16-02 営業スタイル変えました
AWOに存在する、とある林の中にひっそりと建てられた和風建築……それが、【七色の橋】のギルドホームだ。塀で囲まれたそのホームは、プレイヤー達からは[虹の麓]という通称で呼ばれている。
第二回イベントで優勝した際には、彼等のギルドホームの前で騒ぎが起きた事がある。数多くのプレイヤー……ギルド加入希望者やフレンド登録希望者が、大挙して押し寄せた事があったのだ。
それ以降、ギルドホームの入口は閉ざされ、フレンド登録しているプレイヤーしか訪問出来ない様に設定された。
十二月三十日の、月曜日。その[虹の麓]の入口が、久方振りに開放されていた。入口の門からギルドホームまでの庭園……そこに、プレイヤーによる長蛇の列が出来ている。
列の行き先には、今までは存在しなかった新たに建造された小屋。それは【七色の橋】の工房と隣接する様に建てられた、販売専用の店舗スペースである。その店舗の中には、【七色の橋】が生産した武器や防具・衣装がずらりと並べられている。
「青い鞘の≪打刀≫を、一振り下さい」
「っちゅーと、≪打刀・斬鉄≫を一振りやな? 表示されている売値での取引になるんやけど、構わへんか?」
「はい!」
「ほんなら、悪用防止のスクショを撮らして貰うさかい」
商人ロールプレイヤーであるクベラがスクリーンショットを撮影した後、来客の青年はほくほく顔でトレード画面に購入金額を入力。同時にクベラがトレード画面を操作すれば、店舗に飾られていた≪打刀・斬鉄≫が消えてトレード専用ウィンドウの中に収められる。
「注文の品で間違いないか、よお確認してやー」
「えぇ、大丈夫です」
「ほんなら取引成立や、おおきにな~」
これまでは、始まりの町[バース]で露天商スタイルで和装の売買をしていたクベラ。しかし今回からは、[虹の麓]に設えられた店舗での売買をする事になった。
この[虹の麓]はずっと入り口が閉ざされていた、【七色の橋】のギルドホーム。その中に入る事が出来るだけでも、外部の人間からしたらウッキウキなのだ。
しかし、それだけでは終わらなかった。
「クベラさん、お疲れ様です!」
「追加のポーション、ここに置いておきますね」
店舗の裏手にある工房から、一組の少年少女が姿を見せた。二人の手には、出来立てほやほやであろうポーションが大量に収められている。
「はいなー! お疲れさんやナタク君、ネオンさん」
その二人が姿を見せた事で、店舗の前に並ぶプレイヤー達が一斉に視線をそちらに向けた。
「おおぉ、生のネオンちゃんだ……!!」
「あの可愛さ……マジで最高じゃないか!?」
「で、あれが噂の新人君……だな」
「あぁ……元気そうで何よりだよ、ホント」
こうして、時折【七色の橋】のメンバーが姿を見せるのである。これには、集まったプレイヤー達のテンションも爆上がりだ。
ちなみにナタクは、マキナだった頃の装備をそのまま使用している。本来ならば、マキナとナタクが同一人物だと知られるのは悪手である。
しかし≪戦衣・勁草曙天≫や≪陣羽織・不撓不屈≫は、大切な仲間達から貰った大切な装備だ。ナタクは彼なりに真剣に悩み、それらをそのまま使用し続ける事を決意した。
イベントで散々活躍したマキナの装備を、ナタクが身に着けている……それを見たプレイヤー達は、彼がマキナであると察している。
しかし、それについて言及する者は居ない。マナーに反するというのもあるのだが……何かあればその時は、彼を大切に思う仲間達が黙っていないだろう。
それはさておき、店舗にはこうして【七色の橋】のメンバーが姿をちょくちょく見せるのだ。接客をする訳では無いので、一目見る程度ではあるのだが。
ちなみに、誰が来るかは完全にランダム。その時の作業の進捗によって、手が空くメンバーが姿を見せるのである。
「≪小太刀≫ありますか!?」
「あー、さっきのでラストやったけど……ちょお待ってな? すまんなー、≪小太刀≫って在庫はあるかいな~?」
工房の方へ声を掛けると、一人の少年の声が返って来る。
「今さっき、三振り出来たでゴザルよ。今、持っていくでゴザル」
その特徴的な口調が耳に入り、来客のプレイヤー達は「まさか……!?」と期待に満ちた表情を浮かべる。ざわ……ざわ……。
そうして、工房から姿を見せたのは……。
「お待たせしたでゴザル」
「出来立ての≪小太刀≫ですよ~♪」
知らない者など居はしない、AWOにその名を轟かせる二人。ジンとヒメノ……【七色の橋】が誇る、正真正銘のトッププレイヤー夫婦である。
「こ、こんな近くで見られるなんて……!!」
「来てよかった……ッ!!」
「実物、可愛すぎてもう……っ!!」
「ジンさんかっけー!!」
最早隠す気も無いらしく、客として訪れたプレイヤー達が賑やかになる。その様子に、クベラは思わず苦笑いだ。
――スターみたいな扱いされてるな、相変わらず。実際、スターみたいなもんなんだけどさ。
「済まんなぁ、お二人さん。助かったわ~」
「いえいえ、こちらこそ!」
「売買を担当してくれるクベラ殿にこそ、いつも感謝しているでゴザルよ」
商品を補充して、工房に戻ろうとする二人。でも、その前に……。
「ご来店、感謝するでゴザル」
「ありがとうございます♪」
笑顔と感謝の挨拶を残して、二人は工房へと戻っていく。
ジンとヒメノが去った後も、客達の盛り上がりは収まらない。というより、更に盛り上がっていく。
「ファンサいただきましたぁっ!!」
「圧倒的、天使……ッ!!」
「ヒメノちゃんが可愛過ぎて、毎日でも買いに来たくなる……」
「俺……【忍者ふぁんくらぶ】、入ろうかな……」
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営業時間が終わった所で、ジン達はホームの大広間で寛いでいた。事前に公式ホームページの掲示板で、営業時間は通知していた。しかし並んでいたプレイヤーの数はかなり多く、捌き切るまでに追加で三十分も掛かってしまったのだ。
「これくらいなら、ホームの庭までの一般開放も大丈夫そうですね」
レンがそう言うと、ヒイロも頷いてみせた。
「店舗スペースを用意して、短時間でも門を開いて外部の人間を招き入れる……この試み、今の所は問題無さそうかな」
ギルドホームの入場設定を元の『ギルドメンバー・フレンド限定』に戻せば、立ち入った条件外のプレイヤーは強制的に敷地外に転送される。だから潜入などの心配は、無用なのだ。
「わ、私は……工房で、作業、していて、良いんだよ、ね?」
湯呑を両手で持ちながら、おずおずとそう口にするカノン。人見知りの彼女なので、不特定多数のプレイヤーから注目されるのは慣れないし、心臓に悪い。
「むしろカノンさんとミモ姉には、集中して貰った方がいいッスからね」
「品出しは僕らが担当するので、大丈夫ですよ」
ハヤテとナタクが安心させる様にそう言えば、カノンは「ありがとう」と告げてお茶に口を付ける。
「これで閉鎖的なギルドっていう印象も、多少は緩和されるんじゃないかな」
「まぁ、まだほんの少しだけどね」
「急激な変化は良くないって、ケリィさんからもアドバイス貰ったし」
不正騒動の一件で思う所のあった、【七色の橋】。自分達も変わる必要があると判断して、実践してみたのがこのホームでのアイテム売買だ。
ちなみに今回は不在だが、来週の営業からは【桃園の誓い】が一緒に活動する予定だ。先日今後の展望を聞いた彼等は、自分達のホームにも店舗スペースを用意する方針を固めたのである。それは週ごとに、販売場所を【七色の橋】と【桃園の誓い】でローテーションする為だ。
そんな訳で、今日彼等はユージンの協力を得てその作業を行っているのだ。故に、本日は不在だったのである。
「次からは、もっと賑やかになるね」
「そうだねぇ。でもさ、販売窓口がクベラさんだけって大変じゃない?」
ヒビキとセンヤがそう言うと、クベラはうんうんと頷いた。
「まぁ、楽ではないのは確かやな。あと二人くらい、信頼できるプレイヤーをスタッフに誘えたらええんやけどなぁ」
それか、PAC契約して店舗スタッフ増やすか? と付け加えるクベラ。
「そうそう、クベラさんは≪オリハルコンチケット≫手に入れてますもんね!」
「まだ使ってへんけどな。PKされるかもしれへんし、今は貸金庫に保管しとるしな」
第四回イベントで上位二十組に入った報酬は、ギルド向けの報酬だ。
その内の一つが、≪ギルドフラッグ≫というアイテムである。
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アイテム≪ギルドフラッグ【七色の橋】≫
効果:設定したキーワードを宣言し、≪ギルドフラッグ≫を地面に突き立てた際に効果発動。
発動マップ内のギルドメンバーの全ステータス+10パーセント。効果持続時間360秒。
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六分間とはいえ、全てのステータスを10パーセント強化するという効果は侮れない。
特に【七色の橋】には、ステータス特化型のジン・ヒメノ・レン・シオンが居る。そのステータスを底上げ、しかもマップ内に居るメンバー全員が対象。これは実に強力なアイテムである。
ちなみにこの≪ギルドフラッグ≫にはランクがあり、そのランク……ステータス強化率は、イベント成績で決まっている。
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1位~ 5位 強化率10パーセント
6位~10位 強化率8パーセント
11位~20位 強化率5パーセント
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ジン達【七色の橋】は、最高値の10パーセント。【桃園の誓い】は惜しくも6位だった為、ワンランク落ちる8パーセントとなる。しかしながら、それでも強力な効果なのは間違いない。
ちなみに仮設ギルドが二組ランクインしているが、彼等には≪ギルドフラッグ≫を手に入れても意味がない。その代替措置として仮設ギルドのプレイヤーには、金銀とプラチナのチケットに≪魔札≫が一人一枚ずつ配布されているのだ。
それはゲスト参加したプレイヤーにも同様だ。ゲストとはいえギルドに所属していないのだから当然、ギルド向けの報酬は意味を持ちえない。ならば仮設ギルドと同じ様に各種チケットが配布されたのは、至極当然である。
そして三位以上のギルドにゲスト参加したフリーランスのプレイヤーには、報酬に≪オリハルコンチケット≫一枚が上乗せされたのだった。最もその報酬を手に入れたのは、2位の【七色の橋】にゲスト参加したユージン・リリィ・クベラ・コヨミの四人だけだが。
「ちなみに、ギルド報酬はもう一つあるんやったな?」
「えぇ、中々に心躍るものでしたよ」
ヒイロをして心躍ると言わしめる、イベントの報酬……それは、ギルドホームに関連するものだった。
「ギルドホーム用の【土地購入権】か【土地拡張権】……この二つのどちらかを選べるんです」
「ふぅん? もうホームを持っているんだから、拡張権の方……いや、待てよ? もしかして、もう一軒もアリって事なんか?」
「えぇ、そうです」
ギルドホームは一軒、それがこれまでのAWOの仕様だった。しかし今回のイベントの後から、更にもう一軒のギルドホームが建てられる様になったのだ。
その二軒のギルドホームは、メインとサブに区別される。
「つまり、イベントの拠点……あの城を、どこかに建造できるんです」
「なーるほど、そりゃあ豪華報酬やな!!」
ギルドホーム[虹の麓]に愛着はあるが、あの第四回イベントで過ごした和風建築の城……[風雲七色城]も、ジン達にとっては思い入れのある場所だ。
というよりも……第四回イベントに参加した各ギルドの多くは、苦楽を共に過ごした拠点への思い入れも深いだろう。運営もそれを考慮して、こういった報酬を打ち出したのではなかろうか。
「ちなみに掲示板で流れた情報ッスけど、二十一位から下のギルドには【土地購入割引券】が配布されたらしいッスよ」
「タダじゃないけど、割引はしてくれる訳だ。”参加賞”って感じかな?」
「それか、”よく頑張ったで賞”ッスね」
ハヤテとナタクが、そんな会話を交わして笑い合う。二人の表情は晴れやかでいて、そして自然体だ。辛い思いも、苦しい戦いもあった。しかしそれを共に乗り越えた事で、二人の心の距離がぐっと近付いたのだろう。
ジンとヒイロは、互いに視線を向け合う。ジンにとってヒイロがそうで、ヒイロにとってジンがそうであるように……ハヤテとナタクも、唯一無二の親友になれたのだろう。
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ジン達が寛いでいると、【桃園の誓い】も作業を終えたらしい。ケインから『これからそちらにお邪魔するけど、大丈夫かな?』というメッセージが入った。
了承の返事をすれば、早速【桃園の誓い】の面々がポータル・オブジェクトを用いて転移して来る。
「やぁ皆、お疲れ様!」
「皆さんこそ、お疲れ様です!」
「今日の営業はどうだった~?」
「盛況でしたよ、少し延長しなきゃいけないくらい」
互いに挨拶を交わし、労い合う二つのギルド。そこには勿論、二期メンバーも居る。
「よっ、お疲れさん!」
「いやぁ、中々にいい店舗が出来たぜー!」
レオンとヒューゴが挨拶をすれば、他の面々も同様に挨拶の言葉を投げ掛けてくる。
「皆様、お疲れ様でした。今、お茶をご用意致します」
安定のメイドっぷりで、シオンがお茶の準備の為にキッチンに向かう……が、クリスマス以降はそれに続く者が居るのだ。
「手伝うよ、シオン」
自然な様子でシオンを追い、並ぶのはダイスだ。意識的にシオンを追い掛けた風ではなく、ただ彼女を手伝うのが当たり前だといった雰囲気である。
「ふふ、ありがとう」
彼にだけ見せるシオンの口調と表情が、全てを物語っている……お熱いこと。
……
シオンとダイスが用意したお茶で一息つくと、話題はレンが提案した温泉旅行に移っていく。
「うちとヒビキの家は、参加するって!」
「メチャクチャ驚かれたけどね……」
古我家と伴田家は、参加する事になったらしい。しかしながら、両家共に相当な驚きようだったのだろう……それは、二人の顔を見れば自ずと解る。
「うちも、お父さんを説得してオーケー出たよ」
新田父は、最初は渋ったらしい。ちなみに理由は「参加メンバーに彼氏が居るから」と、馬鹿正直に言ってしまったせいである。しかし娘の熱心な説得を受け、ようやく首を縦に振った様だ。
「最初は両親と姉さんが、信じてくれなくってさ……シオンさんに連絡して貰って、ようやく参加する事になったんだ」
名井家家は、本当に紆余曲折あったらしい。まぁ初音家のお嬢様が友達で、家族全員が温泉旅行に誘われた……なんて、普通はあっさり信じないだろう。
「うちも、参加するって。夏の旅行のお礼も言いたいから、だってさ」
巡音家は父と母共に、レンが親友であると知っている様だ。なので、そこまですったもんだせずに済んだ模様。
「うちも参加ッスねー」
「あと、僕の所も参加するそうだから……姉さんとカノンさん以外、全員の親が集まることになるのか……」
相田家、寺野家も参加表明。中高生組の家族が、この温泉旅行に勢揃いするらしい。
「それなら、私とカノンも参加だね」
「う、うん……また、皆と旅行……出来るね」
イトコである寺野家と相田家が参加するならば、そこに泊めて貰う立場である二人も自然と参加する形になる。そして家族を九州から連れて行くわけにもいかないらしく、二人は単身参加である。
そして【桃園の誓い】メンバーはゼクトとバヴェル以外、参加表明済み。
残るは親しいフリーランス組なのだが……。
「え、えぇと、本当に俺も良いのかな? ギルド外だけど……」
「ギルメン同然の仲ですし、今更ですよ」
クベラとしては、是非参加したい。しかしながら、お言葉に甘えていいのかと困惑顔であった。
ギルドに誘われていながら、それを断った身である。その輪の中に入って良いものなのかと、躊躇しているのだろう。
しかしながらクベラは、単なる外部の人間ではない。【七色の橋】【桃園の誓い】作のアイテムを販売する立ち位置であり、言ってしまえば提携事業者である。そうなると、外部の人間扱いは出来ないだろう。
第一、彼はカノンの恋人なのだ。カノンの為にも、クベラには来て貰わなくては困る。
という訳で、レンは早々に最終手段の発動に踏み切った。
「カノンさん、ゴーです」
「クベラ、さん……い、一緒に、行きませんか……?」
カノンがクベラを上目遣いに見ながら、必死にそんな言葉を投げ掛ける。その表情・仕草・言葉は、確実にクベラの胸にクるやつだ。
「……くっ!! は、恥ずかしながら……参加させて頂きます」
カノンのおねだりで、一発KOだった。もっと早くけしかければ良かったと、レンは苦笑してしまう。
「……うちの女性メンバー、おねだりがうますぎでない?」
レンのけしかけ方も、どことなく手馴れていなかっただろうか。女性の武器ってこわっ……という言葉は、何とか必死に飲み込んだ。
「? ジンくん、今何か……」
「ううん、何でもないよ」
ユージンとリリィが不参加の為、残る未定メンバーはコヨミだったのだが……【桃園の誓い】がこちらに来る少し前に、メッセージが入った。彼女は家族を何とか説得してみるとの事だったのだが、難航中で苦戦しているらしい。
どうやらネットでの知り合いという点で、父親から猛反対されたそうだ。コヨミ曰く……
「古い考えなんですよね、お父さん。ネットアイドルについても、あまり良い顔をされないんです」
……との事だった。しかし朗報を期待していて欲しいとの事なので、諦めるつもりは無い様だ。
ともあれ、コヨミ以外はこれで参加者確定。結構な大人数での旅行になるのだが、移動については初音家が車を出してくれるらしい。
「あー……初音家の車って……」
「あ、今回はバスですよ。大人数ですので、夏の時みたいには出来ないですから」
ヒイロが夏の旅行を思い出し、まさかあの高級車か? と思ったのだが、レンからバスだと聞かされて安心した。乗り心地は良いのだが、良過ぎるのだ。そして、見た目もザ・高級車。一般家庭の前にあれが停まるというのは、ちょっとした事件である。星波家? 慣れてるよ。
「バス旅行ねー、何か修学旅行以来かも!」
「遠い昔の事を思い出させるの、やめてくれる?」
「フレイヤ、マジになるなよ……」
旅行について話し始める面々を見て、レンは口元を緩める。その心の内では大切な人達に、楽しい温泉旅行を提供出来そうだ……という喜びで満ちていた。
ちなみに初音家のバスが、普通の旅行バスであるはずがない。レンとシオン以外は、誰もそれには気付かなかった。そして二人も、その認識のズレに気付いてはいなかった。