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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第4章 ギルドを作りました
51/573

04-02 エルダートレントと戦いました

 新たなエクストラクエストに遭遇したジン達は、臨戦態勢でエルダートレントを迎え討つ。

「【展鬼てんき】」

 シオンが構えた大盾《鬼殺し》が分割され、広範囲を覆う巨大な盾と化す。エルダートレントが《鬼殺し》の結界を殴り付けるが、シオンは涼しい顔である。武技の効果によってVIT値が減少しているのだが、それでも高い防御力を誇るシオンだ。エルダートレントの攻撃では、微弱なダメージしか通らない。


「飛燕の如く!! 【ハイジャンプ】!!」

 忍者ムーブ全開で、ジンがエルダートレントの頭部目掛けて跳ぶ。

「【一閃】!!」

 両手の小太刀《大狐丸》と《小狐丸》による、【一閃】。【刀剣の心得】によるクリティカル率や性能の向上により、最前線のプレイヤーにも引けを取らない威力を発揮した。

 エルダートレントのタゲを引いたジンは、いつも通りに縦横無尽に駆け回る。


「では、始めましょう……【炎陣】、【風陣】」

「はい、思い切り行きます!」

 レンは【神獣・麒麟】の魔技を発動し、魔法詠唱を開始。ヒメノは弓に矢をつがえ、狙いを定めて弦を引く。


「よし。PACパックの皆は、一当てしようか!」

 刀を抜いたヒイロの言葉に、三体のPACパックが頷く。

「はっ、ヒイロ様」

「頑張ります、ヒイロお兄ちゃん!」

「では、私は機弓を使いましょう」

 クールに一礼するリンに、可愛らしくガッツポーズするヒナ。機弓……とは、ボウガンの事だ。この異世界ファンタジーゲームでは、そう呼ぶらしい。それを構えたロータスは、キリリとした表情で狙いを定める。


 ロータスが機弓を使うなら、ヒメノとレンの攻撃はその後が良いだろう。

「ヒメ、レン。ロータスが当ててから撃ってくれ」

「はい、お兄ちゃん!」

「了解しました、ヒイロさん」

 二人の美少女の返答に、ヒイロは満足そうに頷き駆け出した。それに、リンとヒナが続いた。


 仲間達の様子に気付いたジンが、隙を作り出すべくエルダートレントを睨む。

「上手く行くでゴザルよ……【天狐てんこ】」

 空中を蹴り、方向転換したジン。その手にした小太刀を、エルダートレントに突き刺す。

「【狐雷こらい】!!」

 ジンが魔技を発動すると、エルダートレントの全身に雷撃が走る。エルダートレントの頭上に浮かぶHPバーを見れば、麻痺状態を示すアイコンが表示された。

「よしっ!!」

 運良く首尾通りに行った事を喜び、ジンはエルダートレントから距離を取る。


 そこへ駆け込む、ヒイロとリン、ヒナ。

「よし、行け!」

 まずはリンが、小太刀を手にして接近する。

「【スライサー】」

 叫ぶのでは無く、武技名をボソッと呟いて切り付ける。この辺り、実に忍者らしい。

「【ブロー】!! えいっ!!」

 武技名の後に可愛らしい掛け声で殴り付けるのは、ヒナだ。攻撃系の魔法スキルを覚えていないので、止むを得ない。

 二人が攻撃を成功させたのを見たヒイロは、二人を下がらせ次の行動の指示を出す。

「リンとヒナは後退! ロータス!」

「かしこまりました……【ショット】」

 ボウガンから放たれた矢が、エルダートレントに突き刺さる。その間にリンとヒナは、シオンの側まで戻った。安全圏内だ。


 これで、三人にエクストラクエストの経験値が入る様になった。そうすれば、後は簡単だ。

「よし、PACパックは待機だ! 皆、討伐に移るよ!」

 その号令に、ヒメノとレンが口元を緩ませる。

「【スパイラルショット】!!」

 ヒメノの攻撃は、回転しながら突き刺さる矢。エルダートレントに突き刺さり身体を抉る、強力な武技だ。

 ヒメノの攻撃が命中したのを確認し、レンも魔法を発動させる。

「【ファイヤーストーム】!!」

 それはエルダートレントを中心に巻き起こる、炎と風の渦。その最中に立たされたエルダートレントの身体に、炎が燃え移った。延焼効果の発動だ。


 続け様に放たれた、高威力の攻撃。それを受けたエルダートレントのHPは、早くも七割まで減少している。

 ユニークスキル保持者ホルダーが集うパーティを前にしては、流石のエクストラボスといえど劣勢になるのも当然であった。


 ……


 安定した戦い方で、エルダートレントはあっという間にHPを散らしていく。そして残りHPが一割という所で、痛恨のダウン。

「総攻撃!!」

「疾風怒濤! 【一閃】! 【スライサー】! 【デュアルスライサー】!」

「【蛇腹剣】! 行きます……【一閃】!」

「【炎陣】……【ファイヤージャベリン】!」

「【バーサーク】!! 【展鬼てんき】、【一閃】!」

 仲間達の怒涛の攻撃。ジンは【チェインアーツ】で攻め立て、ヒメノはより威力の高い近距離攻撃。レンは弱点属性の炎系魔法で攻め、シオンがVITをSTRに変換しての【一閃】。


――これは負けられないぞ。


 唯一ユニークスキルを持たないヒイロだが、右腕にはそれに迫る力がある。呪われて、装備欄から外せないけど。

「【幽鬼】!! 【一閃】!!」

 右腕の装備《鬼神の腕》に宿るスキル、【幽鬼】を発動させるヒイロ。同時に武技を発動し、【一閃】でエルダートレントに切り掛かる。

 ヒイロの一閃と、鬼神の一閃。その攻撃を受けたエルダートレントのHPが失われ、倒れた。


『エクストラクエスト【密林の主】をクリアしました』


 そのアナウンスの直後、ジン達の目前にシステム・ウィンドウが自動でポップアップする。

「手に入ったのは、《古代の神木》でゴザルな」

「私も同じですね」

「こちらは、《生命の果実》でした」

「私も《神木》ですね」

 ジンとヒメノ、シオンがドロップしたのは、《古代の神木》というアイテム。どうやらこれは、木材らしい。ちなみに一つ二つではなく、それぞれ十個程の《古代の神木》がドロップしている。


 ウィンドウを見つめるジンやヒメノに、シオンが説明を加えた。

「もしかしたら、これは良い拾い物かもしれませんね。木材があれば武器や防具だけではなく、家や船も製作出来ます」

 シオンの解説に、ヒメノはある事に気付く。

「家? あ、もしかして……」

「はい。我々のギルドのギルドホームを一から建てるのならば、素材としては最高の物ではないでしょうか」

 その言葉に、皆が笑みを浮かべる。どうせならば、自分達の要望に沿ったギルドホームが欲しい……この意見は、言わずとも共通していた。

 戻ったら、ユージンに相談する事で方針は固まる。


 続いて、レンのドロップは《生命の果実》。これはHPの上限を10上げるアイテムらしい。数は十個……所持出来る上限数だ。

「これは、パーティメンバーで均等に使いましょう」

 視線はやはり、ヒイロに向かう。自分のドロップしたアイテムなのだから、自分で決めて良いのに……と、ヒイロは苦笑した。

「レンがそう言うなら、そうしようか」

「解りました、マスター」

 クスクスと笑いながら、そんな返事をするレン。どうやら、ヒイロに対しては相当に心を開いている様だ。最も、ジンやヒメノにも心を開いてはいる。ヒイロは、特別なのだった。


 レンにもう一度苦笑したヒイロは、自分のウィンドウに視線を戻す。すると、そこにあった表記に首を傾げてみせた。

「あれ、俺は違うアイテムだな……《樹精霊の心》?」

 詳細を見てみると、ヒイロは更に首を傾げる。

「”樹の精霊の心が封じられた宝玉。所有者に精霊の加護を齎す”……だって」

 説明文だけでは、効果が解らない。とりあえず、ヒイロはそれを収納ストレージに収納しておく事にした。


 ジン達が戦利品の確認を終えると、PACパック達がある事を申告してきた。

「主様、レベルが上がりました」

「私もです!」

「はい、私もレベルアップしております」

 三人共にそう言うので、ジンとヒメノ・レンはシステム・ウィンドウの画面を切り替える。PACパックのステータス確認画面だ。


―――――――――――――――――――――――――――――――

 ■PACパックネーム/レベル

 【リン】Lv5

 ■契約プレイヤー

 【ジン】

 ■ステータス

 【HP】50/50

 【MP】10/10

 【SP】10

 【STR】10

 【VIT】10

 【AGI】15

 【DEX】10

 【INT】10

 【MND】10

 ■スキルスロット(2/3)

 【刀剣の心得Lv1】【短剣の心得Lv1】

 ■装備

 ≪ユージンの和風装束≫MND+3

 ≪ユージンの飾り布≫MND+1

 ≪ユージンのスカート≫MND+2

 ≪ユージンのブーツ≫AGI+3

 ≪ユージンの小太刀≫AGI+2

 ≪ユージンの小太刀≫AGI+2

―――――――――――――――――――――――――――――――

 ■PACパックネーム/レベル

 【ヒナ】Lv5

 ■契約プレイヤー

 【ヒメノ】

 ■ステータス

 【HP】50/50

 【MP】10/10

 【SP】10

 【STR】10

 【VIT】11

 【AGI】11

 【DEX】11

 【INT】11

 【MND】11

 ■スキルスロット(3/3)

 【刀剣の心得Lv1】【短剣の心得Lv1】【杖の心得Lv1】

 ■装備

 ≪ユージンの和風装束≫MND+3

 ≪ユージンの飾り布≫MND+1

 ≪ユージンの弓具足≫VIT+3、HP+5

 ≪ユージンのスカート≫MND+2

 ≪ユージンのブーツ≫AGI+3

 ≪ユージンの魔導杖≫AGI+2、DEX+3

 ≪ユージンの短刀≫AGI+2、DEX+3

―――――――――――――――――――――――――――――――

 ■PACパックネーム/レベル

 【ロータス】Lv5

 ■契約プレイヤー

 【レン】

 ■ステータス

 【HP】50/50

 【MP】10/10

 【SP】10

 【STR】10

 【VIT】10

 【AGI】10

 【DEX】15

 【INT】10

 【MND】10

 ■スキルスロット(3/3)

 【刀剣の心得Lv1】【短剣の心得Lv1】【弓矢の心得Lv1】

 ■装備

 ≪ユージンの和風装束≫MND+3

 ≪ユージンの飾り布≫MND+1

 ≪ユージンのパンツ≫MND+2

 ≪ユージンのブーツ≫AGI+3

 ≪ユージンの短刀≫AGI+2、DEX+3

 ≪ユージンの機弓≫DEX+2

―――――――――――――――――――――――――――――――


「おー、一気にレベル5でゴザルな」

「はい。つきましては、ステータスの振り分けをお願い致します」

 PACパックの育成は、契約プレイヤーが行う。SPステータスポイントを消費して、成長させるのだ。

 当然リンはAGIへSPを振り分けられる。ジンが設定を完了させると、リンは満足そうに頷いた。

「ありがとうございます、主様」

 ヒナはSTR以外へ均等に配分される。ヒメノの意向としては、求めているのは強さではないのでこれで良いらしい。

「また少し成長しました!」

 ロータスは今度はAGIへ3、DEXへ2ポイント振り分けられた。機弓と短刀という装備な為、器用さと速さに重点を置いているらしい。

「感謝致します、お嬢様」

 PACパック達の満足そうな様子に、ジン達は笑みを浮かべるのだった。


************************************************************


 突然のエクストラクエスト発動という想定外のイベントはあったものの、無事に素材をゲットしたジン達。ユージンの工房へ向かうべく、始まりの街に向けて移動を開始した。

 その道中、ヒイロの耳にメッセージ受信を報せる音が鳴った。

「あ、ケインさん達からメッセージが来たみたいだ」

 ギルドマスターを務める事が決定したヒイロに、代表してメッセージが届いたのだ。ヒイロはウィンドウを操作して、ケインからのメッセージを開く。


『後で皆でガチャやトレードをする予定だけど、新しいメンバー達を連れて行っても良いかな?』


 そのメッセージに、ヒイロは驚きを隠せない。”新しいメンバー”……つまり、ケイン達のギルドに新メンバーが加わるという事だ。

 ケイン達のギルドメンバーは、ギルドマスターのケイン。サブマスターはイリスが務めるらしく、残るはゼクスとなる。

 そこへ、新たなメンバーが加入するという事だ。人数までは書かれていないが、”達”と言うからには二人以上だろう。


 即座に、ヒイロはその内容を共有する。

「新メンバーかぁ……どんな人達でしょうか?」

「ケイン様達の事ですから、信頼の置けるプレイヤーだと推察致しますが」

 ヒメノとシオンは、ケイン達の人を見る目を信用している。それ故に、新メンバーがどの様な人物か? という点に思いを馳せていた。

「……確かに、人格的に問題は無いと思います。ただ、もしかしたら……いえ、でも……」

 レンは、新メンバーと思われる人物に当たりを付けているのだろうか。何やら、うんうんと考えを巡らせている様子だった。


 女性陣がケイン達のギルドメンバー増員に意識が向く中、ジンとヒイロは自分達の事を考えていた。

「うちも、良いメンバーが見つかると良いね」

「でゴザルなぁ……出来れば、気心知れた相手だとありがたいでゴザルが……」

 ジンはそこまで言って、言い淀む。気心知れた相手となると、この場にいる面々の名前がまず挙がる。次にこの場には居ないユージン、ケイン達、レーナ達だ。そして、この場に居ない面々にはスカウトを断られているのだ。


――ゲーム内でも、親しい相手を増やすべきかなぁ……。


 今まで交流を持った相手では、見つかりそうにない。ならば、新しい出会いを模索すべきか? と考え、深い溜め息を吐いてしまった。


 ……


 始まりの町付近に到着すると、ジン達は装備を変更する事にする。目立たずにユージンの工房へ辿り着く為だ。

 ジンとレン、シオンはローブを身に纏う。ヒイロとヒメノは鎧を外し、ローブを纏う。これだけである。これだけとは言っても、中々馬鹿に出来ないのだ。


 そんなジン達の居る方へ、人が駆けて来る。それは一人の女性プレイヤーで、何やら慌てている様子だった。背後や周囲を警戒している様子から、追い掛けられているのではないだろうか。

「あれ、あの方は……」

「確かリリィさん……だっけ?」

 ヒイロの言葉に、レンとシオンが頷いて同意する。

「彼女は優秀な支援職ヒーラープレイヤーとしても、現役のアイドルとしても有名です」

 東門で力を合わせて戦ったヒイロと、最前線にいたレンとシオンは顔見知りだ。


「ちょっと待っていて」

 そう言ったヒイロは、草むらの影から飛び出すとリリィに向けて駆け寄った。

「リリィさん、こっち!」

「ひぇっ!? また……あっ!! 確か、ヒイロさん!?」

 最初は引き攣った表情をしたものの、次にその表情は驚きに変わる。

「追われてるんですか? とりあえず、こっちへ!」

 ヒイロの言葉に、リリィは安堵の表情を浮かべて駆け寄る。


 リリィがジン達のいる草むらに隠れると同時、始まりの町から複数人のプレイヤーが姿を見せた。

「リリィちゃーん!!」

「どーこー!?」

 口々にリリィの名前を呼び、あちこちへ視線を巡らせるプレイヤー達。


「あー……」

「成程……」

 ジンとヒイロが納得し、女性陣の視線が気遣わし気なものに変わる。野郎共に囲まれたら? 自分達だって怖い。

「はぁ……あの、そのローブって余っていませんか? お借り出来たら助かるんですが……」

「申し訳御座いません、残念ながら余剰は無く……」

 申し訳無さそうに、シオンが首を横に振る。同じ女性として、可能ならばリリィを助けたいと思っていた。しかし、無い袖は振れないのだ。


「それなら拙者の分をお貸しするでゴザル」

 そう言って、ジンがローブを装備するのを解除した。

「えっ……!?」

 リリィが驚いたのは、ジンの発言内容だろうか? それとも口調の方だろうか? もしかしたら両方かもしれない。

「でも、これを借りてしまったら……」

 ジンが姿を隠せなくなってしまう。そう言いたかったのだが、ジンは苦笑して首を横に振る。

「拙者ならば、普通に走れば撒けるでゴザル。ついでに注意を引き付けておけば、ユージンさんの工房へ行きやすいでゴザルかな?」

 その発言にリリィは驚く。始まりの町の様な、安全地帯……そこでは武技や魔法は使用できないのだ。

 つまり、素の速さだけで撒ける……ジンはそう言っていた。


「……普通、か」

「……普通……?」

「一般的な普通では無いですね」

「ジンさん、流石です!」

「ジンお兄ちゃん、凄いです!」

「流石は我が主様」

「実に頼もしい御方で御座いますね、お嬢様」

 ヒイロとレン、シオンの反応は正しい。その後のヒメノと、ヒメノに追従するPACパック達がおかしいのだ。


 トレード画面を開き、リリィにローブを渡したジン。少し離れた場所へと移動して、徐に姿を現す。

「何故、上から……?」

「あー、多分アレは【ハイジャンプ】して降りて来たんでしょうね」

「流石は忍者……」

 やたらと忍者ムーブするジンさんである。着地ポーズも決まっている。


「あ!! 忍者だ!!」

「噂のヤツか!!」

「ランキング一位の!? 確かジン!!」

「うぉぉ!! 本物だぁ!!」

 ジンの唐突な登場に、プレイヤー達の意識が集中する。流石、タゲを引き付け慣れている。


「忍者さん!! 特別報酬って何だったんだ!?」

「どうやったらそんなに強くなれるんだ!?」

「その装備、何処で手に入れたんだ!?」

「ヒメノちゃんとどういう関係だコラァ!!」

 口々に、質問の言葉を投げ掛けながら駆け寄るプレイヤー達。


「うわぁ……」

 流石のジンも、その圧力に引いてしまう。すぐに回れ右して、フィールドの方へと駆け出した。

「待ってくれ!!」

「忍者さーん!!」

「逃がすな!! 追え!!」

 駆け出したジンを追い、プレイヤー達が猛ダッシュする。砂埃が舞い上がる程の、凄まじい光景だ。


 プレイヤー達が去った後、草むらから出て来るヒイロ達。

「ジンさん、大丈夫でしょうか?」

 リリィが心配そうにしているが、他の面々は平然としていた。

「途中で本気出して走るだろうし、大丈夫じゃないかな」

 ジンはプレイヤー達が追い掛けられる速度で走っていた……それに気付いているヒイロは、何でもない事の様に言う。ジンという人物を、よく解っているからである。

「あれで、本気ではない……?」

 リリィからしてみれば、相当速く走っていた。しかし、あれで本気ではないとなると……本気の速さは、どれくらい速いのだろうか? そんな考えが頭に浮かんでしまうのは、仕方の無い事だ。


「流石は主様」

「ジンお兄ちゃん、凄いですねー!!」

 どことなく誇らしげにしている、このくノ一は誰だろう? それにジンをお兄ちゃん呼びしている、ヒメノに似た少女は誰だ? その傍らに控えている、眼鏡をかけた男性は?

 リリィは、何だかおかしな事に巻き込まれている予感がして来た。しかし、特に嫌な感じはしない。それが余計に、混乱を助長させているのだが。


 そんなリリィに気付いてか、ヒイロが話を切り出した。

「それじゃあ、今の内にユージンさんの工房へ向かおうか」

「そうですね。そうそう、リリィさんもご一緒に如何ですか? 私達はこれから、イベントでの戦利品をトレードするのですが」

「え? あ、はい……では、折角なので……」

 ヒイロとレンの提案に、リリィは頷いた。このまま始まりの町や付近のフィールドに居ては、また囲まれてしまうかもしれない。折角の厚意だ、避難させて貰おうと考えたのである。


「それじゃあ、ユージンさんに連絡しましょうか!」

「ヒメノ様、私の方で済ませておきました」

「は、早いですね……流石シオンさんです!!」

「メイドの嗜みですので」

 そんなやり取りに、リリィの口元が緩む。中々に居心地が良さそうなパーティだなんて思いつつ、ユージンの工房へと同行する。

リリィと本格的に絡みが発生。


次回投稿予定日:2020/7/25

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― 新着の感想 ―
[一言] この小説の更新が最近1番の楽しみです。 更新日の記載もありがとうございます! リリィが主人公達とどう絡んでいくのか気になりますね。
[一言] ジンはヒメノとのペアだから 女性陣引きつけるハーレム枠はヒイロ君が受け持つ感じなのかな
[良い点] リリィさん本格的に物語に絡んできましたね。その内ダイスの兄貴も絡んで来るんでしょうね。どう絡んでくるのか今から楽しみです。
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