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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第二十章 第四エリアを目指しました

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20-47 第六回イベントの情報でした

 ここまで紹介されたものは、恒常コンテンツだった。更に続いた、第六回イベントについて……これから話されるであろうイベント情報に、ジン達も視線が釘付けになってしまう。

 そんなプレイヤー達の様子を察しているのか、いないのか……レイモンドは相変わらずのハイテンションで、話を切り出した。

『第六回イベントは、First Anniversaryを盛り上げるスペシャル仕様だZE!! Yeah!! その気になる内容は~~~~CMの後で!!』

『コマーシャルは無い』

『Oh Yeah Boss!! キレッキレのツッコミ、流石だZE☆』

『ボスって呼ぶなと……お前さんは、一体いつになったら覚えるんだ』

 相変わらずの、レイモンドとシリウスの寸劇。シリウスこと北斗から聞いた話では、レイモンドとのこの掛け合いは台本ではなく、完全にアドリブらしい。


『さて!! 実は第六回イベントは、これまでとはまた違うジャンルのイベントだ!! オーウェン、アンナ!! 言っちまいなよ、YOU!!』

『了解でーす。今回のイベントで重要になるのは、まず”スクリーンショット”!』

『はい、そして”動画”……この二つに関わって来るイベントとなります』

 オーウェンとアンナがそう言うと、モニターの下にもスクリーンショット・動画と表示が出て来た。その二つが表示されたところで、セインが爽やかな笑みを浮かべて口を開く。

『第六回イベントはこの二つを対象とした、”コンテスト”になります』


************************************************************


「おっと? これは予想外のものが出て来たな……」

「スクリーンショットと、動画のコンテスト……」

 流石に現時点の情報だけでは、コンテストの全容が解らない。その為、ジン達は運営達の次の言葉に興味津々である。


************************************************************


『まずは”スクリーンショット”について、解説しましょうか。それでは、オーウェンさん?』

『はーい、お任せあれ! スクリーンショットのコンテストは、四つの部門に分かれます!』

 セインに促されたオーウェンが、実際に撮影したであろうスクリーンショットを表示して解説を始める。

『まずはプレイヤー・PACパック・現地人問わずの【人物部門】! 次に野良モンスター、ボスモンスター何でもござれの【モンスター部門】! そしてAWO内ならどこでもOK、【風景部門】! 最後に武器や装備、アイテムなどの【物品部門】でーす!』

 実際のスクリーンショットと共に発表されたお陰で、四つの部門についてはイメージが湧きやすい。しかしながら、人物部門……しかもプレイヤーもPACパック、NPCも対象となる部門に関しては、何かしらのトラブルが起きそうである。


 しかし、そこはしっかり運営も考えていた様だ。

『ちなみにコンテスト用のスクショは、許可を得ていない人物は、撮影端末同様に反映されないのでご注意を♪』

 つまり許可を得ていない者が人物を撮影しても、誰だか解らない半透明の人影だけが映った写真になるという事だ。これは動画配信に使用する、撮影端末と同じ仕様だ。つまり誰にも許可を得ないで撮影したものをコンテスト用に登録しても、かま〇たちの夜状態のスクリーンショットになってしまうのである。


 そこでオーウェンの説明に、捕捉をエリアが付け加えた。

『ちなみにこの仕様は、契約モンスターも適用となります。契約者の許可が必要ということですね』

 彼女が言及したのは、神獣や従魔についてだ。要するに部外者がコン・ホリィ・フクを撮影しても、無許可である限りコンテスト用のスクリーンショットにはならないという事である。

 元よりPACパックも、現地人(NPC)も大切にしている運営の事だ。神獣や従魔も同様に大切にするのは、想像に易いだろう。


『尚、スクリーンショットコンテストにエントリー登録出来るのは、一人一枚となりますのでご注意を!』

『Yes! 厳選された、これだ!! という一枚で!! Entry……だYO!』

『……”エントリー”だけ、バックルにIDコアを入れた様な声色で言うなよ……』


************************************************************


「デザイ〇グランプリでも始めるんでしょうか?」

「ジン、出番だぜ」

「残念ながら、ギー〇じゃないでゴザル」

 そんなネタ方面に偏った会話の傍らで、真剣にスクリーンショットコンテストについて思いを馳せる面々もいる。


「こんなに可愛いんだから、ホリィ達の写真を投稿したらいい所までいけるんじゃないでしょうか」

「人物部門……撮影させてくれ~みたいな連中、出て来そうだよねぇ」

「武器……武器を並べてる所とか、絵になったりしないかな……? 地面に沢山の剣が突き立ってる感じ、とか……」

「ちょいちょいカノン、それじゃあ無限の〇製じゃない」

「ねぇねぇ、お料理とかのスクリーンショットも、物品部門になるのかな?」

「そうかもッスね。って事はアイ、料理のスクショにするん? イイネ!」


「[ウィスタリア森林]での撮影許可を求めるプレイヤーが、出て来るかもしれないな……」

「まぁ、景色は良いもんねぇ」

 今回のイベントは、あちらこちらでの撮影が盛んに行われるだろう。その中で、公序良俗に反する行為に走るプレイヤーが出て来るかもしれない。

 となれば[ウィスタリア森林]を管理する者として、それに対する対策も考えなくてはなるまい。


************************************************************


『それでは続きまして、動画コンテストの内容に移りましょう。アンナさん、よろしくお願いいたします』

『承知しました。スクリーンショット同様に、動画コンテストもいくつかの部門に分かれます』

 ガイアに促されたアンナが、システム・ウィンドウを展開して動画を再生し始める。

『まずは戦闘の様子や、生産の様子を撮影した【プレイ部門】。こちらは勿論、スクリーンショット同様に撮影許可が必要になります』

 アンナの説明は、非常に丁寧で解りやすいのだが……再生されている動画が戦闘中の広報メンバーの姿なので、そちらに意識が持っていかれてしまう。


『二つ目は……動画というと、こちらの印象が強い方も多いでしょう』

 そう言ってアンナが再生したのは、音楽に合わせてダンスを踊る広報メンバーの姿だった。

 ちなみに踊っているのは、ギリギリかもしれないダンスの曲だ。しかも同じところをリピートしている様で、ずっとギリギリである。

 しかし、このためにわざわざ撮影したのだろうか。絶対、発案はレイモンドだろう。

『歌やダンスなどを撮影した、【エンターテイメント部門】となります』

『エンタアアァァテイメントオォォッ!!』

『『室長、うるさいです』』

 何だか両手を広げて、やけに良い声で叫ぶレイモンド。女神な女性型ヒューマノイド関連企業の社長みたいだった。

 そんなレイモンドに、オーウェンとアンナが口を揃えて苦情を漏らす。流石にうるさかったらしい。


『えー……続いては雑談や解説、各種紹介などの動画による【ライバー部門】となります。最後に音楽や映像を編集し繋ぎ合わせる、【プロモーション部門】……簡単に言いますと、MVミュージックビデオPVプロモーションビデオのようなものと考えて頂ければ良いかと思います』

 疲れて来たのか、後半二つは駆け足である。疲労の原因は、言うまでも無いだろう。

 ちなみに説明と共に流されている動画は、広報メンバーがVtuberの様にして雑談している映像。もう一つは、広報メンバー四人による格好良いPVっぽい映像が流れている。勿論、この紹介の為だけに作成されたのだろう。


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「こっちはヨミヨミの得意分野じゃない!?」

「ネコちゃん、近い近い」

 絶賛、配信者として活動中のコヨミ。彼女からしてみたら、エンタメ・ライバーの部門には慣れ親しんだものを感じるだろう。

 勿論、そんなコヨミに期待を掛ける【円卓の騎士(さいこさん)】。残る十二人も、今頃コヨミの動向を気にして盛り上がっていそうである。


「私は、動画コンテストは無しかな。一応はプロだし、事務所もオーケーは出さないと思うし……うん、出さないんじゃないかな、多分」

 現役アイドルのリリィは、勿論動画コンテストは不参加らしい。これは彼女の事を良く知っていれば、意外でも何でも無い事だ。リリィはアイドルとしての影響力を考慮した上で、日々ストイックにAWOをプレイしているのだから。


「戦闘の様子とか、動画にしたら良いのかな? タイムアタックみたいな」

「あー、ジン兄? ジン兄が本気でTAやったら、スロー再生にしないとまともに目で追えないッスよ」


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『さてさて、それじゃあここで重大発表だZE☆ 今回のスクリーンショットコンテストと、動画コンテスト!! コンテストという事は~~~~……Yes!! 最優秀賞を決めまSHOWッ!!』

『……うん?』

『あー……』

『皆さん、今のは最優秀賞とショーを掛けた、非常に面白いギャグで……』

『秘書型ヒュー〇ギア!? STOP!! ギャグを解説されるほど、心に刺さるものはあんまり無いんだYO!!』

 流石のレイモンドも、滑った空気感には弱いらしい。むしろ弱点?


『えー、それじゃあ気を取り直して……今回のイベントは、コンテストと銘打つだけあって審査があるぜ!! 審査の結果、最も高評価を得た作品が最優秀賞だ!!』

『勢いが削がれましたね……』

『まぁ、滑ったせいじゃないのか』

『成程、意外と繊細なのかもしれませんね』

『聞こえてるZE、ボス!! 主任!! ガイア君!!』

 あ、ちょっと戻った。


『えー、脱線しそうなので……今回のコンテストの審査について、ご説明しましょう。まず審査をするのは、我々運営チームが勿論入ります』

『運営からは三十人が、審査に参加しまーす! 勿論、私達も審査員でーす!』

 当然、これだけプレイヤーの前に姿を見せる彼等が審査員なのは、不思議でも何でも無いだろう。しかし、重要なのはここからだ。

『そして、AWOをプレイしている皆様。皆様一人一人も、同じく審査員と言えます』

 プレイヤーも、審査員……その言葉を耳にしたジン達は、興味を引かれる。


『運営審査員の評価にプラスして、プレイヤー諸君の評価も審査点になる。それらを加味して最優秀賞……また運営賞とプレイヤー賞、他にも特別賞が用意されている』

 シリウスの説明は、至ってシンプル。運営とプレイヤーの双方で優秀賞を決め、その総合評価が高い作品が最優秀賞になるという事だ。


『ちなみにこの評価システムについて、もう少し掘り下げてご説明しますね』

 そう言ってたおやかに歩み出たエリアが、人差し指を立てながら言葉を更に紡ぎ出す。

 恐らく評価システムという重要要素を説明するのに、一番注目を集めるであろう彼女がその役に選ばれたのだろう。オーウェンやアンナも見目麗しい女性だが、それでも彼女の存在感は格別だ。

『プレイヤーの評価システムについてですが、評価数と評価ポイントが個別で表示されます。また組織票対策として、ギルドメンバー・クランメンバーに対しての評価は、評価数は加算されますが評価ポイントは入りません』


************************************************************


「あん? 何でそんな面倒な事すんだ?」

「はぁ……話聞いてたんスか? アク……じゃない、エリアさんが言ってた通りッスよ。組織票対策」

 よく解らないといった雰囲気のイカヅチに呆れながら、ハヤテが評価システムの仕様について触れる。

「人が多いギルドやクランで示し合わせて、評価を集中させれば簡単に入賞ッス。作品の良し悪しは、二の次でね。それだと、フェアじゃないっしょ? だから、組織的にポイント稼ぎさせない仕様にしたってコト! おわかり?」

「ぐっ……しかし、そうか、確かにそれじゃあ不公平だもんな……成程、解説あんがとよ」


 そうこうしている間に、評価システムについての説明も終わりを迎えた。

 スクリーンショットと動画の受付期間は、四月一日から十五日まで。投票期間は十五日から二十五日までで、結果発表は四月の三十日に運営生放送で行われるらしい。そして投票期間中、プレイヤー各自が投票できるのは十ポイントまでらしい。


 モニターの中ではもう一度、運営チームがルールのおさらいをしている。それを要所要所聞きながら、ジン達はそれぞれの考えを口にしていた。

「半月の内に、作品をエントリーしないといけないのか……スクショは良いとして、動画は作り込みの時間に影響するかもしれないね」

「確かに。そうなると、動画ガチ勢有利じゃない?」

「持ち点十ポイント……ね。投票するにしても、厳選しないといけないわけだ」

「ポイントは……投票期間中なら、変更可能らしいわね」

「ふむ……評価ポイントは入らないが、評価数は加算か。これは意外と、重要な要素かもしれないね」

「はい、ヒイロさんの言う通り……評価数が多い作品ほど、目を向けやすいでしょうから」

 クラン【十人十色ヴェリアスカラー】は、戦闘も生産も楽しむ雑食系。故に今回の一風変わったお祭りも、全力で楽しむ方針だ。だからこそ、イベントについて皆が関心を抱いている。


 そうして運営チームの再説明が済むと、更に重大要素についての発表がなされる。


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『さてさて、ここから話は変わるZE! もう既に新大陸への切符を手にしている奴等も、居るみたいだな!! EXCELLENT!!』

 レイモンドが唐突に切り出したのは、第四エリア……四方に存在する新大陸についての新情報を、仄めかす様な内容だった。

 コンテストに意識が向かっていたジン達も、即座に思考を切り替えてモニターの中の運営メンバーに集中する。


『第三エリアのBossを討伐して、海の向こうへ渡るのを待っているYOU達!! ここで一丁、重要な事を説明するYO!! 良いか、マジで大切な話だ!! 聞き逃すなYO!!』

 レイモンドがここまで念を押すなど、これまでに無い事だ。それだけ重大な要素なのだろうと、ジン達も口を噤んで次の言葉を待つ。

『YOU達の居る[アウルコア]は、エル・クレア神の加護で満たされた地域だ。しかしその島から外に出ると、エル・クレア神の加護が弱まるZE』

 これはゲームシステム的な話としてではなく、ゲームの設定に観点を置いた話だろう。つまり今居る場所は、エル・クレアによって守られている……という事らしい。


『しかし[アウルコア]の外に出ちまったら、加護の力は弱まるYO……という事で! 新大陸では、新しいデバフ【部位欠損】が発生するZE!! このデバフは、三分間で治るから安心しろYO!!』

 いきなり普段の様なテンションに戻って、新要素……デバフ【部位欠損】について解説するレイモンド。どうやら永続効果ではなく、一時的な効果らしい。


 そんなレイモンドの後ろに居るシリウスとエリアは、神妙な面持ちだった。ガイアはいつも通り感情を表に出さない様だが、瞑目して微動だにしていない。

 そんな三人の様子を見て、レンは彼等の内心に気付く。


――お姉様、お義兄様……それに、三枝さんも……もしかしてお姉様達は、このデバフの実装に反対していたんじゃ……。


 恐らくその理由は、身近にジンやヒメノが居るからだ。ゲームの中でくらい、現実の苦しみを感じさせたくない……三人はそう考えているのだろうと、不思議とレンには確信出来た。

 しかし、このデバフが実装されてしまう……そこに、一体どんな理由があったのだろう。流石のレンでも、今この場でそれを知る術は無かった。


 しかしここで、レイモンドの横に並ぶ者が居た。それは、若々しい長身の青年……セインだ。

『ただしこのデバフを実装するにあたって、運営でも様々な意見が出ました。特にAWOは、若年層のプレイヤーも多いゲームです。この点については、我々もかなりの議論を重ね……』

 一定年齢未満のプレイヤーには、【部位欠損】が発生しない……そんなシステムになるのではないか? と、誰もが予想した。しかしセインの口にした言葉は、その予想を裏切るものだった。


『そこで、魔王に協力を仰ぐ事にしました』

 セインがそう言った瞬間、プレイヤー達が「え、何で? 何でそうなったん?」と考えている内に、鈴を転がす様な声が響いた。

『私、呼ばれたかな?』

 この声に、ジン達は聞き覚えがあった。過去に何度か、この運営ミーティングの場で登場した……可愛らしい魔王様の声だ。

 プレイヤーがそう確信している内に、運営達のすぐそばに魔法陣が展開された。そこからひょこっと顔を出す、金色の髪の美女。

『異邦人の皆、また会えたね。魔王だよ』

 相変わらず、魔王とは思えない可憐さである。


『遠路はるばるお越し頂きありがとうございます、魔王様。この度は、ご協力に心より感謝致します』

『ううん、良いよ。異邦人の皆は、私の誕生日に色々頑張ってくれたからね』

 そう告げると、魔王はその白く細い指を突き出した。それはまるで、モニターの向こうに居るプレイヤー達を指差している様に思える。


 その瞬間、プレイヤー全員のシステム・ウィンドウがポップアップする。同時にシステムアナウンスがそれぞれの脳裏に流れ、プレゼントが届いている事を告げた。

 ジン達がシステム・ウィンドウのプレゼント欄に視線を落とすと、そこにはスキルオーブ【魔王の慈悲】を受領したと表示されていた。

『今、皆様の手元に届いたのは、魔王様が造り出したスキルオーブです。そのオーブをスキルスロットに収めると、デバフ効果【部位欠損】の耐性が百パーセントになります』

 セインはそう告げると、にこやかな笑みを浮かべてみせた。


『そのスキルオーブを使うも使わないも、お前達次第だYO!! こいつは戦いの趨勢を決める、かなり大切な要素だ!! 慎重に考える事をオススメするZE!!』

 つまり運営側は、プレイヤーに二つの選択肢を用意したらしい。一つは新しいデバフ効果【部位欠損】を有効にするか。もう一つはスキルスロットを消費して、【部位欠損】を拒むか。

 恐らく、これは折衷案なのだろう。【部位欠損】実装推進派と反対派、双方が条件付きで相手の言い分を認めた形。ある意味では、互いに矛を収めた落としどころか。


 そして運営メンバーの中心に移動したレイモンドが、自分の頭上に拳を突き上げる。

『そしてそして!! 魔王様に続いてスペシャルゲストを呼んでいるYO!! ヘイ、カモーン!!』

 レイモンドの呼び声に応えるかのように、頭上から光が降り注ぐ。同時に舞い落ちて来るのは、天使の羽根だ。

『久しい……と言うには、さほど時間が経っていないか。また会えたな、異邦人達』

 透き通るような声と同時に、上空からゆっくりと下りて来るのはエル・クレア神だった。巷ではエクレアちゃんなどと呼ばれている彼女だが、その美貌と身に纏う空気にジン達も言葉を失ってしまう。


『あれ? 神様、久し振りだね。髪切った?』

『切ってないが!? って、誰かと思えば魔王アストラじゃない。あの小うるさい連中は……今日は居ない』

 神と魔王、まさかの顔見知り。しかも普通に挨拶する仲らしい。


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「うん? 今、魔王の事を【アストラ】って呼んだ?」

「確かに、そう呼んだな」

「魔王ちゃん様の名前は、アストラって言うのか……レオって名前の兄が居たりしないかな」

「ウル〇ラマンじゃないんだわ。今時の人は、歌姫の方を浮かべるんじゃないか」

 終結スキルを発動すると、歌いそうだ。


「それにしても、魔王ちゃん様とエル・クレア神ちゃん……何か、普通に仲良さげね?」

「確かに。神の勢力と魔王の勢力に分かれて、戦争だー!! みたいなのは無さそうか」

 そんなジェミーとビィトの言葉に、レーナがぼやく。

「その方が良いですよ。戦争なんて、碌なもんじゃないし」

 そう言って溜息を吐く彼女に、ジェミー達は「確かにね~」と苦笑するのだった。


************************************************************


『島の外に出たら薄まる我の加護を、アストラが与えたスキルオーブで増幅させるわけね。中々考えたじゃない』

『ふふっ、褒められたね。ところで神様は、どうしてここに?』

 魔王……アストラにそう問い掛けられて、エル・クレアは「あぁ、そうだった」と用件を思い出したらしい。

『コホン……異邦人である其方達が、この世界に訪れて一年となる。恐らく最初の頃と比べれば、見違える程に成長した事だろう』

 そう告げたエル・クレアは、先程の魔王の様にモニターを見詰めるプレイヤー達に向けて掌を広げてみせた。


 これはもしや? とジン達が考えると同時に、再度システム・ウィンドウがポップアップ。プレゼント欄に今度は、≪神の恵み≫というアイテムが届いていた。

『その札は其方達の努力と成長に対する、我からの恩寵。たった一度しか使えぬので、心しておく事だ』

 そう言うと、エル・クレアはふわりと浮かんでみせる。

『次にまみえる時は、更に成長した姿を見られる事を楽しみにしている。また会おう、異邦人達』

 去ろうとするエル・クレアを見て、アストラも「それじゃあ私も」と魔法陣を展開した。

『それじゃあ私も、そろそろ行かないと。またね、異邦人達……これからも、頑張ってね』

 その言葉と同時にアストラは魔法陣の中に消え、去って行った。残ったのは、運営メンバーだけである。


 二人が来る前に戻っただけなのだが、賑やかだった雰囲気が少し物寂しくなってしまう。そんな中、ボソッとシリウスが呟いた。

『……良かったー、エル・クレア神が「神の恵みをありがたく受け取れ!!」とか言い出さなくて』

『『『檀〇斗神!?』』』

 貴重なシリウスのボケに、レイモンド・オーウェン・アンナがバッチリ反応してみせた。嫌だよ、「ヴェハハハハ!!」とか笑うエクレア神ちゃんは。


『AWOの神様が、彼女で良かったですね……? えー、それでは今回配布された≪神の恵み≫について、重要な点を三つご説明します』

 前半は笑いを堪えつつ、後半はいつもの落ち着きを取り戻した様子でエリアが説明を始める。

『こちらは一度だけ、アバターのクリエイトをやり直せるアイテムとなります』

 アバターを再作成できる……この言葉に、プレイヤー達は驚きを隠せない。勿論、ジン達も同様だ。


『一点目ですが、使用出来るのはプレイヤーの皆様の任意のタイミングです。このアイテム使用期限は、来年の三月末日までとなります』

 要するに、一年間の内に使用して下さい……という事だろう。

『二点目として、このアイテムは他者への譲渡・売買は不可となります』

 もしこのアイテムを使用する気が無いとしても、誰かにあげたり売ったりは出来ないらしい。これも、当然と言えば当然だろう。

『そして三点目ですが、このアイテムを使用出来るのは重犯罪・軽犯罪歴のないプレイヤーに限ります。これはVRアカウントに紐づくので、アバターを再作成しても同様となります』

 そう告げたエリアは、いつもの柔和さを消し去った真剣な表情だった。


 プレイヤーが使用するアバターの見た目を、変える事が出来るアイテム……これを使って不正行為や詐欺行為等の悪用を考えるプレイヤーが出てくる可能性は、否定できない。その悪用防止措置として、運営が考えたのがこの三つのルールなのだろう。

 一番重要なのは、やはり三つ目。一度でも軽犯罪者イエロー重犯罪者レッドになったプレイヤーは、≪神の恵み≫を使ってアバターの外観を変える事が出来ない点だ。これはやはり、ルールに違反したペナルティの意味合いが強いのだろう。


************************************************************


 ヴィクトを除けば、一人も犯罪歴の無い【十人十色ヴェリアスカラー】の面々。大人メンバーは「少しだけ弄るか?」といった雰囲気だが、学生メンバー……特に若年層の多い【七色の橋】と【忍者ふぁんくらぶ】は、盛り上がっていた。

「ヒビキも背が伸びたし、現実の身長に出来るじゃーん!」

「あはは、そうだね! うん、そうしたいなぁ!」

「目線が低かったハヤテも、これで見納めかぁ」

「今、ジン兄と身長同じくらいッスからね~!」

「ハヅっちゃん、髪型変えられるんじゃない? 今、髪伸びてるよね!」

「あ、そうだね。うん、それも良いかも」


 やはり成長期の少年少女達は、アバター再作成に乗り気だった。現実の成長をアバターにも反映できるのであれば、是非! といった雰囲気である。

 そんな学生組の盛り上がりを、大人組は微笑ましく眺めているのだった。

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― 新着の感想 ―
まぁ部位欠損をVRでやるのは結構勇気がいるけど、年齢だけで無効化するには差が出過ぎるシステムだもんなぁ。 自キャラへの愛着や、成長期やリアルとの差による齟齬をある程度体験した今だからこそ調整できるっ…
見てはなくとも多少は知ってるからライダーネタ擦り倒してんなー、と思うけど知らない人から見たらなんか知らんネタ擦り倒してる……となりかねない回だった
部位欠損VRMMO系ではよくある仕様ですがそれで物議が上がるのは身体に障害を抱えるジンくんやヒメちゃんがメインを務める忍者ムーブならではでしょうか。運営の意図とか知りたいですね。
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