短編 閉じた幕と上がる幕
「課長、捜査礼状が下りましたよ」
「そうか! 木下は、稗田の家を家宅捜索だ! 長谷川は佐田の家、浦田少年の家には神崎に任せる!」
「「「了解!!」」」
「芝和田と益井の家は、捜査済みでしたっけ?」
「あぁ……あいつらは、シロだったが……」
「やらかしている事に代わりは無いから、正確にはクロっすけどねー」
「しかしこの件に関しては、あいつらも知らなかったみたいだからな。まさか、あのアイドル伊賀星美紀が……」
「本人も知らない内に、薬漬けにされていたなんてな……」
……
「課長、出ました!! 佐田の家で、ブツを発見しました!!」
「しかもそれだけじゃありません!! あいつの父親がVR風俗を経営してるんですが、そっちでも薬漬けにされた子達が!!」
「……なんだと!? その父親は!?」
「逃げようとした際に暴れまして、ひとまず公務執行妨害でしょっ引きました!!」
「女の子達は保護したんですが……その、身分証明書を見るに、まだ高校生の子まで……」
「なんて奴等だ……!!」
……
「浦田少年の様子は、どうだ?」
「かなり怯えた様子で、洗いざらい喋っていますよ。同級生を、ナイフで刺し殺そうとしたと……」
「一体、彼は何に怯えているんだ……?」
「さぁ……まさか交番に駆け込んで、ナイフを手にして自首するなんて……」
「意味不明過ぎて、未だに理解が及ばんのだが……」
「稗田兄妹の妹の方は、黙秘を続けていますが……証拠も揃って来ていますし、ね」
「発言も、かなり荒れている様ですね」
「兄の方はどうなんだ?」
「彼も、何かに怯えるようにしています。浦田ほどでは無いですがね……」
「芝波田は、まるで抜け殻ですね……本当に、必要最低限の事しか口にしません」
「目も虚ろで、生気が抜けた様です。何かショッキングな出来事でも、あったんでしょうかね」
「踏み込んだ時も、ずっと蹲ってブツブツと誰かの名前を呼んでいましたが……」
「どいつもこいつも、イカれている……まったく、世も末だな」
「他の連中から、薬物反応は無かったんですよね?」
「あぁ、出ていない。任意同行させた後、すぐに検査をしたからな……」
「幻覚を見ているとか、そういうのならまだ理解できなくもないんですけどねぇ……」
「で、益井はどうだ?」
「非常に協力的ですね。自分の事も他の連中の事も、素直に話している様です」
「時々、罪を償わないと……と言っているので、彼は本気で悔い改めようとしているんじゃないですか?」
「だと良いがな……まぁ本気でそう思っているのなら、捜査も立ち往生にはならんだろうから助かるが」
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あぁ、怖い怖い。今回の件は本当に、人の中にある悪意を濃縮した様な出来事だった。
一番酷いのはやはり、アンジェリカ君の環境だったね。親もイトコも、学友も全てが彼女を汚したいという欲求をぶつけ、彼女の精神が崩壊するまで追い詰めたんだから。
今の父親も、実の母親も問題だらけ……しかも今回の事件で彼等は口論になり、母親が狂って無理心中。なんて不幸な家庭だろう、目も当てられないね。
だが、救いは彼女にも用意されていた……血の繋がった父親が、実にまともな人間だったのだから。死んだ元妻の所業を聞かされて、血の繋がった娘を守ろうと必死に世話を焼いている。再婚した奥さんと、その間に生まれた娘さんも、彼女の境遇を聞かされて支えなければと心を砕いているそうだし。
ドラグ君も、ケイン君達の想いがようやく通じた様だね。遅かったと言われれば、それはそうだ。しかし、君は最後のチャンスをちゃんと生かそうとしている。
これからの君の人生が、より良いものになる事を僕は祈ろう。
逆に反省していない彼等には、御愁傷さまとしか言いようが無い。
まぁ、うん。この先の彼等の人生について語ると、非常に陰鬱でどうしようもない転落人生の見本市だから。そこはご想像にお任せ、という事で。
一部のメンバーが、何かに怯えている? いやぁ、僕には何のことだかさっぱりだ。世の中には、知らなくていい事があるものなのさ。
ちなみに、ルシア君について僕はノータッチです。
さて、それじゃあ語り部ぶったモノローグもお終いにして……あの子達と一緒に繰り広げる、面白おかしいVRMMOライフに戻ろうか……という所なのだが、その前に。
今日は、十二月二十五日。そう、クリスマス当日の朝。となれば、何も起こらないはずがなく。
さぁ、僕の推し達によるクリスマスデートの時間だよ。
どうも、描き切って「何でこんなメタい流れになった?」と自覚した作者です!!
そして「いやしかし、あの人ならこのくらいやっても受け入れられそうじゃね?」と思考停止した作者です!!
今回の短編も、残すはクリスマスデートの描写を残すのみとなります。
その後はまた、ジン達による面白おかしいVRMMOライフの再開ですね!
クリスマスデートは勿論、皆様の大好きな糖分マシマシでお届け致します。
そういう訳で……これから毎日砂糖吐こうぜ。
次回投稿予定日:2023/4/27(短編)