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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第二十章 第四エリアを目指しました
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20-17 下層へ下りました

 ダンジョンアタックを開始して、ゲーム内時間で三時間が経過した。

 このダンジョンは迷宮というよりは、二つまたは三つの分岐を選んで進んでいく仕様らしい。恐らくモンスターが多い道か、少ない道……もしくは宝箱がある道か、罠がある道なのだろう。

 幸い危機的状況に陥る事は無く、ジン達はエリートゴブリン達を順調に倒しながら進んでいく。その道中、話題は第五回イベントで得られたスキルや装備の話になっていた。

「やはり四神スキルの有無は大きいね」

「そうですね~。でも、アクティブスキルは一日四回の制限がありますからね」

 第五回イベントで特に戦力向上に寄与するのは、四神がドロップする武装スキルだろう。第一回イベントと違ってスキルを選択する事は出来なかったが、どの四神スキルも強力な効果を有している。


 それ以外に得られた物としては、十連ガチャが出来る≪ミスリルチケット≫やボスモンスターがドロップする各種チケット。そしてイベントが終わった今、見た目装備となってしまった天使シリーズだ。

「そう言えば【七色】の皆は、≪エンブレム≫をそのまま装備しているんだね」

「はい、結構気に入っちゃって」

「他のは結構目立ちますけど、≪エンブレム≫はそこまで目立たないですから」

 ディーゴが言う通りジンは右肩、ヒメノは両目に≪エンジェリックエンブレム≫を装備したままだ。それぞれの選んだ≪エンジェリックエンブレム≫が、【七色の橋】の和風装備と親和性があるのも大きな要因である。

 ちなみにセンヤは、両目に輝きをイメージさせるもの。ヒビキは、右の鎖骨辺りに渦を巻く炎の様な≪エンジェリックエンブレム≫がある。


「ディーゴさんとクラウドさんは、どんなのにしたんですか?」

 センヤがそう問い掛けると、クラウドがフッと笑みを浮かべて答える。

「ウチは皆、猫のシルエットにしてあるんだ。猫に九生ありって言葉があるのは、知っているかな?」

「困難な状況を何度も乗り越えて、しぶとく生き残る……っていう意味でしたっけ」

「正解。ヒビキ君、よく知っていたね。その言葉にあやかったから、ウチの≪ギルドクレスト≫も猫を象ったものなんだよ」


 そんな会話をしていると、ジンがモンスターの存在を感知した。

「……【感知】でモンスターを確認したでゴザル。数は、三体……いきなり、少なくなったでゴザルな。となると……」

「……手強いモンスターの可能性が高い、だね?」

 ここまで十体から二十体のモンスターと戦って来たが、三体という少数はダンジョンアタック開始以来初めてだ。ジンの言葉を引き継いだディーゴの予想を耳にして、他のメンバーも表情を引き締め直す。


「ジン君、どう動くのが良いと思う?」

 クラウドがジンにそう問い掛けるのは、ジンが今回のパーティリーダーだからだ。ちなみにその問い掛けには、”銃の使用を解禁するか否か”も含まれている。

「まずはモンスターがアクティブになる範囲の外から、その様子を見て判断でどうでゴザルか? 判断材料は、一つでも多い方が良いと思うでゴザル」

 エリアボス戦までは、可能な限りアイテムの消費を抑えておきたい。特に各種≪ポーション≫とヒメノの矢、銃使いメンバーの弾丸は重要だ。

「了解。念の為に、俺は奇襲に備えて周囲を警戒しておこう」

 モンスターが物陰に隠れて、奇襲するのではないか? そんなニュアンスが込められた言葉にヒメノ・センヤ・ヒビキは驚いた表情を浮かべる。

 しかし今回の攻略で初めて遭遇したモンスター達は、より高度なAIを搭載していると考えられる。であれば、奇襲作戦等を行う可能性も否定は出来ないだろう。


「クラウドさんは右をお願いします、俺は左を……ヒビキ君、アルクと二人で後ろを警戒してくれるかな」

「……!! 挟み撃ちされない為に、ですね。解りました!」

 最後尾にヒビキとアルク、左右をクラウドとディーゴが警戒。これは、ヒメノ・ヒナ・シスルの後衛三人を守る布陣だ。

「もし拙者が討ち漏らした時の為に、センヤ殿とリンで中前衛を頼むでゴザル」

「了解ですっ!」

「承知しました、主様」


 ジンを先頭に警戒しながら進んで行くと、モンスターの姿が見えた。

「エリートゴブリンでは、無いみたいでゴザルな……」

 視線の先に居るのは、ゴブリンよりも大きな身体を持ったモンスターだ。ジン達は、そのモンスターに見覚えがあった。

「あれって、オーガ……ですよね?」

「でゴザルな。第二回イベントの、予選で戦ったモンスターでゴザル」

 しかもその三体は、オーガの中で最も強いオーガ・ジェネラルである。それがジン達には、不思議に思えた。

 オーガはゴブリン達同様に群れを形成するモンスターであり、オーガ・ジェネラルはそのリーダーだ。つまりオーガ・ジェネラルは他のオーガ達を従えており、その数は通常一体のみなのである。だというのに、リーダーであるオーガ・ジェネラルだけが三体。これはどうにも、不自然だ。


「……オーガ・ジェネラルが、手下を隠れさせているか……または、呼び出す可能性があるでゴザル。皆はオーガ・ジェネラルがアクティブになる、範囲スレスレの所で戦闘態勢。【魔弾】のお二人は、銃を装備して欲しいでゴザル」

 ジンの予想と、それを基にした指示。それを受けてパーティメンバー全員が、即座にその指示に応えていく。それを確認したジンは、両手に小太刀を携えて準備をする。

「数の暴力には慣れっこでゴザル。なれば我々は、質でそれを覆す。拙者が敵を分断するので、与しやすい方のオーガ達を処理して欲しいでゴザル」

 ジンがそんな事を言うと、クラウドが眉間に皴を寄せる……が、その皴はすぐに解れた。

「危険だ……と言いたい所だが、君は例外だね。うん、それなら問題なさそうだ」

「ディーゴさんの意見に、僕も同意です。むしろ、一番ジンさんらしいかも」

「ジンくん、準備オーケーです」

「こちらもいつでも動けます!」

「主様、どうかお気を付けて」

「いざという時の援護射撃は、俺達に任せてくれ」

 全員の準備が整えば、ジンは頷いて姿勢を屈める。


 一度深呼吸をして、ジンは鋭い視線をオーガ・ジェネラル達に向ける。油断も慢心も無い、全力を尽くす時の真っ直ぐな視線。それは、彼が本領を発揮する兆候だ。

「では、行くでゴザル……スーパー忍者タイム、いざ開幕!!」

 その言葉と同時に地面を蹴り、ジンはオーガ・ジェネラルに向けて全力疾走。そのままジンは中央のオーガ・ジェネラルの前で止まり、右手の≪小太刀・大狐丸≫を振るう。

「【一閃】!!」


 回避盾であるジンの役割は、モンスターのヘイトを稼いで自身にタゲを集める事。だからまずは小手調べ、そしてタゲ引きからだ。

 与えたダメージは、微々たるもの。しかし確実にジンはヘイト値を稼ぐことに成功し、三体のオーガ・ジェネラルはジンに視線を向けて威嚇の咆哮を上げた。

 そのまま、ジンに向けて攻撃を繰り出す……と思いきや、オーガ・ジェネラルは大剣を掲げて更に雄叫びを上げる。その雄叫びによって起きたのは、やはり予想通り……配下のオーガ達の召喚だった。

 地面に毒々しい赤紫の魔法陣が展開され、そこから姿を現すのはオーガタイプのモンスター達だ。

 そのモンスター達は、召喚されるや否やジンに攻撃を開始した。


――成程、召喚するまでは【感知の心得】では補足できない。三匹しかいないと油断して突っ込んだら、すぐに囲まれてしまうだろうし。しかし、この数は……!!


 オーガ達の攻撃を避けるジンは、思わずその表情を顰めてしまう。ジェネラルの召喚スキル自体は、予測範囲内でありそこまで驚いてはいない。だが、召喚魔法陣の数があまりにも多い。十や二十では収まらない数であり、そこからオーガ達が這い出てくるのだ。

 しかしながらジンは、冷静にオーガ達の攻撃を避けていく。その動きに、焦りはない。彼はそう簡単に困惑したり、取り乱す様な少年では無い。


――このパーティのリーダーであり、戦線を維持する屋台骨になるのは僕の役割だ……!!


 ジンは心の中でそう自分に言い聞かせて、思考を巡らせ……即座に一体のオーガ・ジェネラルに、攻撃を仕掛けた。

 オーガ軍団の数は予想外だったが、作戦事態に変更は無い。そして、それが出来るのはこのパーティにおいては自分が最も適任だ。

「鎌鼬の如く……【狐風こふう一閃いっせん】!!」

 両手の小太刀を振るって放つ、真空の刃。オーガ・ジェネラルと周囲のオーガ達の身体にダメージ・エフェクトが刻み込まれ、僅かではあるがそのHPを削る。ジンは即座にその場から飛び退き、更に地面を蹴ってもう一体のオーガ・ジェネラルの目前へ。

「雷鳴の如く!! 【狐雷こらい】!!」

 床に左手の≪小狐丸≫を突き刺せば、紫電が地面を駆け巡る。それに触れたオーガ・ジェネラルとオーガ達が、感電し麻痺状態に陥る。

 中央から左側のオーガ・ジェネラルとオーガ達の注意を引き付けて、ジンは最高速度で縦横無尽に駆け回る。

「疾風の如く!! 【クイックステップ】!!」

 ジンは唐突にオーガ達から距離を取り、呼吸を整える。そんなジンに向けて、ヘイト値が高まったオーガ達が追い縋る。


――よし、これなら……!!


 三十体の数の暴力で、プレイヤーを包囲する難関ポイント……それが、このエリアの趣旨なのだろう。しかしジンに掛かれば、モンスターのタゲを分散させ……その戦力を、分断する事も容易い事だった。

「目標、数は三十!」

「リーダー側へ十八、残りはこちらで片を付けよう」

 そんな声と同時に、銃声が数回鳴り響いた。SVU型≪マークスマンライフル≫を構えたクラウドと、AK15型≪アサルトライフル≫を構えたディーゴによる援護射撃だ。

「改めて、彼は凄いな……」

「全くです。でもこの数は、流石に不安要素もあります。彼の負担を軽減しましょう」


 更に矢が放たれ、オーガ・ソードマンのHPが一気に消失した。その攻撃が誰の放ったモノなのか、考えるまでも無い。クラウドが≪クロスボウ≫から≪マークスマンライフル≫に持ち替えた今、弓矢で攻撃するプレイヤーは彼女だけだ。

「ジン君! 大丈夫ですか?」

「拙者は大丈夫でゴザル!! 先に、間引きを!!」

「はいっ! すぐに済ませますね!」

 そのやり取りに、不安感や焦燥感は無い。何故ならばジンの後方にはヒメノが、ヒメノの前にはジンが居る。たったそれだけ、しかしそれこそが……二人がトップランカーとして名を馳せる、最大の要因である。


 ちなみに攻撃範囲ギリギリに味方を配置していたのは、確実にジンを狙わせる為だ。

 ここまでの道中でエリートゴブリン達が、ジンへのヘイトを無視して後衛や中前衛を攻撃する事が何度かあった。その原因は、より高性能になったAI。モンスターの戦況判断能力が、向上した事に起因しているのだろう。だからこそ、ヘイト値を無視した後衛への攻撃……それを防ぐ為に、真っ先にジンだけを認識させたのだ。

 そしてジンが苛烈なデバフ攻撃でよりヘイトを稼ぎ、【クイックステップ】で方向転換。ヘイト値を上げたモンスター達から、率先してジンに対し攻撃をする為に行動するだろう。なにせ、相手はジン以外を認識できていないのだから。

 そして、そこからが本番。あまりヘイト値が上がっていない、残ったモンスター……これらの処理を、攻撃範囲内に突撃したヒメノ達が担当。分断されたモンスター達を一気に攻撃し、早い内にその勢力を削いでおく作戦である。


 この作戦のキモはやはり、ジンとヒメノという超特化型プレイヤーの得意分野の分担。そしてディーゴとクラウドが持つ、VIT値を無視して固定ダメージを与える事が出来る銃という武器の存在。加えてジンの【九尾の狐】を共有するリン、ヒメノと【エレメンタルアロー】を共有するヒナの存在も大きい。

 そして、もう一人……新たな力を引っ提げた少女が、得意の抜刀術を繰り出した。

「【チェイサー】!!」

 それは[試練の塔]で暗躍した、元【漆黒の旅団】の首魁・ディグル……転生したズークのシミターに付与されていた、武装スキル。デスペナルティによりドロップしたシミターから、【合成鍛冶】を駆使して武装スキルだけ継承させたのである。誰がやったかは、言うに及ばないだろう……それはまぎれもなくヤツさ。

「【一閃】!!」


―――――――――――――――――――――――――――――――

 武装スキル【チェイサーLv3】

 効果:消費MP40。スキル発動後、最初の攻撃から0.9秒後に追加攻撃を発動。

 追加攻撃の威力は、最初の攻撃の二割の数値となる。

―――――――――――――――――――――――――――――――


 センヤの放った【一閃】の攻撃がオーガ・スカウトに命中すると、その直後に追加攻撃が二度発動した。見た目の様子は、ジンの【空狐くうこ】によく似た性能である。

 勿論、ユニークスキルの魔技と同じ性能という事は無い。異なる部分と言えば、追加攻撃が一発だけではない点が一つ。代わりにその分、MP消費量は高いし威力も低いのが大きな点か。だがそれも、スキルレベルを上げる事で性能を上げる事は可能だ。

 なにせLv1の時点では消費MPは50で、追加攻撃は1秒に一度……そして、攻撃力は一割だったのだ。その数値の変化から予測すれば、最終的にどの様な性能になるのか解るだろう。


 尚、ジンがこの武装スキルをセンヤに託す事にしたのは、彼女ならばこれを使うことで更に戦術の幅が広がると考えたのが一つ。

 もう一つは……()()()()()ならば、彼女が喜ぶと思ったからだった。

「【チェイサー】……【ハードナックル】ッ!!」

 右腕に装着した籠手で、オーガ・ソードマンを強打するのはヒビキだ。その一撃の直後、追加攻撃が一度発動し更にオーガ・ソードマンのHPを削る。

 ヒビキも運良く、[試練の塔]の攻略中に手に入れた≪魔札≫で武装スキル【チェイサー】を入手。それを見たジンが、センヤに【チェイサー】の継承を持ち掛けたのだ。


 そんな切り札を新たに手にした二人に続き、リンとアルクが追撃を仕掛ける。

「アルク、左の二体をお願いします。右はの方は、任せて下さい」

「了解です、リンさん!」

「シスルちゃんは攻撃に専念して大丈夫です! バフと回復は、私にお任せです!」

「解りました、ヒナ先輩!」

 PACパック同士で組ませても、連携してみせるのが【七色の橋】の強みの一つ。PACパック達との信頼関係の強さは、AWOでもトップクラスなのは間違いないだろう。

 更にAIの限界を超え、感情を獲得したPACパック……リンとヒナの存在は、とてつもなく大きい。


 そんな少年少女とPACパック達を狙い、大剣を片手に接近するオーガ・ジェネラル。ここまでの立ち回りにおいて、オーガ・ジェネラルはノーマークだった。

 勿論それにも、ちゃんと理由がある。

「【スパイラルショット】!!」

 ヒメノはずっと、前衛メンバーの援護をしながら機を伺っていた。それは勿論、彼女の持ち味……最高峰のSTRを籠めた攻撃を、オーガ・ジェネラルに放つ為に。

 ヒメノの一撃を喰らったオーガ・ジェネラルのHPは、一気に激減した。だがそのHPバーには、まだ一割程の光が灯されている。


 オーガ・ジェネラルがヒメノを睨み、彼女を攻撃すべく足を踏み出した瞬間……銃声が響き渡ると同時に、その頭部に連続して弾丸が撃ち込まれる。

 そのヘッドショットによって与えられた固定ダメージが、オーガ・ジェネラルのHPを削り切った。オーガ・ジェネラルは後ろ側に、力なく倒れてそのまま動かなくなった。

「目標、沈黙」

「了解。援護射撃を継続する」

 前衛の動きに合わせて移動しながら、ヒメノとヒナ・シスルに注意が向かない様にヘイト管理をしていたディーゴとクラウド。その動きと判断力は並のプレイヤーを凌駕しており、武装を銃に切り替えた事でその精度が更に上がっている。


 それと時を同じくしてジンの方でも、激しい攻撃の応酬が繰り広げられていた。しかしオーガ達の攻撃はジンには一度も触れる事は無く、逆にジンの攻撃は確実に当たっていく。

 だがジンはヘイトを十分に稼いだタイミングで、武技や魔技の使用を控えていた。それはMPの温存と、技後硬直による隙を晒さない為である。

 そんな訳で二体のオーガ・ジェネラルと、それに付き従うオーガ達のHPはまだ半分以上残っている。しかしジンの攻撃が、片方のオーガ・ジェネラルに命中した瞬間……彼の持つ切り札が、その効果を発動させた。


――【ディザスター】。


 低確率で攻撃に即死効果を与える、ユニークスキル【クライシスサバイブ】のパッシブスキル。それによってオーガ・ジェネラルのHPバーが砕け散り、その巨体は糸が切れた人形の様に地面に転がった。

「……運が良いでゴザルな」

 そう口にしたジンは、ヒット・アンド・アウェイを継続。もう一体のオーガ・ジェネラルに注意しつつ、十数体のオーガの攻撃を避け続ける。

 一撃でも攻撃を喰らえば、戦闘不能にはならずとも大ダメージ。普通のプレイヤーであれば緊張が高まってミスプレイをしたり、冷静に状況を分析出来ずに攻撃に比重を傾けるだろう。

 そんな状況でありながら、ジンはひたすら冷静に、慎重に、確実に攻撃を回避。そして少しでもダメージを与えられる様に鋭く、素早く、正確に攻撃を叩き込む。恐るべきは、その集中力と判断力か。


 そして三分の一のオーガ部隊を処理し切ったヒメノ達が、ジンの方へ合流する。

 既に残るオーガ・ジェネラルは一体、そして味方と連携して動ける状況下。そこでジンは、標的を定める。

「【一閃】!!」

 迫る味方に気付いて、標的を変更しようとしていたオーガ・シールダー。そのタゲが自分から外れた瞬間を狙い、その首元に【一閃】を叩き込んだジン。更にジンは素早く右手の≪大狐丸≫を鞘に納めて、苦無を頭上に投擲する。

「朝露の如く……【狐雨こさめ】!!」

 魔技を発動させれば、オーガ達の頭上から雨が降り注ぐ。それによってオーガ達は、ランダムなデバフ効果を付与された。

 デバフの発動により、上昇するジンのヘイト値。オーガ達の注意は、完全にジンに引き付けられる。

 その間にヒメノとディーゴ・クラウドが、ヒナとシスルによるバフを受けつつオーガ・ジェネラルに向けて攻撃。そしてセンヤ・ヒビキ・リン・アルクがジンと共に、オーガ達を担当。

 そうして合流から一分足らずで、オーガ軍団は完全に壊滅したのだった。


************************************************************


 オーガ軍団との戦闘を終えると、戦闘の舞台となった部屋の中心に変化が生じた。部屋の中央の床面に、光の柱が発生したのだ。

「もしかしたら、この中に入る事で海底に向かえるんじゃないかな」

 ディーゴの予想は、全員が考えていた事だった。部屋を確認するが、次のエリアに繋がる通路は無い。つまりここは行き止まりで、先に進むには光の柱を使うしか無いのだろう。

「始まりの町の、噴水くらいの大きさですね」

「十人なら、全員が入れそうじゃない? 一人一人だと、先に進めないんじゃないかな」

 実際にそうなのかを試すべく最初にジンとヒメノ、そしてリンとヒナが入るが特に変化は起きない。次いでディーゴ・クラウドが入り、最後にセンヤ・ヒビキ・シスル・アルクが光の柱に入った。そこで初めて、ジン達の身体アバターが光となって掻き消えた。


 ジン達の視界が回復すると同時に、十人の周囲を覆っていた光の柱が消失。そして彼等が立っているのは、先程の戦闘向けに用意された大部屋とは違い小さな部屋だった。その部屋の先には、ダンジョンの奥に通じるであろう通路が伸びている。

「成程、やはりこうやって海底を目指すのでゴザルな」

「今、どのくらいの深さなんでしょうね?」

「これが最下層……と、上手くは行かないだろうな……」

「最初の階層よりも、敵も強くなるかもしれないですね」

 このダンジョンアタックは、ここから第二段階へと移行し始める。それを確信したジン達は改めて、気を引き締め直すのだった。

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― 新着の感想 ―
安心して見てられる戦闘 VCが苦戦するイメージが湧きません 仮にVCが苦戦するなら それはバグでしかないかと………w それ程に 頭領様 姫様 の存在が際立ってます ………偽物の頭領様 偽物の姫様を当て…
消耗してきた所に少数精鋭を当てられると思いきや召喚でフェイントするとかなかなか…。 でもジン的には数が多いなら回避カウンター増せるか?
>まぎれもなくヤツさ。生産おじさんことユージンさんですねわかります。きっとノリノリでやったんでしょうねその光景が目に浮かぶようです。
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