19-13 マッチングしました4
マッチングPKを目論むPKer達と、PKK作戦を敢行するトップランカー達。その中には、これまでプレイヤー達に知られていなかった者達も居る。
例えばそれは、とある場所でマッチングを果たした二人組の様に。
「……ど、どうも……あの、あなた方は……」
「あはは、そう警戒しなくていい。PKerじゃないよ、俺等は」
そう言うと黒髪の青年は、ハーフフェイスマスクをずらして素顔を見せる。口元を覆っていれば、PKerではないか? と誤解されても仕方ないと思ったからだ。
「初めましてだな? 俺は【魔弾の射手】のカイル、こっちはアクアだ」
カイルはそう言って、笑みを浮かべる。
「紹介に預かったアクアです、今回は宜しくお願いします」
青髪ポニーテールの女性・アクアもタクティカルグラスで目元を隠しているが、それ以外は他の【魔弾の射手】とそう変わらない装備だ。
「これはサバゲーとかで良く見るやつで、カッコイイと思ったから付けてるだけなんだ。信じられないなら、カラーカーソルで確認してくれて良いぞ」
そう言ってカイルは、頭上のカラーカーソルを指差した。カラーカーソルを数秒凝視すれば、アバター名と所属ギルド名が確認できる。ゲームシステムによる表示である為、プレイヤーによる改竄は不可能。それならば、確実な証明になるだろう。
「じゃ、じゃあ失礼して……ほ、本当だ!!」
「すげぇ、【魔弾】の人とマッチングするなんて……!!」
「よ、宜しくお願いします!!」
三人の青年は安心したらしく、好意的な態度になった。これでようやく、攻略に向けて動き出せるだろう。
そうして動き始めた五人だが、三人の青年が気になり始めるのは……見た目は高校生か大学生くらいに見える少女、アクアの事である。
「じゃあお二人は、年末年始からAWOを始めたんすね」
「えぇ、普段はリアルが忙しくて、あまりログイン出来ていないんです」
「へぇ……それでももう、レベル45なんですね」
タクティカルグラスで目元は隠れているが、整った顔立ちと均整の取れたプロポーション。歩く姿勢も良く、ショートパンツとハイソックスの間に形成された絶対領域も目を引く。
彼等は知る由もない……この二人が初音家の若夫婦であり、AWO運営責任者と主任である事など。むしろそれを知られない為に、顔を一部隠しているのだが。
それにアクアの髪色と瞳の色は、実妹であるレンのものと合わせている。二人が並んだら、血の繋がりがあると一目で感じられるだろう。
カイルは「またか……」と内心で思いはするものの、それを表情に出さずに前を歩く。アクアの美貌はタクティカルグラスでは隠し切れず、こうして男性の目を引き付ける。
勿論アクアが不貞を働くなどとは微塵も思っていないし、そんじょそこらの男に彼女をどうこう出来るとは思っていない。それは理解しているが、気に入らないものは気に入らないのだ。
勿論、そんなカイルの心情はアクアも解っている。
――マッチングが終わったら、また少し甘やかしましょう……ふふ、可愛い旦那様。
どうやらマッチングの合間に、アクアはカイルを甘やかしているらしい。”また”という点から、それが窺い知れる。
しかし、そんな雰囲気も長くは続かない。進む先に、天使達が待ち構えている様子が見えたからだ。
「標的を確認、任務開始」
「了解、援護態勢に入ります」
カイルは右手に≪M1887型ショットガン≫を構え、左手で≪タクティカルナイフ≫を握る。アクアは≪HK G11型アサルトライフル≫を両手で持ち、カイルと三人の後ろに位置取った。
他の三人は、銃を持つカイルも前に出るのか? と不思議そうにしている。しかし戦闘が始まった瞬間に、カイルが自分達より余程強いプレイヤーだという事を思い知らされた。
カイルは≪タクティカルナイフ≫で攻撃を受け流し、次の瞬間には≪ショットガン≫の銃口を押し当てる。
「【アサルトバレット】」
破裂音と共に天使がダメージを受けた所で、カイルはそのボディを蹴って体勢を崩させる。それは後に続く三人にとって、絶好の攻撃チャンスだ。そうしてカイルは更に前に出て肉弾戦とナイフ、そして≪ショットガン≫を巧みに操って天使達を相手取る。豪快でアグレッシブな動きに見えるが、実際は計算し尽くされ最適化された動きだ。
更に後方からアクアが≪アサルトライフル≫で援護射撃を行っており、カイルや三人に迫ろうとする天使達の動きを阻害していく。彼女も一箇所に留まる事無く、動きながら銃撃を行っている。それで正確な狙撃を行っているのだから、彼女の技量の高さが伺える。
青年達は内心で、この機会を生かしてアクアとお近付きに……などと考えていた。しかし、その戦い振りを見て断念せざるを得なかった。
洗練された動きと、的確な判断力。そして二人の、連携プレイ……その完成度は、阿吽の呼吸という表現がピッタリであった。
まだほんの少しの時間しか経過していないし、二人にはそんなつもりは微塵も無い。しかし確かに、彼等は格の違いを思い知らされてしまったのだった。
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一方、北の[試練の塔]三百階層。そこで三人の女性プレイヤーがマッチングしたのは、仮面で顔を隠した男女一組だった。ちなみに仮面は顔全体では無く、目元を覆うタイプの物だ。
「……PKer!?」
「誤解させて申し訳ないが、俺達はPKerではない。まぁこのナリでは、そう感じてもおかしくはないだろうが……」
そう言って、男性の方が頭上を指差した。カラーカーソルはグリーンで、犯罪者ではないという事だ。勿論、その隣に居る女性プレイヤーもグリーンカラーである。
「俺は【ヴィクト=コン】で、こちらは【アンヘル】。我々は今回のマッチングPKの話を聞いて、PKKに参加する為に来た。顔を隠しているのは、申し訳ない。色々と、事情がある」
青年の態度は、それ以上は聞かないで欲しいと言わんばかりだった。ここまでの間、仮面の女性は一言も会話に参加はしていない。
「重ねて申し訳ないのだが、我々はPKKだけに集中したい。理由は≪ポーション≫類の消費が多く、手持ちが心許ないせいだ。貴女方にはご迷惑だろうが、再マッチングをさせて頂きたい」
そう言われた三人組は顔を見合わせて、頷き合う。
「……解りました。あの、そちらが先にシステムを起動して貰えますか? その……言い方が悪いかもしれないんですけど」
マッチングシステムを起動している時に、襲われるかもしれない。そんな考えがあった為、ヴィクトとアンヘルにそう促す。
「貴女方が俺達を怪しむのも当然だし、気にしないで欲しい。むしろこちらの都合で、不快な思いをさせていたら申し訳ない……それでは我々から、マッチングシステムを起動させて貰う。アンヘル、行こうか」
ここで初めて、アンヘルが小さくだが声を発した。
「貴女達が、良い成果を得られますように……」
そして三人の女性プレイヤーにしっかりと頭を下げると、アンヘルはヴィクトを追ってマッチングシステムの装置の方へと歩いて行った。
そんなアンヘルの様子を見て、一人の女性が声を上げる。
「PKK、頑張って下さい!」
残る二人は何を言い出すのかといった顔で女性を見るが、声を掛けられたアンヘルとヴィクトは口元を緩めて軽く手を振る。
そうして二人が転送されたのを見送って、三人組もマッチングシステムを起動すべく装置へと向かう。そこで、三人の内の一人がある事に気付いた。
「……さっきの、アンヘルって人の声……何処かで聞いた事がある気がする……」
一人がそう言うと、他の二人も「言われてみれば……」という気がして来る。
「あ、私も……何処だっけ……?」
「うーん、思い出せないなぁ……」
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また別の場所でも、PKKの為に行動を起こしたプレイヤー同士が顔を合わせていた。
「……おっと、【聖光】の方だったか」
そう口にした青年は、わずかに表情を歪めた。そんな青年と、隣に立つ女性の姿を見たプレイヤー……【聖光の騎士団】のディレックが、表情を変える。
「何故お前達がここに居るんだ、【天使の抱擁】!!」
ディレックが声を荒げたのは、【天使の抱擁】に所属するハイドとソラネコの二人とマッチングしたからである。そんなディレックの言葉に対し、ハイドが肩を竦めて答えた。
「俺達が[試練の塔]に居る事が、おかしいかな? 普通に攻略や、周回の為なんだが」
「……それを信じろとでも?」
先日の[ウィスタリア森林]……いや、そこがまだ[腐食の密林]だった頃に、ディレックは【天使の抱擁】と遭遇していた。その時も彼は理不尽な言い掛かりを付けて来た事を、ハイドとソラネコはしっかり覚えている。
――PKKに参加する為だと言ったら、またどうせグチグチ言われるに決まっているわ。
――別段、仲良くする必要がある訳じゃない。さっさと会話を切り上げよう。
実際の所、彼等もマッチングPKを阻止するべく二人一組で行動している最中だ。とはいえ、参加者はそう多くない。【天使の抱擁】は更にメンバーが減り、もう十人しかプレイヤーが所属していない状況なのである。
その理由はやはり、ゲーム内での肩身の狭さだ。【天使の抱擁】に所属している……それだけで他のプレイヤー達から距離を取られ、白い目で見られ、心無い言葉を浴びせられる。それに耐え切れず、彼等はギルドから離れていった。
それはさておきディレックの物言いは、ハイドやソラネコにとっては不愉快だ。これ以上ここで言い合っても、時間の無駄……早々に会話を切り上げて、再マッチングするのが良いと判断した。
「信じろとでも……ね。いいえ、別にどちらでも良いわ。あなたが信じようが信じまいが、事実は変わらないもの」
言い掛かりを付けられて、ソラネコの視線が冷え切ったモノになっていく。ハイドの脳裏に、第四回イベントで目の当たりにした光景……”あの頃のソラネコさん”が再臨しそうな気配に、これはマズいと話を進める事にした。
「このままマッチングパーティを組む気は、無さそうだな? それなら俺達は、再マッチさせて貰うけど」
そんな二人の発言に、ディレックは更にカチンと来たらしい。更に二人を糾弾しようと口を開きかけるが、そこで彼の相方役である女性が会話に割って入る。女性……魔法職のメンバーである【ノーリス】は、ハイドやソラネコに思う所がある訳ではないらしい。
「ディレックさん、落ち着いて下さい」
「ノーリス、どういう意味だ!?」
「先輩であるあなたの事を、上に報告する様な事態は避けたいです。ご理解頂けますか?」
上に報告する……そう言われたディレックは、口を噤むしかない。先日の[腐食の密林]での一件は、ホープから幹部メンバーに報告された。それによって、ディレックはライデンから注意を受けているのだ。
「ごめんなさい、【天使】のお二方……この空気で一緒に行動は、お互い気持ちの良いものにはなりそうにないわね。あなた達の言う通り、再マッチングにした方が良いでしょう」
理性的なノーリスの発言に、ハイドは内心でホッとした。この感じならば、ソラネコも追撃は加えないだろう。実際に横目でソラネコの表情を伺えば、彼女の視線が幾分和らいでいた。
そのまま簡単な挨拶をして、ハイドとソラネコはマッチングシステムを再発動させた。転送されていく二人を見送ったディレックは、忌々し気に舌打ちをするのだった。
「はぁ……何がそんなに気に食わないのかは解りませんが、ギルドの看板を背負っている事は忘れないで下さいよね……そういえば、最後の一人は全然来ませんね。ソロで動いている人が、居ないという事でしょうか」
釘を刺してから話題を変えるノーリスだが、ディレックは不機嫌さを隠す事無くマッチング装置に向かう。そんな彼の様子に肩を竦めて、ノーリスはその後を追っていった。
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同じ頃。
「……くそ……ッ!! こいつら……強ェッ……!!」
地面に倒れ伏す、三人のプレイヤー。その頭上のカラーカーソルは赤であり、マッチングPKを目論むPKerだと一目で解る。
彼等のHPは既に枯渇しており、指一本動かす事が出来なくなっている。
「PvPの経験を積むつもりでいたけれど……どうだった、レア?」
ミントグリーンのロングヘアを持つ外国人美女は、その問い掛けに対して言い淀む。
「思う、していた、強くない……ワタシ、本気、出す、してない」
不満気なその言葉に、地面に倒れていたPKer達が怒りを露わにする。
「なんだと、このアマ……!!」
「調子乗ってんじゃねぇぞ!!」
そんな風に喚き散らすものの、彼等は既に戦闘不能。蘇生猶予時間も残り僅かで、悪態を吐く以外に出来る事はもう何もない。
「シキ、さん? これは、何を……言う、している? 言葉、早い。わからない」
「あぁ……早口だし怒鳴っているから、解らないんだね? そのまま解らない方が、良いかもしれない」
「んー?」
不思議そうに小首を傾げる、大学生くらいの美女。目鼻立ちは整っており、可愛いというよりは綺麗といった評価を得そうな外見だ。しかしその声色や仕草はあどけなさを感じさせ、可愛らしいという印象を与える。それがプロゲーマー事務所【フロントライン】に所属する、プロゲーマー・レアという女性である。
彼女の本名は【カトレア・ホワイト】……二十歳のアメリカ国籍女性であり、プロゲーマーを目指していた経緯がある。しかし周囲の環境……主に人間関係に恵まれず、彼女の夢は絶たれようとしていた。
そこで声を掛けたのが、シキこと下路柄歩真だった。
歩真はあの手この手でカトレアの両親を納得させて、その甲斐あって彼女は留学という形で来日する事になった。そこから【フロントライン】に所属し、プロゲーマーとなるべく鍛錬を積んで来た訳だ。
そんな本人の弛まぬ研鑽は無事に実り、【フロントライン】のスタープレイヤーの一人として注目されている。
そんな経緯もあってカトレアは、年下であってもシキを社長として……かつ恩人として慕っている。
そうしている内にPKer達の蘇生猶予時間が尽きて、彼等は強制ログアウトしていった。その場にドロップしたアイテムを回収すると、シキは掲示板を開く。
「レア、いつも通り良いかな?」
「はい。社長なら、いいデス」
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132 名無し
凄い事になってんな
討伐報告する人達ってやっぱ本物なんだよな?
133 名無し
これってAWO中のPKerが狩り尽くされちゃわない?
ただし【漆黒の旅団】を除く
134 【ラピュセル】サブリナ
討伐報告です!
アバター名はヨハネ、ラケル、ブラハム
彼等はギルドに所属していないPKerでしたが
三人でパーティを組んでマッチングPKをしようとしていたみたいです
135 名無し
>132
流石に名前を騙るヤツはおらんやろ
136 名無し
>134
ソロPKer達までマッチングPKに加担してんのかよ
何はともあれご無事で何より
137 【無所属】レア
PKerと遭遇したので討伐しました
ギルド名は【暗黒の使徒】
アバター名はバナード、パグ、シェパードです
危うくPKされるところでしたが何とかなりました
もう少し頑張ります
138 名無し
>137
無所属さんもちょいちょい居るんだな
ってか危ない所だったんだな
無事で何よりやで
139 名無し
>137
【暗黒】を狩ったか!!
GJ!!
無理せず安全優先にな
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書き込みを済ませたシキは、レアに向き直る。
「いつも済まないね、名前を借りてしまって」
「社長、目立つが嫌い。ワタシの名前、使う、OK」
「ふふ、ありがとう。まぁ嫌いというよりは、その方が都合が良いからなんだけどね」
そう言ってシキは、入手したアイテムを取り出して手に取る。
「我々の指揮官は、君やテイルズ達……そう思わせておくのが、一番効率が良いんだよ。僕は地味で、目立たないしね」
「社長、本気出すとすごい……勿体無い、です」
「ふふっ……本気を出そうと思える相手が、中々いないんだよ。さぁ、次に行こうか」
そう嘯いて、シキは戦利品の検分を切り上げた。どうやら、今すぐに使えそうな物は無かったらしい。
――もし本気を出すなら……それはきっと、”彼等”の様な相手だろうね。とは言っても、敵対する事は無いだろうな。
脳裏に浮かぶのは、忍者な少年とお姫様な少女の姿。
――彼等は信頼に足り、尊敬に値する素晴らしいプレイヤーだ。だからどちらかと言えば、肩を並べて戦ったあの突発クエストの様な展開が望ましいな。
シキはそんな事を考えながら、レアと共に再マッチングに臨むのだった。
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「ん-……レアらしくない文章ですね~」
掲示板を見てそう口にするのは、彼の秘書を務めるクーラだった。ちなみに今は秘書モードではなく、快活で可愛らしい美少女プレイヤーの仮面を被っている状態である。
彼女は文面や言葉選びから、この書き込みをしたのがレアではないと即座に見抜いていた。というのも、レアの日本語は読み書きの練習中。書き込むならばもっと簡潔で、事務的な文面になるのである。
――これを書き込んだのは、社長ですね。
同時に彼女は、シキがわざわざレアの名前を借りて書き込んだ意味を考え……すぐに結論に辿り着く。
これはシキからの【フロントライン】メンバーへのメッセージであり、「危険を感じなければ、そのまま続行」という指示であった。
「ヴェッセルさん、まだ行けますか~?」
クーラに呼び掛けられた金髪の青年……ヴェッセルは、笑みを浮かべて頷いてみせた。
「勿論! ヒーローらしく、まだまだ悪党退治するよ!」
そう言うヴェッセルだが、次の瞬間にはその表情を陰らせる。
「でも妬けちゃうね。クーラちゃんと社長って、ホント以心伝心って感じじゃん?」
「え~? そういうのじゃないですよ?」
パタパタと手を振るクーラだが、実際にシキと彼女はお互いにそういった感情を抱いていない。
シキは確かにクーラを重宝しているが、それは彼女のゲーマーとしての実力……そして秘書としての力量と、人間性を高く評価しているからである。クーラもクーラで、彼の事は尊敬しているし恩義を抱いている。しかしだからといって、彼の唯一になりたいとかそういった想いは全くない。
「ホントに? ならクーラちゃん、俺のヒロインになってよ。ヒーローには最高のヒロインが付きものでしょ!」
「もー、またそれですか?」
ヴェッセル……本名【飛 雄彩】。中国人の父と日本人の母の間に生まれた青年で、彼は日本のヒーローに強い憧れを抱いている。その為、彼の行動基準はヒーローらしいからしくないかというものだ。
そんな彼が【フロントライン】に加入したのは半年前で、その時にクーラに一目惚れ。プロゲーマー界で絶対のヒーローになると宣言し、クーラに猛アプローチをし始めていた。ちなみにクーラには、全くその想いは届いていない。
「私はまだ十六歳ですし、そういうのに今は興味が無いですねぇ」
「えー、十六歳って青春真っ盛りじゃん! 俺は二十三だし、社会人になれば七歳差なんて……」
「はいはい、次のマッチング行きましょうね~」
真面目に取り合えば、時間を無駄に浪費する。クーラはそう判断して、さっさとマッチング装置へ向かう。ヴェッセルもそんなクーラに不満そうな顔をするが、すぐに表情を引き締めて後に続いた。
「次こそPKerに当たるかもね。でも大丈夫、ヒーローとして俺が必ず守るよ」
「はーい、頼りにしてますねー」
クーラは内心で、溜息を吐く。このアプローチとヒーロー思考さえなければ、良いビジネス仲間なのに……と、何度思った事か。
しかしデメリットはあるものの、ヴェッセルの実力は本物だ。だからこそクーラも、熟考に熟考を重ねて彼と組む事にしたのであった。