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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第二十章 第四エリアを目指しました

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20-41 追い掛けられました

 ホワイトデー前日の夜。ジン達は普段よりも早い時間に、まずギルドホーム……通称[虹の麓]に集まっていた。その理由は、今日が誕生日のカノンを祝う為だ。

『誕生日おめでとう!!』

「み、皆さん……その、あ……ありがとう……ござい、ます……」

 いつものたどたどしい口調ではあるが、口元を緩めて笑顔を浮かべるカノン。そんな彼女の様子に、集まった面々は誰もがほっこりしている。


 集まったメンバーは、勿論クラン総出ではない。ギルド【七色の橋】のメンバーと、クベラは出席者として確定だ。

 【桃園の誓い】からは、ギルドを代表してヴィヴィアンとラミィが出席している。これはカノンと特に親交が深いメンバーが、この二人だからだろう。

 【魔弾の射手】からは、ルナとシャインだ。丁度早めにログイン出来るし、同じ大学生なのでカノンとしても緊張せずに済むだろうというのが理由である。

 【忍者ふぁんくらぶ】からは、アヤメとイナズマ・ハヅキの三人。イナは半分身内であり、ハヅキは同じ生産職。そして、アヤメは二人の引率役だ。

 似た様な理由で【ラピュセル】からはアナスタシアと、カノンと同じ鍛冶系生産職のエウラリアが出席。

 そしていつも通りユージン・ケリィ夫妻と、リリィ・コヨミである。


 ちなみに今回は慣れ親しんだメンバーの中に、新しい顔が加わっている。とはいっても、プレイヤーやPACパックではない。

「それにしても、【ホリィ】を見て驚きました。コンよりも少し、身体が大きい子でしたね」

「うふふ、神獣ごとに差があるのかもしれないですね」

 ジンの言葉に答えながら、笑みを零すリリィ。彼女は抱きかかえた仔馬を、慈しむ様に優しく撫でている。

 真っ白な毛並みと、黒くつぶらな瞳。そして注意深く見ると、額に銀色の小さな角が生えているのが分かる。サイズとしては、少し大きめの犬くらいだろうか。ジンの肩に乗ることが出来るコンよりも、体格は大きめだ。

 この仔馬……仔一角獣が、昨日の夜に【神獣の卵】から孵ったリリィの神獣となった【ホリィ】だ。ちなみに、雌である。


 談笑するジンの肩にしがみついて、リリィに抱きかかえられるホリィをジッと見ていたコン。彼は何かを思いついたように、ぴょんとジンの肩から跳び下りた。

「コン、どうかした?」

 そう呼び掛けるジンを背に、コンは神獣じぶんたち用に取り分けられた皿からニンジンのマフィンを咥える。するとそのままリリィの足元に駆け寄って、ニンジンのマフィンを置いてみせた。


「コンちゃん、ホリィの為に持って来てくれたの?」

「コンッ!(そうだよ!)」

 どうやら自分より後に生まれた神獣だからか、コンはお兄ちゃんとしての自覚が芽生えたらしい。リリィがその可愛らしさと健気さに笑みを深め、抱きかかえていたホリィを床に下ろす。

「ありがとう、コンちゃん。ほら、ホリィ?」

 ホリィはリリィをチラッと見た後に、マフィンに視線を向け……そして、コンを見つめた。戸惑っているのだろうか、すぐには口を付けない。そんなホリィに対して、コンは「どうぞお食べ」と言わんばかりにマフィンを鼻で差し出す。


 ようやくホリィは、おずおずとニンジンのマフィンにかぶり付き……もぐもぐと何度か咀嚼して、ハッとた様子で顔を上げた。目を輝かせているあたり、よほど美味しかったのだろう。

「ヒィン……(美味しい……)」

 ホリィは一鳴きして、コンにマフィンを差し出す。

「コン?(いいの?)」

「プルル……!(一緒に食べよう……!)」

 神獣同士も、ちゃんと意思疎通が出来る模様。コンがそれを一口食べて、またホリィに差し出して……二匹は仲良く、一つのマフィンを分け合って食べていく。


 そんな愛らしい二匹の姿を見たジン達は、頬が緩みっぱなしである。

「この二匹のやり取りだけで、世界中から戦争が無くなると言っても過言じゃないのでは?」

「過言だと思いますよ? せめて、平和の象徴くらいにしておきましょう」

 ジンとリリィの発言に、同意する面々が半分。もう半分は、親バカだなと苦笑していた。しかし心和む光景なのは否定出来ないので、誰もツッコミを入れる事はしない。


「ちなみにリリィさん、ホリィちゃんはどんな能力を?」

 エウラリアが緩んだ表情でそう問い掛けると、リリィは一つ頷いて説明を始める。

「ホリィはどうやら水属性らしく、【水魔法の心得】を最初から持っていますね。あとは獣技として【踏み付け】がありますが、どちらかと言うと魔法主体のビルドが良さそうですね」


―――――――――――――――――――――――――――――――

 ■神獣名/レベル

 【ホリィ】Lv1

 ■種族/性別

 一角獣/♀

 ■契約プレイヤー

 【リリィ】

 ■ステータス

 【HP】50/50

 【MP】10/10

 【STR】10(+18) =28

 【VIT】10(+18) =28

 【AGI】10(+18) =28

 【DEX】10(+18) =28

 【INT】10(+20) =30

 【MND】10(+19) =29

 ■スキルスロット(3/3)

 【一角獣Lv1】【水魔法の心得Lv1】【未装備】

 ■装備

 無し

―――――――――――――――――――――――――――――――

 獣技【踏み付けLv1】

 効果:足による攻撃。攻撃時、STR+1%、AGI+2%。発動後、再使用まで10秒。

 Lv2 【(未習得)】

 Lv3 【(未習得)】

 Lv4 【(未習得)】

 Lv5 【(未習得)】

 Lv6 【(未習得)】

 Lv7 【(未習得)】

 Lv8 【(未習得)】

 Lv9 【(未習得)】

 Lv10【(未習得)】

―――――――――――――――――――――――――――――――


 ちなみにコンにも言えることだが、ホリィはプレイヤーのステータスポイントを譲渡する事が出来る。つまり、譲渡によって初期からステータスを強化する事が可能だ。生まれる前から既に、ホリィには【十人十色ヴェリアスカラー】のメンバー全員がステータスポイントを与えている。

 ちなみにPACパックのステータスポイントは、与える事が出来ない。これはPACパックのステータスをプレイヤーが管理しており、彼等の意思での譲渡に出来ないからだろう。


「神獣だけでなく、モンスターにもステータスポイントは譲渡できるんでしょうか? テイムも出来そうって話でしたけど……今はまだ、モンスターを連れ歩いているプレイヤーはいませんよね?」

 リリィがそう言うと、ユージンが「そうだね」と頷いてみせた。

「神獣を連れているのが、これまではジン君だけだっただろう? だから、事情を知らないプレイヤーは『モンスターを連れ歩けるのは一匹だけ』と考えている様だ。恐らく、今はどのモンスターをテイムするか吟味しているんじゃないかな」

 ユージンの予想を聞いて、ジン達も「成程」と納得する。もしも一体しかテイム出来ないのならば、慎重になるのも当然だろう。


「実際にそれが真実なのかは、試してみないと解らないですよね。うぅん……本当のところはどうなんでしょうか?」

 レンもいずれは自分の神獣を得たいと考えているらしく、モンスターをテイム出来るかどうかについては興味津々らしい。当然、彼女の狙いは自分のユニークスキル……【神獣・麒麟】に関わる神獣だ。

 そんなレンの疑問に、クベラが一つ頷く。

「答えを得るには、試してみるしかないやろな。今夜はエリアボス討伐の予定やから、明日にでもやってみよか! 正確な情報は、ええ商品になるしな!」

 そう言って笑うクベラは、冗談めかしたようでいて本気で言っているらしい。

 そんなクベラに、隣にいた本日の主役……カノンが、不思議そうに問い掛ける。

「それって、クベラさんが……モンスターを、テイム……するん、ですか?」

 カノンが言いたいのは、どうせするならば神獣契約じゃなくて良いのか? という点だ。


 それを理解しつつ、クベラはニッと笑みを浮かべてみせた。

「モチのロンや! 聞いた限りでは、神獣をゲット出来るのはエクストラクエストやろ? 流石に、ワイには難しそうやからなぁ。それやったら、浄化マップにおるモンスターと契約した方が話が早いやろ」

 クベラの発言を受けて、誕生日パーティーに参加する面々が「それはそうかも」と考えた。神獣を手に入れられるのは、エクストラクエストの報酬である可能性が高い。その点を考慮すると、一般的なプレイヤーは神獣ではなくモンスターのテイムが無難なのかもしれない。

 それに、実際にテイムモンスターを得たプレイヤーが増えた場合……もしかしたら、戦局に影響を及ぼすようになる可能性もある。現に、プレイヤー二人を乗せて移動できるコンの移動速度は早い。移動速度は広範囲なフィールドにおいて、非常に重要な要素となるのだ。

 それらも考慮するならば早い内に契約を済ませて、育成に力を入れる方が良いのかもしれない。誰もがそう考えて、真剣にモンスターのテイムを検討し始める。


************************************************************


 現実での時間が、そろそろ二十時になる頃合い。ジン達は今夜の攻略の為に、[ウィスタリア森林]のクラン拠点に転移した。

 転移したのは、八つの大部屋があるフロアに城の二階部分。ギルドホームとクランホームを繋ぐ部屋として、この八つの大部屋が用意されているからだ。ギルド用の部屋を出たジン達は、城内がざわついている事に気付く。

「何だか、下の階が騒がしいですね……」

「何かあったんでしょうか?」

 一階と二階は吹き抜けになっており、廊下の手摺から大エントランスホールを覗いてみる。するとそこには、クランメンバー達が集まっていた。何やら、難しい顔をしている様子である。


 ジン達は階段でエントランスホールに降りると、ケイン達も彼等の到着に気付いた。

「皆さん、どうかしましたか?」

「やぁ、皆。ちょっと困った事になっていてね……まぁその前に、お誕生日おめでとう、カノンさん」

「え? え、ど、どうも……ありがとう、ございます……」

 トラブルがあった様だが、それでもカノンの誕生日を祝う言葉を贈る仲間達。それどころではないと思うかもしれないが、ケイン達としては仲間の誕生日を祝うのはマストだったのだろう。


「それで、一体何があったんですか?」

「実はさっきから、クラン外のギルドが押し掛けて来ているんだ。それも彼等は、『アンジェリカについて、大事な話がある』と言って来たんだ」

 ケインの説明を聞いて、ジン達は目を丸くする。アンヘルの存在を知るプレイヤーが、わざわざこの[十色城]を訪ねて来た。これは決して、偶然では無いだろう。

「……それは、あまり良い展開ではありませんね。【天使の抱擁】の皆さんには、既に連絡を?」

「えぇ、レンちゃん。彼等も[ウィスタリア森林]に転移する寸前だったみたいで、鉢合わせを避ける事は出来たわ」

 ジェミーがそう説明した事で、ジン達も一先ずは最悪の事態は避けられたと胸を撫で下ろす。


「しかしここに来るという事は、アンジェリカさん……いえ、アンヘルさんが【十人十色ヴェリアスカラー】と関わりがあるとバレたんでしょうか? だとしたら、何故……」

「……あ、もしかしたらフレンドリストかもしれませんよ? アンヘルさん、アンジェリカさんだった頃に沢山のプレイヤーとフレンド登録をしていたはずですし!」

 そんなリリィとコヨミの会話を受けて、ジン達もその可能性が高いと判断した。未だにフレンド登録を解除していないプレイヤーも、一定数以上はいるはずだ。その中の誰かが、彼女の存在に気付いたのだろう。

 ここで問題になるのは、アンヘルとアンジェリカがイコールで結ばれた事。そして押し掛けたギルドの目的が、一体何かである。


「……まぁ、こうして押し掛けて来るくらいだ。どーせ、ろくでもない理由ッスね」

「同感ですね。【天使の抱擁】に罵声を浴びせるプレイヤーが、未だに居るくらいです。恐らくは、そういった類の連中なのでしょう」

 ハヤテの心底嫌そうな言葉に、アナスタシアも同意を示す。しかしながら、この状態を放置するのもよろしくはない。

 そこでジンは、ある事を思い付く。

「……多分フレンドリストで追い切れるのは、アンヘルさんが[ウィスタリア森林]に居るという事くらい……だよね?」

「あぁ、そうだね。フレンドリストでは”どのフィールドに居るか”くらいで、”フィールドマップのどこに居る”とまでは解らないはずだ」

 ユージンがフレンドリストの仕様について説明すると、ジンは「ですよね」と確信めいた顔で頷く。


「【天使の抱擁】のメンバーではなく、アンヘルさん個人……となると、元【天使の抱擁】のメンバーでは無いのかな? 彼女だけなら、まだ……」

「……あ、成程。ジン兄の考え、ちょっと解ったかも」

 ジンの呟きを耳にしたハヤテは、彼の考えを察したらしい。すぐにシステム・ウィンドウを開いて、マップを確認する。

「……うん、どーせなら離れた場所が良いッスね。今回は……うん、[オーア山地]がベストじゃないッスかね?」

「流石ハヤテ、頼りになるね。アンヘルさんはあの外見のままで良いとして……ユージンさん、変装に良い装備とかありますか? フルプレートは、流石に僕には重くて」

「ふむ、そうだね……あぁ、マジシャン風とかピエロ風とか、その辺の服がいくつかあるけど……目立つよ?」

「バレなければ、まぁ……」

 ジンが変装用の装備について言及し始めたことで、彼が何をやるつもりなのかを他のメンバーも理解し始めた。


「ついでにクベラさん、モンスターをテイムできるか試せそうですね」

「せやな。そしたら、ワイも一緒しよか。カノンさん、どないする?」

「わ、私も……い、一緒に、行き……ます……!」

「うーん、彼女と同性・同年代のプレイヤーが居た方が良いでしょうね」

「それなら、私が一緒に行きましょうか。アナはここに居た方が良いだろうし、ね?」

 次々とメンバーが立候補していき、結果七人のプレイヤーがユージンから変装用の装備を受け取る。そして彼等は【天使の抱擁】と連絡を取り合い、≪ポータル・オブジェクト≫を使って転移していった。


……


「という訳で、ひとまず適当にモンスターをテイム出来るか試しましょうか」

「うん? ……うん、解った」

 一人で[オーア山地]付近の町に来たアンヘルと合流して、ジン達は浄化マップを目指す。歩きで行っても、およそ十分程度で到着できる距離だ。

「アンヘルさんのフレンドって、【十人十色ヴェリアスカラー】や【天使の抱擁】のメンバーを除くと何人くらいなんですか?」

「んー……今だと、二百人くらい。でもアカウント凍結された【禁断の果実】のメンバーが含まれるから、実質八十人くらいになるのかな?」

 その人数を聞いて、ジン達は驚いてしまう。八十人ともなれば、十分フレンド人数が多い部類だ。

 ちなみに【禁断の果実】の件が公になる前だと、彼女のフレンドリストは千六百を超える数だった。もしそれを聞かされていたら、ジン達は更に驚いていただろう。


「【益者万友】はログイン状態のフレンド数だから、凍結された彼等はカウントされないね」

「……? もしかして、ユニークスキルの……うん、ここだとどこに誰が居るか解らないので、その話は落ち着いた時にしましょう」

「うん? あ、そうだね」

 アンヘルが持つユニークスキルには興味があるが、この場で話させることではないだろう。ジンが彼女に話の打ち切りを切り出せば、アンヘルは素直にそれを受け入れる。


 そうしてしばらく歩けば、[オーア山地]が見えて来た。公式掲示板に書き込みがあったお陰か、プレイヤーが大勢やって来ている様だ。

「これだけプレイヤーが居れば、そう簡単には見つからんやろな」

「あ、ありがたい……です、ね……という、か……クベラさん、ピエロ……似合います、ね?」

「せやろ?」

 ジン達が装備しているのは、ユージンお手製のサーカス団セット。奇術師やピエロなど、顔を隠していても違和感の無い風貌である。ちなみにメンバーは、ジン・ヒメノ・カノン・ジライヤ・アリッサ・クベラ・アンヘル・ヴィクトだ。


「成程……アバ名の非表示に、サーカス風の衣装であれば素性が隠せる……と。俺やアンヘルの外見も、今の君達と一緒ならそんなに目立たない。うん、良い手だ」

「後は押し掛けて来た人達が誰なのか解れば、フレンド登録を解除するだけで済むんですよね?」

「うん、姫。でもすぐにじゃなく、何度か追って来させるべきかな。浄化マップを転々として、最後のマップで追跡者の姿を見付けてフレ解除で良いと思う」

 少なくとも追跡者達が誰なのかは、今頃クラン拠点で把握しているはずだ。その情報を得られれば、対処は容易である。


 しかし、アンヘルはまだ気になる事がある様だ。

「……エリアボスの攻略は、大丈夫なのかな?」

 今夜はこの後、エリアボス攻略に挑む予定だ。その予定に支障は無いのだろうか? と、心配になったらしい。しかし、ジンは大丈夫だと言わんばかりに頷いてみせた。

「ハヤテとナタクが、教えてくれたんですが……あのダンジョン、インスタンスマップだったでしょう? だから、大丈夫なんですよ」

「はい! インスタンスマップに入っている間は、フレンドリストに居場所が表示されないみたいなんです!」

 ジンとヒメノの説明に、アンヘルとヴィクトは目を丸くして驚いた。

「そうなの? それは知らなかったな」

「そうだったのか……俺も初耳だよ、それ」


 そんな事を話しながら、ジン達は浄化マップに到着した。早速クベラは周囲を確認して、その辺りでのんびりしているモンスターを吟味する。

「おっ、おったおった……いやぁ、丁度ゲーム内が夜時間で助かったわ」

 彼が視線を向けているのは、フクロウ型のモンスターである【シャドウオウル】だ。

「シャドウオウルは、肉が好きやったな? ほーら、美味しい肉があるで」

 クベラが肉を差し出すと、シャドウオウルは警戒心など無いかの様に喰い付いた。その先細い嘴で肉を食していくと、あっという間に平らげてしまう。


 しばし餌付けをするクベラを見守っていたジン達は、システム・ウィンドウにメッセージが届いたのに気付く。差出人は、クラン拠点にいるヒイロ達だ。

『押しかけて来たのは、ギルド【摩天楼】。アンジェリカさんのフレンドだった、【ヴィッツ】っていうプレイヤーがフレンドリストに気付いたらしい』

 メッセージの内容を確認していくと、どうやらアンジェリカ=アンヘルという事に気付いたらしい。そして、彼女が[ウィスタリア森林]に居る事……それは【七色の橋】に対する、復讐の為だと考えている事を語ったそうだ。


「……また、こういうパターンか」

「まぁ実情を知らないと、そう考えるのも無理はないでしょうけど……それでも、視野が狭い気がするわね」

「あぁ……大事になる前に、さっさとケリを付けた方が良さそうだ」

 アリッサやジライヤの言う通り、【摩天楼】の語った内容には確証が無い。ただ状況証拠だけで、アンヘルが何かを企んでいると口にしているに過ぎないのだ。その状況を引き延ばすと、また大事に発展する危険性は低くないだろう。

「あ、念の為に言っておくね? 復讐とか、そういうのは考えていないよ」

 アンヘルがそんな事を言うので、ジン達が「勿論、解っています」と苦笑しながら返す。すると彼女は、はっきりと安堵の表情を浮かべていた。彼女なりに、ジン達に疑われるのは不本意だったのだろう事が分かる。


 そうこうしている内に、餌付けしていたカノンとクベラが戻って来る。

「おまっとさん! 上手くいったで!」

「テ、テイム……成功、だよ……!」

 実際にクベラの肩には、シャドウオウルが乗っている。警戒心のようなものは見受けられず、大人しいものだ。

「テイムに成功したら、【調教の心得】っちゅースキルが生えたで。レベルを上げてみんと解らへんけど、もしかしたらテイム枠も増やせるかもしれへんな。あと、ステータスポイントは譲渡出来へんみたいや」


―――――――――――――――――――――――――――――――

 スキルオーブ【調教の心得Lv1】

 説明:調教の習熟度を示す。

 効果:モンスターをテイムする際、好感度上昇率0.1%上昇。

 テイム数:1匹。

 コスト:10/10

―――――――――――――――――――――――――――――――

 武技【攻撃指示Lv1】

 効果:攻撃に対する指示をテイムモンスターが聞きやすくなる。

―――――――――――――――――――――――――――――――

 ■魔獣名/レベル

 【フク】Lv48

 ■種族/性別

 シャドウオウル/♂

 ■契約プレイヤー

 【クベラ】

 ■コスト

 10

 ■ステータス

 【HP】144/144

 【MP】57/57

 【STR】22

 【VIT】22

 【AGI】22

 【DEX】22

 【INT】33

 【MND】33

 ■スキルスロット(3/3)

 【フクロウLv5】【闇魔法の心得Lv5】【飛行Lv5】

 ■装備

 無し

―――――――――――――――――――――――――――――――


 神獣との契約には無かった、スキルオーブ追加。そして気になるのは、コスト表記だろう。シャドウオウルのコストは10で、クベラの現時点でのコスト最大値は10。つまりシャドウオウルことフクだけで、コストがいっぱいいっぱいという状態だ。

「契約数と、コスト……もしかしたら、強力なモンスターほどコストが重いのかも」

「逆にコストが軽いモンスターは、何匹か連れて行けるのかもしれないですね?」

 クベラが見せてくれたシステム・ウィンドウの表示を確認したジン達は、恐らくは初解禁されたモンスターのテイムについて意見を交わし合う。


 しかしそんな彼等の視界の隅に、一組のパーティの姿が入り込んだ。ジン達は不自然にならない様に気を付けながら、アンヘルの姿が見えない様に立ち位置を変えた。そしてそのまま、何かを相談するような陣形を取る。

「急げ、ここに()()()()()()()()()()!」

「絶対に逃がさないぞ……!!」

 そう口にして、[オーア山地]の町へと向かう面々。彼等がギルド【摩天楼】だろうと、ジン達はすぐに察した。その中の一人の顔を見て、アンヘルが小さく「あ……」と声を漏らす。

「居た……覚えてる、ファンだって言ってくれた人……」

 彼等に聞こえない様に、小さくそう呟くアンヘル。その声にはどこか、悲し気な声色だった。


――今の感情を取り戻しているアンヘルさんには、やはり堪えるんだろうな。


 彼女の心の痛みは、自分には推し測る事は出来ない。だが、自分達にも出来る事はあるはずだ。そう考えて、ジンは仲間達に声を掛ける。

「姫、アンヘルさん。彼等の姿が見えなくなったら、すぐに≪ポータル・オブジェクト≫でエリアボスの居るダンジョンに向かいましょう。他の皆は、予定通りに」

「「「「「「「了解」」」」」」」

 ヒイロ達にダンジョンへ直行する旨をメッセージで伝えて、ジン達はタイミングを見計らい移動を開始した。

 ジンとヒメノ、アンヘルは≪ポータル・オブジェクト≫で転移し、すぐにコンを呼び出してエリアボスダンジョンまで全速力で移動。事前に待機していたパーティメンバーとパーティを組んで、海底ダンジョンへと突入するのだった。

次回投稿予定日:2026/2/5(幕間)

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― 新着の感想 ―
我こそ正義!ってなってる状態は周りが見えないんだよなぁ…。 スロット一つ使うとはいえ、複数テイムできるとしたら強く運用できそうだなぁ。
祝え!から始まり追っかけ?強襲に終わる急転直下ここからがクライマックスでしょうか忍者の活躍が楽しみです。
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