19-05 バレンタインデーを迎えました・その5
極
糖
警
報
!
[初音女子大学付属中等部]前で仲間達と別れて、徒歩で星波家へと向かった仁達。いつもの様に聖に出迎えられ、そして彼女からもチョコを受け取ってリビングへ向かう。そこで、いつもとは違う流れへ移行した。
そう、姫乃と恋からのバレンタインチョコを受け取るタイミングなのだ。
「それじゃあ仁くん、ここで待っていて貰って良いですか?」
「うん、了解」
ヒメノは部屋ではなく、そのままリビングで待っていて貰うつもりらしい。ニコニコしながら、姫乃は自室へと向かった。
自室へと向かう姫乃を見送って、恋は英雄に微笑みかける。
「英雄さんは、お部屋の方で待っていて頂けますでしょうか?」
「うん? あぁ、解ったよ」
恋からの要望に、英雄は内心で「仁とヒメとは別にするんだな」と思いつつ頷く。
「じゃあ仁、ごゆっくり」
「うん、ありがとう。英雄もね」
仁に見送られた英雄は、自室へ向かうのだった。
姫乃と英雄が自室に向かい、恋は聖と共にキッチンの方へと向かった。手持無沙汰な仁は、何の気なしに窓の外へと視線を向ける。
今日は一日晴れの予報だったはずだが、曇り空になっている。雨が降ったら面倒だなんて考えつつ、仁は姫乃を待つのだった。
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その頃、英雄は自室を見渡して最終確認を行っていた。部屋は綺麗になっているか、変な物は置かれていないかと。
もっとも日頃から片付けはしているし、そもそもおかしな物を買ったりはしない。そう、所謂エロ本は無い。あって週刊少年漫画の巻頭と巻末に掲載される、グラビアくらいのものだ。
そんな訳で、要らぬ心配だったりする訳だが……それでも恋の前で格好悪い所、だらしない所を見せたくないと思ってしまう男心である。
ひとまずコートをクローゼットに入れて、英雄は着替えはどうしようかと思案する。着替えている最中に恋が来るかもしれないし、恋も[初音女子大学付属中等部]の制服のままだ。それならば、恋が帰るまでそのままでいても良いだろうと考えた。
そうしていると、部屋の扉がノックされる。英雄は「今開けるよ」と声を掛けて、入口へと向かい扉を開ける。
「お待たせしました、英雄さん。入っても宜しいでしょうか?」
制服姿の恋は、トレーを両手で持っていた。トレーの中心には、丁寧にラッピングされた箱。そして箱を左右から挟むように、紅茶が注がれたティーカップだ。
「あぁ、勿論。どうぞ、恋」
「はい、失礼します」
英雄はベッドに腰掛けて、恋が隣に来るのを待つ。内心ソワソワしてしまうのだが、恋がそれを察しているかどうかは不明だ。
ベッドのすぐ脇に設えられたローテーブルにトレーを置くと、恋がティーカップを二つ並べる。勿論英雄が待つ、ベッド側の方に二つ。最後に箱を手に取って、恋は英雄の隣に腰を下ろした。
「お待たせしました。それでは、英雄さん……」
「……うん」
恋は手にした箱を英雄に差し出して、満面の笑みを浮かべる。
「私からの、バレンタインチョコです」
「ありがとう、恋。最後に受け取るのが恋のチョコっていうのは、最初に受け取るのと同じくらい重要度が高いね」
「ふふっ、そうでしょう? そう思って、私達はあえて最後に渡す事にしたんです」
どうやらこの展開は、JC組で打合せをした結果だったらしい。
実際に最愛の人から、チョコを貰えるという確信はあった。しかし貰うまでに時間が掛かった事で、その重要度が心の中で上がっていった部分は否めない。相対的に、他の女性から渡されたチョコの重要度も下がる。
彼女達がそれを意図したのかは解らないが、あえて最後に渡すというのは想定していた以上に効果的だった様だ。
「それじゃあ、開けて良い?」
「えぇ、勿論です……こうして本命チョコを作って渡すのは初めてなので、少しドキドキしますね」
恋からの了承を得て丁寧に包装紙を開けていく英雄は、そんな恋の言葉に「そんな事を言われたら、こっちも更にドキドキするんだが」なんて内心で思った。口に出したらからかわれるだろうから、心の中で留めておくが。
包装を解いて中を見てみれば、一口サイズのチョコの詰め合わせが綺麗に収められていた。中央にはハートの形をしたチョコレートで、その周りに正方形や球形のチョコレートが詰められている。
「お店で売っている物と変わらない……いや、それよりも綺麗に出来ているよ……凄いね、恋」
「ふふふっ……驚いて頂けたなら、頑張った甲斐がありましたね」
恋が手作りと言った以上、間違いなく恋が作った物なのだろう。恐らくは昨夜、帰宅後にこれを作ったはずだ。AWOへのログインはいつもと変わらない時間だったので、その前か後にチョコ作りをしたはずである。
「こう見えて、お菓子作りは得意なんです。お姉様に色々と教わりましたから」
そう言って恋は腰を上げると、胡坐をかいている英雄の懐へと腰を下ろした。
「……恋? 恋さん? これは……」
「いえ、折角ですし……思い出に残るバレンタインにしてはどうかと」
そう言うと、恋は自分が作ったチョコレートを一つ摘み上げる。そのまま小悪魔の笑みを浮かべて、英雄の口元へとチョコレートを運んだ。
「こうして差し上げると、更に美味しく感じて頂けるのでは?」
頬を赤らめつつ、英雄を上目遣いで見つめる形の体勢。しかも密着するが故に、その身体の柔らかい感触や体温が直に伝わって来る。
「れ、恋……」
「チョコレートが溶けると指がベタついてしまうので、早めに食べて下さいね?」
動揺する英雄の内心を知ってか知らずか……いや、これ確実に解ってやってるね。恋は決して、攻勢を緩めない。
――あぁ……多分、俺達はずっとこんな感じなんだろうな。
グイグイ来る恋に観念したのか、英雄は彼女が差し出していたチョコを食べる。その際、少し恋の指にも唇が当たってしまったのはご愛敬か。
英雄の口の中に広がるのは、程よい甘味と少しばかりのほろ苦さだ。恐らくは、ビターチョコも使っているのだろう。これは英雄の好みの味であり、彼女が自分の好みを日頃から気に掛けている事が実感できる。
羞恥心と同時に、湧き上がるのは愛しさだった。自分の為に努力してくれていた事を、改めて実感する。
「お味はどうで……」
恋が言い切る前に、英雄は恋を抱き寄せる。その小さな体を抱き締めて、彼女の温もりを堪能する。
「美味しいよ、恋……だけどちょっと、攻め過ぎじゃないかな」
絞り出す様な英雄の言葉に、恋は苦笑した。
健全な交際を心掛けている英雄だが、彼も健全な男子高校生。ともなれば、色々と我慢をしている部分も少なくない。
仁と姫乃の関係に倣っている部分も、勿論ある。しかし同時に恋はまだ中学生だし、自分自身も高校生とはいえまだまだ子供だ。身の丈に合った振る舞いをしなければならないと、己を律し我慢しているのだ。
恋もそれは理解しており、彼が堪えられるラインを越えない様にと日頃から考えていた。ああ見えて、ちゃんと気を付けていたのだ。
しかし今日は、思わずラインを越えてしまっていた。恋は内心で、自分も浮かれていたのだと自覚する。
「私もどうやら、浮かれていたようです……済みません、挑発し過ぎでしたね」
そう言って恋は、英雄の体に腕を回す。受け入れるという意思が、彼に伝わる様にと。そんな恋の言葉と抱擁によって、英雄は自分が暴走しかけている事に気が付いた。
「挑発っていうか、誘惑じゃない?」
恋を抱き締める腕の力を緩めて、冗談めかして英雄は嘯く。そうして、互いの体に出来たわずかな距離。英雄の視線と恋の視線が、正面から絡み合う。
「もう既に、魅了済みだと思っていたのですが……」
「それはそう」
とっくの昔に、魅了されてしまっている。だから恋の言葉をあっさり肯定して、英雄は彼女の頬に手を添える。
「だからこんな風に誘惑されたら、歯止めが効かなくなるかもしれない」
そのまま英雄は、恋の唇を奪う。恋は驚く事も無く、そのまま英雄の口付けを受け入れる。抵抗の意思は微塵も無く、頬に触れる彼の手に自分の手を添える。
いつもより長く、深いキス。数分間重ね続けた唇が離れて、英雄は内心でやってしまったと自己嫌悪する。しかし英雄が何かを口にする前に、恋が英雄の首元に甘える様に顔を埋める。
「……誘惑して、ごめんなさい」
事の発端は自分だと言わんばかりの恋の言葉に、英雄は更に愛しさを募らせる。この小柄ながら圧倒的な存在感を持つ淑女が自分だけに見せる、普通の少女らしい素顔。普段の完全無欠のお嬢様な恋も愛しているが、他の誰も知らないこの悪戯好きで小悪魔な少女も愛おしい。
そうして抱き締め合っていると、恋が不意に顔を上げる。
「で、チョコなんですけど」
「アッハイ」
切り替えの速いのは、流石の恋様だった。
「このまま、食べさせて差し上げても大丈夫ですか? 英雄さんが嫌でなければ、私は是非して差し上げたいのですけど」
恋はどうやら、自分が英雄に食べさせる行為が気に入ったらしい。思い返せば、彼女は温泉旅行でもやっていた……それも、両家の親の目の前で。
「……恋さんが楽しそうで何よりです」
まだ、この甘やかな空間は継続するらしい。英雄は観念して……今度は勢いに任せずに、優しく最愛の婚約者を抱き寄せた。
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一方その頃、自室に戻った姫乃が制服から私服に着替えてリビングに姿を見せた。
「お待たせしました、仁くん!」
姫乃の姿は部屋着というより、デート時の様なお出掛け用の服だった。コートやハンドバッグも持っており、これから何処かに行こうとしているのは明らかだ。
「えーと、これから何処かに行く……のかな?」
「あれ? 仁くん、聞いていなかったんですか? 俊明さんにもチョコをお渡しするので、これから仁くんのお家に行く事になっているんですけど……」
寝耳に水だった仁は、犯人は自分の両親だろうと察して頭を抱えた。最近は自分よりも、姫乃の方が両親と連絡を取り合っている気がしてならない。
「成程ね……でも、父さんが帰って来るのは十九時くらいだと思うけど……」
「……? 今日は、午後から有給休暇を取得するそうですが……なので帰りは、車で送って頂けるとの事でした」
「全部理解した。あえて黙っていたな、父さん……」
恐らくは、未来の義娘からチョコを貰う為……そして仁にはその情報を伏せておいて、驚かせようと考えたのだろう。
「それは大将さんや聖さんも、ご存じって事だよね?」
キッチンから様子を伺っていた聖に視線を向けると、めっちゃ良い笑顔で頷いていらっしゃった。どうやら星波家も、グルらしい。
「とりあえず、了解だよ。それじゃあ行こうか」
「あ、ちょっと待って下さいね? 仁くんと俊明さんのチョコを持って来ます」
姫乃はパタパタとスリッパの音を鳴らしながら、キッチンへ向かう。そして冷蔵庫を開けて、二つのチョコレートを取り出した。一つは先程、隼・拓真・音也に渡した物と同程度の大きさ。そしてもう一つは、明らかに仁専用の大きい包みの物だ。
「それじゃあお母さん、行って来ますね」
「あ、姫乃。これも持って行ってくれる? 私からの分よ」
聖も俊明用に、チョコを準備していたらしい。こういった所は、流石と言う他無い。
「はーい、必ずお渡ししますね」
「宜しくね~。それじゃあ二人共、寒いから気を付けてね。仁君、姫乃をお願いね」
連れ立って玄関に向かう二人を、聖はわざわざ見送りに来てくれる。改めて、姫乃が大人になったらこんな女性になるのだろうなと仁は思った。
……
聖に見送られて、二人は寺野家へと歩いていく。先程までは快晴だったのだが、今は曇っており肌寒さが強まっている様な気がして来る。
しかしピッタリとくっ付いている姫乃のお陰で、寒さは和らいでいた。
「ごめんね、わざわざ父さんにも手渡しして貰って。まぁ、僕が預かって届けるよりも喜ぶのは間違いないけど」
今頃俊明は、自宅でワクワクして待っているのだろう。仁としては、その様子が目に浮かぶ様だった。
そんな仁の言葉に、姫乃は苦笑して首を横に振る。
「いえ、元々は私のワガママなんです。仁くんのチョコは、今日最後に渡すチョコにしたかったので……その、一番大切な……婚約者ですから……」
照れ笑いをしながら、そんな事を口にする姫乃。更に仁の腕に回した手に力が籠り、彼女の想いが直接的に感じられた。
――いつだって、こうして隣に立ってくれて……真っ直ぐに想いを伝えてくれるんだよな。
クリスマスの時にも感じた、姫乃への強い愛情。それが更に高まっているのを、仁は自覚する。
「ホワイトデー、お返しを楽しみにしていてね」
「仁くん……えへへ、楽しみです♪」
更に身を寄せる姫乃は、本当に純粋で真っ直ぐだった。全身での愛情表現は時として、仁の理性と本能の全面戦争を引き起こす。なので、こちらは程々でお願いしたい所である。
もっとも今は厚手のコートを着ているので、彼女の持つ破壊力抜群の武器の感触は軽減されている。そのお陰で、仁も割と冷静さを保っていられた。
互いに温もりを交換し合いながら、歩く事数分。二人は無事に、寺野家に到着した。姫乃からの情報通り、父が通退勤に使っている車がガレージに停まっている。本当に午後は有給を取ったらしい。
「それじゃあ、父さんが狂喜乱舞する所を拝ませて貰おうかな」
「あはは、大袈裟ですよ」
そんな会話をする中で、仁は自宅の鍵を開けて扉を開く。ともあれ、二月中旬のこの寒気だ。姫乃も寒かっただろうし、まずは家に上がって暖をとって貰わなくては。そう考えて、仁は姫乃を招き入れる。
そうして二人が寺野家に入った所で、空からひらりひらりと白い物が舞い降りてきた。
……
「ありがとう、姫乃ちゃん!! 義理の娘からチョコを貰うのは、もっと先の未来だと思っていたよ!!」
「あらあら、手作りよね? 高級店のチョコと言われても、すんなり信じちゃいそうな出来映えじゃない!! 流石ねぇ〜!!」
やはり、大袈裟では無かった。しかも父のみならず、母・撫子も何故かテンションを上げていた。
「ごめんね、姫。驚いたでしょ……僕は驚いた」
「あはは……でも喜んで頂けて、良かったです♪」
リビングで俊明・撫子と向かい合っていた仁と姫乃は、それではと腰を上げる。
「部屋で大丈夫?」
「はいっ♪」
二人で過ごす、初めてのバレンタインデー。それならば姫乃のチョコを味わう時間は、二人だけで過ごしたいと考えていた。
そこでチョコレートの包装を開けようとする俊明に気付き、姫乃が待ったを掛けた。
「あ、俊明さん……あの、それお酒入りのチョコなんです」
「ん? あぁ、そっか。後で姫乃ちゃんを送って行かないといけないもんね。じゃあ、後の楽しみに取っておこうかな」
どうやら姫乃は酒好きな俊明の事を考えて、ウィスキーボンボンの様なチョコを作ったらしい。つまりこのままチョコレートを食べ始めたら、アルコールを摂取する事になるので待ったを掛けたのだ。飲酒運転、ダメ絶対。
俊明と撫子に軽く挨拶をした二人は、仁の部屋へと向かった。
「それじゃあ仁くん、お待たせしました」
ふにゃりとした笑顔を浮かべた姫乃は、紙袋に入れていた物を取り出す。姫乃が仁の為に作った、専用のバレンタインチョコだ。
「本命チョコ……っていうよりは、愛妻チョコになるのかな?」
「……そうです、えへへ」
照れ笑いしながら、仁の言葉を姫乃は肯定する。それはゲームでは既に夫婦である事……そして現実でも婚約者であり、仁のお嫁さんになると固く心に誓っているからだ。
そんな姫乃の想いを察しつつ、仁は受け取った物に視線を落とす。
「開けて良いかな?」
期待感を滲ませた仁の言葉に、姫乃は笑顔で頷いた。そんな最愛の婚約者が見守る中、仁は雑にならない様に包装紙を開けていく。
包装紙を取り払うと、出て来たのは可愛らしいハート型の箱。その箱の蓋を開くと、姫乃が想いを込めて作ったであろうチョコレートが姿を現した。
それぞれ、異なった形のチョコレート。その全てがフルーツをチョコレートでコーティングした物で、あえて中身が露出する様になっている。これは中身が何のフルーツなのか、仁が解りやすい様にしたのだろう。
コーティングの仕方もチェックの模様を描く様にしており、ただチョコレートに浸して固めたという訳では無い。そのコーティングも実に良く出来ており、見た目からも姫乃が苦労して作った事が伺えた。
「フルーツチョコ?」
「はい! 仁くんは普段、あまりチョコとか糖分の高い物は食べないですよね? それで和美さんが、フルーツとかなら普通に食べると仰っていたので……参考にさせて頂いて、色々と試して作ってみました♪」
輪切りのオレンジや、バナナ……そしてイチゴなど、様々な物を軽めにコーティングしたチョコレート。仁の好みや食に対する方針を想定して作られた、姫乃らしいチョコレートだった。
「美味しそうだね……凄いな、チョコで模様を作ったんだね」
「はい♪ 是非、食べてみて下さい!」
姫乃は箱を手に取って、そのまま仁に向けて差し出す。手ずから食べさせるのではないらしい。
ただ隣に寄り添って、とろける様に甘やかな笑顔を向けて。それは二人にとっては慣れ親しんだ日常であり、放課後の時間や休日のデート、そしてゲームの中と変わらない距離感。
しかしそれでも、やはりこの日は特別だった。普段と違う点というと、姫乃が試行錯誤を重ねて作ってくれたチョコレートがあるだけだ。しかし、それだけで大きな違いだった。
「ん、美味しい!」
「ふふっ♪ 喜んで貰えて嬉しいです」
仁の素直な反応に、姫乃も嬉しそうに笑みを深める。そして美味しそうに、嬉しそうにチョコレートを食べる仁の姿に、その笑顔は更に更にとろけていく。
二人の過ごすバレンタインは、こうして終わる……はずだった。
……
姫乃特製のチョコレートを堪能し終えたのは、もう十八時を回る頃だった。これ以上遅くなれば、星波家の面々も心配するだろう……そう思って、仁と姫乃はリビングへと戻った。
「お、もう良いのか?」
「うん。これ以上遅くなると、大将さん達も心配するだろうからね」
「済みません、俊明さん。宜しくお願いします」
ちなみに、仁も一緒に車に同乗して家まで送るつもりだ。少しでも姫乃と一緒に居られる時間は、長い方が良いという考えがあるからである。
「あぁ、解ったよ。それじゃあ行こうか」
そう言ってコートを身に纏った俊明が、玄関に向かう。仁と姫乃もそれに続き、玄関の扉を開けた瞬間。
「えっ!?」
「うわっ……な、何この猛吹雪……!!」
外はいつの間にか、激しい風雪で真っ白に染まっているのだった。
次回投稿予定日:2024/8/30(本編)
仁×姫乃、英雄×恋でフィニッシュ! になる、はずだった……。
まだだ、まだ終わらんよ!!