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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第三章 第一回イベントに参加しました
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03-15 幕間・マリウスの独白

 俺の名前はマリウス。本名は【菅池すがいけ がい】。アークの率いる【聖光の騎士団】に所属するプレイヤーだ。


 今回俺はAWOの初めてのイベント、始まりの町防衛戦に参加した。有名な【聖光の騎士団】の一員さ、周りからの尊敬の視線が集中している気がするぜ。

 幸い、俺はアークと同じ南門へと飛ばされた。大剣使いとして、次々とモンスターを倒していく。

 へっ、数が多くても所詮は雑魚。この程度じゃあ、大した障害にもなりはしない。


 ……


 雑魚は雑魚なのだが、数の暴力とは厄介だ。スキルを使い過ぎて、苦戦してしまう。

 そんな中、俺はモンスターの群れに押し切られそうになる。この俺が、死に戻りだと? そんな事があるわけ無い……そう思っていた瞬間だった。

 勝利の女神は俺の事を見捨てていなかった……俺を襲うモンスターが、一発の矢でまとめてブッ飛んだのだ。

「ヒメノさん、相変わらず凄いですねー!!」

「はい、モンスターが派手に吹っ飛んでたです!!」

「ルナさんとシャインさんのおかげです!」

 姦しい女の子達の声が聞こえた。どうやら、勝利の女神は俺に出会いのチャンスをくれたらしいな。後で声を掛けよう……あれ? 今、俺を助けてくれたのはどの娘だ?


************************************************************


 北門で、イベントモンスターが討伐されたというアナウンスが入った。北に先を越されてしまったようだ。それ自体は、仕方がない。

 ただ問題は、そのアナウンスを受けて馬鹿なプレイヤー達が独断専行を始めた事だ。アークに擦り寄っておきながら、都合が悪くなれば自分勝手に動く……所詮は、寄せ集めか。


 そんな俺達の視界に、空を飛ぶモンスターの姿が目に入る。あれはグリフォンだな……DKCドラゴンナイツクロニクルでも、グリフォンは出て来た。まずは魔法職や弓使いで、地面に叩き落として貰わなければ……。


「【パワーショット】!!」


 そう思っていたら、グリフォンの一体が撃ち落とされた。

「えっ?」

 俺の口から、そんな間の抜けた言葉が漏れ出る。待て待て、グリフォンはそれなりに強力なモンスターで、一撃で墜落する様なヤツじゃないぞ!?

 攻撃を放ったプレイヤー……若い女の声だった気がする。俺はそちらに振り返り……そして、目を奪われてしまった。


 白と赤を基調とした、改造された巫女服。袴ではなくスカートで、足元にはブーツを履いている。和風と洋風を取り入れたデザインなのだろう。その上に、左右非対称の和風鎧を着込んでいる。弓を使っているし、弓道の防具をイメージしているのだろう。何よりも目を引くのは、首元に巻かれた赤いマフラーだ。

 そんな装備を身に纏うのは、銀髪の少女。弓を構えた、可憐な少女だ。彼女はその赤い瞳で、墜ちていくグリフォンを見つめている。スカートとブーツの間から覗く、白磁の様に白い脚。巫女服の胸元を押し上げる、その豊満な胸。可憐だ……あの発育の感じだと、高校生だろうか? 


 グリフォンを撃ち落とした少女は、そのままイベントモンスターをも撃ち落とした。全て、一発でだ。


************************************************************


 大剣使いのこの俺の攻撃力は相当なもののはずだが、隙が多いのが難点である。

 ならば、俺と行動を常に共にしてくれるパートナーが必要だ。強力な弓使い……彼女は実に理想のパートナーになるだろう。何より可憐で、美しい。人生のパートナーとしても、申し分ない。


 他の女性と会話している少女に歩み寄り、俺は声を掛けてやる事にした。きっかけを用意してリードしてあげるのが、デキる男なのだよ。

「話している所、失礼する。先程の攻撃、実に見事だったな」

 さぁ、喜びたまえ。この俺が、【聖光の騎士団】のマリウスが直々に声を掛けているのだから!!

「え? あ、どうも……えーと、貴方は……?」

 ……あれ? もしかして、俺の事を知らない?

 いやいや、そんなはずはない。【聖光の騎士団】のマリウスと言えば、アークやギルバートに次ぐ有名人だぞ?


 そうか、俺の姿を目の当たりにするのは初めてか!! 名前を聞けば解るはずだ!!

「……あ、あぁ。俺はマリウス。アークさんのギルド【聖光の騎士団】のメンバーだ」

 おっと、少女と一緒に居た女性二人は反応したな。やはり、俺という有名人を前にすればそうなるだろうとも!!

 ふむ……優しそうな顔立ちの女性に、活発そうな金髪外国人か。うむ、君達も俺がまとめて面倒をみてあげようじゃないか!!

「初めまして、私はヒメノといいます」

 ……あるぇ~? 全然驚いてないぞ???


 そうか、きっと彼女は掲示板などを見ないのだな!! まだ幼い感じだし、仕方のない事かもしれないな!! うん、仕方ない!!

「ヒメノ、か。良い名前だな。可憐な君に相応しい。ヒメノ、君の矢は実に見事だった。是非我々のギルドに加入して欲しいと思っているんだが、どうだろう?」

 キリッとした表情の俺に、ここまで言われれば解るだろう。俺には君が必要なのだと!!

 そう、最強と名高いギルド【聖光の騎士団】!! その幹部直々のスカウトだ!! さぁ、俺の胸に遠慮なく飛び込んで……。


「済みませんが、パーティメンバーにも相談してみないと何とも……」

 ……断られた? いや、違うな!! 相談してみないとって事は、まだ断ってないって事だな!!

「そうか、ではパーティメンバーに相談してみて欲しい。ヒメノの実力なら、【聖光の騎士団】でも相応の立場になれるはずだ。あぁ、勿論だが、パーティメンバーも一緒に加入してくれるならば歓迎する。アークさんには、俺から話を通しておく」

 この二人以外にも、もしかしたらメンバーが居るのかもしれないな。女性三人だし、もしかしたら女性のみで組んでいるパーティなのかもな。だとしたら、俺ハーレム系の主人公まっしぐら?


「……解りました、話すだけ話してみます」

「そうしてくれ。あぁそれならば、フレンド登録をしておこう。何かあれば……いや、何もなくても連絡をくれて構わない。ヒメノならば、いくらでも都合を付けよう」

 昼のデートでも、探索デートでも、夜のデートでも、お泊りデートでも構わないぞ!!


 しかし、一緒に居た女性二人が前に出て来た。

「済みませんが、私達はまだ相談したい事があるので」

「ヒメノさん、疲れたですよね? 少し下がって休むですよー!」

 ……なんだ、この女達は。こんなに紳士的に話している俺に、何か不満でもあるのか?

「……話の最中に、横槍を入れるのはどうかと思うが?」

 そう言うと、女達は笑顔を浮かべた。浮かべたのだが……何だ、この迫力は? 目が笑ってないんですけど……?


「先に話していた所に入り込んだのは、貴方ですよ? それにヒメノさんはあれだけ活躍した分、お疲れみたいなので。ご遠慮願えますか?」

「しつこい男性は嫌われるですよー?」

 そう言い捨てると、二人はヒメノを連れてその場を離れようとした。待て!! ヒメノは俺と一緒に来ると決まっているんだ!!

「君達、流石にその物言いは失礼ではないか?」

 それでも食い下がろうとしたのだが……その時、変化が起きた。


『プレイヤーの皆様にお知らせします! 各門に、強力なモンスターの出現を確認しました!』


************************************************************


 気に入らない、気に入らない気に入らない気に入らない!! あの女共め、調子に乗りやがって!!

 アークもアークだ!! 何で俺が悪い事になっているんだよ!! クソがっ、絶対にいつか吠え面かかせてやるからな!!


 ともあれ、ヒメノ達を加えた防衛線は完成した。いよいよ動き出したボス……朱雀は空に舞い上がり、俺達を見下している。

 しかし残念だったな、こちらにはヒメノが居るんだよ!! 俺のパートナーの実力を思い知るがいい!!


「【パワーショット】」

 ヒメノの矢が朱雀に命中する。一撃でHPがごっそり削れている。流石、俺の嫁。

 しかし、その後がまずかった。ヒメノがヘイトを向けられてしまい、更には広範囲にばら撒かれた爆発する羽根の攻撃。

 盾職共!! ちゃんとヒメノを守れクソが!! ダメージ受けてんじゃねぇかよ!!


 ……


 結局は後衛部隊と、前衛部隊が分かれて行動する事になった。そして朱雀との戦闘が折り返しといったところで、それは起きた。

 ヒメノの攻撃が朱雀に当たった瞬間、朱雀がこれまでに無い攻撃を繰り出して来やがった……あの巨体で、ヒメノに向かって急降下したのだ。


 ヒメノは朱雀に押し潰されてしまった……ごめんよ、ヒメノ。守れなかった俺を、どうか許してくれ……。

「……はぁっ!?」

 すぐ側でデケェ声出すな、雑魚プレイヤー!! 俺は今、ヒメノの事を……んんんんっ!?

「……忍者?」

 思わず、そんな事を呟いてしまった。

 南門の上。そこに、ヒメノが居た。居たのだが……どこの馬の骨とも知れぬ忍者野郎に、お姫様抱っこされているんだが!? おいコラ、テメェ!!

「おー、ジン!! ナイス!!」

「ジン君!! 流石ですっ!!」

 あのクソアマ共が、喜んでいやがる……ジン? それがアイツの名前プレイヤーネームか? ヒメノとどういう関係だ、離れろやゴラァ!!


 俺がそんな事を考えていると、朱雀が忍者野郎を攻撃する。いや、正確にはヒメノか。まだ、ヒメノをターゲットにしているのだろう。

 また、あの爆発する羽根の攻撃である。忍者野郎はそれを高くジャンプして避けやがった!!

「はぁっ!?」

「高っ!!」


 ……


 ムカつく事に、忍者野郎はヒメノと一緒に朱雀を翻弄していた。クソッ、なんだあの速さは!!

 空中で跳ぶわ、高く跳ぶわ……更にはカマイタチを出すわクリティカル攻撃するわ。一々行動が忍者くせぇ。

 そうこうしていると、忍者野郎がヒメノと一緒にアークへと近付いて来た。


「突然失礼、拙者はジン。ヒメノ殿のパーティメンバーでゴザル」

 まんま忍者ってか!? ダセェんだよ!! このクソが!!

「そうか。俺はアーク、【聖光の騎士団】のギルドマスターを務めている」

「御挨拶痛み入る。不躾で申し訳ないけれど、ボスについて考えがあるでゴザル」


 忍者が言うには、ボスの防御力を何とかするにはイベントモンスターを討伐しなければならないというモノだった。忍者の後ろで、ヒメノがウンウンと頷いている……可愛い。

 ん? それなら俺とヒメノが行けば良いんじゃね? そうだ、それが良い!!


 少し考え込んでいるアークに、俺は提案しようとする……が、一歩遅かった。アークが勝手に頷いちまったのだ。

「了承した、では君達二人に任せよう。俺達は朱雀を食い止める」

 何を勝手に決めてんだ、このクソガキが!!

 慌てて止めようとするも、忍者野郎がヒメノを連れてもう走って行っちまった……!!

 クソッ……無能なギルマスが……!!


************************************************************


 忍者とヒメノが走り去って、五分くらいが経過した。すると、運営アナウンスが流れて来た。

『プレイヤーの皆様にご報告します! 南西地点で、メッセージ機能を妨害するモンスターを討伐! 南西地点のメッセージ機能が復活しました!』

 ……早くね? いいや、そうだよな。そんなはずがない。多分、別のプレイヤーが倒したんだよな!!


 ……


 それから、更に五分後。

『プレイヤーの皆様にご報告します! 南東地点で、メッセージ機能を妨害するモンスターを討伐! 南東地点のメッセージ機能が復活しました! ……えっ、嘘でしょ!? 速過ぎない!?』

 運営アナウンスが、最後に何か驚いていた。嘘だよな、そうそう。絶対嘘だって。アイツなはずが無い……ありえねぇっ!!


 ……


 戦闘を続ける中で、ふと見るとあの金髪外人が側で戦っていやがった。槍使いか……ふん、それなりに動けるみたいだな。

 そんな金髪外人に、後ろで支援魔法を使っていた魔法職の女が声を張り上げた。

「シャインちゃーん!! ジン君達が戻ってくるよー!!」

 その声に、金髪外人も笑顔で返した。

「流石ジンとヒメノちゃんですねー!! すぐに倒しちゃったですー!!」

 ……ぜ、絶対に認めねぇ!! あいつが倒しただなんて、俺は認めねぇ!! 物理的にありえねぇし!!


 そうこうしていると、朱雀に攻撃が通りやすくなる。いよいよ、このイベントの大詰めか。

「お、おい!! あれ!!」

「さっきの忍者に……やっぱりそうだ!! アイツら、噂の和装集団だ!!」

 忍者!? もう戻って来たのか!? いや、有り得ないな。多分、誰かが倒してくれると思ってその辺で隠れていたに……はぁっ!?

 忍者を睨み付けてやろうと振り返ったその瞬間だ。門の上から飛び降り着地したらしき、五人のプレイヤー。


 茶髪に黒い服を着込み、紫のマフラーを靡かせる忍者。

 銀髪に紅白の巫女服、赤いマフラーを装備したヒメノ。

 和風の甲冑を装備した、金髪の鎧武者……こいつ、誰だ? 右腕に何か、仰々しい防具を付けている。

 青い髪に青いリボンを付けた、ヒメノとよく似た服装の……あの娘は、まさかレンか!?

 金髪に緑色のリボンを付けた、和服の上にエプロンを付けた和風メイド姿のシオン!?

 そんな五人が横一列に並んで立ち、不敵な感じで笑っている……!!


 い、一体何が始まるって言うんだ……!?

彼はある意味、好きなキャラかもしれません。

イジりやすい。


次回投稿予定日:2020/7/16

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― 新着の感想 ―
[一言] 何が起こるって?知らんのか?───大惨事怪獣退治だ
[一言] 1話から全部読ませていただきました 普通におもろしろかったです これからの更新も頑張ってください 取り敢えず作者さんがライダー好きなのは久々と感じましたw
[良い点] ゲームを楽しんでいる主人公たちの話が主軸になっていて、パーティメンバーの人間関係が深まっていく過程がとても面白いです。 [気になる点] ちょっと直結厨多すぎませんかね?w [一言] とても…
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