表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十六章 冬休み始まりました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

394/576

16-04 幕間・とある神社にて

 元旦の朝、一人の少女が寒さを堪えながら歩いていた。あと数分も歩けば、クラスメイトと合流できるのだ。

 元旦は神社の前で待ち合わせをして、一緒に初詣をするのが毎年恒例の事。だから、今年も一緒に行こうねと事前約束をしていた。


――今頃、頭領様と姫様も初詣かな。


 その呼称は、彼女が所属するギルドでは統一された呼称。AWOにおいて最も有名な夫婦と称して差し支えない、【七色の橋】が誇る最高の夫婦である。

 その片割れである少年・ジン。彼には熱心な……いや、熱心過ぎるファンが付いている。そのファンの一人が立ち上げ、気が付けばかなりの人数になったギルド【忍者ふぁんくらぶ】。

 彼女……【羽田はねだ 名都代なつよ】も、その一員だ。彼女のプレイヤーネームは、ハヅキ。仲間達を補佐する、裏方である。


 中学三年生のハヅキは、親友と違い戦闘は得意ではない。かわりに物作りが大好きで、色々とアイディアを元にして開発するのが趣味だったりする。

 仲間達の役に立ち、ひいては頭領様ジンの役に立ちたい……そんな思いから、彼女は日々アイテム製作に心血を注いでいるのだ。

 その結果生まれたのが、ココロの≪仕込み杖≫やイズナの≪シュリケンシューター≫である。


 対する親友・イナズマは身体を動かすのが好きで、ハヅキとは正反対だ。しかしながら何故か気が合い、中学入学で出会ってから今まで仲良くしている。

 彼女はその明るさでハヅキを楽しませたり、笑わせたりしてくれる。その空気はとても居心地が良く、日々がとても楽しく賑やかなのだ。


 とはいえイナズマも、その明るさの裏に影を背負っている。彼女は小学四年の時に、父親を亡くしているという。

 今年の春に母親が再婚したとの事で、名字が変わりクラス内でも微妙な空気になったのを、ハヅキ……名都代は今でも覚えている。

 それでも彼女の明るさ故か、今ではすっかり雰囲気は元通りになった。新しい名字も、クラスメイト達に馴染んでいるのだ。


 そんな彼女には、親の再婚によって出来た兄がいる。神社の入口で、名都代を待つ少女の横にはその新しい兄が立っている。


――相変わらず心愛ここあちゃんを大事にしてるんだな、お兄さん。


 フッと口元を緩ませて、名都代は二人の方へと歩き出す。

 心愛は名都代に気付くと、笑顔で手を振った。この可愛らしい女の子が、ゲームではバカでかいハンマーを振り回している。クラスメイト達がそれを目にしたら、相当驚くだろう……名都代はそんな事を内心で考えつつ、二人と合流して新年の挨拶を始める。

「お待たせしました。二人共、あけましておめでとうございます」

「なっちゃん! あけましておめでとう!」

「羽田さん、あけましておめでとう」

 見た目は不良っぽい少年だが、名都代は彼が気配り上手で優しい人だと知っている。だから彼女達のクラスメイト達が彼を怖いと思うのに、少々不満を覚えていたりする。


「今年もよろしくねー! 今日は何時くらいにインする?」

「八時くらいかな、早くても。正月だし、家族との時間もあるからねー」

「正月早々、ゲームなんだな二人とも。まぁ、楽しんでるようだから何も言わないけど」

 心愛の兄は二人の様子に笑みを浮かべ、そして境内の方へと視線を向ける。それは「お参りに行こうか」という、彼の無言のメッセージだ。二人はその意図を汲み、並んで歩き出す。

 その後は二人の後ろに付き、二人を見守る様にしている。何かあればすぐ手を差し伸べられるようにという配慮だろう。


 彼らしいと名都代は思いつつ、彼にも話を振ってみる。折角三人なのだから、彼をのけ者にするのは宜しくないだろう……と思ったからだ。

 同時に高校一年生で一つ年上の彼に対して、ちょっとした憧れの様な感情も無きにしもあらず。

「お兄さんは、やらないんですか? AWO」

「……うーん、考えとく。VRは良くわからないし、それに金かかるしね」

「あー、うちにも一台しかないもんねー」

 三人は和やかに会話しながら、境内に向かう参拝客に合せて歩いていくのだった。

次回投稿予定日:2023/5/20(本編)


イナズマちゃん

挿絵(By みてみん)


ハヅキちゃん

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 裏方にもスポットライトが…… 忍♡姫の力になりたい一心で 今や ふぁんくらぶを支える柱となった [気になる点] 淡いラブ臭が…… [一言] 将来 七色の工作メンバーと共に 何…
[良い点] 「ふぁんくらぶ」フィルターを通さないと、こんなにラブコメの波動を感じられるなんて恐ろしい娘…っ!!
[良い点] 性格も好みもまるで正反対なのになんでかうまがあうそういうことって割とありますよね。わかりみが深い。そういう人って良い理解者良い友人になったりするんで大事にするとよいですよ。 [一言] 暗黒…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ