01-04 超強化されました
ギリギリの所で、アンコクキュウビを倒したジン。その脳裏にエクストラクエストをクリアしたアナウンスが流れると、更に何度もアナウンスが続いた。どうやらレベルが上がったらしい。その最後に、こんなアナウンスが響いて来た。
『スキルオーブ【?????】が【九尾の狐】に変化しました』
「【九尾の狐】……? 何それ」
システム・ウィンドウを開くと、あの祠で手に入れた黒いスキルオーブが変化していた。
ジンが取得したスキルオーブを確認しようとすると、アンコクキュウビの身体が光になって砕け散る。モンスターのHPが0になった時のエフェクトだ。アンコクキュウビが倒れ伏した場所には、宝箱が置かれている。
「もしかして、クリア報酬かな?」
期待感を込め、ジンは宝箱に近付く。ゴクリと喉を鳴らして蓋を開いてみると、中から光が溢れ出した。
「お、おぉぉ!?」
光によるダメージも回復効果も、何も無い。この光はどうやら、演出らしい。
演出の光がジンの前に降り注ぐと、勝手にシステム・ウィンドウが現れる。表示されているのは、アイテム欄だ。そこには、九個の見覚えの無いアイテムが表示されていた。
「九個も!? 一度に九個も貰えるのか……あっ、九尾の狐だからか!!」
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装飾品≪闇狐の飾り布≫
効果:HP+10、MP+10。
スキル:【自動修復】
武装≪小狐丸≫
効果:AGI+10。この装備は≪刀剣≫と≪短剣≫として扱う。左手専用。
スキル:【自動修復】
武装≪大狐丸≫
効果:AGI+10。この装備は≪刀剣≫と≪短剣≫として扱う。右手専用。
スキル:【自動修復】
素材≪アンコクキュウビの毛皮≫
説明:【服飾】スキルにより、衣服を製作する事が可能。
スキルオーブ【拡張スキルスロット】
効果:使用するとこのスキルオーブは消滅する。スキルスロットを拡張する。
武装スキル【自動修復】
効果:非戦闘時、1秒に1ずつ耐久値が回復する。
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「飾り布が一つと、武器が二つ……刀でもあり、短剣でもあるのか。不思議な装備だなぁ……あと、素材とスキルオーブは同じ物が三つか」
毛皮となれば、作れるのは服等だろう。となれば、当ては一つだ。今回の戦いで、ある意味ではとても大きな借りが出来た人物がいる。
「ユージンさんに相談してみようかな」
手広く生産系のスキルに手を付けているというし、相談してみるが吉だろう。
ひとまずジンはドロップしたスキルオーブを、スキルスロットにセットする。まずは、黒いスキルオーブだ。
『ユニークスキル【九尾の狐】を習得しました』
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スキル【九尾の狐Lv1】
説明:疾きこと風の如し。習熟度が向上すると、新たな武技を習得する。
効果:AGI+50%。他のステータスを−50%。
武技【空狐Lv1】
説明:武器による攻撃時、真空の刃による追加攻撃を付与。
効果:消費MP5。詠唱破棄。攻撃時、STR+5%、DEX+5%、AGI+5%。
Lv2 【狐火(未習得)】
Lv3 【天狐(未習得)】
Lv4 【狐雷(未習得)】
Lv5 【地狐(未習得)】
Lv6 【狐雨(未習得)】
Lv7 【人狐(未習得)】
Lv8 【狐風(未習得)】
Lv9 【霊狐(未習得)】
Lv10【九尾の狐(未習得)】
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ユニークスキルとはなんぞや? と思いつつ、ジンは赤いスキルオーブも使用する。スキルスロットにセットすると、変化が訪れた。
『【拡張スキルスロット】をセットしました。このスキルオーブは消滅します。スキルスロットが拡張されます』
「スキルスロットが増えた!! そうか、拡張ってそういう事か!! え、じゃあ三つ増えるの!?」
嬉々として残りのスキルオーブをセットしたジンは、次に戦利品を装備する事にした。飾り布と、二本の小太刀だ。システム・ウィンドウで装備品を選択し、適用ボタンを押す。すると、またもやアナウンスが脳裏に響いた。
『エクストラスキル【刀剣の心得】を習得しました』
「んっ!?」
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スキル【刀剣の心得Lv1】
説明:刀剣の習熟度を示す。習熟度が向上すると、新たな武技を習得する。
効果:刀剣による攻撃時、STR+5%、DEX+5%、AGI+5%。
武技:【一閃Lv1】
武技【一閃Lv1】
説明:刀剣による斬り付け攻撃。
効果:攻撃時、STR+5%、DEX+5%、AGI+5%。クリティカル発動率10%。武技発動後、再使用まで15秒。
Lv2 【剛剣(未習得)】
Lv3 【抜刀(未習得)】
Lv4 【速剣(未習得)】
Lv5 【奇襲(未習得)】
Lv6 【命剣(未習得)】
Lv7 【無我(未習得)】
Lv8 【斬首(未習得)】
Lv9 【背水(未習得)】
Lv10【閃乱(未習得)】
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二振りの小太刀を装備した事で、ジンは新しいスキルを手に入れた。短剣とは違う、刀剣スキルがあったらしい。
「おぉ……何かカッコいいかも……」
飾り布は巻き方が選ぶ事が出来るらしく、ジンはマフラーとして装備した。長いマフラーを靡かせて駆け抜ける自分を想像して、ジンはテンションが上がってしまう。
また、腰の後ろにも、二刀の小太刀が配置されている。それを手で撫でて、ジンはうんうんと頷いた。
「刀も結構、良い感じ……うーん、これだと初心者装備がなぁ」
これらのユニークアイテムの存在感が強すぎて、初心者装備が非常に浮いている。
そうなれば、やはり毛皮の使い道は一つだろう。ジンは、絶対にユージンに相談すると心に決めた。
「っと、そろそろログアウトしないとか。取りこぼし……は、無いかな」
最終確認を終えて、ジンはログアウト操作をして現実へと帰還する。
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翌日、ジンはログインするとすぐにユージンに連絡を取った。
――ご相談したい事があるのですが、お時間を頂けますでしょうか?
――了解です。もし始まりの町に居るならば、私が借りている工房で話しませんか?
そんなジンへのレスポンスは、数分で返って来た。願ったり叶ったりである。ジンは場所を聞き出すと、ユージンの工房を目指して歩き出す。
数分後、ジンは始まりの町のはずれにある工房に辿り着いた。工房の前では、あの胡散臭い風体の男が待っていた。
「やぁ、いらっしゃい! 待っていたよ」
歓迎の言葉と共に、ユージンは笑顔でジンを出迎えた。
工房の中に場所を移し、向かい合わせで座る二人。
「装備、随分と見違えたね。ダンジョンで収穫があったのかな?」
文面では丁寧な文章だったが、実際に顔を合わせるとフランクな言葉遣いのユージンである。
「ユージンさんのくれた《ポイズンポーション》のお陰です。本当にありがとうございました」
「アレが役に立ったのかい? あぁ、それなら良かった!」
相変わらずの風体ながら、ユージンは穏やかな雰囲気を醸し出していた。だからこそ、ジンもリラックスして会話を楽しんでいた。
話は弾み、アンコクキュウビとの戦闘の話までを終える。そして、ジンはいよいよ本題を切り出す事にした。
「あの……それで、依頼したい事があるんですけど」
「うん、察しは付いたよ。でないとわざわざ、職人プレイヤーに声を掛けない。作りたいのは武器かな? 鎧かな?」
察しの良いユージンに苦笑しつつ、ジンはストレージから素材≪アンコクキュウビの毛皮≫を取り出す。
「この素材を使って、服を作って貰えないでしょうか」
「成程、服か。確かにジン君は今、初期服だもんねぇ」
そう言いながら、ユージンはウィンドウを開く。それはシステム・ウィンドウとは違い、生産系スキルを所持しているプレイヤーにしか開けないウィンドウだ。
「どんな服をご所望かな? 素材は相当良い物だから、これ一つで一式作れると思うよ」
ユージンに言われ、ジンはどんな服が良いかを考え出す。
……
「という事で、マフラーに合わせるならこの辺かな?」
数十分かけてヒアリングした所、ユージンがデザイン画を描いてくれたのだった。
「……カッコいいですね。何か和洋折衷の忍者みたい」
ユージンが描いたデザイン画に、ジンは唸っていた。デザイン画は、イラストレーターが描いたのかと思わせるクオリティである。
「こんな感じにするなら、少し素材を追加した方が良いね。手持ちが無いなら、僕が持っている素材を使っても良いけど」
「ど、どんな素材ですか……?」
「ベルト用に毛皮が欲しい、かなぁ」
持っている毛皮は≪アンコクキュウビの毛皮≫以外だと、道中で何度か遭遇したグリズリーラビットからドロップした≪グリズリーラビットの毛皮≫だけだ。
「グリズリーラビットを倒した時にドロップしたんですけど、使えます?」
「うん。白いベルトなら、黒い服とマッチするんじゃないかな?」
その後も話し合った結果、ジンはユージンに製作を依頼する事にした。
当然ながら、金はかかる。最もこの場合の金というのは、ゲーム内通貨の事だ。
ちなみに、ゲーム内の通貨単位は二つだ。ゴールドコインを表すGと、ダイヤコインを表すDだ。
Gはゲーム内で宝箱から入手したり、素材を売ったりする事で入手可能。プレイヤー間でのやり取りにも、Gが使用される。
Dは要するに、課金用通貨である。課金アイテムショップでのみ使用可能で、プレイヤー間のやり取りは不可能。またデスペナルティでドロップしない等、悪用防止が徹底されているらしい。
「よし。作って貰うには、稼がないといけないですね! いくらくらいですか?」
「素材込みで、十万ゴールドかな。あぁ、後払いで良いし分割払いでもオーケーだよ」
そう言うユージンだが、ジンはどうにも引っ掛かる。
「あの、何でそこまでしてくれるんですか? それに、値段も安過ぎませんか? 昨日見た時、店で売っている服で同じくらいの値段でしたけど……」
オーダーメイド品が、店売りの服と同等の値段という事はあるまい。勿論ジンが今現在装備している様な、安物ならば五百ゴールド程度だ。
プレイヤーメイドの値段設定は、九割方はシステムで適正価格が打ち出される。そこから職人側で、割引や割増が可能な仕様となっているのだ。
ジンの服を作るには本来、素材費と手間賃で合わせて五百万ゴールド近くかかる。ユージンはそこから、超割引という暴挙に出ているのだった。
ユージンのそれは、人が好いという言葉だけでは済まされない程の厚遇だ。昨日出会ったばかりの男が、何故自分にそこまでしてくれるというのだろうか。
何か思惑があるのか、それとも……そう勘繰るのも、無理はなかった。
「勿論、対価は欲しいよ? 割引と支払いについてサービスする代わりに、情報が欲しいんだ」
ユージンのその言葉に、ジンは首を傾げる。
「情報って……何の情報ですか?」
初心者であるジンが持っている情報など、たかが知れている……と思っている。だが、ユージンはジンの装備しているマフラーや武器がどの様な品か、気付いていた。
「そのマフラーや腰の武器は、貴重なものだろう?」
「多分、そうですけど……」
「それを僕に鑑定させて欲しいんだ。装備の情報や、手に入れた経緯の情報が欲しいという事だね」
首を傾げるジンを見て、ユージンは苦笑してみせた。ジンはまだ、自分が手に入れた装備の価値に気付いていないのだ。
「ジン君、あまりこういうゲームはやってない?」
「はい、初めてです」
「成程、それなら納得した。それじゃあ、簡単に解説するね」
その言葉を皮切りに、ユージン先生のアナザーワールド・オンライン講座が始まるのだった。
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≪ユニークアイテム≫
ゲーム内に一つしかない、特別なアイテム。譲渡不可。
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「……という事で、ユニークアイテムは一つ限りの特別な品なんだよ。その入手方法は、特別なクエストや条件をクリアする必要があるんだ」
アイテムやスキルには、ランクがある。
まず、店で売っていたり頻繁にモンスターからドロップするコモン。次に、低確率でドロップするレア。更に低確率でドロップする、スーパーレア。ここまでが、割と手に入れる機会が高いとされている。
その上のレアリティとなるのが、ガチャでなければ当たらないウルトラレア。特別な条件をクリアしなければ手に入らない、エクストラ。そして、全サーバーにおいて一つしかないユニークだ。
「ひ、一つだけ? そんなに特別な物だったんだ……」
装飾品や刀を見て、呆然とするジン。その姿にもう一度苦笑して、ユージンが話を元に戻した。
「そんな訳で、ユニークアイテムを手に入れた経緯が解ればと思ったんだ。これは、お金で買える情報では無いんだよ」
ユニークアイテムの情報と引き換えに、装備製作に優遇措置を取る。それならば、ジンにも理解が及んだ。
「解りました。と言っても、何が条件だったのかは……エクストラクエストっていうのが、条件だったのは解るんですけど。エクストラクエストが出た条件も解らないですし……多分、祠が関係しているんですけど」
「あ、知らないかな? クリアしたクエストは、システム・ウィンドウで確認出来るんだよ」
当然、ジンはそんな事は知らなかった。早速システム・ウィンドウを開いて、クエストのデータを探してみる。
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エクストラクエスト【暗黒の九尾】
発動条件:[風の祠]で《古びた宝玉》を入手する。
完了条件:エクストラモンスター【アンコクキュウビ】を討伐する。《古びた宝玉》を入手後、ダンジョン外に出ていない。《古びた宝玉》入手後、ダンジョン内で一度も戦闘不能になっていない。このクエストは一度しか挑戦出来ない。
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クエスト発動条件の文章に、ユージンは苦笑してしまう。
「一度きりのクエストか……それに祠とやらは、隠されていたんだよね?」
「そうですね……」
「簡単には見つからないわけだ」
「僕は偶然、この条件を満たしたから……そうだったのかぁ」
無論、それによって得られる物は大きい。
ユニークアイテムと、それに付加されているスキル【自動修復】。加えてスキルスロット拡張が三つに、貴重なモンスターの素材。そして、ユニークスキル【九尾の狐】。
正に、破格の報酬である。
「情報提供ありがとう、助かったよ!」
「あ、いえ。偶然に偶然が重なっただけですから」
ユージンは立ち上がると、ジンに向けて笑みを見せた。
「それじゃあ、製作を始めるよ。そんなに時間はかからないから、寛いで待っていてね」
「あ、はい!! ありがとうございます!!」
工房の奥へと向かうユージンの背中を、ジンは頭を下げて見送った。
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一時間後……ユージンから装備を受け取り、工房を辞したジン。その装いは、工房に来る前とは大違いだ。
首元には、紫色のグラデーションが美しい≪闇狐の飾り布≫。見た感じでは、完全にマフラーである。
そして、夜空を思わせる漆黒の衣装。胸元には、クナイの形をしたアクセサリーがあしらわれている。ユージンが命名したその名は、《夜空の衣》だ。
この衣装はトップスとパンツ、グローブとブーツまでが一つのセットとなっている。トップスは黒を基調として、所々に飾り布と同じ紫色を取り入れたデザイン。簡単に言えば、肩を晒した和装である。ズボンは普通の洋風ズボン。それでも一際目を引くのは、やはり紫色のマフラーだろう。
そんな和洋折衷の忍者装束は、ユージンが描いたデザイン画そのものである。
生産職人ユージンは、これまで製作した中でも最高傑作なのだと言っていたのを思い出す。回避主体のジンに合わせて、装備重量は極限まで軽くなっている。
ちなみに、破格だったのは値段だけではなかった。
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装備≪夜空の衣≫
効果:全ステータス+10。上半身・下半身・足元の装備一式。
武装スキル:【自動修復】
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なんと製作された衣装は、飾り布に匹敵する性能を持っていたのだ。
これが≪アンコクキュウビの毛皮≫によるものなのか、ユージンが製作したからなのかは解らない。だが、ジンにとってはありがたい事であった。
システム・ウィンドウを眺めていると、使用していないステータスポイントがある事に気付くジン。
「レベルが上がったから、結構貰えたんだな……レベルが一気に9になってるもんなぁ……。よし、早速振り分けようかな」
当然、目指すは最速。AGI一択でステータスポイントを注ぎ込んでいく。
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■プレイヤーネーム/レベル
【ジン】Lv9
■ステータス
【HP】66/66《+10》
【MP】18/18《+10》
【STR】10【-50%】《+10》
【VIT】10【-50%】《+10》
【AGI】31【+50%】《+30》
【DEX】10【-50%】《+10》
【INT】10【-50%】《+10》
【MND】10【-50%】《+10》
■スキルスロット(3/3)
【短剣の心得Lv3】【体捌きの心得Lv3】【感知の心得Lv1】
■拡張スキルスロット(3/3)
【九尾の狐Lv1】【刀剣の心得Lv1】【投擲の心得Lv1】
■装備
《闇狐の飾り布》HP+10、MP+10【自動修復】
《夜空の衣》全ステータス+10【自動修復】
《初心者のポーチ》収納上限50
《大狐丸》AGI+10【自動修復】
《小狐丸》AGI+10【自動修復】
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「おぉ……AGIがこれで、76.5になった……!!」
これが果たして全プレイヤー中でどの程度の位置なのかと、ジンはニヤニヤしていた。
ちなみにジンがゲームを始めるまでのAGI最高値は、装備込みで75が最高値だった。つまり現状では、ジンは望み通り最速プレイヤーという事になる。
時間を確認したジンは、まだ少しプレイ出来ると判断。このままフィールドに向かう事にした。装備のお陰でSTRも15まで上がった為、狩りが少しは楽になるだろうと思ったのだ。
まずは、フィールドへ。荒野に出たジンは、また全力疾走する事にした。クラウチングスタートから、猛ダッシュ。すると、周囲の景色が流れていく。
まるで車で走っているかの様だった。
――やばい、気持ち良い!!
現実では有り得ない程の速さ。VRの世界だからこその敏捷性。
テンションを上げたジンは、数分で森に到達するのだった。出迎えたのは巨大な蜂のモンスター、【キラーホーネット】だ。それも、同時に八体。
「【クイックステップ】!!」
超強化されたAGIと、【クイックステップLv7】の効果は凄まじかった。一瞬でモンスターの目前に到達したのだ。
「【一閃】!!」
初めて使用した武技、【一閃Lv1】。その一撃で、キラーホーネットのHPバーが根こそぎ削られた。10%の確率で発動する、クリティカルヒットが発動したのだ。ただの一撃で地面に落ちるキラービーは、ピクリとも動かない。
――行ける、強くなってる!!
ジンは更に、五体のキラーホーネットに斬り付ける。一撃で倒す事は出来なかったが、続く攻撃で倒す事には成功した。
「【スライサー】!!」
発動した【クイックステップ】の効果時間が切れると、ジンは即座に次の武技を使用した。この攻撃で更に一体を一撃死させ、キラーホーネットは残り一体となる。
「はあぁっ!!」
ジンは通常攻撃で、最後の一体に向けて両手の刀を振るう。偶然にもクリティカルが発生し、与えるダメージが1.5倍になったお陰で、一発で倒す事が出来た。
八体のキラーホーネットを倒すのにかかった時間は、1分にも満たなかった。お陰で、ジンはゆっくりと剥ぎ取り作業を行えるのだった。
「うーん、ドロップするのは針ばっかりだな。おっ、スキルオーブだ。ラッキー!」
モンスターは、低確率でスキルオーブをドロップする事がある。これは掲示板で確認していた情報なので、流石のジンでも驚きはしなかった。
……ジンは気付いていなかった。その様子を見ている者が居た事を。
九尾の狐です。
そして忍者化です。
某有名忍者漫画のパクリでは御座いません。