分も負けてはいられないと奮い立つ。
「行きますっ!! 【シューティングスター】!!」
それは矢筒の中にある矢を全て弓につがえ、一気に放つという【弓矢の心得Lv10】の武技。一度放てば装備中の矢筒が空になってしまう代わりに、高ダメージを与えられる奥義である。
そんな高威力攻撃を、STR極振りのヒメノが放てばどうなるか?
放たれた矢の流星が、ウォータードラゴンの身体に突き刺さっていく。一本刺さる毎に、ウォータードラゴンのHPがガクンガクンと減少していった。
更にヒメノは【ゴーストハンド】を駆使し、二門大砲≪桜吹雪≫から砲弾を発射する。飛来した砲弾はウォータードラゴンの背中に着弾し、爆炎が上がる。
これが今回の作戦だ。ヒメノの高STRを活かす為、ダウン中に全ての力を注ぎ込ませるという作戦であった。STRの底上げに≪ストレンジポーション≫を飲んだ事もあり、ウォータードラゴンのダメージはえげつない事になっている。
更に、PACの三人も攻撃を加えていく。
「【一閃】」
「【パワーショット】でございます」
「【セイクリッドボール】!!」
ジン達程の威力は出ないが、それでもしっかりダメージを与えて行く。
このたった一度のダウンで、既にウォータードラゴンのHPは一気に削られていく。
ウォータードラゴンに設定されたダウン時間は、30秒。その時間が経過した事で、ウォータードラゴンはダウンから復帰してしまう。
【七色の橋】の苛烈な攻撃を受けたウォータードラゴンのHPは、既に一割を切っている……が、まだしぶとく生き残っていた。
ウォータードラゴンは頭を持ち上げ、目の前に居るプレイヤー達に向けて吠えてみせた。
「く……っ!!」
「【ハウリング】攻撃ですか……!!」
シオンの言う【ハウリング】……正式名称【ドラゴンハウリング】には、プレイヤーのAGIを低下させる【遅延付与】の効果がある。
前足に力を込め、その巨体を持ち上げたウォータードラゴン。その口を大きく開き、正面に狙いを定める。ウォータードラゴンが放つ、ドラゴン系モンスター最強の攻撃【竜の息吹】。
その先に居るのは、最もダメージを与えたヒメノだった。ヒメノは装備欄から≪桜吹雪≫を外し、駆け出そうとする。しかし、ヒメノのAGIでは間に合わない。
「ヒメッ!!」
「ヒメノ様!!」
「ヒメちゃんっ!!」
ヒイロ達がヒメノを守るべく動き出すが、AGI低下により動きが鈍い。間に合わない……誰もがそう思った瞬間だった。
「そうは問屋が卸さぬでゴザル!!」
ヒメノの腕に≪シーカーロープ≫が巻き付けられ、引っ張られる。動けないなら、こちらに引き寄せてしまえば良い……流石、発想が忍者である。
「ひゃあっ!?」
無論、行き先は紫マフラーの忍者の下である。ジンは引き寄せたヒメノの身体を、しっかりと抱き止めた。
ヒメノが引っ張られて宙を飛んだその直後、ウォータードラゴンの【竜の息吹】が放たれた。
ヒメノが居た場所に命中した【竜の息吹】が、地面に小さなクレーターを作った。当たっていたら、ヒメノは確実にギルドホームに死に戻っていただろう。
「ジンさん……っ!!」
「無事に成功したでゴザルな……良かったでゴザル」
ヒメノの危機を颯爽と救ってみせたジンが、優しく微笑みかける。ヒメノはそんなジンの笑顔を見て、頬を赤く染めている。目はとろんとしており、誰がどう見ても良い感じである。恋心を自覚したヒメちゃんは乙女モード全開なのだ! でも残念、今はボス戦中です。
ウォータードラゴンは視線を巡らせ、ヒメノを抱き止めるジンを見て低く唸った。
「ヒメノ殿、後は任せるでゴザル」
「は、はいっ!!」
ウォータードラゴンは、ターゲットにしたヒメノに接近すべく動き出そうとする。しかしその前に、ヒメノを立たせたジンがロープを放つ。狙いはウォータードラゴンの頭部にある、角だ。
「いざ参るっ!!」
先程の様にロープを利用して、ウォータードラゴンに向かって急接近するジン。両手の小太刀を十字に構える。構えに特に意味はない。
迫るジンを見たウォータードラゴンは、額を突き出して一歩踏み出した。頭突きである。ウォータードラゴンの額から背中、そして尻尾までは、硬い鱗で出来ている。
そんなガッチガチの鱗部分で繰り出す頭突きだ、当たれば大ダメージである。ただでさえ、ジンはVIT値が低いのだ。
なら、避ければいいじゃない。
「【天狐】!!」
空中に生み出した足場を踏みしめ、ジンは地面に向かって跳ぶ。
同時に、必殺のスキル……【短剣の心得Lv10】に到達する事で得られる、奥義を発動させながら。
「【アサシンカウンター】!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――
武技【アサシンカウンター】
説明:短剣を極めた者が扱う、短剣の奥義。
効果:スキル発動後、攻撃を防御もしくは回避する事で【カウンタータイム】が発動する。【カウンタータイム】中に放った攻撃は、必ずクリティカル攻撃になる。
―――――――――――――――――――――――――――――――
ウォータードラゴンの頭突きを避けた事で、【アサシンカウンター】の発動条件を満たしたジン。これで判定時間内に攻撃すれば、その攻撃はクリティカル確定となる。
その時間はほんのわずか。しかし、AGIにおいてジンの右に出る者は居ない。
「【ラピッドスライサー】!!」
地面とウォータードラゴンの身体の隙間にその身を滑り込ませ、ジンが真上にあるウォータードラゴンの巨体に≪小狐丸≫で斬り付ける。更に≪大狐丸≫の初撃もクリティカルで入る。
しかし、ここからがジンの真骨頂。
「【一閃】!! 【スライサー】!! 【デュアルスライサー】!! 【エイムスライサー】!!」
敏捷性をフルに発揮し、ジンがウォータードラゴンの首、胸元、腹、尻尾の付け根まで駆け抜けながら【チェインアーツ】による追加攻撃を放っていく。ウォータードラゴンは、自分の真下にいるジンに対する有効な攻撃パターンを持たない。
「これで決まりでゴザル!! 【一閃】!!」
最後のトドメの一撃は、刀剣スキル唯一にして最高の攻撃である【一閃】。その攻撃を受け、ウォータードラゴンのHPバーが完全に黒く塗り潰された。
『第一エリアボスモンスター【ウォータードラゴン】を討伐しました』
そのアナウンスが全員の脳裏に流れて来る。それと同時にウォータードラゴンが光を放ちながら消滅し、影も形も残さなかった。
「ジンさんっ!! 凄いですっ!!」
「最後のはヒヤヒヤしたよ、ジン」
駆け寄って来るヒメノとヒイロ。しかし、ジンは苦笑してしまう。
「皆が削ってくれたお陰でゴザルよー!」
仲間達攻撃で、ウォータードラゴンのHPが残り一割まで減っていた。だからこそ、あんな冒険が出来たのである。
……
ようやくボスを倒したジン達【七色の橋】は、それぞれの健闘を称え合う。そして第二エリアのある方角に歩いて行くと、そこには宝箱が出現していた。
「多分、ボス討伐の報奨でゴザルな」
「だね。よし、開けてみよう!」
大きな宝箱に全員で手を添え、せーのと掛け声を上げて蓋を開く。
『スピード・アタック・ボーナス!!』
「おっ?」
「へぇ?」
間の抜けた声を上げるジンとヒメノ。何それ? といった感じだ。すると、宝箱から光が溢れ出し、七人の前に現れたシステム・ウィンドウの中に入っていった。
「今の、何でしょう?」
「あぁ、ヒメちゃん達は知らないのね」
「規定時間内にボス討伐を成功させると、スピード・アタック・ボーナスという特別報奨が得られるので御座います」
レンとシオンの説明に、他の面々は「へぇ〜!」と感心した声を上げる。
ちなみにスピード・アタック・ボーナスが得られるのは、初回討伐時のみらしい。
アンコクキュウビをはじめとするエクストラボス達は、速攻で倒すのは困難を極める。故に、ジン達がこのボーナスシステムを体験するのは初めてだ。
「手に入ったのは……≪水竜の髭≫? これを使って装飾品を作ると、HPとMPがプラス50だそうですね」
「本当だ……!! 凄い!!」
「プラス50って、大盤振る舞いッスね!!」
店売りやドロップ品の上昇アイテムでは、プラス50のアイテムなど中々無い。大体一桁台……高額アイテムでプラス10や20というのが殆どだ。そう考えると、この素材は破格の性能を誇るのである。
更にジン達はウォータードラゴン由来の素材を、それぞれ数点ずつ入手する。また、大量の経験値によりレベルが上がった。
そして最後に……。
『フィニッシュ・アタック・ボーナス!!』
そんなアナウンスが流れて来た。光が溢れると、ジンの前で一枚のチケットになる。
「あれ……これ、チケット?」
手に入れたチケットは、≪ゴールドチケット≫だった。
「これはボスを初討伐する際に、トドメを刺した人に贈られるボーナスなので御座います。こちらもご存知無かったのですね」
「エクストラボスは、ユニークアイテムがドロップするのが確定していますからね。多分、このボーナスは無いんでしょう」
すっかり解説役なレンとシオンが、ジンに丁寧に解説をしていく。
「え、え、良いのかな……僕、美味しい所を持ってっちゃった形なんだけど……」
仲間達を見ると、全員が似たような目をしていた。所謂、「ちょっと何言ってるのか解かんないです」といった視線だ。
「はぁ……俺は文句無いぞ?」
ヒイロがそう言うと、他の面々も続く。
「そうそう! ジン兄がしっかりきっかりトドメを刺してくれたから、勝てたッスよ!」
「私もそう思います、ジンさん!」
「それに、ジン様がヒメノ様を守らなければ、ヒメノ様のステータスでは一撃死だったのでは?」
「お姫様を守る騎士様、格好良かったですよ? 騎士様と言うよりは、忍者様でしたが」
「そ、そう! そうですよ、ジンさん! ジンさんが守ってくれなかったら、私はダメでした!!」
全員にそう言われて、ジンはむむむ……と唸る。
「ほら、ジン。早速ガチャを回してみたら良い」
背中を叩くヒイロに、仲間達もウンウンと頷く。申し訳無さそうにするジンは、一つ溜息を吐いた。
「解ったよ……ありがと、皆」
これでどんなスキルを会得出来るかは、完全にランダムだ。とりあえず、ジンは意を決してハンドルを回す。
「あ、出た」
取り出し口にコロンッ……と転がり出てきた、スキルオーブ。真っ赤なスキルオーブだ。
「赤!?」
「スーパーレアッスよ!?」
以前聞いた話では、白いスキルオーブは数量十個に限定されるウルトラレアのスキルオーブ。そして赤はスーパーレアのスキルオーブだ。
分身やスーパーレアをばんばん引き当てるジン、リアルラックが高い様である。
そして、ジンが入手したスーパーレアのスキルオーブは……。
「……へ、【変身】?」
随分と、風変わりなスキルオーブであった。
************************************************************
紆余曲折を経て、ジン達はウォータードラゴンの座すバトルステージを後にする。その先に、ようやく第二エリア最初の町が見えた。
ボス戦では、プレイヤーに対して膨大な負荷がかかる。HPアイテムの枯渇や、武器の喪失だって起こり得るのだ。
そんなプレイヤー達にこれまでよりも強いモンスターをぶつけ、デスペナルティが発生するとなれば、不満の声が上がるのも当然。故に次の拠点となるエリアに到達するまでは、一部エリアではモンスターが発生しないようになっているのだ。
そんな解説するレンやシオンに先導されながら、ついにジン達は第二エリア最初の町へと足を踏み入れた。
ちらほらとプレイヤーの姿が見えるものの、第一エリア程混み合ってはいない。やはり第二エリア到達に挑んでも、ウォータードラゴンに敗退するプレイヤーは少なくないらしい。
「あ、何か煙が上がってるッス」
「それに、何だかツルハシを持った人が居るね」
ハヤテとヒイロの言葉を聞いて、周囲を見渡してみる。確かに、ガタイの良い男性NPCがツルハシなんかを肩に担いで歩いている。
「これはつまり……北側の第二エリアは、鉱山エリアから始まるんですね」
レンの言う通り、この町は鉱山町[ホルン]という。この町から、北側第二エリアの攻略がスタートするのである。
ウィザードのドラゴンタイマーほんますこ。
【心得】系の奥義、短剣と弓矢が初出ですー。
どちらもジンとヒメノに合ったモノになりました。
次回投稿予定日:2020/8/19