表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十五章 第四回イベントに参加しました・弐

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

357/576

15-37 第四回イベント終了しました

 第四回イベントが終わった、その翌日となる十二月二十一日。ジン達は揃って、【七色の橋】のギルドホームに集まっていた。勿論、今回のイベントにゲストとして参加したユージン・リリィ・クベラ・コヨミも一緒だ。

 机を囲んだメンバー達は、グラスを手にして待っている。何を待っているのか? それは当然、今回のイベントでギルドを率いたヒイロの挨拶である。


 全員の準備が整った事を確認し、ヒイロは仲間達に視線を巡らせる。

「それでは、第四回イベントお疲れ様でした。我々【七色の橋】は惜しくも第二位という結果になりましたが、あの激しい戦いでこの成績を残せたのは皆のお陰です。それでは全員の健闘を称えて……乾杯!!」

『かんぱーい!!』

 唱和と共に、グラスを掲げる面々。そしてそれぞれが、グラスを合わせて言葉と笑顔を交わし合う。


 第四回イベントにおいて、【七色の橋】の最終成績は第二位という結果に落ち着いたのだった。


************************************************************


 第四回イベントの終了アナウンスが流れた後、プレイヤーはそれぞれのギルド拠点に転送された。これは、戦線離脱となった面々も同様である。当然だが、最初から観戦していたプレイヤー達はそのままだ。

 イベントを終えたプレイヤー達の胸中は、十人十色といった状態。力及ばず悔しがる者が居れば、最後まで戦えた事に満足する者も居た。


 そうこうしていると、各ギルドの拠点上空に光の線が走る。光の線は長方形を描き、巨大なシステム・ウィンドウを形成した。これは、第一回イベントの中間・最終結果発表でも使用されたシステムだ。

 その巨大なシステム・ウィンドウに、運営メンバーの姿が映った。

『アナザーワールド・オンラインをお楽しみの、プレイヤーの皆様。第四回イベントへご参加頂き、誠にお疲れ様でした』

 中央に立つのは、今回のイベンターを務めるセイン。その後に、シリウス・エリア・レイモンドといった責任者達が並んでいる。

『ゲーム内で三日に渡る、長時間のイベントとなりました。まずは、イベントに参加された皆様の健闘……称賛を贈ると共に、心から感謝申し上げます』

 それぞれのギルドの拠点では、プレイヤー・PACパック・応援者全員でその様子を見守っている。


 今、彼等が最も気になるのは自分達のギルドの順位……そして、どのギルドが今回のイベントの頂点に輝いたのか。セインもそれを理解しており、長々と挨拶を続けるつもりはなかった。

『それではお待たせ致しました。最終集計が完了致しましたので、これより成績発表に移りたいと思います』

 セインがそう言うと、最終成績発表が始まる。参加ギルドの総数は百九十一組……順位が下のギルドから順に、成績が発表されていく。

 最初だけは二十一組、次からは二十組毎に成績が発表される。そうして六十位からは、十組毎の発表となった。マップ内でプレイヤー達の歓喜や悲嘆の声が上がる中、いよいよ上位の発表となる。


―――――――――――――――――――――――――――――――

  1位【森羅万象】

  2位【七色の橋】

  3位【聖光の騎士団】

  4位【魔弾の射手】

  5位【遥かなる旅路】

  6位【桃園の誓い】

  7位【忍者ふぁんくらぶ】

  8位【漆黒の旅団】

  9位【白狼の集い】

 10位【絶対無敵騎士団】

 11位【暗黒の使徒】

 12位【仮設ギルドC】

 13位【ラピュセル】

 14位【フィオレ・ファミリア】

 15位【闇夜之翼】

 16位【天使の抱擁】

 17位【真紅の誓い】

 18位【仮設ギルドA】

 19位【ベビーフェイス】

 20位【竜の牙(ドラゴンファング)

―――――――――――――――――――――――――――――――


 最終日の終盤まで、生き残っていたギルドは二十組。その全てが、二十位以内にランクインする形となった。

 そして今回のイベントで最終的にトップに躍り出たのは、大規模ギルド【森羅万象】であった。これは拠点防衛の成功と、戦闘不能になっていないメンバー数が最も多かった事によるボーナス判定あっての結果である。

 【七色の橋】もボーナス判定は得られたのだが、戦闘不能になっていないメンバーという点では【森羅万象】の方が多かった。


 そんな訳で、結果発表を受けた【森羅万象】はお祭り騒ぎになっている。その盛り上がりぶりは、日を跨いでも続いた程だ。

 そうなると暴走するメンバーも居たのでは? と思われる所である。そこはギルドマスター(シンラ)とサブマスター(クロード)が、しっかりと手綱を握って抑えてみせた。

 更にメンバー達に対しても、決して増長しないように釘を刺してある。

 その甲斐あってか、問題らしい問題は起こっていない。勝って兜の緒を締めよ、それを地で行っているのだった。


 とにもかくにもイベント上位入賞を収めた【七色の橋】も、お祝いと相成っているわけだ。料理や飲み物を口にしつつ、和やかな雰囲気でこの時間を堪能している。

「にしても、最後のアレは凄かった。流石の一言だね」

「あー! ジン兄とヒメさんの!」

「ふふっ。お二人のコンビネーション、とても素敵でしたね♪」

 ユージンが口火を切れば、話題はイベント終盤戦の各々の戦いに変わる。最初に話題に上がったのは、並み居る強敵……特にアークを倒し切った、ジンとヒメノの戦いについてだ。


「えへへ……あの時は、もう無我夢中でした」

「僕も。没入感っていうか、ひたすら戦いに集中していた感じかな」

 そんな二人の言葉に、目を剥いたのはコヨミである。

「え、あの時って……こう、ユニゾンか? ってくらい、息ピッタリの動きでしたけど……こう、相手に合わせようとか……意識していたわけじゃないんですか?」

「「ですねぇ……」」

「……マジで?」

 コヨミの驚きは無理もないが、二人は決して合わせようと意識してはいなかった。しかし、だからと言って考え無しに動いていた訳ではない。

「ジンさんなら、私の動きに合わせてくれるって信じてましたから♪」

「あはは……まぁ、僕も同じかな? 僕が敵の動きを止めれば、ヒメは必ず仕留めてくれるって思っていたからね」

 つまりはそういう事。互いに相手を信じて、全力を尽くしたのだ。


 惚気とも取れる、そんな二人の言葉。しかし、誰もツッコミを入れる事など出来なかった。コヨミなど、口をあんぐりと開けている。待たれよ、乙女。

 そんな雰囲気を払拭するのは、やはりこの二人。

「あらら……ヒイロさん、私達も負けていられませんね?」

「俺とレンなら、同じ事が出来るとは思うけどね」

 悪戯っぽい小悪魔モードのレン様降臨。その矛先はやはりヒイロだったが、彼は彼で二人の発言に共感する部分があった。

「レンの魔法は、AWO随一だ。全幅の信頼を置いているという点では、俺も二人の気持ちが分かるよ」

 大真面目にそんな事を言うヒイロに、レンは言葉を失ってしまう。その頬が紅潮し、何かを言おうとしても言葉が出て来なかった。レン様の貴重な赤面シーン。


 そんな二組のカップルは置いておこうと、クベラはマキナに視線を向けた。

「マキナはんも、凄かったなぁ。あの【ドッペルゲンガー】、性能やら使い勝手やらはどないなもんやった?」

 強引な話題転換ではあるが、二人の世界に入っているカップル×2はそっとしておいてあげよう。そんな意図が透けて見えていた。

 クベラの内心を察してか、マキナはわずかに苦笑いしつつ質問に答える。

「【ドッペルゲンガー】が戦闘不能になったら、僕も強制的に戦闘不能になりますからね。使いどころは難しそうですけど、上手く扱えるならかなりのアドバンテージになると思いました」

 一般的に知られる逸話からデザインされたであろう、スキル【ドッペルゲンガー】。これはマキナの姿形や、ステータスがそのまま反映された分身スキルだ。【ドッペルゲンガー】はAIで制御されるが、動きまでマキナのそれに非常に近いものだった。

「マッキーとドッペル君のお陰で、【魔弾】の陣形を崩せたッスね! あれが無かったら、多分普通に敗けていたかタイムアップだったッスよ」

 そう言って、マキナに拳を突き出すハヤテ。そんなハヤテに、マキナも笑みを浮かべて拳を突き出した。コツン、と拳同士が合わせた二人。その姿を、アイネとネオンは優しい表情で見守っている。


「ミモリも、凄かった、ね……?」

「同感でございます。ユージン様の退場の後、たった一人であの大人数を落とし切るとは……お見事でございました」

 カノンとシオンが、フライドポテトを堪能するミモリに賞賛を贈った。そんな二人の言葉に動じる事無く、ミモリはポテトを嚥下してから首を横に振る。

「私一人の力じゃないのよ、あれ」

 ミモリはそう言うと苦笑しつつ、視線を少年少女が集まる場所へと向けた。


************************************************************


 最終日を目前に控えた、二日目の夜。ミモリは拠点内の工房で、せっせとポーション類を作っていた。

 ポーションを投げるくらいしか、自分には出来ない。近付かれたら、為す術がない。そんな、ネガティブ思考に陥りながら。

「あれ、姉さん?」

「ミモ姉、精が出るッスね」

 そこへやって来たのは、ジンとハヤテ。イトコ二人であり、可愛い弟同然の二人であった。


「二人共、お疲れ様。工房に来るなんて、どうかした?」

 内心のネガティブな思考を押し隠す様に、ミモリは二人に用件を尋ねる。ジンは手裏剣や苦無等の、投擲アイテムを補充する為。ハヤテは弾丸を補充する為に、工房を訪れたのだと返答した。

「成程ね、ちょっと待っていてね?」

 拠点にいる間は、ミモリ達も生産活動に勤しんでいた。生産向けの応援者達の助力も、非常に大きな要素である。お陰で現状、在庫は十分であった。


 二人の為に、アイテムを棚から出すミモリ。その様子を見て、ジンはある事に気付いた。

「姉さん、何か悩んでる?」

 他人の心の機微に敏い、ジンの特性発動。ミモリが何かに悩んでいるのを見抜き、それについて尋ねたのだ。

「……そう言えば、ジン君は昔っから鋭かったわよね……」

 隠しても無意味と、ミモリはあっさり白状した。ジンとハヤテ、自分の身内が相手という気安さもあっただろう。


 自嘲気味に内心を吐露するミモリに対し、二人はひたすら聞き手として付き合う。そうして、ミモリの話が終わった所で……二人は、ある提案を口にしたのだ。

「それなら姉さん、これ使ってみない?」

「投げるのは、ポーションだけじゃないッスよ! ミモ姉なら、ソッコーで使いこなせるはずッス!」

 ジンが差し出したのは、手裏剣だった。


************************************************************


「と、二人に勧められてね……薬品を仕込めば、私の強みも活かせるって」

 そう言って、ミモリは袖口に手を入れ……そこから、長い棒状のアイテムを取り出した。所謂、棒手裏剣だ。

「で、二人と一緒に試したらね……何か、普通に出来ちゃったのよねぇ」

「……わぉ」

「流石で御座いますね」

 運動神経は並以下のミモリだが、投擲技術に関してだけは何故か見事な才能を発揮する。それこそ、長い時間の鍛錬を重ねて来たジンと同等以上に。

 もはや、ここまで来ると天賦の才と言っていいだろう。


 もうネガティブな考えは薄れており、この戦術ならば自分も共に戦える……そんな実感があるらしい。その可能性を示してくれたのは、彼女の大切なイトコ達だ。

「ジン君と、ハヤテ君の……アドバイス、だったんだ……」

「ふふっ、そうなの」

 ミモリはそう言って、談笑する二人を見つめる。優しさと、感謝の念が溢れた視線だ。しかし、次の瞬間にその視線が残念そうなものに変化した。

「ぶっつけ本番の実戦だったけど、マキビシだけでカタが付いちゃったのよね。新しい薬を塗った、≪棒手裏剣こっち≫も試してみたかったんだけど……」

 残念だったのは、あっさり終わってしまった事について。もっと、色々試してみたかったらしい。

「そ、そう……それは、残念……だね? ……あ、そう言われたら……私も試していないのがあった」

 生産職JDコンビは、実戦で試せなかったアイテムについて思いを馳せていた。作り上げるだけではなく、使用感も試したいのだろうか。

「……やはり、お二人はよく似ておいでですね」

 苦笑しつつ、シオンはそう言って二人のグラスに飲み物を注いだ。


 そんな面々を横目に見ていたセンヤは、隣で食事を堪能するヒビキに視線を向けた。

「あの時、ジンさんを助けられて良かったね」

 センヤからの言葉に、ヒビキは笑みを浮かべて首肯した。

「うん。多分あそこでジンさんが戦闘不能になっていたら、順位も下がっていたかもしれないね」

 事実、上位陣のポイントは接戦だった。それを考えると、ヒビキの言葉は間違いではない。

 しかしセンヤは、首を横に振ってみせた。

「ヒビキはジンさんに憧れてるじゃん? 憧れの人を手助けできて、良かったねって事だよ」

 ストレートなその言葉に、ヒビキは視線を泳がせる。


 現実でも、小柄で非力な少年であるヒビキ。彼は強い男になりたいと、常々思っている。それには腕力だけではなく、精神的な強さも含まれている。

 そんなヒビキにとって、ジンという少年は憧れの存在だ。

 強さと優しさを兼ね備えており、誰もが一目置くトッププレイヤー。ファンクラブという名の下部組織(自称)まで存在する、AWOの看板プレイヤーといって差し支えないだろう。

 それで謙虚さを忘れず、常に正々堂々と振る舞うジン……ヒビキが尊敬し、憧れるのも無理はないだろう。


「まぁ、うん……ジンさんが敗ける所を、見たくないなって思ったんだよね……あはは」

「ふふっ、それは分かるよ! 私もジンさんが敗ける姿を、想像できないもん」

 そうして笑い合う二人だが、彼等は背後にある人物が迫っていた事に気付いていない。

「ハードル上げないで欲しいな。まぁ、善処するけど」

 そう言って、二人の頭に手の平を優しく置いたのはジンだ。

「わぁっ!? ジンさん!?」

「ありゃ、どこから聞いてました?」

「敗ける所を見たくないな、という所から?」

 憧れの人云々は、聞かれていなかったらしい。聞かれて困る事ではないのだが、ヒビキが気恥ずかしさでオーバーヒートしかねない。そう考えると、良かったのかもしれない。


「さて、それで……ヒメには話していたんだけど、皆に報告が」

 ジンがそう言うと、その場に集まった全員が彼に注目する。ジンはシステム・ウィンドウを開き、収納から一つのスキルオーブを取り出した。そのスキルオーブの色は、黒……ユニークスキルを示す色だ。

「えっ!?」

「おやおや……」

「ユニークスキル……ジン、それはいつ何処で……?」

 驚く面々の中で、努めて冷静に振る舞うヒイロ。親友の問い掛けに、ジンは勿体振ることなくすぐに返した。

「……アークさんとの決着が付いた、あの時に手に入ったんだ」


―――――――――――――――――――――――――――――――

 ユニークスキル【クライシスサバイブ】

 説明:死線を乗り越え必ず生還する勇者の力。

―――――――――――――――――――――――――――――――


死線クライシスからの生還サバイブ……か。これの取得条件は、何だったんだ?」

 ヒイロがそう問い掛けると、ジンはシステム・ウィンドウに表示された取得条件……エクストラクエスト【クライシスサバイブ】について説明する。

「新たなエリアが開放された時点で、規定数のキルカウント達成……それと、一度も戦闘不能になっていない事だよ」

 キルカウントはさておき、一度も戦闘不能になっていない……その条件に、ヒイロは表情を引き攣らせた。

 これまでの通常プレイだけでも、戦闘不能にならないという条件は困難だろう。その上で、第一回イベント・始まりの町防衛戦……第二回イベント・PvPトーナメントがあった。更に今回の第四回イベントは、GvGサバイバルである。正直、戦闘不能にならない方がおかしいとすら思ってしまう。


「つまり、条件を達成したのがイベント中だった……って事ですか?」

「いや、それだとおかしい……新たなエリアが開放された、それはつまり第二エリア開放時点のはず。だとすると……」

 不可解そうなネオンに、マキナが己の考えを口にする。そうしてある程度の予想が付いた彼に、ユージンが同意を示した。

「そう……戦闘不能になっていないという条件に適合するプレイヤーが、複数いたんだ……例えば、僕とかね」

「えっ、ユージンさんも!?」

 自分も条件に適合していた……そう告げるユージンに、誰もが驚いた。しかし、レンだけは難しい顔をしている。

「……あの、もしかしたら私も……今回のイベントで、初めて戦闘不能になりましたから」

「レンもだったのか……」


 この二人ならば、キルカウントはまず足りているだろう。そして戦闘不能になっていなかったのだから、【クライシスサバイブ】を手にしていたのは二人だったかもしれない。

「後は、アークさんッスか。もしかしたら、他にも居たかもしれんけど」

「アーク様とジン様、ヒメノ様の戦いに決着が付いたタイミングだったという事は、そうなのでしょう」


 難しい顔をする面々を見て、ユージンは人差し指を立てて自分の考えを話し始める。

「【九尾の狐】なんかの、伝説を基にしたユニークとは異なるタイプだね。特定の条件を達成した、到達者への報酬となるユニークスキルさ。僕の【クレストエンチャント】も、同じタイプだ」

 ユージンがそう言うと、ヒメノは自分のシステム・ウィンドウを見ながらある共通点について口にする。

「スキル内容は違いますけど、私の【エレメンタルアロー】にも勇者って書かれてますね」

「ふむ、つまり【勇者】系のユニークスキルですね」

 コヨミが直感でそう告げると、他の面々も確かにと納得する。その分類名は運営内で通っているものと同じであるが、それを知る事は流石に出来ない。


「こうして考えると、ユニークスキルの傾向が解ってきたんじゃない?」

「……伝説の、生き物……それに、勇者……だね。四字熟語のは、どう……なんだろう……?」

 ミモリとカノンの疑問に、今度はクベラが自分の考えを口にする。

「今、四字熟語持ちで解っとるのはヒイロはん、ハヤテはん、アイネはんやな。どれも現地人由来なんやろ?」

「ッスねー。それに本人達も、魔女・剣鬼・守護騎士と称号まで持ってるッス」

 称号持ちの現地人(NPC)……それを探せば、ユニークスキルを得られるかもしれない。誰もがそんな考えに行き当たる。


************************************************************


 その頃、運営メンバーの集まる部屋。

「いやぁ、何とか無事に終わって何よりですね……」

「現実では数時間だけど、中では三日だもの……疲れたわ〜」

 互いに労い合う面々は、一仕事終えたと脱力モードに突入していた。体感では長時間の重労働だったのだから、無理もないだろう。勿論、交代制で休憩をとってはいた。しかし、それでも疲れるものは疲れるのだ。


 そんな脱力している運営メンバーだが、唐突に扉が開く音を耳にしてビクッと反応する。

「あ……ボス!!」

「さ、サボってませんよ、別に!!」

 慌てて佇まいを正す面々に、ボスこと初音室長は苦笑する。

「少しくらい、気が抜けても仕方が無い。今回のイベントは、大仕事だったからな。あと、ボスはやめろ」

 そう言う室長の後ろからは、三枝がカートを押して入って来た。そのカートから漂うのは、食欲をそそる良い香りである。

「こ、この臭いは……っ!!」

「ま、まさか……!?」

「あぁ、お察しの通りピザだ。安心していいぞ、俺の奢りだからな。勤務時間中だしアルコールは駄目だが、ノンアルコールなら構わないぞ」

「「「「さっすがボス!!」」」」

「ボス言うなって言ってんだろ、要らないのか?」

「「「「要ります!! 要ります!!」」」」

 大喜びのメンバー達にやれやれ、といった表情を浮かべ、初音室長はコンソールの前に座る。メンバーが食事を堪能している間は、自分がゲーム内のモニタリングを担当する為だ。


――さて、残るは後始末だな。大半の【禁断の果実】の連中は、今頃はビクビクしているだろうが……。


 思い返すのは、午前中にこの建物を訪れた一組の男女。自ら進んでユートピア・クリエイティブに連絡をし、アポイントを取って来館した二人。

 伊賀星美紀と、益井舵定……罪を認め、ケジメを付けるべく訪問して来た二人の事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] イベント お疲れ様でした  大迫力満載イベントでしたね 森羅 勝って兜の緒を締めよ 素晴らしいですね 七色 流石の一言です これ以上ない程  内容の濃いイベントでした 熱きB…
[良い点] 一位は森羅万象でしたかー。 まぁ実力はもちろん、大規模かつ参謀のタイプ、拠点の立地等で変わったかもしれないので、気を引き締めるのは大事ですね。 聖光も七色も、身体が闘争を求めるタイプなの…
[良い点] 第4回イベントお疲れ様でした。約1年ちょいですか長かったですがその分非常に楽しませて頂きました。次はスパイ騒動の顛末でしょうか美紀達のその後の結末お待ちしてます。 [一言] しかし森羅万象…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ