01-06 忍者ムーブ始めました
ユージンに服を製作して貰った翌日。ジンはフィールドに向かう前に、ショップを訪れていた。昨夜のキラーホーネット討伐で手に入った素材を、売却する為である。
尚、手に入ったスキルオーブは【毒耐性(小)】というスキルだった。無論、既にスキルスロットにセット済みだ。
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【毒耐性(小)】
効果:毒攻撃を受けた際、状態異常・毒になる確率-5%。
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素材の売却ついでに、スキルオーブのラインナップにも目を走らせる。
「おっ、これは! あー駄目だ、値段が……」
【超加速】というスキルオーブを買おうとするも、値段が高かったのだ。そのお値段、五千万ゴールド。実にお高い。
そのスキルに目を付けたのは当然、誰よりも速く走りたいからである。
「コレは、まだまだ先か……ユージンさんへの借金もあるしなぁ……」
そんな折、ショップに入って来るプレイヤーがいた。
銀色のロングヘアーに、赤い瞳をした少女だ。身に纏っているのは黒いワンピース衣装で、その上から鉄色の軽装鎧を着込んでいる。背中に背負っているのは、大きな弓だ。
美少女という言葉は、彼女の為にあると思えるほどの美少女だった。
「……あ」
その少女の赤い目と、ジンの黒い目が合う。いつまでもカウンターを占領するわけにはいかないと、ジンが脇へと退いてみせた。
しかし、少女は視線をジンに固定していた。何故か、固定していた。ガン見である。
――見られてる!! めっちゃ見られてる!!
ジンは内心で慌てていた。もしかしたら、自分が何かしてしまったのかと。
すると少女は、胸元で右手をギュッと握る。ジンが内心でオロオロしていると、少女が緊張気味に口を開いた。
「あの……忍者さんですか!?」
少女の声は、鈴を転がすような美しい声だった。しかし、その美しい声で紡ぎ出された言葉は少しズレていた。
「はい?」
予想外の質問に、ジンは困惑した。確かに忍者風の装いだけど、と。
「わぁ……このゲームで、忍者さんは初めて見ました! 和風が足りないなって思ってたんです」
逆に、少女のテンションは上昇傾向にあるらしい。何かを期待するかのように、少女はジンを見つめている。おめめはキラッキラだ!!
ここで、ジンは何故か思ってしまった。
――に、忍者っぽく話してみるか?
後に、それを後悔する事になるのだが……今のジンはそんな未来を予期出来ない。
「う、うむ。拙者も和が足りないと思っていたでゴザルよ」
ジンは困惑のあまり、正気を失っていたのだった。
「おぉー、素敵です!」
少女の素敵の基準は一体どうなっているのだろうか。
「その服って、どこかで売っているんですか?」
尚も瞳を輝かせ、銀髪美少女はジンに質問する。
「マフラーはドロップ品……でゴザル。服の方は、フレンドさんが製作してくれたのでゴザルよ」
自分は今、何をやっているのだろう? そんな事を思いつつも、少女に応対するジン。少女の期待に応えている辺り、お人好しなのだろう。
「フレンドさんが製作……成程、本当に自由度が高いゲームなんですね。あっ、忍者さんのフレンドさんなら、やっぱり忍者なんですか?」
彼女は何故、忍者にそこまで食い付くのだろうか。疑問に思いつつ、ジンは首を横に振る。
「いや、彼は……そうだなぁ、ハワイアンな感じの生産職人でゴザル」
アロハシャツにサングラスしているし。ユージンを称するのに最適な言葉はハワイアンかもしれないと、ジンは納得していた。
「ハワイアン!? そんな方まで居るんですね」
「うーん。確かに忍者と同じくらい、ハワイアンスタイルってファンタジーにそぐわない気がするでゴザルなぁ」
徐々に、ゴザル口調に慣れていくジン。手遅れまで、あと一息である。帰還不能地点は近い。
「あの、もしよろしければ……フレンド登録をお願い出来ませんか?」
「う、うむ。喜んでお受けするでゴザルよ」
一抹の不安を抱えつつ、ジンは少女の要望に応える事にした。フレンドさんは多くて困らないだろう、と思ったのだ。
『【ヒメノ】からフレンド申請を受信しました。申請を許可しますか?』
目の前の少女は、ヒメノというらしい。ジンは間を置かず、目の前に浮かぶウィンドウのOKボタンを押す。
『【ヒメノ】とフレンド登録しました』
「ありがとうございます、忍者さん!」
「あ、いや……拙者の事は、ジンと呼んで欲しいでゴザルよ」
「はい、ジンさん!」
素直に名前を呼んでくれたヒメノに、ジンは内心でホッとした。ずっと忍者さんと呼ばれたらどうしようかと思っていたのだ。主に、人前で。
「和風の服、やっぱり良いですね。私も製作をお願い出来ないでしょうか?」
つぶらな瞳で見つめられて、ジンは唸る。
アナザーワールド・オンラインを本格的にプレイするべく、ジンは掲示板で初心者向けのスレッドを見た。その中に、こんな投稿があったのだ。
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マジで女キャラには気を付けろよ
中身はネカマなのがほとんど
運良くリアル女子でも、デブスとかな
構ってちゃんだったりメンヘラだったりするぞ
リアル美少女で性格も美少女とか期待すんなよ
ユニークアイテムの方が見付けやすいからな
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こういう書き込みが多いのだ、掲示板というやつは。しかし、有用な情報もあるので目は通しているのだった。
さて、ジンは思考を巡らせる。ヒメノからは悪意を感じない。単にジンの着る服装に心惹かれているのだろうと、ジンは思った。
そして……ヒメノの様子を見て、ジンは思うのだ。彼女は、この世界を全力で楽しんでいるように見える。それも、真っすぐに。
ジンは内心で迷いながら、決断を下した。ユージンに紹介するかどうか、だ。
「ヒメノ殿が良いなら、その……顔繋ぎくらいは手を貸すでゴザル」
その言葉に、ヒメノは更に瞳を……むしろ、表情を輝かせた。
「えっ、良いんですか?」
「う、うむ。プレイヤー同士、助け合いでゴザルからな。フレンドとは、そういうものでござろう?」
動揺しつつ、ジンは大きく頷いてみせた。
「ありがとうございます、ジンさん!」
ジンはユージンにメッセージを送るべく、ウィンドウを開く。フレンド欄を見ると、ユージンはオフライン表示だった。
「今はログインしていないようでゴザルな。メッセージを送っておくので、返答が来たらヒメノ殿にも伝えるでゴザルよ」
「すみません、ジンさん。お手数おかけします」
綺麗なお辞儀をするヒメノに、ジンは見惚れてしまった。
ようやく、ここでジンは気が付いた。目の前のヒメノが、紛う事なき美少女である事に。
整った顔立ち以外にも、目を引く点が彼女には多い。手足はスラリと長く、ボディラインも目を見張るレベル。
可憐な容姿……という形容詞が浮かんでくる。現実でもこのレベルの容姿ならば、アイドルでも十分通用するだろう。センター待ったなしだ。
「……ジンさん?」
「あ、いや……失礼したでゴザル。ヒメノ殿は、いつもこのくらいの時間にゲームをしているでゴザルか?」
慌てて話題を逸らそうとするジンに首を傾げつつも、ヒメノは笑顔で頷いてみせた。
「はい。私は大体、夕方の六時以降にログインします。八時くらいから兄がログインするので、そうしたら一緒にプレイしているんです」
兄妹でゲームをする間柄らしい。ジンは一人っ子なので、少し羨ましく感じた。
「仲が良いのでゴザルな、兄君と」
「はい、自慢の兄なんです」
ヒメノの見せた笑顔に、ジンも微笑み返す。ヒメノがこう言うのだから、きっと本当に良いお兄さんなのだろう。
「あっ……噂をすれば。兄からメッセージが入りました」
ウィンドウを開くヒメノに、ジンはもうそんな時間かと時計を確認する。しかし、まだ七時にもなっていない程度の時間だった。
「お兄ちゃん、今日は早かったんですね……もう、気にし過ぎです」
メッセージを見て、クスクスと笑うヒメノ。そんな仕草も、また可愛らしい。
「あの、私と兄はこれからフィールドに出るんですけど……ジンさんも、良かったらご一緒しませんか?」
その言葉に、ジンは耳を疑った。
「あ、いや……兄妹水入らずでござろう? 拙者が邪魔をするのは、少々申し訳ないでゴザル」
きっと彼女の兄は、ヒメノと一緒にゲームを楽しむ為に早く帰宅したのだろう。ならば、自分がそこに入り込んで邪魔をするのは忍びなかった。彼女の前では忍だけど。
しかし、ヒメノの返答は予想外のものだった。
「大丈夫ですよ? 兄もジンさんに会ってみたいって言ってます!」
「……え?」
何故、ヒメノの兄がジンを知ったのか? ジンには、ちょっと何言っているのか解らなかった。
「何故、兄君が拙者に?」
「私が”忍者さんとフレンドになりました”って送ったら、是非会ってみたいそうです」
犯人は目の前の美少女だった。道理で、何やらシステム・ウィンドウをポチポチしていた訳だ。
……
ジンはヒメノに是非! と言われてしまい、彼女の兄に会う事になった。
堂々と連立って歩いている……かのように見えるが、彼の内心は実に不安である。
――可愛い妹に忍者を名乗って近付いたのは、お前か!! とか言われたりしないかな、大丈夫かな……。
普通に考えたら、忍者を名乗ってゴザル口調で話すなんて、ただの痛い人だ。
ここへ来て、ジンは忍者ムーブをしてしまった事に後悔していた。採れたてホヤホヤの新鮮な後悔である。
始まりの町、そのメインストリートにある噴水。そこに腰掛けている人物が、ヒメノの姿を見つけて立ち上がった。
「ヒメ? 何で……彼と一緒に……?」
「……嘘だろ!?」
その顔に、ジンは見覚えがあった。むしろ、今日も顔を合わせていた。ジン……いや、仁が通う学校で。それも、同じ教室で。
――星波……英雄……!?
対する英雄も、同じ事を考えているらしい。目を見開いて、ジンを凝視している。
VRドライバーはアカウント登録の際、本人の顔をスキャンする。セキュリティの為に、虹彩認証機能がある為だ。
そのスキャン情報等は、世界最大のデータセキュリティを誇る民間企業のサーバーに送られる。過去一度も、ハッキング等を許した事が無いという最大手企業だが、これは余談である。
そしてVRゲームを始める際に、ほとんどのゲームがスキャンした本人の顔を初期設定として出力するのだ。そこから任意でアバターの調整を行える。髪型や髪の色等には手を加えたが、再現された寺野仁の顔立ちのままでジンはゲームをプレイしていた。
どうやらそれは、星波英雄も同様らしい。長過ぎず短過ぎずの金髪に、蒼い瞳は現実とは違う。しかし、顔立ちはジンの知っている彼のものだ。
プレートメイルにラウンドシールドとロングソードといった、正統派騎士という装いがマッチしている。ウサギとドラゴンくらい、ベストマッチだ。
「あの……お兄ちゃんもジンさんも、どうかしましたか?」
ジンと英雄の様子に、ヒメノは困惑顔である。
「あ、あぁ……その、何だ。折角だし、少し話さないか? 宿屋の個室とかなら、会話は他のプレイヤーに漏れない」
「……そうだね。賛成、かな」
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「そっか、もう始めていたんだ」
「ゴメン……あの時は、言い出せなくて」
「いやいや、良いって!」
英雄は、本質的に良い男だった。声をかけられた時、既に仁がアナザーワールド・オンラインをプレイしていた事を告白しても、彼は笑って流してみせたのだ。
「で、ヒメノさんは星波君の妹さん……と」
「はい、【星波姫乃】と言います!」
胸元で両手を合わせ、ニッコリと微笑む姫乃。兄妹揃って美形であった。
「世間って狭いですね!」
「本当にね」
これには、ジンも苦笑せざるを得ない。話に聞いた全盲の妹が、まさかジンと妙な形で遭遇するとは。
「じゃあ、折角だし俺ともフレ登録してくれないかな? 寺野君……いや、ジン君が良いなら」
爽やかに微笑む英雄に、ジンは頷いた。いずれ、彼と一緒にこのゲームで会いたいと思っていたのだ。願ったり叶ったりである。
「こっちこそ、是非お願いしたいよ。えっと……」
まだプレイヤーネームを聞いていなかったと、ジンは困った表情をしてしまった。それに気付いた英雄は、相変わらずの爽やかスマイルでプレイヤーネームを名乗る。
「俺は【ヒイロ】って名前でやっているんだ。あ、呼び捨てにして欲しいかな」
「そう? じゃあ、ヒイロ……だね。あっ、僕の事もジンって呼び捨てで良いよ」
……
そのまま、しばらく雑談する三人。話す事一時間程で、話題はジンの忍者ムーブについてに至った。
「自分の事ながら、アレはどうかと思う」
「ふふっ、ジンさんが忍者っぽい感じでお話ししてくれて、つい楽しくなっちゃいました」
「俺は良いと思うよ、ロールプレイ」
兄妹は、忍者ムーブ推奨派らしい。ジンに味方が居ない。
「ジンさん。あの口調で話して欲しいです」
ニコニコしながら、可愛らしくおねだりをするヒメノ。その姿に、ジンは頬を引き攣らせた。
「ヒイロ、君の妹はズルくないかな。こんなおねだりされたら断れないんだけど」
「それには同感だけど、俺にはどうにも出来ないな」
「不躾で申し訳ないんだけど、もしかしてヒイロってシスコン?」
「自認している」
「そんな風に言い切られたら、いっそ清々しいな!!」
クラス一の人気者、シスターコンプレックスである事が発覚。
「あ、もうこんなに時間が経っていたんですね。ジンさん、お兄ちゃん? そろそろフィールドに出ますか?」
現在時刻は、夜の八時。明日は平日の為、そこまで長い時間ログインは出来ない。
「そうだね、行こうか。ジンは大丈夫?」
「勿論。一緒に行こう」
「ジンさん」
うるうる。
「やはりフィールドか、いつ出発する? 拙者も同行するでゴザル」
スタンド使いの様な台詞を吐いて、ジンは律儀にヒメノの要望に応えるのだった。
「ちなみに、ジンはどんなビルド?」
「……ビルド?」
ジンは首を傾げた。
「……えーと、スキルやステータスの構成というか、傾向の事かな。前衛向きとか、魔法向きとか」
「あ、そういう事か! いや、自意識過剰でナルシストな正義の味方かと」
「四十年くらい前のヒーローですよね、それ」
ネタがスルーされなかった事に驚きつつ、ジンは自分のステータス構成を明かす事にした。相手はヒイロとヒメノなので、構わないだろうという判断だ。
「AGIに、ステータスポイントを全部注ぎ込んでいるんだ」
「……マジ? 極振りが二人?」
そのヒイロの言葉に、ジンが首を傾げる。二人という事は、ヒイロかヒメノのどちらかが極振りプレイヤーなのだろう。
「えっと、私がSTRに全部……」
どうやら、ヒメノはSTR極振りプレイヤーらしい。
「STR特化とAGI特化で、俺がバランスタイプの前衛職……うーん、ピーキーだなぁ」
「ごめん、とにかく早く走りたくて……」
「ごめんなさい、とにかく一撃でモンスターを倒したくて……」
ジンとヒメノの言葉に、ヒイロが苦笑する。どうやら、この二人は思考回路が似ているらしい。
「まあ、俺が上手くフォローすればいいか! とにかく楽しんでプレイするのが目的だし!」
ヒイロの言葉に、二人は感謝の念が半分……申し訳ない気持ちが半分で、頷く。
相談しながら戦闘の準備を済ませた三人は、いよいよフィールドへと向かう事にしたのだった。
……
「……何これ」
そう呟いたのは、ヒイロである。呆然と前を見つめて、棒立ちであった。隙だらけである。ただの案山子ですな。
しかし、無理もないだろう。何故なら視線の先で立ち回る忍者は、普通のAGI極振りプレイヤーではないのだ。
「【クイックステップ】!! 【ハイジャンプ】!!」
迫り来るモンスター……素早さに定評のあるチーター型モンスター【ダッシュチーター】の攻撃を、素早い動きで尽く回避する姿。ぶっちゃけ武技を使用しなくても、避けられていた。
冗談もお世辞も抜きで、人間を辞めているのではないかと思わせる動きである。少なくとも、ヒイロは目で追い切れていない。
「【空狐】!! 【一閃】!!」
更に、【空狐】を発動した忍者は手にした小太刀でモンスターに斬り掛かる。高速機動からの攻撃プラス追撃で、ダッシュチーターのHPバーがみるみる内に削られていく。
それだけ攻撃していれば、モンスター達の意識はジンに向かう。
「ヒメノ殿!!」
「はい!! せーのっ!!」
構えた弓から矢を放つ、見目麗しい美少女。その一撃で、七割程残っていたダッシュチーターのHPが全損した。
「よぉし、次っ!!」
再び弓を構えて、ヒメノはジンに向かっていくダッシュチーターに狙いを定める。
モンスターの注意を引き付けて尚、全ての攻撃を回避するAGIオバケなクラスメイト。
そんな最速厨に向かっていくモンスターを、一撃必殺するSTR全振り妹。
前衛のはずのヒイロは、乾いた笑いが口元から漏れ出るのだった。
「残り三匹……よし、行くぞ!」
自分に向けて接近するダッシュチーターに、ジンは忍者っぽい構えを取った。意味は無い。
ヒメノの要望に応える当たり、やはりジンはお人好しである。お陰で、ヒメノはおめめキラッキラである。
ヒメノは巷で”一撃必殺少女”などという通り名を付けられるくらい、STR値が高い。しかし、それ以外のステータスは初期値のままだ。攻撃を食らえば低耐久が災いして一撃死する。
そんな彼女のステータスを活かすには、敵の攻撃を引き付ける盾役が必須。これまでは、兄であるヒイロがそれを担っていた。
だが、ここで彼女は出会ってしまった。攻撃を尽く回避し、モンスターの注意を引き付ける回避盾に。同じ極振りプレイヤーな、忍者ムーブの少年に。
結論として、ジンとヒメノは恐ろしい程に相性が良い。
敵の注意を引き付けるAGI特化と、敵を一撃で屠るSTR特化。尖った性能の二人は、互いの不足を補う形で戦闘に没頭した。
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ダッシュチーターとの戦闘の後、ジンはステータスを二人に公開していた。そのステータスを見て、ヒイロが大きな溜息を吐く。
溜息の理由は呆れではない。ジンのステータスに記載されているアイテムやスキルに、滅多にお目に掛かれないようなモノがいくつもあったからだ。
「オッケー、理解した。ジン、これはちょっとヤバい」
「そ、そうなのでゴザルか?」
断言するヒイロに、ジンは頬を引き攣らせる。この時、ジンは戦力外通告を下されたと勘違いした。
「ユニークスキルの【九尾の狐】……この時点で、ジンの方針はAGI特化で確定」
「でゴザルな」
「そうですね」
ヒイロの言葉に、ジンとヒメノは頷く。忍者口調に慣れて来た辺り、ジンはもう戻れないだろう。
「問題は火力不足……なのが普通だけど、これは強力なユニークアイテムが補ってる。うん、忍者衣装は伊達や酔狂じゃない訳だ。【拡張スキルスロット】もヤバいな、有効化出来るスキルが倍だからね」
ジンに不足していたAGI以外のステータスは、ユニーク装備が賄った。更にはスキル拡張の恩恵で、手数も増やす事が出来る。ジンの方針と手に入れたスキルや装備が、恐ろしい程に噛み合った形である。
「ジンは、今後もAGI極振りで行くんだよね」
「ダ、ダメでござろうか……?」
ダメ出しされていると勘違いしたままのジンは、不安そうな表情をしてしまう。そんなジンに苦笑し、ヒイロは首を横に振る。
「目指せ最速でしょ? それは良いと思う。VITは回避特化のジンには不要だし、それ以外を強化するアイテムを探してみたらどうかな」
それが出来れば、ジンは最速忍者として完成するだろう。
ヒイロの言葉に込められた、肯定的なニュアンスに安心した表情を見せるジンであった。
「これからも、この三人でパーティを組まない? 俺はヒメやジンと、一緒にやっていけたらって思っているんだけど」
そんなヒイロの言葉に、ジンは笑みを浮かべる。そんなの、こちらからお願いしたいと思っていたのだ。
「ヒイロとヒメノ殿が良いなら、喜んで」
「私も、是非!」
三人は顔を見合わせ、笑顔を交わす。こうして、三人のパーティが正式に結成されたのだった。
――後に、彼等はAWO全域に名を轟かせることになるのだが……それはもう少し、先の話である。
ジンと共に物語の中核を担う、二人の登場です。
友人のヒイロ君と、その妹のヒメノちゃん。
お察しの通り、ヒメノちゃんがヒロインですが?
巨乳JCですが?
作者の性癖の発露ですが、それが何か!?
おまわりさん、私です。