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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第二十章 第四エリアを目指しました

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601/606

20-49 【摩天楼】の包囲網でした

二十章長くなってしまいました、何故だ。

描きたいものが、どんどこ浮かんでしまったからです。

 ギルド【摩天楼】の策……それはアンヘルとおぼしきプレイヤーをマークした所で、掲示板に彼女の情報を晒すというものだった。晒すという行為に忌避感を抱けない程に、彼等は自分の正義に自信を持っているらしい。


 そんな中で、全員がアバター名を非表示にしている六人組……その姿を監視していたヴィッツは、その中の一人がアンヘルであると確信をしている。確信するに至ったその理由は、実のところ単純明快だった。

「あの顔を埋めたくなる豊満な胸、抱き締めたら折れてしまいそうな細い腰、押し潰されたくなる尻、頬ずりしたくなる引き締まった足……!! 間違い無い……あの女だ……!!」

 彼がアンヘルだと思って目を付けたのは、どうやら彼女のプロポーションに起因するらしい。しかも各部位に対して付け加えた言葉が、絶妙に気持ち悪い。


 元々彼は、アンヘル……アンジェリカと親密になりたいという、下心から彼女に近付いた。だから他のプレイヤー達に便乗して、ステータスポイントを譲渡すると同時にフレンド登録したのだ。

 清廉潔白なアンジェリカと親密になり、いずれは彼女と……などといった下心は、例の騒動を切っ掛けに歪んでしまった。裏切られたという思いはやがて、”彼女を破滅させたい”という欲求に変わってしまったのだ。


 斥候職らしき装いの女性が、アンヘルだと目を付けたヴィッツは気取られない様に六人組を尾行する。

 彼等は少し歩いた先にある、とある店に入っていった。外観や看板を見た感じでは、恐らくは食堂だろう。六人がこの辺りに来た時点で、三人組の女性プレイヤーが……そして六人が入店してすぐに、二人のプレイヤーが中に入って行った。

「……どうすっかな」

 ヴィッツは店の中に入るか否か、判断に迷ってしまう。店内に入れば、アンヘル達の動向を確認する事が出来るだろう。しかしデメリットとして、自分の存在を気取られてしまうかもしれない。

 既にアンヘルの情報は、掲示板に晒している。自分を追う者がいる事は、彼女も既に気付いているはずだ。


 このままでは、アンヘルをみすみす取り逃がす可能性がある。そんな考えから、ヴィッツは覚悟を決めて店内に入る事にした。

 扉を開けて足を踏み入れると、扉に付いているカウベルが鳴る。その音に気付いて、店員がヴィッツに顔を向けた。

「いらっしゃいませ! お一人ですか?」

「……あぁ」

 声を掛けて来た店員は、NPCらしい。店内に軽く視線を巡らせると、例の六人組は奥側のテーブル席に居る。例の斥候職の女性は、こちらに背を向けて座っているのが確認できた。

 後はカウンター席に座る三人の女性プレイヤー、そしてカウンターに立つNPCだ。


「お席の方は、カウンター席でよろしいでしょうか?」

「いや、後で連れが来る。テーブル席で頼む」

「かしこまりました、空いているお席へどうぞ!」

 NPCの少女は愛想が良く、ハキハキと喋っている。カラーカーソルが無ければ、プレイヤーじゃないか? と勘繰りたくなるところである。


 運良く六人組が座るテーブル席の、横にあるテーブル席に座るヴィッツ。その瞬間にシステム・ウィンドウがポップアップし、メニューが表示される。

「ほぉ……」

 表示されるメニューは、本物のレストランの様にしっかりしたものだ。流石は【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】のお膝元、食堂のクオリティも高いらしい。


 そうしてメニューを吟味するフリをして、ヴィッツは隣の席の会話に意識を集中する。

「これ、いったい誰の仕業なんだろうな」

「さぁ……それを考えても、すぐに答えは出ないんじゃないかしら」

「そうですね。それよりも、この先の事について考えましょう」

 例の六人組は、声を潜めて会話していた。よく耳を澄ませなければ、聞き逃してしまいそうなほどにその声は小さい。


「アバターネームを非表示にしていても、多人数で動いていれば絡まれる事は無いんじゃないかな」

「そうでしょうか……? 注意するに越した事は無いと思いますが……」

 彼等はやはり、コソコソしているらしい。アバター名を非表示にして、他人に絡まれる事を避けている様だ。それはつまり、アンヘルとその仲間である可能性が更に高くなったという事である。

 それならば、ギルドの仲間達をこの店付近に集めるべきだろう。


 そう考えたタイミングで、NPC店員がやって来た。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 隣の席の会話に意識を向けていたせいで、システム・ウィンドウに表示されたメニューをよく見ていなかった。このままでは、不自然に思われてしまうかもしれない……そう考えたヴィッツは、適当な物を注文してその場をやり過ごした。


 料理を注文した後、ヴィッツはギルドメッセージを確認し始める。

 どうやら他の仲間達は、怪しいプレイヤーを特定できずにいる様だ。アバター名を非表示にしている、大学生くらいの女性プレイヤー。その条件に適合するプレイヤーは、そう多くないらしい。

 そう考えると、自分が張り込んでいる隣の席のパーティ……その中に居る、斥候職の女性はかなり怪しいと言える。


――しかし他の奴等は、誰なんだろうか。【天使の抱擁】の連中か? それとも……まさかスパイ共!? 【禁断の果実】の残党が、AWOにまだ居たんじゃないだろうな!?


 もうそうだったならば、絶対に許せない。そんな思いが、彼の心の奥底から湧き上がって来る。あの六人は悪で、それを排除しようとする自分達は正義だ。そんな考えが、心の中を支配していく。

 ヴィッツは料理が来るまでに、システム・ウィンドウで仲間達にメッセージを送信する。


『アンヘルと思われるプレイヤーを見付けました。同行者が五人います。場所は街の南西にある食堂[Cozinessコージネス]で、自分が監視しています』


 そのメッセージに対する返信が、立て続けに送られて来る。

『でかした! 今すぐにそちらに向かう!』

『ヴィッツはそのまま、そいつらを監視しとけよ!』

『スクショを撮れそうなら撮っておけ!』

『俺も近くに居るから、すぐにそっちに行くぞ!』

 仲間達が来れば、六人組を包囲して問い詰める事が出来る。フードで隠している素顔を晒させて、プレイヤーネームを確認させる。最終的にフレンドリストを提示させ、そこに自分の名前があればアンヘルで……いや、アンジェリカで確定だ。


――俺達の純粋な想いを裏切った報いだ!! 絶対に逃がさない……絶対に追い詰めて、破滅させてやるぞアンジェリカ!!


……


 やがてギルドメンバーが二人ほど店に入り、軽食を注文する。一人はギルドマスターのエディミオンで、もう一人はサブマスターの【アドニス】だ。

 怪しまれない様に、三人は街の事……[アージェント平原]に出来た、【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】のクラン拠点は凄い、なんて話をする。その傍らで、システム・ウィンドウを操作しながらギルドメッセージで詳細な作戦を立てて行った。


 そうこうしている内に、六人組は食事を終えたらしい。NPC店員に挨拶をして、移動する。ちなみに食事代は、システム・ウィンドウで注文した瞬間にゴールドコインが消費されるシステムだ。

「……動いたか」

「あぁ、外の奴等が上手くやれば……」

 まずは自分達に気付かれない様に、外に居るメンバーが六人組を尾行する手筈だ。ヴィッツ達もさっさと食事を済ませて、少し遅れて六人組の後を追った。


 六人組はどうやら、町の出口の方へと向かっているらしい。このまま尾行を続け、街の外で包囲するのが一番良いだろう……とヴィッツは考えたが、エディミオンはそうは思わなかったらしい。

「いいか、あいつは忍者ジンと接戦を繰り広げた相手だ。俺達が束になっても、敵う相手じゃないのは明白だ」

 追い詰め過ぎて逆上させた結果、自分達をKILLして逃走。その可能性も、決して低くはない……というのが、エディミオンの判断だった。

「だが街の中ならば、武力行使は不可能だ。システムで保護されているからな……包囲してしまえば、奴等は手も足も出せないという訳だ」

 その説明を聞いたヴィッツは、素直に納得すると同時に感心した。自分はアンヘルを追い詰める事に気を取られて、そこに至る過程を疎かにしていた。だからこそエディミオンの説明を聞いて、流石はギルドを率いる男だと尊敬の念が浮かぶ。


 注意深く、大分先を歩く六人組。その後を追っていくと、街の中の様子も確認出来た。

 この[アージェント平原]には、先程よりもプレイヤーが増えている。恐らくは彼等も、掲示板の投稿を見てアンヘル探しをしているらしい。あちこちを見回しながら、足早に歩き回っている様子が見て取れた。

 同時に騎士らしき装いのプレイヤーが、険しい顔で歩いている。彼等はクラン【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】のメンバーで、同じようにアンヘルらしき者が居ないか巡回しながら探しているのだろう。


「上手く先んじる事が出来たな……よくやってくれた、ヴィッツ」

「は、はい……!!」

 自分を労うエディミオンの言葉に、ヴィッツは高揚感を覚えた。アドニスもその肩に手を置いて、力強く頷き笑みを浮かべる。

 アンヘルとその仲間を追い詰め、悪事を犯す前に撃退する事が出来れば【摩天楼】の名声は上がるはずだ。スパイ達を撃退する中心となった【七色の橋】の様に、プレイヤーの鑑として評価されるだろう。


――へへ、もう少しだ……もう少しで、俺達は……!!


 自分も【摩天楼】というギルドも、これまではパッとしない、スポットライトに縁の無い立場だった。実力は並のプレイヤーばかりだし、人数も二十六人とそこまで多くは無い。

 少数精鋭でありながら、数々の好成績を打ち出していった者達……【七色の橋】や【桃園の誓い】、【魔弾の射手】や【ラピュセル】には遠く及ばない、日陰者ならぬ日陰ギルドだったのだ。


 だが今回の一件で、自分達の功績を評価されるだろう。

 仲間に勧誘してくるクランが、出て来るかもしれない。

 ギルドに入りたいと、多くのプレイヤーが集まるかもしれない。

 それこそ悪事を解決する切っ掛けを作り出した、自分に好意を寄せてくれる女性が現れるかも……。


 自分達のAWOライフは、ここから上向く。そんな確信を抱き、ヴィッツはエディミオンとアドニスに続く。


……


 六人組は街の外まで、あと少し……といったところで、あるプレイヤー達に行く手を遮られた。勿論、彼等は【摩天楼】のメンバーだ。

「……何の真似だ? 俺達に、何か用かよ」

 突然の出来事に、六人組の中の一人がそう口にした。警戒心剥き出しの声色だが、恐らくは内心で焦っているはずだ……と、ヴィッツは内心でほくそ笑む。


「失礼、ちょっと話を聞かせて貰えるかな」

「はぁ? 何だよ突然、本当に失礼だな」

「皆、行きましょ。付き合ってあげる義理は無いわ」

 一人の女性が前方の面々を避けて、横を通り過ぎようとする。しかしタイミングよく追い付いた【摩天楼】のメンバーが、その進路を塞いでみせた。ムッとした女性が逆側に視線を向けると、そちらからも【摩天楼】のメンバーによって逃走経路を埋めてみせる。


――いいぞ、皆!! これであいつらは、袋のネズミだ!!


 最後に残った三人……エディミオンとアドニス、ヴィッツが追い付いて包囲が完了する。エディミオンとアドニスは、毅然とした様子で六人組に声を掛ける。

「我々は、話を聞かせて欲しいだけだ」

 そう言ってエディミオンは、斥候職の女性に目を向ける。

「掲示板の書き込みを見たのだが……どうやらこの街に、【禁断の果実】の首魁であるアンジェリカが居るのだそうだ。アバター名を、アンヘルという名前に変えてね」


 斥候職の女性を庇う様に、他の五人が構える。彼女には近付かせない、という意思の表れであろう。

「なぁ、アンタ。こうやって包囲して逃がさないってのは、マナー違反じゃないのか?」

「後ろ暗い事が無いのならば、堂々としていればいいだろう?」

 青年がストレートに「これはマナーに反する行為だぞ、道を開けろ」と伝えたのに、返って来た答えはあまりにも頓珍漢なものだ。

「いやいやいや、そうじゃないっての! 道を塞いで迷惑だから、どけよって言ってんだが!?」

「都合が悪くなると、騒ぎ出すのだな。それは明かされたら困る事情がある……そういう事かな」

「あーもう、話が通じない!」

 青年は苛立ちから、声を荒げてしまう。そんな青年に、前衛職らしき装いの女性が声を掛けた。


「はいはい、落ち着いて……あのですね、私達は何故こんな仕打ちを受けているんでしょうか。あなた方に、道を阻まれる謂れはありませんが」

 凛とした声で、はっきりと告げる女性。その存在感にエディミオンは気圧されそうになるものの、後退りしたくなるのをグッと堪えて反論を口にする。

「……何故か、だって? それは、自分の胸に手を当ててみれば解るだろう?」

 反論と言ったな、あれは嘘だ。エディミオンの言葉を聞いて、女性は呆れた……といった様子である。

「はぁ……そうですか。じゃあ、ちょっとお待ちを………………うん、身に覚えが無いですね。どいてください」

「本当に胸に手を当てて返答する人、初めて見たな」

「はいはい、お口チャックね」


 エディミオンは六人組から、徐々に緊張感が薄れている事に気付いた。それは、自分達が舐められているからだ……そう感じて、沸々と怒りが込み上げて来る。

「アンジェリカを、知っているな」

 怒気を孕んだ声色で、斥候職の女性に呼び掛けるエディミオン。そんな彼に、アドニスが続く。

「あの晒しを見たウチのメンバーがさ、自分もアンジェリカとフレ登録をしているって思い出したんだよね。それでフレンドリストを見たら、アンジェリカではなくアンヘルって名前になっていた。しかも、[アージェント平原]に居るってのも確認出来たんだよ」

 そう言いながら、アドニスはヴィッツに視線を向ける。これはヴィッツに、フレンドリストを表示して見せろ……という言外の指示だ。


 ヴィッツはその無言の指示に従って、システム・ウィンドウを展開する。フレンドリストを表示して、スクロールしていけば……そこにはプレイヤー名【アンヘル】、現在地[アージェント平原]と表示されているフレンド情報があった。

「これが、そのフレンドリストだ!」

 可視化設定にして、六人組にも見える様にフレンドリストを提示するヴィッツ。追い詰めたという確信で、その表情は嗜虐的な笑みを浮かべている。


 そんなヴィッツの証拠提示で、六人組は狼狽えるだろう。そう思っていた【摩天楼】だが、彼等にそんな様子は見受けられない。

「あ、うん……それで?」

 長身の青年は、だから何? といった態度である。ヴィッツにとってその態度は、自分達を馬鹿にしたものに思えた。

 だからこそここでハッキリと言って、アンジェリカを追い詰める必要がある。ヴィッツはそう確信して、斥候職の女性に人差し指を向けた。

「そこの、斥候職……アンタが、アンヘルじゃないのか?」


 その時だった。

「おい、これは何の騒ぎだ!」

 足音を立てて駆け寄って来たのは、騎士装備を見に纏うプレイヤー達。彼等がここに居る事や、駆け付ける事は不思議でも何でもない。ここは[アージェント平原]であり、彼等の本拠地なのだから。


「クラン【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】加盟ギルド、【聖光の騎士団】のディレックだ!」

「……」

 駆け付けた騎士達の統率役は、どうやらディレックらしい。しかし彼は名乗ったまま、背筋を伸ばして立っているだけだ。

 六人組と【摩天楼】が、どうしたのだろうか? と不思議そうにしていると、ディレックが横に居る女性に声を掛けた。

「……おい、君も名乗らないか」

「えっ、私も!? ディレックさんだけで良いじゃないですか!?」

 騎士道精神に則って、名乗るべきだとかそれっぽい事を言われたので、女性はとりあえず折れた。

「……あー、【聖光の騎士団】所属、ノーリスです。で、何の騒ぎです? ここが【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】の拠点だって、ご存知ですかね?」

 ディレックに代わって本題を切り出したノーリスに、後に控えているクランメンバー達は感謝の視線を向ける。もしかして自分達も名乗らされるのかと思っていたので、助かりました!! みたいな感情が込められている様だ。


 そんなノーリスの言葉に、エディミオンは半身で振り返って堂々と宣言する。

「掲示板の書き込みについて、【LOK】の皆さんはご存知かな。実は当ギルドにアンジェリカとフレンド登録をしていた者が居て、書き込みが真実であるという裏付けが取れた。アンジェリカは今、アンヘルと名前を変え、この[アージェント平原]に居る!」

 ここで【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】が登場するのは、【摩天楼】にとっては予定調和。彼等の目の前で、アンヘルの正体を明かす……これで彼女に逃げ場はなく、自分達が彼女をAWOから追放する立役者であると認識させるつもりだったのだ。


「……っ!!」

 アンジェリカの名前が出て、ディレックの表情が変わった。彼女に対する怒りが、全身から噴き出しているのではないか。

 そんなディレックの様子にノーリスは「人選ミスったかな……」と思いながら、エディミオンに続きを促す。

「それで、この状況の説明は?」

「見ての通りだ。アンヘルと思われる女性を、我々は特定した……彼女が何かを企み、AWO全体に被害を与えるのを未然に防いだというわけだ」

 そう言いながら、斥候職の女性を指さすエディミオン。それに対し、斥候職の女性は何も言わずに佇んでいる。


 そんな説明を聞いたノーリスは、頭を抱えたくなった。身内ディレックだけで辟易しているのに、更にはこんな行動を起こす輩が現れるとは思わなかったのだ。

 そして彼女は、ディレックが何をしでかすのか……それが、不安で仕方が無かった。彼に視線を向けてみると、ディレックは一文字に結んだ口を開くところだった。

「それはきちんとした証拠があって、行った行動か?」

「……あれ?」

 彼の言葉は、思ったよりもまともだった。


「彼女のプレイヤーネームがアンヘルで、アンジェリカと同一人物だという証拠。そして彼女が何かを企てているという、その確証があって行動を起こしたのか?」

 ディレックは更に言葉を重ねて、エディミオン達に問い掛ける。少なくとも彼等にとって、アンヘルとアンジェリカが同一人物……という確証は、提示できる。

 しかし、アンヘルが何かを企んでいる……という証拠は、無い。


「そ、それはだな。まずは、このヴィッツが……」

 思ったよりも、旗色は良くないのか? そう感じたエディミオンは、ひとまず最低限の証拠を提示しようとする。

しかし、その瞬間……六人組の中から、一人の少年が歩み出た。

「横から失礼……いい加減、通して貰いたい」

 エディミオン達は、そしてディレック達も、どこかで聞き覚えのある声だと思った。それは、どこでだっただろうか……と、記憶から呼び起こす、その前に。


「これ以上、時間を無駄に浪費したくはないで()()()

 少年の言葉に、正確には特徴的な語尾に、彼が誰なのかが解った。解ってしまった。

 これにはエディミオン達も、ディレック達も目を見開いてしまう。あまりにも予想外の人物だったせいで、思わず言葉を失ってしまっている。


 彼等の視線は勿論、その少年に集中している。当の少年は、やってしまった……とばかりに眉間に手を当てていた。

 そんな彼に、例の斥候織の女性が呼び掛ける。

「……うふふ、慣れって怖いですね? 現実で失敗したりは?」

「……今のとこ、無いです。これからどうかは、たった今解らなくなりました」

「少なくとも、一人がバレたら同じでしょう。もう、お忍び観光は終わりですね」

 そう言って、女性は頭部を覆うフードを取り払った。


「むしろ、さっさとこうしておけば良かったかもね」

「まぁまぁ、誤解を避ける為だったんだし」

「そうそう。まぁ、別の意味で誤解を受けたらしいですけど」

「致し方ないかと。とはいえ、マナー違反はマナー違反です」

 一人一人フードを取り払って、その素顔を晒していく。

「さて、それじゃあいつもの装備に……」

「だな、【カレイドスタイル】のお陰で、着替えんのがこっ恥ずかしくないのはありがてぇ」


 そう言って【カレイドスタイル】を駆使して、普段の装備に瞬間換装するのは。

 【魔弾の射手】のミリア。

 【桃園の誓い】のヒューゴ。

 【ラピュセル】のジュリアン。

 【忍者ふぁんくらぶ】のタスク。

 予想外のプレイヤーだった為、包囲していた【摩天楼】……そしてディレック達も、遠巻きに見ていた野次馬も言葉を失った。


 そして、残る二人。

「……なっ!? 何で、君がここに……!?」

「それに……あ、貴女は……!!」

 彼女がアンジェリカだと……アンヘルだと思っていたエディミオン達は、その女性の素顔を見て絶句する。それはそうだろう……彼女はアンヘルではないと、誰もが断言できる人物だったのだから。

 そして、その隣に立つ少年。≪飾り布≫で口元を覆っていない姿は、実にレアだ。彼は、一体誰なのか? そんな事、誰だって知っている……知らない者など、ほとんど居ないトッププレイヤーなのだから。


 そう、食堂から出た六人組……その内二人は、アンヘルとヴィクトではない。二人も【カレイドスタイル】を発動させて、普段の装備に換装する。

「さて、それじゃあ……申し開きの時間、でしょうか」

 その美しきこと、女神の如く。フリーランスの細剣使い、生産職人ユージンの妻として知られているケリィ。

「やれやれ、スーパー説明タイムでゴザルな」

 そして苦笑しながら頭を掻く、AWO最速の忍者……【七色の橋】のエース、ジンだった。

次回投稿予定日:2026/3/15(本編)


残念だったな、トリックだよ。


【摩天楼】が包囲するのではなく、【摩天楼】を包囲する! が正解ですね。

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― 新着の感想 ―
さーて、マナー違反だけでなく思い込みによる言いがかり、晒し行為に巻き込んだり騒ぎを起こしたりと、ごめんなさいで許してもらえるかな? とりあえず指の貯蔵足りそ?w
とんでもねえ、(マナー違反行為をしてくるのを)待ってたんだ
今回の話端的に言うとヴィッツキモいこの一言につきます。あとツッコミをば1つ、俺たちの純粋な気持ちを裏切ったって下心にまみれてたやないですか!さてこれからどう弁明するおつもりなんでしょうねw
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