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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十九章 第五回イベントに参加しました・弐
536/573

19-23 事態が収束しました

 トップランカー達によるPKK作戦開始から、現実の時間で四時間程。時刻が二十二時を回った頃には、掲示板【Qちゃんねる】のPKK専用スレッドの討伐報告が減少していた。これはPKer達がその数を減らして、討伐を報告する必要が無くなっているからだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――

 596 名無し

 もう結構な時間が経ってんだな

 討伐の報告も無いし



 597 名無し

 減速具合がよくわかる



 598 名無し

 PKer狩り尽くされたんか?



 599 名無し

 減速してるから最初の方から見返して来た

 参戦してるトップランカーやばすぎ



 600 【漆黒の旅団】リーパー

 >598

 呼んだ~?



 601 名無し

 マッチングPKをするPKer達が壊滅したか?

 そうなるとパンピーな俺でもイベマップ行けるかな?



 602 名無し

 >600

 マトモなPKerさんはそのままでどうぞ



 603 【真紅の誓い】クリムゾン

 大分討伐報告も減ってるな

 下手したらこれが最後か?

 南側[試練の塔]三百九十階層で【暗黒の使徒】ウドゥ・シニエ・シシオを討伐したぜ



 604 名無し

 >603

 GJ!!



 605 名無し

 >603

 やったぜ!!



 605 名無し

 これで【暗黒】は壊滅確定だよな?



 606 名無し

 スレ見てた感じだとソロPKerはそこまで多くなかったんかな



 607 名無し

 この後はどうなるんだろうな?

 イベ期間は残り数日だけど丸二日くらいダメになってんじゃん



 608 名無し

 >606

 俺PKer

 今あなたの後ろにい……ないよ

 三対二のPKとかダサいからしてない



 609 名無し

 >608

 どの面下げてPKerがPKKスレにカキコしてんだ? あ゛ぁ゛?



 610 名無し

 >608

 PKerがメリーさんすんのやめーや



 611 【漆黒の旅団】グリム

 >609

 (´・ω・`)←この面



 612 PKer名無し

 >609

 今回だけはそう言わないで欲しいんだが

 【漆黒】の皆さんのスタンスっつーの?

 筋を通すカンジに感動してさ

 だから一応俺も、ソロだけどPKK側で参加していたんだよ



 613 名無し

 >611

 しょぼんしてんじゃねーかwww



 614 名無し

 >611

 ”´”と”`”の位置を変えるんだ!

 そうすればキリッとするぜ!



 615 名無し

 >612

 おうよく来たな



 616 名無し

 >612

 お前みたいなヤツは嫌いじゃないぜ



 617 名無し

 >612

 影響されてんじゃねーかwww

 いいぞその調子だ!!



 618 【漆黒の旅団】グリム

 >614

 (´・ω・`)


 (・ω・)


 (・´ω`・)



 619 名無し

 >618

 違うそうじゃない



 620 名無し

 >618

 顔よwww

―――――――――――――――――――――――――――――――


「……この分だと、恐らくPKKもほぼほぼ終結……といったところかしら」

「あぁ。しかし、終結宣言をするのは早計かもな。そのタイミングを見計らって、また同じ事を繰り返す輩が現れるかもしれん」

 そんな会話をしてシステム・ウィンドウから顔を上げるのは、カイセンイクラドンとトロロゴハンだ。


 今回のPKK作戦で、旗振り役を務めたのはカイセンイクラドンだった。その立場に彼が抜擢されたのは、【聖光の騎士団】と【森羅万象】の二大ギルドとの渡りを付けた事……そして今回のPKK作戦について、真っ先に各勢力に声を掛けたのが彼だったからである。

 アークもシンラも、他のクランやギルドのトップ陣もそれに異論は唱えなかった。それだけでも、カイセンイクラドンに対する評価が高い事が窺い知れるだろう。


 そんなカイセンイクラドンの言葉に、トロロゴハンも頷いて溜息を吐く。

「そうね。運営側の動きが気になるところだけれど……一日や二日では、時間が足りないのかも……あら?」

 言葉の途中で、メッセージの受信を報せる表示が視界に入った。それはフレンドやギルドメンバーとのやり取りとは異なる、システムメッセージ……つまり、運営からのお知らせメッセージだ。

 その表題は『第五回イベントのマッチングシステムを利用した、プレイヤーキル行為についてのお知らせ』。

「話をすればってやつね。マッチングPKに対する対応を、運営側もしっかりと進めていたらしいわね」

「うむ、流石というべきかな。さて、どんな対応になるのやら……」

 運営が今回の件について、どの様な措置を取るのか? 二人はシステム・ウィンドウのメッセージに視線を落とし、その内容を確認し始めた。


―――――――――――――――――――――――――――――――

 アナザーワールド・オンラインをお楽しみの皆様へ、ご連絡致します。


 アナザーワールド・オンライン公式サイトへ、第五回イベント[試練の塔]攻略戦のマッチングシステムを利用した、プレイヤーキル行為に対する通報が多数ございました。

 上記の行為はプレイヤーの皆様への迷惑行為に加え、イベント進行を阻害する極めて悪質な行為であると事態を重く受け止めております。

 つきましては、マッチングシステムを利用したプレイヤーキル行為を行ったプレイヤーに対し、厳重措置を実施する事を決定致しました。


 1.マッチングシステムを利用したプレイヤーキル行為を実行した場合

 アナザーワールド・オンラインアカウントを十日間の凍結措置、極めて悪質な場合はアナザーワールド・オンラインアカウントの無期限凍結措置及び警察への通報

 2.戦闘不能ペナルティの強化

 全ての所持品をドロップ、全ての所持スキルをドロップ、プレイヤーレベルのリセット


 また本件におきまして、上記行為によって損害を被ったプレイヤーへの補填として下記の措置を実施する事と致します。


 1.ドロップしたアイテム・スキルオーブの購入金額に該当するゴールドコインの配布

 2.ドロップしたアイテム・スキルオーブのレアリティに対応するガチャチケットの配布

 3.イベント期間を、二月二十五日までの五日間延長


 本件において、皆様をお騒がせした事をお詫び申し上げます。

 ユーザーの皆様方におかれましては、公序良俗に反する行為を避けた上で本作をお楽しみ頂ければ幸甚でございます。

 今後共、アナザーワールド・オンラインをご愛顧賜ります様、謹んでお願い申し上げます。

―――――――――――――――――――――――――――――――


「おっと、ようやく意見がまとまったか」

「えぇ、皆が上手くやってくれたんでしょうね」

 システム・ウィンドウに表示される運営の公式発表を見ながら、そんな言葉を交わすのはカイルとアクアだ。どうやら二人はこの結果を予想していたらしく、むしろ「やっとか」といった雰囲気を醸し出している。


 ギルド【魔弾の射手】に所属するプレイヤーであると同時に、運営責任者と運営主任である二人。この二人がPKKに参戦していたのにも、理由がある。

「やっぱ聞いてみると、イベント延長の希望が一番多かったな?」

「予測通りでしたね。イベント攻略を進めたいけれど、PKerに遭遇したくないから参加できないというプレイヤーが多かったみたいですし」

 運営にも出来る事と出来ない事があり、尚且つ今回の一件は早期対応を要求されるのは目に見えていた。そこで二人は運営にどういった対応を求めるか……この点について、マッチングしたプレイヤーにそれとなく意見を求めていた。その声を可能な限り拾い上げ、同時にPKerを自分達の手で駆逐できる……そう考えての事だった。


 勿論、アウスこと三枝はそれに難色を示した。しかし彼はすぐに折れるのだった……それは北斗と水姫の二人が、こうと決めた事には妥協しない事を知っていたからだ。同時にプレイヤーの意見を掬い上げるという点にも、一理あるという考えはあったが。

 ちなみに二人の様子は運営メンバーがVR内のモニタリングルームでモニタリングされており、リアルタイムでその意見は運営メンバーに届けられていた。勿論このモニタリングは運営所属のプレイヤー側と運営スタッフ側、双方の合意が無ければ機能しない要素である。


 そこでクランメッセージを通じて、[十色城]で情報の取り纏めをしているメンバーから連絡が入った。その内容は「PKK作戦を終了とし、一旦様子を見る」というものだった。

「状況終了、お疲れ」

「お疲れ様でした。それで、どうしますか?」

「俺達の役割は終わったし、仕事に戻るべきだよな? もうちょい参加していたいのは山々だけど」

「ふふっ、そうですね。名残惜しいですが、本来の立ち位置に戻りましょうか」


――だって、今もモニタリングされているし。


 このままAWOにログインし続けていたら、部下達からの不興を買うだろう。初音家の名に泥を塗らない為にも、そして余計な恨みを買わない為にも、大人しく運営の仕事に戻るのが良い。

 二人は視線だけで認識を共有し、システム・ウィンドウを操作してログアウトしていくのだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――

 652 名無し

 お、多分PKK組っぽいプレイヤーが[試練の塔]前に出て来たぞ



 653 名無し

 お疲れ様やね



 654 名無し

 ちなみに誰が出て来ましたか?



 655 名無し

 俺が居るのは東の方なんだけど

 アークとギルバートさんが出て来た



 656 名無し

 確認した

 コミケか何か? って人だかりやんけ

―――――――――――――――――――――――――――――――


 ヒイロとレンが[試練の塔]を一度出ると、そこには多くのプレイヤーが集まっていた。彼等は既に撤退したPKK参加者と思われる者達に、盛大な歓声を送っている。どうやら目的はイベントを攻略する為ではなく、PKK作戦に参加していた面々の帰りを待っていた様だ。

「ありがとな、アーク!!」

「ギルバートさん、サイコー!!」

「ウィンさん、ゼノンさん、お疲れ様でしたー!!」

「お!? おい、あそこ!! 【七色】のヒイロさんとレン様だぞ!!」

「お帰りー!!」

「PKerを懲らしめてくれて、ありがとーっ!!」

 ヒイロとレンにも、そんな言葉が掛けられる。二人は顔を見合わせ微笑み合うと、プレイヤー達に囲まれているアークとギルバートに歩み寄る。


 近付いて来る二人を真っ先に迎えたのは、やはりギルバートだ。

「ヒイロ、レンさん。今回の作戦、お互いに無事で何よりだ」

「そうだね、ギル。それに、アークもお疲れ様」

 気安い雰囲気でヒイロが声を掛けると、アークも一つ頷いて応えた。

「あぁ……君達も、ご苦労だった。運営のメッセージは見ているか?」

「確認したよ。運営も今回のマッチングPKに、結構頭に来ていたのかもしれないね」

 マッチングPKを行った時点で、アカウントの凍結。更に戦闘不能になったら所持品の全ロスだけでなく、プレイヤーレベルまでリセットされるのだ。こうなると、マッチングPKを行う事自体がリスキーである。そこまでするのはやはり、運営的にもマッチングPKによるイベント妨害が腹に据えかねていたのかもしれない。


 PKer達への措置に加えて、運営は被害に遭ったプレイヤーに対する措置も公表した。それについて、レンが苦笑しながら言及する。

「補填の方は……まぁ、これが限界でしょうね。ドロップしたスキルオーブ、装備やアイテムをそのまま返却する訳にはいきませんし」

 レンの言葉に、アークも神妙な面持ちで頷いた。

「言い方は悪いが、自分の身を守れなかった事で発生した損失だからな。恐らくゴールドコインに加えてチケットを配布するのも、反発を抑える意図があるのだろう」

「私としては、寛大措置だと思うね。悪いのはシステムを悪用したPKerであり、運営もイベントを邪魔された被害者じゃないか」

「一理あるね。まぁ運営に落ち度があるとすれば、悪用される様な隙があったという点かな。今回の補填については、その点についてのものと考えたら妥当か」


 そこでアークが、ヒイロとレンに向き直る。

「そういえば君達は、今回の首謀者であるダリルを討伐したのだったな……流石だ」

 そんな称賛の言葉に、ヒイロとレンはダリルの言葉を思い出し……そして、首を横に振る。

「ダリルはどうやら、元【漆黒の旅団】のディグル達に唆されていたらしい。奴等はマッチングPKを隠れ蓑にして、ノーマルプレイヤーのフリをして奇襲を仕掛けて来たんだ」

 ノーマルプレイヤーを装った奇襲と聞いて、アークとギルバートもようやく合点がいったらしい。

「私達も、その奇襲を受けたよ……成程、ようやく理解した。彼等はかつて、【漆黒の旅団】に所属していたPKer達だったのか」

「ふむ……しかし、ダリルをよく騙せたな。奴は警戒心が強い男だと思ったが……何か、ダリルの求める何かを餌にしたのだろうか?」

 アークが不思議そうにして言った言葉に、ヒイロは内心でダリルへの怒りが再燃しそうになるが……それを何とか抑えつつ、首を横に振った。

「どうだろうな、ダリルとの会話の中ではよく解らなかった」

 そう言ったヒイロに、レンも頷いて同意を示した。その様子を見て、アークもギルバートも「そうか」とすぐ納得してみせた。


 ミモリに対する、ダリルの執着。その事については、決して触れないし触れさせない。

 彼女が傷付いたり、責められたりする様な事が無い様に……ダリルの妄執は、彼自身と共にこのAWOから消し去られるのだ。


************************************************************


 一方、西側の[試練の塔]。シオンとダイスが転移門から出て、すぐに目の当たりにしたのはPKKに参戦したメンバー……そして、彼等に感謝の言葉を告げるプレイヤー達の姿だった。

「ハハッ、結構感謝されてるみたいだな」

「そうね。それだけマッチングPKに対して、フラストレーションをため込んでいたプレイヤーが多かったんじゃないかしら」

 肩を竦めるダイスに対し、シオンはさもありなんといった表情だ。


 そうして二人がPKKメンバーの方へ歩き出すと、その姿に気付いたプレイヤー達が反応を見せた。

「シオンさんと、ダイスさん……!? もしかして、あの二人でコンビを組んだのか……?」

「あの二人って、何か接点あったのかしら……」

「おのれ、ダイス……羨まし過ぎるぞ……!!」

「もしかして、あの二人って……カップルだったり、する……のか……?」

「ち、違うよな!? 違うと言ってくれッ!!」

 姉妹ギルドであり、以前から同盟関係である事が知られていた【七色の橋】と【桃園の誓い】。そのメンバー同士で、コンビを組むのは不思議ではない。しかしシオンはレンの傍に常に控えているイメージだし、ダイスもこれまで浮いた話が特になかった。そんな二人がこうして一緒に並んで歩いている姿を見て、何も知らないプレイヤー達は「まさか……!?」という予感にざわめいていた。その予感、合ってるよ。


 そんな二人に、笑顔で歩み寄る二人組がいた。

「ダイスさん、シオンさん! お疲れ様です!」

「お疲れ様です、お二人共」

「よっ! ヴィヴィアンもバヴェルさんも、お疲れさん」

「お疲れ様でございました、ヴィヴィアン様、バヴェル様。ご無事で何よりです」

 同じクランであり、ダイスとはギルドの仲間であるヴィヴィアンとバヴェル。二人が真っ先に声を掛けるのは、特に不思議でも何でも無いだろう。

「思ったよりも、PKerが多い印象でしたね。合計で何人くらいが、マッチングPKに関与したんでしょうか」

「ギルドとしては【暗黒の使徒】に、【キリングドール】【不滅の獄炎】……そしてかつて、【漆黒の旅団】に所属していたプレイヤー達と遭遇しましたね」


「俺等がギルドから叩き出した連中は、三十人。もしかしたら、そいつら全員がこのクソPKに出張ってたかもしれねぇな」

 そう言って近付いて来る二人組に、遠巻きに見守っていたプレイヤー達がどよめく。なにせその二人はPKerであり、本来はPKK組と敵対していてもおかしくないと思われる存在だからだ。

「ハァイ、【VC】の皆さん。特に問題無かったみたいで、何よりだわ」

「ハッ……当然だろうが。あんな連中に殺られる程、こいつらはヤワじゃねぇからな」

 蠱惑的な風貌ながら、気安い雰囲気で声を掛けるエリザ。それに対し、いつも通りの態度で嘯くグレイヴ。現【漆黒の旅団】のギルドマスターと、中心メンバーとして活動する女性である。

「おっと……噂をすれば、か?」

「おいおい、一緒にすんじゃねーよ。アレはPKerとは名ばかりの、救いようのねぇゴミクズ共だ」

 女性二人を守る様に一歩前に出て、警戒する様な素振りのダイス。それに対し、グレイヴもギラついた視線をダイスに向ける。


 その様子を覗っているプレイヤー達からしたら、一触即発の空気に感じられる。しかし、それはあくまでポーズである。ダイスとグレイヴは、わざとそんな雰囲気を演出している。

 クラン【十人十色ヴェリアスカラー】とPKギルド【漆黒の旅団】が親しい間柄であると、周囲のプレイヤーに勘違いされない様に……二人はわざとそんな会話をしているのだ。


――懇意の仲ではない事を周囲にアピールしてまで、私達に確認したい事があるのでしょうか?


 シオンがそう考えていると、グレイヴの横に立っていたエリザが呆れた様に口を挟む。

「もう、御頭? 殺り合う気はないんでしょうに。疲れている相手を狙うのは、ただの卑怯なクズの所業って言っていたのは御頭でしょう?」

「ったりめーだ。全力じゃねぇ殺し合いに、意味はねぇ」

 エリザの言葉にそう答えながら、グレイヴは殺気を収めつつ肩を竦める。

「ディグルに遭遇したヤツ、居ねぇか? あのクソは正真正銘、ド汚ねぇクズ野郎だからな……おっ死んだかどうか確認してぇ」

 その言葉に、シオンは納得した。ディグル……かつて【漆黒の旅団】を率いていた、最低なPKer。あの男がKILLされていないならば、まだ事態は終わっていないと言っても過言では無いだろう。

 しかし、その心配は無用。それを知っているシオンが、一歩前に出てハッキリと宣言した。

「それでしたら、御心配には及びません。ジン様とヒメノ様より、かつてディグルと名乗っていたPKer・ズークとその仲間二人を討伐したとのご連絡を頂いております」


************************************************************


 同じ頃、北側の[試練の塔]もお祭り騒ぎになっていた。

「おぉっ!! イクラさんとトロさんだぁっ!!」

「お疲れ様でした!! PKerを排除してくれて、ありがとうございます!!」

「おい、あそこ!! ケインさんとイリスさんだ!!」

「ん? あれってネオンちゃんじゃないか!?」

「隣の少年の、あの装備……第四回で活躍していた、彼だよな?」


 多くのプレイヤーによる人だかりで、実に賑やかな様子のその場所。そこに、一組の男女が[試練の塔]から帰還した。

「……良かったな、こうして無事に終わって」

「……うん、そうだね」

 目元を仮面で隠した男性と、女性。ヴィクト=コンとアンヘルと名乗る二人は、その人だかり……そして、PKK組の姿を見てそんな事を口にした。

「それじゃあ、行こう」

「そうだね……でも、良いの? 彼等も、居るよ?」

「……俺は、あの輪に加われないからな。一目見られただけでも、十分さ」

 二人はシステム・ウィンドウを呼び出して、その場でログアウトする為に操作していく。


「ん? あれは……」

 そんな二人に、一人の男が気付いた。彼はヴィクトの姿を見て、ある人物によく似ていると気付き……そちらへ一歩、踏み出した。その瞬間、ヴィクトもシステム・ウィンドウから顔を上げ……そして、彼の方へと視線を向けた。

「……っ!!」

 彼の姿を見て、驚いた様な様子のヴィクト。そこで彼は、確信した……ヴィクトは、自分の知っている男と同一人物だと。

 しかしその次の瞬間、ヴィクトとアンヘルはログアウトによって光の粒子となって姿を消した。


「……」

 二人が消えた場所を見つめて、立ち尽くす彼。そんな彼に、一人の女性が声を掛けた。

「どうしたのよ、ケイン。何かあったの?」

「……いや、何でも無いよ」

 彼……ケインはそう言って、帰還したPKK参加組の方へと歩き出す。少しだけ、いつもよりも足取りは軽い。


――あの時と違って、今回はお前も一緒に戦ってくれたんだな……。


 そうこうしていると、新たに[試練の塔]から帰還したプレイヤーの姿があった。

「おっ、あの二人も無事だったか」

「そうね。まぁ、あの子達がそう簡単に負けるとは思ってなかったけど」

 ケインとイリスはそう言って、二人に手を振る。その様子を見たギャラリーが、帰還した二人組に気付いて歓声が更に大きくなる。

「うおっ!? すっげー人ッスね」

「本当だね……あ、ハヤテ君! あそこ、皆もう戻って来てるよ!」


 するとそこで、一組の男女が転移して来た。白いローブ姿の少年と、活動的なスタイルのミントグリーンの長髪の美女だ。

「およ? シキさんじゃないッスか!」

「あぁ、ハヤテさんにアイネさん。お二人も、今お戻りでしたか」

 シキは[エル・ノエル教会]でのスタンピードで共闘し、ヒイロとレンの結婚式にも参列して貰った事もあった。ハヤテやアイネとしても、良いフレンドだと認識している人物だ。

「あの、もしかしてシキさんもPKKに……?」

「あはは……そうですね。私一人では不安ではありましたけれど、幸い彼女が一緒に来てくれると言ってくれて。こちらは私のフレンドで、レアさんといいます」

「初めまして、私、レア。日本語、練習する、してます」


 丁度そこで、更にリリィとコヨミ……そして、レーナとトーマが続けて転移して来た。

「おっ! ハヤテさん達だ!」

「ふふっ、同じタイミングでお戻りだったみたいですね?」

「やっほー! 皆、お疲れ様!」

「無事で何よりです。おや、シキさんも……」

 次々と帰還するPKKメンバーの姿に、歓声は更にボリュームを上げていくのだった。


************************************************************


 PKKに参加していたプレイヤー達が、同じタイミングで[試練の塔]から退出していく。

 その理由はやはり、運営からの公式発表メッセージが大きな要因だ。これでマッチングPKにまつわる騒動は、一応の終結となる。故に、一度[試練の塔]から離脱していくのだ。

 そして、トップランカーによる共同戦線。こちらは[十色城]で情報を取り纏めるメンバーから、作戦終了のメッセージが届いている。

 そんな訳で、PKKメンバーが次々と転移門の前に姿を見せるという状況になっているのだ。


 南側の[試練の塔]でも、それは同じだった。ジンとヒメノが帰還した時には、既に多くのプレイヤーに囲まれるPKKメンバーの姿があった。

「結構、皆無事だったみたいだね」

「はい! あ、イカヅチさんとイナズマさんが居ましたよ! あと、ハナビさん達も!」

 イカヅチとイナズマは、ハナビ・アゲハ・カスミ・ゴエモンと会話している。イカヅチとゴエモンは同じクラスの友人だという事は、既に聞いていた。なので、不思議でもなんでもない。

 しかしそこに、【森羅万象】もラグナとナイル……そしてハルとシアが居るのには、ちょっとビックリである。


 そこで、転移門の前にプレイヤーが転送されて来た。赤毛の少年と、黒髪の少女だ。

「おっ、お前等も今帰りか? お疲れさん!」

「アーサー! アイテルさん! 二人もお疲れ様でゴザルよ!」

「お疲れ様です! ご無事で何よりです♪」

「えぇ、ご無沙汰しています。貴方達も、特に問題が無かったみたいですね」

 ジンとアーサーが交友を深めているからか、アイテルの態度から棘が消えていた。これはシアも同様で、初対面の時と比べたら随分な変わり様である。

 そんな会話をしていると、ジン達の姿に気付いたプレイヤー達が盛大な歓声を上げる。その様子はまるで、コンサート会場に演者が姿を見せた時の様な勢いだ。

「っと……とりま、行くか?」

「でゴザルな」


 そうしてジン達が歩き出すと、その背後にまた一組が帰還してきた。その内の一人が、ジンの姿を見てポツリと声を漏らした。

「あっ、ジンさん!?」

 そう呼び掛けられて、ジンが振り返ると……そこには黒いバトルドレスの上に、青い軽装鎧を装備した美少女。そして白いライダースーツの様な衣装で身を包む、金髪の青年の姿があった。

 金髪の青年とは、初対面。しかし少女の方はソロでマッチングし、フレンド登録をしている間柄である。

「クーラ殿、ご無沙汰しているでゴザル!」

「はい、お久し振りですね! マッチングPKの件、お疲れ様でした!」

 親し気に会話を交わすジンとクーラの様子に、クーラとコンビを組んでいたヴェッセルはジンをジッと見る。


――へぇ……この少年が、【七色の橋】のジンか!! マストから聞いた話だと、めっちゃヒーローなプレイヤーなんだよな? 社長も一目置いているプレイヤーらしいし、これは仲良くしておきたいよな!!


 そんなヴェッセルの視線に気付いたジンは、自己紹介をしやすいようにと先に切り出した。

「クーラ殿は、初めて顔を合わせるでゴザルな? こちらは拙者の奥さんでゴザル」

「初めまして! ジンくんの妻の、ヒメノと申します♪」

 ハッキリしっかり嫁として紹介されたからだろう、ヒメノの笑顔も三割増しである。

「私はソロプレイヤーの、クーラといいます。お会い出来て嬉しいです、ヒメノさん!」

 そう言って手を差し出すクーラに、ヒメノも笑顔で握手に応じる。


 和やかなムードなのだが、置いてけぼりになっているヴェッセルが苦笑いしながら声を上げた。

「……ねー、クーラちゃん? 俺の事、紹介してくれないん?」

「え? あっ、ごめんなさい。ついテンションが上がってしまって……えー、こちらは私のフレンドさんで、今回のPKKに加わるのに協力して下さったヴェッセルさんです!」

「どもども、ヴェッセルっていいます! 一応半分日本人で、半分中国人。日本語は全然オーケー! どうぞよろしく!」

「ヴェッセル殿でゴザルな、どうぞ宜しくお願いするでゴザル!」

「はい、宜しくお願いします♪」

 そのままジン達と連れ立って、クーラとヴェッセルもPKK組の方へと向かっていった。


 その日、各転移門の前では名だたるプレイヤー達が姿を見せ、マッチングPKの阻止成功を祝う声で埋め尽くされるのだった。

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― 新着の感想 ―
連続投稿失礼します。 【漆黒の旅団】グリムさんの顔文字が後からじわりと効いてきて、思い出し笑いに耐えてます(笑)  (´・ω・`)   (・ω・)  (・´ω`・) ぐはっ!!(爆笑)
更新ありがとうございます。 やっとPKブッコロ大作戦(←オイッ!)終息しましたねぇ~ 524話(第五回イベントに参加しました・弐 19ー11 マッチングしました2)の感想に書いた、『悪質プレイヤー…
ようやく終幕となりましたか 皆様 お疲れ様でした 運営様も ご苦労様です では………次回からイベント再開…ですね 後日 今回 携わった皆様で パーティー等がありましたら 幸いです
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