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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第4章 ギルドを作りました
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04-03 戦利品ゲットしました

 ヒイロ達がユージンの工房に戻ると、丁度そこにジンがやって来た。何故か、東門のある方向から、だ。

「……早かったね、いろんな意味で」

「まぁ、AGIだけは誰にも負けない自信があるからね。いやぁ、全力で走ったのはイベント以来だった」

 既に始まりの町という安全地帯に入っているので、忍者ムーブはしていない。しかしリリィは、ジンが普通に会話している事で妙な感覚に陥っていた。先程、これでもかと忍者ムーブを見せ付けられたせいで違和感を感じるらしい。


「他のプレイヤーに見つかる前に、入りましょうか」

 シオンが扉を開け、ジン達に入店を促す。扉に取り付けられたカウベルが鳴ったので、ユージンもジン達が来た事に気付いただろう。すぐに奥にある工房の扉が開かれ、ユージンが顔を見せた。

「お帰り、皆。首尾は上々そうだね? おや、そちらは?」

 にこやかに出迎えるユージンの姿に、リリィが一瞬固まった。ハワイアンなおじさんだ、無理もないだろう。


 しかし、彼女は思いの外早く復帰する。恐らく、ジン達で多少の耐性が付いているのだろう。

「初めまして、私はリリィと申します。今回、レンさん達のご厚意に甘えて同行させて頂きました」

「これはご丁寧な挨拶を頂いてしまったね。僕はユージン、生産職をしているんだ。ジン君達はお得意さんでね。良かったら、リリィ君もどうぞ御贔屓に」

 そう言うと、ユージンが工房の奥へと促した。


 ヒイロを先頭にして部屋に入ると、ケイン達はまだの様だった。しかし、既にレーナ達の姿がある。

「お帰りなさーい!」

「早かったですね」

「お疲れです! さすが、デンコーチョウジンです!」

「グリッ○マン!?」

「それを言うなら、電光石火でしょ……でも、本当に早かったわね。お帰りなさい」

 レーナとルナが明るくジン達を出迎え、シャインのボケにミリアがツッコむ。安定のコントである。


 すると、ミリアが同行するリリィに気付いた。

「あら? 確か貴女は……東門でご一緒した、リリィさんでしたか?」

「はい。確か……ミリアさん、でしたね。先日はどうもありがとうございました」

「いいえ、こちらこそ。リリィさんのお陰で、安定して戦えました」

 丁寧にお辞儀し合って会話する二人。


 そんなちょっと堅い感じの二人に、レーナが苦笑する。

「ミリア、ミリア。私達にも紹介して?」

「あぁ、そうね。リリィさん、こちらが私のパーティメンバーです。左からシャイン、ルナ、レーナ」

 ミリアに紹介された三人が、ニコニコしながら会釈する。

「初めまして、リリィです」


 和やかにレーナ達と自己紹介を交わすリリィの姿を見て、レンはある事を考えついた。ヒイロの側に寄り、小声で声をかける。

「ヒイロさん、リリィさんを勧誘してみますか?」

 リリィは支援職として名の知れたプレイヤーで、最前線でも重宝されている存在だ。更に言えば、彼女は性格的にも信頼がおける。身内に引き込むならば早い方が良い……レンはそう考えた。


 その提案を受けて、ヒイロは思案する。現状、自分達のギルドはプレイヤー五人、PACパック三人だ。ギルド結成が成れば、パーティメンバーの上限は八人から十人に増える。

 その内の一人に、支援職のリリィを加えるというのもアリかもしれない。

「そうだね、後でリリィさんに話をしてみようか」

 事は慎重に運ぶべき。レーナ達やユージンが居る前で、大っぴらに勧誘をするのも……と思ったヒイロ。そんなヒイロの判断、レンとしても同意見だった様だ。


 ……


 フレンド登録を交わしたり、始まりの町付近であった事を話すジン達。すると、扉の開く音とカウベルの鳴る音が耳に届いた。

「おっ、ケイン君達が帰って来たかな」

 ユージンが出迎えに向かうと、ジン達は視線をそちらに固定した。

「ただいま戻りました。済みません、大所帯になってしまいますね」

「奥の部屋ならまだ余裕があるから、ギリギリ大丈夫だと思うよ」

 そんな会話が聞こえて来る。


 そして、ユージンの後に入って来たケイン達。顔馴染みの三人に続いて入って来たのは、一組の男女だった。

「……え!?」

「やはりそう来ましたか……」

 ヒイロが驚きの声を上げ、レンが何かに納得する。シオンはレンの横に座り、平然としている様に見える……が、内心ではそれなりに驚いていた。顔に出さないのは、メイドの嗜みだろうか。

「あ、確かダイスさんですよね!」

「それと、フレイヤさん! もしかして、新メンバーってお二人ですか?」

 ジンとヒメノは、通常運転である。


 濃紺の髪をオールバックにした、軽装鎧の青年・ダイス。

 黒いドレスの上に、これまた黒いローブを身に纏った黒髪の美女・フレイヤ。

 イベントランカーにして、最前線でも名前が知られている二人である。


「よっ、また会ったな! ケイン達から話は聞いているぜ」

「ヒメノさん……で良いかしら? 貴女のいう通り、ケイン達のパーティ……いえ、ギルドに加入させて貰う事にしたの」

 ダイスとフレイヤの言葉に、ジンとヒメノは笑みを浮かべる。これでケイン達のギルドも五人。同数である。

 ジン達は西門でダイスと、北門でフレイヤと顔を合わせていた。その時、レンやシオンとそれなりに親し気に話していたので、信頼できると判断したのだろう。


「それにしても、リリィさんまで居るとは思わなかったわ」

「だな。もしかして、そっちのギルドに加入するのかい?」

 フレイヤとダイスの言葉に、リリィが苦笑する。

「いえ……私は、アイドルなんてものをやっていますからね。そういう職業の人間が及ぼす影響は、把握しているつもりです。だから私は、一つのギルドや固定パーティには入らないと決めているんです」

 その言葉に、ヒイロとレンが視線を交わす。


――ダメっぽいね。

――残念ですが、その様です。


 二人は後で、リリィを勧誘するつもりだったのだ。それを切り出す前に、勧誘失敗である。とことん、新メンバーに恵まれない。


 余談だが、リリィは最前線を攻略するレイドパーティに参加している時にも同じ事を口にしている。その場にはレンも居たのだが、周囲に対して無関心だった頃の事。あまり意識に留めていなかったので、忘れていたのである。

 ちなみにシオンはバッチリ覚えていたが、ヒイロとレンが誘うならもしかしたら……と思い、黙っていたのだ。結果、誘う前に断念する事となったのだが。


************************************************************


 自己紹介も程々に、ジン達は第一回イベントの戦利品についての話をする事にした。まずは、ガチャからである。

 この場に居るメンバーは、全員が上位30位に入っていた。その為、金銀チケットは一枚ずつである。

「それじゃあ、回そう!」

 ヒイロの号令で、全員がチケットを使用する。


 ちなみにリリィもゆっくり出来る時間が無かったらしく、まだガチャを回していなかったらしい。アイドル業に学業、そしてログインすれば、プレイヤーに追い回されていたのだ。おいたわしや。

 その為、この場で一緒にガチャをする事になった。


―――――――――――――――――――――――――――――――

 ジン:≪魔除けの首飾り≫【自動修復】

 ヒイロ:≪フェンリルの毛皮≫【オーバードライブ】

 ヒメノ:≪オニキスドラゴンの抜け殻≫【癒しの旋律】

 レン:≪朽ち果てた楽器≫【ゴーストハンド】

 シオン:≪聖者の指輪≫【達人の呼吸法】


 ケイン:≪無限鞄≫【ステータス+5】

 イリス:≪グレイプニル≫【毒耐性(大)】

 ゼクス:≪黒曜亀の甲羅片≫【魔剣術】

 ダイス:≪サファイヤドラゴンの鱗≫【バーサーク】

 フレイヤ:≪覇王の腕輪≫【プレイヤーレベル+1】


 レーナ:≪八咫烏の羽≫【ガーディアン】

 ミリア:≪大破した砲塔≫【超加速】

 シャイン:≪失われし魔導書≫【ステータス+5】

 ルナ:≪エルダートレントの樹液≫【バーサーク】


 リリィ:≪仕込み機弓≫【HP自動回復(中)】

―――――――――――――――――――――――――――――――


 それぞれが、自分の入手した戦利品について確認していく。望みの物が出たとは限らないが、それなりにレアアイテムが出揃っていた。

 問題はどうトレードするかなのだが、それについてユージンが一つ提案をしてみせた。

「金と銀のアイテムを、紙に書いて貼り付けよう。皆は欲しいアイテムを、一つ選んでみる。他に欲しい人が居なければ、それをゲット。欲しい人が居る場合は、要相談かな」

 一人一人が個別にトレードするのではなく、誰がどれを入手したいかを解りやすくするという手法だ。ジン達は他に良い方法も思い付かなかったので、ひとまずその手法でやってみる事に。


「あー! ≪失われし魔導書≫が気になるけど、≪聖者の指輪≫も捨てがたいー!!」

「俺は【超加速】かな……」

「盾職には【ガーディアン】がオススメかな?」

「これ、≪朽ち果てた楽器≫と【癒しの旋律】……支援職にはもってこいじゃないかな」

「ユージンさん。これってやっぱり……」

「直せると思うよ。そうしたら、多分魔法の楽器が出来るんじゃないかな?」


 口々に意見を交わし、自分の求めるアイテムとスキルを選んでいく。その間に初対面だった面々も打ち解けていき、アドバイスする等の様子も見られた。

「成程。私のプレイスタイルなら、≪黒曜亀の甲羅片≫で盾か鎧を製作するのが良いと……」

「えぇ、ミリア様ならそれが最も宜しいかと。可能ならば、【自動修復】もあると宜しいですね」

「≪オニキスドラゴンの抜け殻≫で装備を作ると、MPを上げる効果が得られますよ」

「そうなんですね……ありがとうございます、リリィさん!」

「そうねぇ……【ゴーストハンド】よりも、ジン君は【達人の呼吸法】が良いと思うわ。武技の技後硬直を軽減するから、貴方にピッタリでしょう?」

「確かに……助かります、フレイヤさん!」


 そうこうして、ガチャアイテムのトレードが確定した。全員がホクホク顔をしているので、円滑にトレード出来たようだ。それに加えて、ガチャアイテムを受け取った事でプラチナチケットの使い道も方針が定まっていく。


 当然、素材系のアイテムを使っての装備製作はユージンが引き受ける事になる。十五人分ともなれば、相当な手間になる……と思いきや、ユージンは大喜びだ。

「最近はお客も少なくてね、これはやり甲斐がありそうだ。それに、レベル上げにもなるしねー」

 そんなこんなで、ユージンがそれぞれの依頼を受ける事になった。


 どんな装備を製作したいか? そのヒアリングは、一人一人個別に行っていく。また個別にヒアリングをする際に、それぞれがプラチナチケットを使用していった。

 個別にした理由は、プラチナチケットの枚数が多い者もいれば少ない者もいるからだ。それぞれの戦績で得られるプラチナチケットの数は違うが、一枚しか持たない者の前で二枚も三枚も使用するのは、憚られた。


 ……


 結局その日は戦利品のゲットと、ユージンへの依頼で時間を費やしてしまった。

 残り時間は一時間程度。そこでダイスがある事を思い出した。

「そういや、今回のイベント……十五分くらいの動画になってるはずだよな」

「え、そうなんですか!?」

 ジンはその事を、全く知らなかった。その為、動画になっていると聞いて驚いてしまう。

 視線を他の面々に向けると、レンとシオンは平然としている。ケイン達のパーティと、リリィもだ。そして、ユージンもにこやかに笑っていた。ヒイロとヒメノ、そしてレーナ達だけが驚いた顔をしている。


 そんなジン達に、フレイヤとリリィが解説する。

「システム・ウィンドウに、AWO公式ホームページに飛ぶボタンがあるでしょう?」

「そこから、『プロモーションムービー』っていうボタンを押すんですよ」

 二人のアドバイスに従い、システム・ウィンドウを操作していく。


「あ、これか!」

「見てみましょう」

 全員で同時に見るのも……という事で、ヒイロがシステム・ウィンドウを拡大表示し、可視化する。これで宙に浮かぶ巨大モニターの完成だ。


「おぉ、モンスターの大群」

「これは最序盤かな。モンスターがまだ、獣や虫だね」

 画面が切り替わり、複数のプレイヤーが立ち向かう姿が映し出される。どうやらイベントのハイライトを映し出すらしい。


「あっ、私映りました!」

「この視点だと、ヒメノさんの矢がモンスターを貫通しまくるのは解らないねー」

「おっ、ヒイロの【幽鬼】!」

「すげぇ、目立つよなコレ」

「スタ○ド使い……?」

「あ、ジン様が映りましたね」

「おー、流石はジン君だね。目で全てを追い切れない」

「シオンさん、囲まれてんだけど!」

「問題ありません、この程度では毛ほどのダメージも受けておりませんから」


 この部屋に居るプレイヤーは、比較的何度も映った。そして、五分程して次の場面だ。


「レーナさんの狙撃が鬼過ぎる」

「ジン君と組んで、後衛を壊滅させてる……」

「なぁ、ギルバートはどうした? 何で単騎特攻してんだ?」

「ランキングで上位じゃなかったからでしょ、彼はそういうプライド高そうだし」

「ミリアさん、かなり動きが良いですね……まるで攻撃を予測しているみたい」

「そうですか? 勘は良い方なので、そのお陰ですよ」

「リリィさんが回復させると、誰も彼も嬉しそうですね!」

「ヒメノ様、普通の男性はアイドルに癒されるという体験をすると、あぁなります」

「あ、グリフォンが即落ちした」

「流石は一撃必殺……」


 すると、残るはイベントボスとの戦闘だ。


「ダイスさん、指揮官向きでは?」

「二度とやらね、俺も本当は最前線でガシガシやりてぇんだよ。期待してるからな、マスター」

「あはは、了解。よろしく、ダイス」

「出た、ガンスリンガー……」

「この二丁の銃は、もう持ち主に返却しましたけどねー」


 そして、件の場面になる。

「ジン君!! 凄いよジン君!!」

「ヒメノちゃんのピンチに駆け付けたって、コレね!!」

 ジンのヒメノ救出シーン……これにより、女性陣がきゃあきゃあ言っている。

「何でこのシーン映すかな……」

「ジン君? 例えば美しい絵があれば、他の人に見て貰えるように壁に飾らない? 誰だってそーする、僕だってそーする」

 当のヒメノは大丈夫だろうか? とジンが視線を向けると、ヒメノもジンを見ていたらしい。視線が合うと、嬉しそうに微笑む。


――あ、可愛い。


 そんな二人の様子に、部屋の中にほっこりとした空気が流れる。

「あ、出たです」

「五人勢揃いシーンだね」

 言葉通り、横一列に並ぶジン達。そして始まる、朱雀への猛攻撃。

「……オーノー」

「ボスだよな? レイド級ボスだぞ?」

「うわぁ、圧倒的……四体で一番初めに倒された理由は、これなのね……」

 フレイヤ・ダイス・リリィは目を丸くするしかない。和装勢五人が集結してからの、朱雀討伐。これは実に、一方的な蹂躙劇だった。


 更に西でのユアンによる、永続【チェインアーツ】……そして、北の玄武引っ繰り返りという映像が流れる。白虎はともかく、玄武は泣いていい。

 最後に、東。南から転移して来たアークが、ギルバートを庇って青龍の攻撃を盾で受け止める。

「おぉ、アークさんだ」

「……あれ? 盾を装備から外して……ん? 片手剣を二つ同時に装備?」

「二刀流……キリ○さんじゃん」

 両手に剣を持って斬り掛かるアーク。南門で見た彼の戦闘よりも、攻め方は苛烈。その剣筋も鋭く、青龍を攻め立てている。


「アークさん、強いんですね」

「そりゃそうだ。現時点での最高レベルプレイヤーだしな。それに、総合的な能力は実際に最強じゃないかね。ゲーム慣れしているから、技量も確かだし」

 ヒメノの呟きに苦笑し、ダイスが自分の見解を述べる。


 動画を一通り見た面々は、そろそろいい時間になっている事に気付く。まだ中学生のヒメノとレンが、まずログアウトする。そうすれば、ヒイロとシオンも一緒にログアウトだ。ジンもパーティメンバーに合わせ、一緒にログアウト。

 そうなると、お開きムードになる。他の面々も、その日は早めにログアウトするのだった。


************************************************************


 その頃、始まりの町にある一軒の館。そこは()()()()()が購入し、ギルドの本拠地……ギルドホームとなっていた。

 そのギルドホームに集う者達は、自分達を最強のギルドと呼んでいる……そう、【聖光の騎士団】である。


 この【聖光の騎士団】のギルドホームは四階建てで、最上階に幹部メンバーの集まる広い部屋がある。その部屋に、五人の人物が集まっていた。

「呼び立ててしまって済まない。本当はこちらから会いに行きたかったのだが……」

 そう切り出したのは、金髪の青年。このギルドを束ねる男、アークだ。


 そんなアークの目前に居るのは、一組の男女。シルフィとベイルである。

「気にしなさんな。イベント上位のアンタが町をうろついたら、たちまちプレイヤーに囲まれちまうだろう?」

「姉さん、敬語……いや、アークさんがいくつなのかは知らないけど。ギルドに入るんだから、上を立てなきゃダメだよ」

 ベイルの言葉に、アークがピクリと眉を上げる。


「入って貰えるのかな、我々【聖光の騎士団】に」

 アークの問い掛けに、シルフィがニカッと笑った。凛々しい女性なのだが、その表情は豪快そうである。姉御と呼びたくなるタイプだ。

「アタシらも、どっかに入るつもりはあったからね。二人じゃいずれ限界が来る。それに【聖光】は人数が多いだろ? アタシは仲間が多ければ多い程、燃えて来るんだ」

「俺としても、仲間が多いとやりやすいんですよ。現時点で最高レベルのプレイヤーが率いる、最大規模のギルドでしょ。自分の力を最大限に発揮出来るのは、ココだと思うんです」


 シルフィとベイルの言葉に、アークは口元を緩ませる。

「そう言って貰えると、正直嬉しく思う。新たな仲間を歓迎する、これからどうか宜しく頼むよ」

 そんなアークの表情に、同席していた幹部……ギルバートとライデンは、驚きを隠せない。

 これまで、アークの表情に変化が生まれる事は滅多に無かった。笑う事など、数える程だろう。


 ギルバートは深くは考えず、何かしら心境の変化があったのだろうと判断した。厄介事でないならば、何でも良い……そんな考えだったのだ。

 逆にライデンは、アークが変わった原因に興味が生まれた。勿論、この変化を歓迎している。しかしそこに至る過程を無視は出来ないだろう。


「それではギルバート、ライデン。二人にギルドホームを案内してやってくれるか?」

 二人の側近にそう告げると、ギルバートとライデンはにこやかに頷いた。

「任せたまえ、アーク」

「了解です、アークさん」

 ライデンは素だが、ギルバートはシルフィが居るからである。


「では行きましょう。よく使うであろう訓練スペースと、共有スペースのどちらからが良いですか?」

「あぁ、それと我々のマイルームもお伝えしておきましょうか。何かあれば、訪ねて貰えるように……ね」

 流し目でシルフィにそう告げるギルバートだが、シルフィは意に介さず。

「んじゃあ、訓練スペースからで頼むよ!」


 ……


 賑やかに去って行く四人を見送ると、アークは窓の方へと移動する。

 始まりの町、その中でも小高い丘の上にある洋館。それが、【聖光の騎士団】のギルドホームだ。ここから、始まりの町が一望できる。


――俺は上手く出来ているか?


 イベントの際に出会った、五人のパーティ。個人の力ならばアークが上回るかもしれないが、五対五では劣るかもしれない。そう思う程に、彼等の戦いは衝撃的であり……そして、圧倒的だった。


――彼等はまだ、見付からない……か。是非、俺達のギルドに加わって欲しいのだがな……。


 それは、彼等が強いからというだけではない。ある意味、アークは彼等に感謝していたのだ。

 仲間と力を合わせた先に、どれだけの力が発揮できるか。利用し利用されるだけではなく、互いを信頼し合う事で本当のチームとなれる。

 彼等は、それを教えてくれた……アークはそう思っていた。


――彼等がうちに入ってくれたら、な。だがしかし……。


 一つ、考えている事がある。

 彼等が【聖光の騎士団】に加入してくれれば、自分達は更に強大なギルドになるだろう。

 しかし、もし。彼等が他のギルドに加入したら? または、自分達でギルドを作ったら?

 その時は……。


――最大の強敵になる、だろうな。

最初はダイスとフレイヤを、ジン達のギルドに入れようとしていたんです。

でも、やめました。

そうなった理由は、後々……。


次回投稿予定日:2020/7/26

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― 新着の感想 ―
[一言] 正直イベントのプロモ見れるものなら見て見たいですね。動いてる和装パーティーほんと見てみたいwあと 大破した砲塔超きになります。大砲はロマン、私砲術士大好きなので誰がメインで使うのか楽しみで仕…
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