19-28 二月二十一日(2)
バースデーケーキを堪能した後は、お待ちかねの誕生日プレゼントが贈られる時間となる。まず、先陣を切るのは俊明と撫子……そして同じタイミングで、大将と聖からだ。
「実は四人で相談していて、姫乃ちゃんと揃いの物にしたんだ」
「うふふ、正式に婚約している訳だから、こういうのも良いでしょ?」
四人が用意したのは、姫乃と一緒に使う食器だった。俊明は茶碗、撫子は御椀、大将が箸、聖がマグカップである。勿論これは仁が、そして寺野家にお泊りする際に姫乃が使用する為の物だ。
次に英雄からのプレゼントなのだが、英雄からはワイヤレスイヤホンが贈られる。
「休憩する時とかに、好きな音楽とか流すとリラックスできると思うよ。俺が使っているのと同じタイプで、使い心地も結構良いから試して欲しい」
「おぉ……ありがとう!!」
これは仁が持っていない物でありつつ、実用面にも長けている選択だった。勿論仁がイヤホンを付けるのが嫌とか、そういう訳ではないのもリサーチ済みである。
そして恋と鳴子から贈られたのは、仁達も予想外の物だった。
「こちらは仁さんが歩く時に、足をサポートする器具です。従来の歩行補助具よりも軽量化、小型化されています」
「これならば日々の通学や姫乃様との外出でも、お役に立つかと」
「……凄い物が出て来た……!? これ、結構高いのでは!?」
このプレゼント資金は恋と鳴子で折半というだけはでなく、秀頼と乙姫からも出しているらしい。一体、幾らぐらいなのか。
最後のトリは、やはり姫乃だ。
「それじゃあ仁くん……私からの、誕生日プレゼントです♪」
そう言って差し出されたのは、包装紙でラッピングされた長方形の物。姫乃からそれを受け取って、包装を解く許可を得た仁は丁寧に包装紙を剥がしていく。
「……これは、弁当箱?」
それは二段重ねタイプの、オーソドックスな弁当箱だった。蓋の部分に箸・スプーン・フォークを収められる、使い勝手も良さそうな品。容量も大きすぎず、小さすぎずで仁の食べる量にピッタリだ。
「ありがとう、姫。大切に使わせて貰うね」
「あ、このプレゼントなんですけど……ただ、お弁当箱を渡すだけじゃないんです」
姫乃がそう言って、寺野家・星波家の親に視線を向ける。親達は笑顔で頷いて、姫乃に先を促していた。
「学校に行く時の仁くんのお弁当、私が作っても良いですか?」
これが姫乃が考えた、仁への誕生日プレゼント。仁の為に、愛妻弁当を作るのが本当の贈り物であった。
「えっ……い、良いの? 材料費とかも、あるんじゃあ……」
仁がそう言えば、苦笑して頷いたのは撫子だ。
「そうね。姫乃ちゃんから相談されて、私もそう思ったの。それで、大将さんと聖さんにも相談をしてね。姫乃ちゃんにお弁当の材料費を負担させる訳にはいかないし、私達からお小遣いを出そうかって」
「流石にそれはそれで、こっちも申し訳ないじゃない? それに親が子供の為に弁当を作るのも、ある種の楽しみではあるものだし。毎日用意するのは、大変っていうのはあるんだけど」
同じ様に苦笑気味の聖がそう言うと、大将が最終的な落としどころについて説明する。
「それらを踏まえて私達が話し合った結果、姫乃が弁当を作るのは月・水・金の週三日という事になる。どうだい、仁君」
毎日ではなくとも、姫乃の作った物を食べられる。それは仁としても、非常に魅力的な話だ。
「い、良いんですか?」
「ははは、安心して良い。これは、私達と姫乃、全員で納得した結論だよ」
仁を安心させるように大将がそう言うと、姫乃が仁の手に自分の手を重ねる。
「どう……ですか?」
そう言って、姫乃は微笑む。それは仁の為に、何かしてあげたいと考えている時に見せる笑顔だ。
仁が嫌がっている訳ではなく、自分や互いの両親に負担をかけるのではないか? という事を気にしているだけであると、姫乃も理解している。だから、不安に思う事は無い。
そんな姫乃に、仁もこれ以上の固持は出来なかった。
「ありがとう、姫……宜しくお願いします」
「はいっ♪」
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「ハッピィィィバァァスデェェッ!!」
「どこのファウンデーションの社長ですか!? あと、ありがとうございます!?」
これはジンとヒメノが、クラン拠点に入った瞬間のことだった。のっけからユージンによる、●上ファウンデーションの社長のネタで出迎えられた本日の主役である。
帰宅する星波家と恋・鳴子を見送った、仁と姫乃。本来ならばパーティーの後の片付けやらが、多かれ少なかれあるのが常だろう。しかし仲間達が待ち侘びている事を察して、後片付けを買って出てくれた俊明と撫子……そんな寺野夫妻の厚意に、今日ばかりは甘える事にしてAWOにログインしたのだが……。
「ジン君、誕生日おめでとう! 本当はそっちに行って、一緒にお祝いしたかったんだけどなぁ」
「うおぉっ!? ね、姉さん!?」
そう言ってジンを出迎えた瞬間に抱き締めるのは、自他共に認めるジンのお姉ちゃんなミモリだ。お姉ちゃん的には、本来ならジンの誕生日を直接お祝いしたかったのだろう。
ちなみにその様子を見て、ヒメノは曇りない笑顔でウンウンと頷いている。既に、ミモリお姉ちゃんを完全に受け入れたらしい。
「ジ、ジン君……お誕生日、おめでとう……」
「十六歳の誕生日、おめでとうジン君。RAINは送っとったけど、やっぱ口でも伝えときたい思うてな」
「おめでとうございます、ジン君。この新たな一年が、ジン君にとって幸福で実りある年になる事を祈りますね」
ユージンとミモリの圧とは異なり、穏やかな距離感で送られる誕生日の祝福の言葉。引っ込み思案なカノン、大人なクベラとケリィらしいものだ。
「……もしかして、待っていてくれたんですか?」
「ふふっ、気にしないで良いんですよ。私達がしたくてしている事です」
ちなみにジンの誕生日パーティーに出席したヒイロ・レン・シオンもまだログインはしていない。また、受験組とその家族、そして恋人達もまだらしい。
ハヤテは相田家に加え、巡音家も招いて受験のお疲れ会。同様にナタクも、名井家家・新田家勢揃いで外食。イナズマとハヅキも、それぞれの家族と打ち上げ会らしい。当然そうなると、イナズマの兄であるイカヅチもそちらに参加。
なので今夜の【七色の橋】は、ほぼ全員遅めのログインなのだ。
ちなみにクランとして誕生日会を行うと、メンバー数がそれなりにいるので頻繁にパーティーを開く事になってしまう。という事で、誕生日会はやらない方針だ。
ただし各ギルド単位で、簡単なプレゼントを贈るという事で話は付いている。そうなったきっかけは、あるギルドがどうしても……どうしてもクラン結成後最初に誕生日を迎えるジンに、プレゼントを贈りたいと考えていた。というか考えるだけでなく、口に出していた。そして既に、プレゼントの用意が進んでいたからである。
はい、お察しの通り原因は【忍者ふぁんくらぶ】ですね。
ちなみにそんな【忍者ふぁんくらぶ】が、ジンのログインを待ち構えているのではないか? と思われるだろう。しかしながら、そんな事は無い。
なにせ、ジン直々に「先に攻略を進めておいて欲しい」とお願いしたので。指示ではない、お願いだ。あちら側がどう受け取ろうと、ジンとしてはお願いしたのだ。
それはさておき、ジンの誕生日を祝う為に待っていたミモリ達。無事にお祝いの言葉を伝えられたら、そのまま攻略へ行くのかと思いきやそうではないらしい。というのもユージンやミモリ、ケリィがテーブルの上にお茶やケーキを用意していくのだ。
「えーと、これは……?」
「ささやかやけど、お祝いしよかってな。他の皆がログインするまで、少しのんびりしてもええやろ?」
「ジン君の、お誕生日……だから、ね? 私達も、その……お祝い、してあげたい……から」
申し訳ないと思いつつも、その気持ちは素直に嬉しいものだ。それにここまで用意してくれているのだから、それを無駄にするのは薄情だろう。
「ありがとうございます……それじゃあ、お言葉に甘えて」
……
ジンの誕生日を祝うお茶会は、和やかな雰囲気に包まれながら続く。そうして二十一時を回る頃に、仲間達が続々とログインして来た。
ヒイロとレン、シオンが連れ立って[十色城]にやって来た後、次いでハヤテ・アイネと、センヤ・ネオン・ヒビキ・ナタクの四人。勿論、そのタイミングでラミィも一緒にやって来る。
「お誕生日おめでとうございます、ジンさん!」
「お誕生日おめでとう、ジン君」
「ありがとう、ヒビキ。ラミィ先輩も、ありがとうございます」
他の面々とは午前中の内に顔を合わせていたものの、改めて祝いの言葉を受けて談笑する。お茶会の人数が増えた形だが、ユージン達もそれは計算していたらしい。まだまだケーキやお茶は用意されており、メンバーが増える度にテーブルにそれらが並べられていく。
そうして最後にイカヅチと、イナズマ・ハヅキが姿を見せた。
「よぉ……誕生日、おめでとさん」
「「頭領様、お誕生日おめでとうございます!!」」
「ありがとう、イカヅチ。イナズマさんとハヅキさんも、ありがとう」
ちなみに彼等と攻略パーティを組む面々は、今日はログインが遅れる事を聞いていた。なのであらかじめ他メンバーとパーティを組むか、外部とのマッチングを想定して攻略に向かっている。
そうして仲間達が揃った所で、遅ればせながら攻略へと出発。ジン達とミモリ達のパーティはこれまで通りだが、ヒイロ達は今回は編成を変える事になっている。
ヒイロのパーティにセンヤ・ヒビキが加わり、ハヤテのパーティにナタク・ネオン・ラミィが参加。今夜はこの組み合わせでの攻略だ。そこにPACが加わるので、バランスは非常に良い編成といえるだろう。
とはいえ現実での二十二時半には、攻略を切り上げる必要がある。約一時間半……ゲーム内での時間は三倍に加速しているので、攻略に費やせる時間は約四時間半。この時間で、どこまで最上階に迫る事が出来るかだろう。
早速攻略に向かうのだが、そこでユージンから待ったが掛かった。
「そうだ、ジン君。これはささやかだが、誕生日プレゼントだよ」
そう言って、ユージンがシステム・ウィンドウを操作する。プレゼント機能で贈られたのは、あるアイテムだった。その名も≪影人の残骸≫という、第三エリアにあるダンジョン[影の迷宮]に居るボスモンスター【シャドウプロウラー】がドロップするアイテムである。ちなみにこれは確率でドロップする素材であり、レアドロップの部類に入る。しかもそれが、三十個も贈られたのだ。
「ユージンさん? これってまさか……?」
「そう、【分身】の限界突破素材だよ。これなら、三回は限界突破出来るはずさ」
シャドウプロウラーは徘徊型のボスで、迷宮内で遭遇するのも面倒な相手だ。ささやかって、どういう意味でしたっけ?
ちなみに【分身】を限界突破する場合、一人ずつ召喚できる分身NPCが増えるだろう。三回の限界突破となると、三体だ。つまりそれは、八体の分身NPCを召喚する事が可能になるという事である。ジン本人を合わせて、九人。これは恐らく、【九尾の狐】にちなんだはずだ。
「遠慮は要らないよ、なにせ他に必要としている仲間は居ないからね」
「か、重ね重ね、ありがとうございます……」
ひとまずジンは、限界突破を一回実行しておく。ここから更に、スキルレベルを上げていく必要がある訳だ。
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いよいよ六百八十階層から攻略を始めるジン達だが、流石に登場するボスも硬くなっている。その為、一階層を攻略するのも時間が掛かる。
どうにか六百九十階層に到達し、現れたプリンシパリティを倒し切ったジン達。その時点で報告会の時間が近い為、ジン達は攻略を切り上げる事にした。
「これで残り十階層ですね!」
「最後のボスが、どんななのか気になるでゴザルな」
もしかしたら、他の誰かは既に七百階層に到達しているのではないか? そんな事を心の隅で考えるジンだが、一番乗りに拘っている訳ではない。
それに今日はたくさんの人達に祝われて、本当に最高の誕生日だ。だからそれ以上を望むのは贅沢だろうと思い、仲間達と共に[十色城]へと帰還する。
大広間には既に、半数以上の仲間達が集まっていた。ポータル・オブジェクトの前にジン達が現れると、皆はすぐに立ち上がってジンへと歩み寄る。
「お帰り、皆。そしてジン君、ハッピーバースデー!!」
「おーい、今日の主役が帰って来たぞー!!」
「十六歳の誕生日、おめでとう!!」
「頭領様!! お誕生日おめでとうございます!!」
仲間達の誰もが笑顔で、ジンの誕生日を祝ってくれる。その様子を見て、ジンは戸惑いながらも喜びで胸の中が満たされていくのを感じていた。
「皆さん、ありがとうございます!」
全員が集まって報告会が始まれば、今日の探索結果について発表される。そこで一部のパーティが、七百階層に到達した事を発表した。七百階層に挑戦する事が出来たのは、ケインチーム・ジェミーチーム・レーナチーム・アヤメチーム・アナスタシアチームだ。だが残念ながら、攻略には至らなかったと言う。
「七百階層には、五体の天使が待ち構えているんだが……それが実に厄介な能力を備えていたんだ」
「私達の姿とステータス、そしてスキルや武器までコピーしたのよ」
「銃も勿論、コピーされたわ。マガジンを交換していたから、恐らく所持品もコピーされているはず」
その情報を聞いて、大半のメンバーがざわめいた。なにせ強いプレイヤーであればある程、敵の能力も強化されるという事だ。そして、強力なスキルもコピーされてしまう。
――つまり、僕をコピーした天使は【九尾の狐】や【クライシスサバイブ】も使える……? それは相当、厄介だな。
自分自身と戦った経験があるプレイヤーは、まだ居ないだろう。七百階層の攻略は、相当骨が折れるはずだ。
この最後にして最大の難関に、果たして攻略法はあるのだろうか? そんな事をジンが考えていると、報告は早々に終わったらしい。
現状、全てのパーティがボスラッシュに挑んでおり、七百階層以外のボスは既知の相手だ。故に攻略法も出揃っているので、報告内容に真新しいものが無いのである。
「さて、それじゃあ報告会は終わりとして……」
「ふふっ……今日の主役であるジン君に、プレゼントと行きましょうか」
ケインとジェミーがそう言うと、ヒイロが立ち上がってジンに呼び掛ける。
「ジン、こっち来て」
「あー、了解でゴザル」
仲間達の視線を集めながら、ギルドマスター達が待つ場所へ向かうジン。百名程の視線を集めるのは、人によっては緊張しそうだが……そこはやはり、元・陸上界期待の星。人に注目されて来た経験があるので、ジンはそこまで緊張はせずに済んでいる。
「それじゃあ、俺達からのプレゼントはこれ。皆で作った、ジン君専用の≪中華衣装≫だ」
「おぉ……っ!? これは……!!」
ケインがシステム・ウィンドウを操作すると、その目の前に≪中華衣装≫を着用したマネキンが現れた。
今ジンが持っている【桃園の誓い】風の中華衣装は、販売する店売りの物と同様だ。しかし今回新たに製作されたのは、イメージカラーである紫色をメインにした新デザイン。つまりジン専用に作られた、新しい≪中華風衣装≫なのだ。前垂れには九尾の狐を思わせる刺繍もされているが、これはジンの最大強化した≪エンジェリックエンブレム≫と同じものだ。
「そして私達【魔弾の射手】からは、これね。ジン君に合わせて製作した、≪タクティカルウェア≫と≪タクティカルベルト≫!」
「えっ……!? 【魔弾】の皆さんからも!?」
黒のタンクトップシャツと、レザーパンツは【魔弾の射手】の面々と同じ。そして銃火器や替えのマガジンの代わりに、手裏剣や苦無を収める為の≪タクティカルベルト≫。所々にあるボタンは、紫色のスミレを模したものになっている。
「えーと……私達が先で良いのですね? 【ラピュセル】一同からは、こちらを贈らせて頂きます。ジンさん向けに調整した、≪ホーリークロス≫と≪ホーリーアーマー≫です」
「おぉ……これも、【ラピュセル】の皆さんの物に似た感じなんですね……!!」
先程の【魔弾の射手】風の物と対象になるように、白がメインのトップスとズボン。そしてAGI重視のジンに向けて調整された、軽装鎧が添えられた装備である。【ラピュセル】のシンボルとされている天使の翼のワンポイントアクセサリーは、やはりジンのイメージカラーである紫色だ。
ここまで来ると、【忍者ふぁんくらぶ】も≪忍者衣装≫で来るか? と思うだろう。しかしやはり、彼等は一味違った。
「頭領様。我々【忍者ふぁんくらぶ】からは、こちらをご用意致しました」
差し出されたのは、小さな箱。アヤメがそれを開けると、イヤリングが二つ入っていた。しかし、その形はそれぞれ違う。
「姫様と御一緒に付けて頂ければと考えてデザイン、製作したアクセサリーになります。こうして重ねると頭領様の頭文字のJと、姫様の頭文字のHが完成します」
「本当だ……これ、デザインを一から? え、凄い……」
それぞれ一つでも見事なデザインだが、組み合わせる事で完成するペアのイヤリング。思った以上に素晴らしい物が出て来て、ジンは思わず素で驚いてしまうのだった。
これで終わりかと思いきや、ヒイロとユージンが並んで歩み寄る。
「……えーと、もしかして?」
「そ、俺達からもあるよ」
「我々フリー組も、【七色】の皆に協力させて貰ったんだ」
フリーランス代表は、ユージンらしい。ジンの初めてのフレンドであり、長らく【七色の橋】をサポートし続けて来た彼だ。他のフリーランスの面々も、彼が最適だろうと考えた結果である。
「皆がプレゼントに衣装系を贈ったのは、[試練の塔]で手に入った≪カレイドスタイル≫で見た目を変更できるからだ。今の≪疾走夜天≫の性能はそのままに、見た目だけを変えられるのがあれの良い所だね」
今回のイベントで手に入った≪カレイドスタイル≫は、四つ。そしてここまで三つのギルドから、衣装を贈られた形となる。となると、最後の一つの枠になるのだろう。
「って事で、俺達が用意したのはこれ。≪絢爛忍衣・疾走夜天≫だよ」
従来の≪忍衣・疾走夜天≫が、更に華やかになったその衣装。絢爛という言葉を添えるだけあって、実に素晴らしい和装である。
「これは【九尾の狐】を発動した時とかに、更に見栄えがする様にデザインしたんだよ。勿論、センヤ君が」
「それだけじゃなくて、≪ギルドフラッグ≫発動時もね。後で設定しておいて、今度試して欲しい」
どうやらゲーム的な面も考慮した、最新デザイン衣装だったらしい。ちなみに他のプレゼントも同様だが、完全に見た目重視で用意された品だ。故に性能は、既存の≪疾走夜天≫の方が高いらしい。なのでこれらは、全て≪カレイドスタイル≫を前提としたプレゼントとなっている。
「どうしよう、言葉が出ないくらい嬉しい……」
四つの衣装と、ペアのイヤリング。どれも自分の事を考えて用意してくれた、心の籠った物だ。それに【桃園の誓い】【魔弾の射手】【ラピュセル】が用意したプレゼントは、自分達のギルドを象徴する装備に寄せた意匠。それは「ギルドメンバー同然に、ジンの事を大切に思っている」という意思の表れだ。
それだけ、信頼し大切にされている。その実感が、ジンの胸を熱くする。
「本当に、これまでで一番幸せな誕生日です……皆さん、本当にありがとうございます……!!」
改めて、ジンは思う。
アナザーワールド・オンラインを始めて、そして彼等と出会えて良かったと。