18-32 先へ進みました
AWO中に伝達された、【騎士団連盟】によるマップ浄化達成の報せ。そのアナウンスを聞いたプレイヤー達から、多種多様な声が上がる。
そんな中、とある場所で戦闘中のプレイヤー達は……若干悔しそうな表情を浮かべていた。
「チッ、先を越されちまったかぁ!! 流石っていうか、今回は負けちまったな」
「競争をしていたつもりは無いが、先んじられるのは些か悔しいな。まぁ、好敵手である事は変わらないさ」
そう言って更に攻撃的な動きを見せるのは、ギルド【森羅万象】の幹部プレイヤーであるオリガとラグナだ。彼等は今、四方八方から迫り来るモンスター達からあるモノを守っているのである。
ちなみに彼等は悔しさを口に出しているが、悪感情は見受けられない。相手が一歩上手だった事に対して、対抗心だけでなく敬意の念も窺い知れた。
彼等は今、四パーティで挑むレイドクエスト【枯れた聖水】の攻略の最中だ。無論【森羅万象】だけでなく、【陽だまりの庭園】と【朧月夜】を含めたクラン【開拓者の精神】の精鋭メンバーでの挑戦である。
そしてクエストも、もう終盤……水の精霊【ウンディーネ】に託されたアイテム≪聖水の水源≫を起動させ、毒沼の浄化が進めている。それはつまり、エクストラボスとの戦闘が続いているという事だ。
「ったく、しつこいなこのボスは!!」
「全くだな……ハル、大丈夫か?」
「大丈夫だよ、クロードさん!!」
エクストラボス【ラストスラッジ】と激戦を繰り広げるのは、六人のプレイヤー。その全員が、【変身】を使用して近接戦闘を繰り広げている。彼等もジン達と同様に、【変身】でラストスラッジの毒液によるスリップダメージを防げることに気付いたのだった。
その内の三人は【森羅万象】のメンバーで、アーサーとクロード。そして運良くシンラが手に入れた【変身】を託された、ハルである。
彼女が装備するのは、アーサーの変身専用装備【コンカラー・アーマー】や、クロードの変身専用装備【プレデター・アーマー】と似たタイプの物……その名も、【リベルス・アーマー】である。これらの名前の由来は、三人が保有するウルトラレア装備から来ている。それぞれ、征伐者・捕食者・反逆者を意味する名称だ。
残る三人は【陽だまりの庭園】のセーラと、【朧月夜】のノミコ・ギンガが【変身】を持っていた。ノミコは剣士でセーラは盾と槍の前衛職、ギンガは籠手を装備した格闘職だ。
戦況を見守りながら指示を出していたシンラは、ラストスラッジのHPを見て今が切り札の使い処だと判断した。
「そろそろ終わらせましょうか」
手にしているのは、第四回イベント報酬である≪ギルドフラッグ≫である。それを地面に突き立てて、シンラはキーワードを宣言する。
「【All things in the world】」
キーワードを言い終えると同時に≪ギルドフラッグ≫がその効果を発揮し、メンバーのステータスを10パーセント向上させる。
「来ましたね」
「決めちゃおっか!!」
「うん、頑張る……!!」
アーサーガールズ三人も、ステータス向上と同時に更に撃破数を増やしていく。それを見たレイドメンバー達も、戦意を滾らせて雑魚モンスターの処理に更に力を入れる。その中には、スパイだったエレナの抜けた穴埋めとして幹部に抜擢されたヴェネも居た。
――このままいけば、討伐まで五分程。やはり連携力と適応力が高いわね。ホープからは討伐まで一時間程と聞いたけれど……恐らくこちらも同じくらいの時間かしらね。
そして、ヴェネのその予想は的中する。
「お膳立ては任せな、ハル!!」
「最高の一撃、期待しているぞ」
アーサーとクロードがハルより一歩前に出てそう言うと、二人は同じタイミングで駆け出す。
「それじゃあ私も、お仕事しましょうか。【エンチャント・ストライカー】!!」
ナコトが発動した支援魔法は、【支援魔法の心得】だけでは習得できない魔法だ。スキルオーブ【支援魔法の極意】を、レベル5まで上げて初めて使用できるのだ。その効果は、前衛職としては是非とも欲しいSTR・VIT・AGI強化である。
「サンキュー、ナコト!! ハルちゃん、ボスの所まで私達が護衛するわ!!」
ノミコがそう言って、ハルを守る様な位置で武器を構える。セーラやギンガも、同様だ。
アーサーとクロードは果敢にラストスラッジを攻撃し、注意を引き付ける。その隙にハル達は、ラストスラッジに接近していく。
そうしてハルの攻撃範囲にラストスラッジが入った瞬間、ハルは≪反逆者の大盾≫を構える。
「行くよ……っ!! 【リヴェンジ】!!」
ハルが防いだ攻撃値の全てを、一撃に込める武装スキルである。この戦いが始まってから、ハルはまだ一度もこの力を発動していなかった。溜めに溜め込んだ攻撃値を叩き込まれたラストスラッジは、一瞬でそのHPを喪失した。
『フィールドマップ[猛毒の沼地]が浄化され、フィールドマップ[アジュール湖畔]が開放されました』
************************************************************
同じ頃、クラン【導きの足跡】もエクストラクエスト攻略に臨んでいた。【遥かなる旅路】と【初心者救済委員会】、【おでん傭兵団】で三パーティ。そして残る一組のパーティは、三ギルド混成パーティだ。
「この【グリードゴーレム】、やはり……硬いな!!」
「しっかし、【LOK】や【FS】の所も……こんな面倒臭いボスだったのかね」
エクストラボス・グリードゴーレムは、様々な鉱石で出来たその巨体と頑強さが特徴だった。更にこのゴーレムは鉱石を分離させて戦槌に変えたり、大剣に変えたりするのだ。その攻撃手段の多様さは、難敵と呼ぶに相応しいボスである。
何よりスリップダメージ……汚染された金属が発する瘴気でHPが減るというものなのだが、これが中々に厄介であった。
幸いなのは土の精霊【ノーム】から託された≪聖土の核≫の浄化範囲が広がる事によって、グリードゴーレムの作り出した汚染金属が土に還り≪聖土≫と化していく事か。この広がっていく≪聖土≫の範囲内ならば、スリップダメージは受けないのである。これはジン達や【騎士団連盟】、【開拓者の精神】の挑戦したエクストラクエスト同様の仕様である。
ちなみにこの【導きの足跡】に、【変身】を保有しているメンバーは居ない。しかしそれでも、前衛メンバー達は果敢にグリードゴーレムに向かっていく。
「とにかく物理防御をかけるのよ!! 【プロテクション】!!」
トロロゴハンの指示に従い、魔法職達が前衛メンバーにひたすら防御魔法を掛けていく。魔法の効果が効いている間ならば、≪聖土≫範囲外でもスリップダメージを防ぐ事が出来ると気付いたからである。
とにかく【プロテクション】が掛かっている間に、グリードゴーレムに全力攻撃。効果が切れたら≪聖土≫まで撤退し回復、防御魔法を受けたら再突撃。この流れを繰り返し続けて、彼等はグリードゴーレムや雑魚モンスターに対抗していた。
しかしながら、メンバーの中には≪聖土≫まで撤退せずに戦い続ける者もいる。特にカイセンイクラドンやタイチは、まだ一度も撤退していない。
それを可能とするのは、彼等に的確に防御魔法や回復魔法を掛けてくれる存在が居るからだ。
「もう少しよ、あなた!! 【ハイヒール】!!」
「あぁ、ありがとう!!」
「【プロテクション】!! タイチ兄、頼んだよ!!」
「サンキューな、任せとけ!!」
カイセンイクラドンとタイチの二人は、防御だけでなく回避も上手いプレイヤーだ。お陰で掛けられた【プロテクション】は保ちやすいし、HPも減りにくい。その上で攻撃にも長けているのだから、トップクラスの実力者に数えられるのも頷ける部分だろう。
ちなみにトロロゴハンやエルリアは二人を中心に魔法を使っているが、他のメンバーを無視している訳では無い。防御魔法が切れそうだと察したら掛け直し、HPが三割程度になれば回復を掛けている。お陰でMP消費は激しくなり、≪MPポーション≫も残り僅かだ。
「ギリギリだわね……ユウシャ、もうちょい被弾抑えられそう!?」
「正直、厳しいが……了解だ、やってみる!!」
「【ワツキ】は【サリチカ】の護衛に回れ!! 雑魚モンスなら遠距離攻撃は通用する!!」
「了解!!」
互いに声を掛け合い、一丸となって≪聖土≫を守るプレイヤー達。その抗戦が開始されてから、一時間半が経過しようとしていた。そこでついに、グリードゴーレムのHPが残り僅かとなった。
「今ね!! 【遥かなる旅路】総員、全力攻撃!! 【これより我等は敵を穿つ】!!」
トロロゴハンが≪ギルドフラッグ≫を発動させ、ギルドメンバー全員のステータスが向上。ここでカイセンイクラドン達も、切り札の使用に踏み切る。
「【エキスパンド】!!」
先陣を切るのは、カイセンイクラドン。愛用の剣を巨大化させ、それを振り被りながらグリードゴーレムに接近する。
「喰らえ、【ブレイドダンス】!!」
グリードゴーレムだけでなく、周囲のモンスターも巻き込んでの攻撃。これはダメージを与えるだけでなく、露払いも兼ねていた。
カイセンイクラドンによってグリードゴーレムへの道が拓かれ、タイチとロビン、ユウシャあああにオーディンが突撃。
「効いてくれよっと……【ラピッドスライサー】!!」
ロビンの狙いは、≪ディレイダガー≫の効果である遅延効果の発動。残念ながら、耐性があるのかデバフは発動しなかった。
「【ブレイクインパクト】!!」
「【ミリオンランス】!!」
ユウシャあああとオーディンの追撃が入り、グリードゴーレムのHPが減少。そしてタイチが渾身の力を込めて、剣を振るう。
「【スラッシュ】……【デュアルスラッシュ】……【ハードスラッシュ】……!!」
反復練習を重ねたタイチの【チェインアーツ】は、最高で8チェインまで。更に四撃目、五撃目とグリードゴーレムに剣撃を叩き込んでいく。
「【スティングスラッシュ】……【ラウンドスラッシュ】……【ソニックスラッシュ】……!!」
八撃目までを繰り出したが、グリードゴーレムのHPは1ドット分残った。それを見たタイチは、更に剣を握る手に力を籠める。
「【ブレイドダンス】ッ!!」
最後の最後で、タイチは自己新記録の9チェインを達成。それと同時に、グリードゴーレムのHPを全て削り切ってみせたのだった。
『フィールドマップ[瘴気の山道]が浄化され、フィールドマップ[オーア山地]が開放されました』
************************************************************
立て続けに流れたマップ浄化のアナウンスを聞いて、多くのプレイヤーがお祭り騒ぎになっていた。掲示板でもその話題で持ちきりとなり、書き込みは加速し次々と新しいスレッドが立てられている。
その一方である場所に集まっていた面々も、その件について話していた。とはいっても、彼等のそれは実に落ち着いた雰囲気である。
「これで我々を含めて、四つのクランが浄化マップを手に入れた訳だね」
「一日に三箇所は驚きですけど、多分これは狙ったんでしょうね」
「そうね、イベント期間でそちらに注力する勢力が少ないもの」
「機を見て敏なり……流石、トップランカーと言うべきでしょうね」
そう言って笑うのは、クラン【十人十色】のギルドマスター達だ。
そんなマスター達の周りに居るのは、【七色の橋】結成当初のメンバーのみ。他の面々は、[試練の塔]攻略に挑んでいる。
「[オーア山地]に[アジュール湖畔]、そして[アージェント平原]……[ウィスタリア森林]もそうだけど、これって色の名前ッスね」
「へぇ……そうなんだ?」
「流石はハヤテ様でございます。オーアは金色、アージェントは銀色、アジュールはアズールとも言い、空の様な青色を表す単語ですね」
「そうなのでゴザルな……では、この【ウィスタリア森林】も?」
「確か、鮮やかな青紫色だったかと。藤の花の色という意味合いだそうですよ」
何故、【七色の橋】の初期メンバーのみなのか? それは明日の会談に出席するのは、このメンバーが最適だとクラン参加者全員に委ねられたからである。
「……本当に、賑やかですね」
そう言って微笑むのは、アナスタシアだ。彼女の後ろには、テオドラとイザベルの姿があった。また、今回のイベントで三人とパーティを組むメンバーであるマリーナとサブリナも一緒である。
それ以外の面々は、既に[試練の塔]攻略に向かった。これは【ラピュセル】が活動している所を外部のプレイヤーに目撃させ、アナスタシア達が【ウィスタリア森林】のクラン拠点に訪れている事を隠す為である。
その為アシュリィのパーティは東、アリッサのパーティは西とバラけさせていた。
「そうですね、楽しくて良いと思います!」
「はい、和気藹々って感じですよね」
マリーナとサブリナは、言葉の通り楽しそうにそう言った。
テオドラは相変わらず、ジンとヒメノを見ているが……現在の所は、穏やかな表情である。アナスタシアと距離が離れているのと、二人が仲睦まじい様子なので二重に心穏やかなのだろう。
そして、イザベルは。
「凄い……この御城、和洋中が見事に融合しているのに、調和が取れている……!! それぞれの個性を大切にしつつ、互いを引き立てる様な装飾……!! それでいて派手過ぎず、地味にならない様なデザインセンス……!! 間取りや配置も、造形美と機能美を両立している……!!」
めっちゃ生き生きして、楽しそうであった。実は彼女、城とか建築物大好き人間だったりする。世界各地の城や歴史ある建築物の事になると、こうして目の色を変えるのだ。楽しそうで何よりです。
「済みません、ベルはこういう建物が大変好きでして……」
「そうなんですね、へぇ〜」
「構いませんよ、建造した方もきっと喜ぶでしょう」
そんなイザベルの様子に、ジン達も笑みを浮かべる。ヒイロ・レン・シオンが彼女を連れて来た時は、少し顔色は良くなっていたがまだ不安そうだったのだ。
それがこうして楽しげな様子を見せているのだから、咎めだてする要素は無いと言っていいだろう。
「それで、明日の件ですが……我々の勧誘への返答は、明日で構いませんよ。いえ、そうしておく方が良いでしょう」
「えぇ、そうですね。仰る通りです」
そう言って、ヒイロとアナスタシアが視線を一瞬だけリンに向ける。
ソウリュウに絡まれた時に、自発的にジン達の為に発言した彼女。しかし現時点では、彼女がどの程度こちらの意図を汲んでくれるかは解らない。
そんなリンの前で、明日の会談を待たずにクランに参加するか否かを明言するのは危険かもしれない……それは、他のギルドマスター達も同意見だった。
「優先すべきは、ソウリュウの手札を封じる事……これはイザベルさんからお話を聞いて、確実にいけるでしょう」
その話題になった事で、イザベルも我に返った。
「……はい。上手く、いくでしょうか……」
不安が再び顔を覗かせるが、レンがそれにハッキリと断言する。
「問題ありませんよ、イザベルさん。ここが勇気の出し処です。それに、おまけのアレ……やりたいでしょう?」
言葉を濁しつつ、何かについて言及するレン。その言葉を受けて、イザベルはそれが成功した所を想像し……強く頷きながら「はい!」と返事をした。
……
その後、作戦会議を終えて会談は終了。そこからジン達も[試練の塔]攻略に向かい、いつも通りログアウト時間前に報告会。それらが済んでマイルームに戻ると、ジンはベッドに腰掛ける。その横に、ヒメノも自然な様子で座った。
「リン、変わりはない?」
「はい、主様。むしろこれまで以上に身体が思う様に動き、気分も晴れやかな状態ですね」
「ん、そっか。なら良かった」
ジンは、リンの変化に関しては心配は要らないと考えている。リンは確かにAIとは思えない思考を見せているが、それは自分達の事を考えての事だ。
少なくとも、ジンの仲間や友人に対して不利になる様な事はしないと感じていた。
──僕はAIについては詳しくないけど、それでも……リンはもう、ただのNPCでもPACでも無いんだろうな。
彼女には、”心”がある……ジンはそれを確信していた。あのスキル共有の瞬間から、彼女の受け答えや立ち振る舞いはプレイヤーと見紛う程に人間的だったのだ。恐らくだが、AWOにおいてそんな存在は今は未だリンだけだろう。
とはいえ、それでリンの扱いを変える事など有り得ない。彼女はジンの相棒であり、大切な仲間なのだから。
そこで、ジンはある事を思い付いた。
「そういえばリン、何か欲しい物とかは無い?」
「欲しい物、ですか?」
「そうそう。ほら、お祝いとして」
絆マックス記念であり、スキル共有記念である。そう言われたリンも、ジンの言わんとする所を察してみせた。
「ありがとうございます、主様……それでしたら、一つお願いが」
やはり、何か欲しい物があるらしい。
ここで普通のPACだと、それぞれ設定された好物や装備の強化に必要な素材を欲しがる。しかし、やはりリンはそうではなかった。
「服が……主様や、奥方様の物に似た服が欲しいです」
ジンの装備している《忍衣・疾走夜天》や、ヒメノの《戦衣・桜花爛漫》は初期装備からグレードアップされた物だ。リンはそれに似た装備が欲しいという、自分の願いをハッキリと口にしていた。
「えへへ、リンちゃん♪」
ヒメノは嬉しそうな表情で、リンに抱き着く。ジンだけでなく、自分ともお揃いになる物を求めたのが嬉しかったらしい。
リンはそれを優し気な表情で受け入れ、自らもヒメノの背に手を回す。
そんな二人を見ながら、ジンは微笑み頷いた。
「うん、了解」
服のデザインはセンヤに、縫製にはシオンに協力を仰がねばなるまい。他にも頼れる存在は居るし、皆に相談したい所だ。ジン自身も装飾品等については、それなりに実績がある。何かしら考えて、自分で用意してあげるのも良いだろう。
そこでこれまで生産して来た装飾品を思い浮かべ、まだ作った事が無いある物に思い至る。
「そういえば簪とかって、作った事が無いけれどどうかな」
「簪ですか、良いと思います! リンちゃんのポニーテールにも、似合いそうですよね!」
「簪……聞いた限りですと装飾品の様ですね。どの様な物なのでしょう?」
「お姉ちゃん、お義兄ちゃん! 私も気になります!」
それからジンはリンだけでなく、ヒメノやヒナ・コンにもどういう物が好みかを聞いていく。いずれ必要になる事なので、早くから仲間の趣味嗜好を抑えておくのは必要な事だ。流石は忍者、リサーチ能力も地味に高い。
それに装飾品のラインナップを増やす事が出来るならば、クラン店舗での販売で需要があるかもしれない。和風の物だけでなく、中華風やスチームパンクをモチーフにした物等も面白いかもしれない。
もし何なら、ギルドメンバー統一の物があるのも良いだろう。例えば【忍者ふぁんくらぶ】ならば、全員が共通して持っているのが≪下忍の額当て≫だ。これは≪ヘルマーの鉢金≫と、≪ココロのリボン≫を駆使して作られた物である。
――共通の物って良いよね。ココロ先輩やヘルマーさんに、話を聞こうか? あ、どうせならラミィさんや、メイリアさんにも声を掛けても良いかも。そしてやっぱり、ユージンさん。
ギルド共通の装飾品や、クラン共通の装飾品……そういった物を考案してみるのも、良いかもしれない。あまりかさばり過ぎないアイテムならば、バッジやブローチなどが適しているだろうか。
それならば、ギルバートやライデン、アーサーやハルにも聞いてみても良いかもしれない。彼等はこうしたゲームでの経験値も深いから、その手のアイテムに関する知識も豊富そうだ。特に戦闘の邪魔にならないとか、実践経験的な話が聞けそうな気がする。
【導きの足跡】でならばカイセンイクラドンやトロロゴハン、タイチ・エルリア・ロビンとは連絡先を交換している。彼等はこういった話に理解を示し、きっと自分達とはまた違った視点からの意見をくれるかもしれない。
他には【無限の可能性】の【白狼の集い】や【真紅の誓い】、【ルーチェ&オンブラ】の【闇夜之翼】と【フィオレ・ファミリア】もだ。交流のある彼等ならば、もしかしたら何か妙案を出して貰えるかもしれない。
そして、【ラピュセル】……彼女達がどの様な選択をするのかは察してはいるが、明言はされていない……今夜のところは、まだ。
その答えが提示されるのは、明日の夜。【ラピュセル】と【竜の牙】、そして自分達で顔を突き合わせての話し合いの場でだろう。
そこで、ソウリュウは思い知るだろう……自分がどれだけ、愚かな事をしているのかを。
――それを思い知らせるのは僕達でも、アナスタシアさん達でもない……イザベルさんの手で、ケリを付けるんだ。
今回の主役は、彼女だ。ジン達はそれを、さり気なく支える役回りを務めるつもりであった。
次回投降予定日:2024/7/20(本編)