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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十九章 第五回イベントに参加しました・弐
520/573

19-07 終盤に突入しました

9月の間は投稿停止状態となり、申し訳ありませんでした。

まだ完全に落ち着くまでは時間が掛かりそうですが、少しペースを落として定期投稿を再開します。

今後共お付き合いの程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

 バレンタインデーから二日後となる、日曜日の夜。ジン達はそれぞれのプレイスタイル毎に、第五回イベント[試練の塔]攻略に勤しんでいた。


 ちなみに今回のジン達は、少し遊び心に走った編成だ。

「行くでゴザル、リン!! 鎌鼬の如く……」

「かしこまりました」

「「【狐風一閃】!!」」

「オラオラオラッ、邪魔だどけぇっ!!」

「どっこい……しょーっ!!」

 ジンとリンが縦横無尽に駆け巡り、イカヅチとイナズマがその破壊力を駆使して敵を打ち砕く。

「イノシシかっつーの……ったく、ほらほら視野が狭まってるッスよ!!」

「あぁ!? うっせぇな!! あ、ありがとよ……」

「イナズマちゃん、回復よっ!!」

「姉君様、ありがとうございますっ!!」

 ハヤテがイカヅチを狙って死角に回ったモンスターを狙撃し、ミモリはイナズマのHPが半分まで減ったのを見て≪ポーション≫を投擲する。

「くふふ、吹き飛ぶが良いわ!! 【バーニングカノン】!!」

 そして魔法職として、カゲツが主砲役を務める。

 そう、このパーティはジンを中心とする親戚一同が組んだ、ユニット名・イトコチームである。


「っしゃあ!! やったな、イナズマ!!」

「お疲れ様、兄さん!! 思った以上に、安定するね~」

 敵を倒し切り、ハイタッチを交わす義兄妹。そんな二人を微笑まし気に見つつ、ミモリが≪ポーション≫を手に歩み寄る。

「そうねぇ、編成的にはバランスが良いからかしら。純粋な盾職は不在だけど、回避盾が二人だし」

 しかもその回避盾がAGIに特化した、ユニークスキル【九尾の狐】を扱える主従。このユニットでの攻略が始まってから、ジンとリンはまだ一撃も攻撃を受けていない。

 その分、純粋な盾職が必要になる場合はイカヅチがその役割を担う。ハヤテかミモリが指示を出したら、後衛職を守る為に全力防御。ダメージを受けたらミモリが優先して回復し、万が一の場合は【スーパースター】で凌ぐという作戦だ。幸い、まだそこまでの状況には陥っていない。


 ちなみにヒメノ達は以前組んだ、JC五人組パーティで攻略中。ヒイロはケイン・ジェミー・アヤメ・アナスタシアと、ギルマスパーティでの攻略を敢行している。

 攻略の中で彼等は、様々な組み合わせを試みる様になっている。

 また外部のプレイヤーとのマッチングも考慮して、二人組や三人組での攻略も並行して行っている。例えばシオンとダイスは、二人で攻略に赴いている。基本的に一緒に動くのはカップルが多く、他にもゼクス・チナリペア、フレイヤ・ゲイルペアがマッチングでプレイ中だ。

 ちなみに【魔弾の射手】は銃を使う点について、不満を抱くプレイヤーがまだ微妙に残っている。その為、基本的にフルパーティ編成でプレイしていたりする。


 そんな様々な編成を試みるジン達だが、既に五百階層の突破を果たしていた。

「これで五百五十階層……折り返し地点でゴザルな」

「五百階層のあのボス……あいつがまた出て来たら、かなり面倒ッスよねぇ」

 ハヤテが嫌そうに肩を竦めると、ジンは苦笑して頷く。

 五百階層のボスは【プリンシパリティ】……天使の階級で大天使の上に立つ、権天使を示す名である。外見もアークエンジェルを越える大きさで、激しく動き回ったりする事は無い。


 このプリンシパリティの戦闘スタイルは、天使を召喚して指揮するというもの。それ以外にも、自身の両腕を振るって範囲攻撃を繰り出してくる強敵だ。

 そんなプリンシパリティを討伐する事に成功すると、権天使の装飾品が手に入る。これは主にステータス強化が見込める装飾品で、その上昇率は強化前の段階でプラス50ポイント。中々に大きい数値である。

 装飾品は複数箇所に該当する物がドロップし、それぞれの部位によって得られる効果が違う。例えば足はAGI、腕ならSTRといった具合だ。これはプレイヤー同士で、ドロップ品のトレードや売買を意識した仕様だろう。


 加えて、スピード・アタック・ボーナスで手に入るアイテムがある。ここまでは天使をイメージさせる見た目装備だったが……五百階層で手には居るのは、謎のアイテム≪天使の素体≫という物だった。

 見た目は簡潔に言えば、マネキン。更に詳しくするならば、ボスキャラクターであるアークエンジェルの素体にそっくりであった。

 もしかしたら、PACパックの様に戦闘に同行させることが出来るのではないか? とジン達は考えた。しかし、そのままだと全く動く気配はない。

 この件は既にクランでも共有済みで、それぞれが攻略と並行して手掛かりを探してみる事となった。


「フレーバーテキストを見た感じだと、アレ……≪破損品シリーズ≫と同じでゴザルな」

 ジンがそう言うと、ミモリも「そうね」と頷いた。

「ユージンさんもそう思ったみたいで、修復出来ないか調べているみたいなんだけど……どうも状況は芳しくないみたいね」

「あのユージン殿が、突き止められないとは……結構な難問なのかもしれないですね」

 イナズマがそう言って肩を竦めるが、その言葉はこの場に居る全員の考えを代弁していた。生産職人の最高峰と誰もが認めるユージンが、未だに手掛かりすらつかめていないのだ。これを難問と言わずして、何を難問と言うのだろうか。


************************************************************


 それぞれが攻略を終えて[十色城]へ帰還すると、それぞれ思い思いに会話が始まる。

「リリィさん、こういう場面ですと選択する魔法はやはり【アロー】系が良いでしょうか?」

「はい、ヴィヴィアンさん。詠唱が早く、攻撃速度にも優れますからね」

「ゼクト殿、盾の強化素材をお持ちですか? もし差支え無ければ、売って頂けると助かるのですが……」

「おう、良いぜ。大盾は素材の消費も多いからなァ、ハンゾウさんの苦労は俺も解るぜ」

「失礼します、カノンさん。先日お話にあった素材がドロップしましたので、買い取りをお願い出来ればと思うのですが……」

「イザベル、さん……わぁ、こんなに……!? す、凄いです……ね? 今、品薄なので……相場に少し、色を付けて……」

 新たにクランに加入した【ラピュセル】も、大分クランメンバーに打ち解けて来ていた。

 人が集まれば派閥の様な物が出来たり、衝突する事も大いに有り得る。しかしこのクランにおいては、互いが互いを尊重する事を重視している。そんなスタンスもあり、現時点ではメンバー同士での揉め事とは無縁だ。

 そんな仲間達の姿を見たジンは、その賑やかさに笑みを零す。


 随分と人も増えて、クラン拠点は賑わいをみせている。生産職メンバーの指導を受けた応援者達の協力もあり、この[ウィスタリア森林]はすっかり町らしくなっていた。

 敷地面積は始まりの町[バース]に大きく劣るが、応援者達が店長を務める道具屋や宿屋も開業されている。そこでは第三エリアでも重宝する≪ポーション≫や装備品が、適正価格で安定して売買できるのだ。

 掲示板等では特に告知はしていないが、その内この拠点にプレイヤーが訪れる様になる事だろう。もっともそれは、現在開催されている第五回イベントが終わってからになるとジン達は予想している。


――そう言えば、他のクラン拠点はどうなっているのかな?


 自分達【十人十色ヴェリアスカラー】以外にも、浄化マップの土地を所有する事になったクランが三つ存在する。それは勿論、有力クランとされている【騎士団連盟リーグ・オブ・ナイツ】【開拓者の精神フロンティア・スピリット】【導きの足跡(パイオニア・ステップ)】だ。

 三つのクランが示し合わせたかのようにマップ浄化を達成したのは、二月十日の事だった。今日は十六日であり、間もなく浄化から一週間が経とうとしている。

 その間にずっと手付かずという事は無いだろうから、何かしらの進展があったのではないか? とジンは予想している。


 そんな事を考えていると、城内のポータル・オブジェクトが淡い光を放つ。それはプレイヤーが転移して来る前兆であり、最初は慣れなかったものの今ではすっかり日常になった光景だ。

 不思議と予感がして、ジンはポータル・オブジェクトの方へ向き直る。彼女が帰って来るのだと、漠然としているものの確信があった。

 その予想に違わず、転移して来たのはヒメノ達だった。【七色の橋】JC五人組チームの帰還である。


 光で眩しい思いをしないようにと閉じられていた瞳が開き、その視界にジンの姿を収めたヒメノ。すぐさまその頬が桜色に染まり、形の良い唇を笑みの形に変わった。

 ジンにだけ向ける、甘やかなふにゃりとした笑顔。嬉しそうなその表情に、ジンの顔もつられて緩んでしまう。

 これが人の多いフィールド内や現実であったならば、第三者からの生暖かい視線か嫉妬の眼差しが飛んで来るだろう。そう思いつつ、ジンは五人に向けて歩み寄った。

「お帰り姫、皆。今回の攻略はどうだった?」

「ただいまです、ジンくん♪ 順調そのもので、五百八十階層まで到達出来ましたよ」

 ヒメノがそう言えば、ジンも「それは流石」と頷いた。ジンが参加したイトコ組は、五百九十階層まで到達。この分ならば、明日は予定通りヒメノと一緒で問題は無いだろう。


 軽く挨拶を交わして、レン・アイネ・センヤ・ネオンは各々のお相手の下へ。ヒメノはジンの横に並んで、いつも通りに腕を絡める。

「そろそろイベントも終盤ですね?」

「そうだね、残りはもう四日になるのか……明日、六百階層を超えておきたいね」

「本当に、何階層まであるんでしょうか。一番上まで、行けたら良いんですけど」


 ジン達はこのイベント中、様々な組み合わせでイベント攻略に勤しんでいる。ほぼ毎日ではあるものの、バレンタイン当日……そして【竜の牙(ドラゴン・ファング)】と相対した時は、攻略中断となっていた。とはいえ、たった二日で遅れを取っているとは思えない。


――自分で言うのも何だけど、僕達の戦力は多分ゲームでも上から数えた方が早いはずだからね。


 ユニークスキルや貴重なスキル・装備を保有し、PACパック達との連携も十分出来ている。その点を加味すれば、戦力的にもイベント進行率は上位に食い込んでいるはずだ。

 到達可能な階層は、恐らく一般的なプレイヤーが日数内に十分到達可能な設定のはず。その後で他の[試練の塔]攻略に臨めるようにしている……というのが、ハヤテ達ゲーマー勢の考えだった。

 だとすれば、六百階層が頂上か。それとも、七百階層だろうか。


 その考えは、クランのメンバー達も同じ考えだった。全員が揃った所で、報告会が始まる。その中で得られた情報を基に、ギルマス達が明日以降の方針について提案するのが【十人十色ヴェリアスカラー】の方針だ。

 そして、現時点で最高到達階層が五百九十階層。明日には多くのメンバーが、六百階層のボス戦に挑む事になる。それを踏まえて、ギルマス達は方針を定めた。


「残り日数は、全力での攻略になるかな」

「はい、もうイベントも終盤ですものね」

 ケインとジェミーがそう言うと、アナスタシアが頷いて会話に参加する。

「最終階層到達……それを優先目標として、考え得る最適なパーティ編成での攻略。そういう事ですね?」

「えぇ、その通りです」

 何階層が最上階か未だに明言されていないが、それはきっと目前に迫っている。そうなれば、遊び心を取り入れた様々な編成での攻略は今日まで。明日からの四日間は、全力で[試練の塔]を駆け上がる。

 そこで今夜は、残りの時間を使って明日からのパーティ編成について相談する事に。


 プレイヤーだけではなくPACパックも考慮に入れて、攻撃役・盾役・魔法支援・回復役の配置を考慮。そうしてそれぞれが、五人組を編成していく。

 ジンとヒメノの場合、リンとヒナを含めて考えれば二人だけでも相当な戦力となる。回避盾として、ジンとリン。攻撃に関してはヒメノのSTRに加え、ジンには【クライシスサバイブ】がある。魔法支援と回復役はヒナが担えるし、ヒメノも【エレメンタルアロー】で回復が可能だ。


 そんな二人のパーティに編成されるメンバーは、【七色の橋】からイカヅチ。そして【忍者ふぁんくらぶ】から、イナズマとハヅキとなった。

 その理由は簡単で、イカヅチはまだゲームを始めて日が浅い。ハヤテの企画した特訓で実戦経験を積んだとはいえ、トップランカーと足並みを揃えてというにはまだ足りないのだ。

 またイナズマは兎も角、本来ハヅキは生産職。多様な発明品で支援攻撃を行えるものの、最前線レベルの敵が相手では事故が恐い所だ。

 そんなメンバーをフォローしつつ、最上階を目指していけるとすると組むメンバーは限られる。そしてジンとヒメノの夫婦は、この三人と組むのには打ってつけという訳だ。


 尚、クランに加入して間もない【ラピュセル】は、ギルドメンバー限定編成となる。これは連携に慣れない他のクランメンバーと組むよりも、安定した攻略が行えるという判断からである。

「次のイベントまでには、様々な編成で対応出来る様にしたい所ですね」

 アナスタシアがそう言って苦笑する後ろで、【ラピュセル】の面々は首を縦に振っていた。どうやら彼女達もこのクラン【十人十色ヴェリアスカラー】に少しは慣れて、リラックス出来る場所となっているらしい。男性メンバーと少しずつ組む様になって、警戒心も緩和されている様だ。

「うん、振り分けはこんな感じかな。それでは、明日からはこの編成で攻略……不都合があった場合、都度調整で良いですか?」

 ヒイロがそう問い掛ければ、反対意見は出ない。こうして終盤戦に向けての相談が終わり、各々自由解散となるのだった。


************************************************************


 その頃、まだ[試練の塔]を攻略しているプレイヤー達。その中のある男女一組が、二人パーティでマッチングをしつつ攻略に臨んでいた。

「今日のマッチングは、当たり外れが激しいな。パーティ構成は良くても態度が悪かったり、レベル高いかと思いきや養殖だったりさ」

「あんまり悪くは言いたくないんだけどね……年末年始から、新しく始めたプレイヤーっぽいかな?」

 この二人はギルドにもクランにも所属していない、フリーランスのプレイヤーだ。サービス開始当初からプレイしている古参組であり、実力もそれなりにある。

 そんな彼等は仲の良い友人同士だが、恋人という訳では無い。気が合うし趣味も似ているのだが、互いに互いが好みのタイプではないらしい。


 そんな二人の待つマッチングスペースに、一人の男性が転送されて来た。茶色い髪をオールバックにした男は、待っていた二人に視線を向ける。

「初めまして……だよね?」

「そのはずだな。初めまして、俺はフリーの【ジョエル】で……」

 初対面の男に対し、男女は挨拶をしようと一歩前に出る。その瞬間、最初に男性……ジョエルの胸元に、黒い刀身の直剣が突き刺さった。

「……は?」

「ちょっ……何をっ……!?」

 突然の蛮行に、一瞬頭が真っ白になる二人。しかし男はそんな二人を忌々し気に睨み付け、更にその剣を振るった。

「くたばれぇっ!!」

 更に連続して剣を振るい、ジョエルのHPがどんどん削られていく。


「に、逃げろ【フィルフィ】!!」

 ジョエルがそう叫んだ瞬間、更に二人のプレイヤーが転送されてくる。それは女性プレイヤーの二人組で、凶行に走っている男を見た瞬間に駆け出した。

 助けてくれるのか……そう思ったジョエルとフィルフィだったが、そうではなかった。女性二人は武器を構えると男をそのままスルーし、フィルフィに向けて襲い掛かったのだ。

「きゃあぁっ!?」

「こ、こいつらグルか!? この野郎ッ!!」

 このままKILLされるものかと、ジョエルは反撃に転じようとする。その際に、男や女二人の頭上のカラーカーソルが赤に染まっているのを見て確信した。


――こいつらはPKerプレイヤーキラーで、マッチングシステムを利用した狩りをしてんのか!! 三人で組んでいれば、マッチングする標的ターゲットは二人!! 狡い手を使いやがる!!


 しかし数の有利を取ろうとするくらいなのだから、技量はそうでも無いはずだ……そう考えて、ジョエルは必死の抵抗を試みる。だが相手はジョエルの直剣の攻撃を、容易く受け、弾き返し、受け流す。そうして生じた隙を見逃す事無く、痛烈な斬撃を叩き込んで来る。

 相手は明らかに、手練れのPKer。そしてよく見ると、その男の顔をどこかで見た覚えがある様な気がしていた。直接相対した訳ではないが、見覚えがある顔だったのだ。


「くっ……ジョエル、ごめん……!!」

 男に気を取られている間に、フィルフィはHPを削り切られて地面に倒れてしまった。その傍らに立った女二人は、険しい視線でフィルフィを見下している。まるで彼女に対し、恨みでもあるかの様に。

「フィルフィ!? くそっ、待ってろ、すぐに助けて……っ!!」

 そう叫んだ瞬間、男は一瞬でジョエルの死角……背中に回り込み、手にした黒い剣を突き出した。剣がジョエルの身体を貫通し、その部分から赤いライトエフェクトが発生する。

「畜生……お前等、何でこんな真似を……ッ!!」

 攻撃が貫通し続けているせいで、ジョエルのHPは更に減少していく。自分よりも強い相手であると認めざるを得ず、更にフィルフィを葬った女二人も居る。どう転んでも、勝ちの目は無いだろう……ジョエルはそう考えて、せめて情報を得ようと考えた。


 だが、男も女二人も無言だった。すぐにジョエルのHPが尽き、その身体から力が抜ける。そのタイミングでフィルフィは戦闘不能状態になってしまい、防具と≪ポーション≫……そして一つのスキルオーブをドロップして、消滅していった。

「くっ……フィルフィ……!!」

 蘇生猶予時間ではあるが、≪ライフポーション≫を使ってくれるプレイヤーなど居るはずも無い。そのままジョエルは地面に倒れ伏して、歯を食いしばる。

「……何が、目的だ……ッ!!」

 仲間を守れなかった事、全く歯が立たなかった事。その悔しさを堪えながら問い質すも、返事は無い。ジョエルは女二人に視線を向けて、どこの誰かを暴く為に頭上のカラーカーソルを凝視する。


『BARRA』

『LEICA』


 カラーカーソルを凝視して表示されたプレイヤーネームには、見覚えがあった。そしてもう一つ……表示されたギルド名にもだ。


『GUILD:DARK APOSTLE』


 やはりジョエルには、戦った相手の男に見覚えがあった。それは年が明けてすぐ、始まりの町[バース]で起きた騒動の際だった。

 三人でパーティを組んでマッチングしたのは、実力に自信が無いからではなく……()()()()()()()()()()()を、上げる為だったのだ。

「てめぇら……【暗黒の使徒】……ッ!!」

 忌々し気に声を荒げるジョエルは、蘇生猶予時間の終わりを迎えて消滅していく。ジョエルがドロップしたアイテムを見下しながら、男……ダリルは無言でそれを拾い上げた。

次回投稿予定日:2024/10/10(本編)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 多忙の中お疲れ様です。 いやぁ、暗黒がガチガチのPKerに堕ちてて色々吹き飛んでしまった…。 もはやルール無用の相手になったので漆黒案件やないかw
[一言] うーんやっぱり暗黒はやっぱり文字通り暗黒な行動しかしませんね……。 500階層で天使の素体ってことはもっと上に登ると魂とか修復用のアイテムなどか手に入ったりしそうですね。 個人的には天使が…
[一言] 暗黒が闇黒になってしまいました ドロップ品目当ての可能性ありました すぐに頭領様にご報告せねば…
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