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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第三章 第一回イベントに参加しました
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03-07 第二陣を迎撃しました

 モンスターの第一陣は、獣や虫といったモンスター達だった。対して第二陣はゴブリンやオーク、オーガといった人型のモンスターである。

 第一陣と異なるのは、モンスター達が武器を持っている点だ。

 剣や盾でプレイヤーの攻撃を受け止め、弓矢で遠くから攻撃し、魔法を使う個体も現れる。

 そんな第二陣の侵攻が開始された事で、プレイヤー側の被弾も増えていった。


「くっ……弓や魔法が厄介だな!!」

「しかし、あそこまで突破するのは難しいぞ!?」

「後衛には後衛よ!! 奴等は私に任せて!!」

「一人でやらせないぜ、俺もやってやらぁ!!」

 前衛と前衛の激突、後衛と後衛の打ち合いに発展する戦場。プレイヤー達はまとまって動くのが得策と考える者が、大多数だった。


 そんなイベント第二幕、西側の門で指示が飛び交う。

「盾職は隊列を組み、受け止めます!! 体力が厳しくなったら、すぐに後退を!!」

「盾役が受け止めたら、攻撃役は突っ込め!! 時間をかけるな、一気に片付けろ!!」

 集団を纏め上げるには、実力と知名度が必要だった。真っ先にその役割を引き受けたのは、シオンとダイスである。

「よぉし、やるぜぇ!!」

「モンスターが入り込む隙間を空けるなよ!!」

「タイミングを合わせるぞ!!」

「反撃に注意しろよ!!」

 前衛プレイヤー達の士気は、非常に高い。プレイヤー同士で連携し、モンスター討伐に熱意を燃やしていた。


 無論、後衛や遊撃役も賑やかだ。

「弓矢や魔法を使えるメンバーは、敵後衛を片付けるのよ!! 前衛の負担を減らしましょう!!」

「足の速い奴はこっちだ!! 攪乱して、モンスター共の足並みを乱すぜ!!」

 イリスやゼクスも、率先してプレイヤーに指示を飛ばしていく。知名度は然程でもないが、有名人であるシオンと行動を共にしていた二人だ。更に言えばその風貌……珍しい中華風の装備が、功を奏した。

「よっしゃ、俺も一緒に行くぜ!!」

「わ、私も狙い撃ちするわ!!」

 他のプレイヤー達は、素直に指示に従っていく。


 西側の門は、プレイヤー同士の連携でモンスターを迎撃。戦況はプレイヤー側が優勢だった。


************************************************************


 一方、東側の門。こちらは、プレイヤー同士の競争が勃発していた。

「そいつは俺達の獲物だぁっ!!」

「ほざけ、先に戦っていたのはこっちだぞ!!」

 倒れたゴブリンやオークに向けて、一心不乱に剣を振り下ろすプレイヤー。しかし周囲のモンスターがそれを襲い、ダメージを受けてしまう。

「うわぁっ!?」

「くそぉっ!! ゴブリン如きがぁっ!!」


 こんな事態になってしまったのは、()()()()()()()()()の行動が原因であった。

「【ラウンドスラスト】ッ!!」

 武技を発動し、モンスターをまとめて攻撃するのはギルバートだ。攻撃を受けたモンスターは転倒し、決定的な隙を晒す。

「はあぁっ!!」

 裂帛の気合いと共に突き出した槍で、ギルバートはゴブリンを仕留める。すぐに槍を引き抜いて、まだ体勢が整っていないモンスターへ攻撃を仕掛けた。


――この俺が12位など、有り得ない!! 俺一人ならば、もっとモンスターを倒せる!!


 そう、ギルバートの暴走……その原因は、ランキングの順位であった。自分が低い順位……彼の視点では低い順位だった事が、我慢ならなかった。故に彼は、ギルドメンバーには適当な指示を出して、一人で突出したのだ。

 全ては、自分の力を示す為である。


 そんなギルバートの指示は、キルカウントを増やしてギルドの力を知らしめろというものだった。それを受けたギルドメンバー達は、数人でチームを組んで行動を開始したのだが……。

「邪魔だ、道を開けろぉっ!!」

「俺達は、【聖光の騎士団】だぞぉ!!」

 彼等は指示通りキルカウントを増やす為に、他のプレイヤーを押し退けるようにして攻撃をしていくのだ。そんな彼等に対し、他のプレイヤーが怒るのも無理はあるまい。

「ふざけんな!! 横から割って入って来やがって!!」

「俺達の獲物を取られてたまるか!!」

 こうして、プレイヤー同士の競争が始まってしまったのだ。


 ……


 この事態に、ヒイロ達は眉を顰めていた。

「大分、荒れているな」

「そうですね。本来ならばプレイヤー同士が協力して、防衛線を築くべきなのでしょうけれど……」

 それを成すならば、最適なプレイヤーはギルバートだった。彼は有名ギルドのサブマスターであり、最前線で実績を挙げているプレイヤーなのだ。

 しかし、彼は率先してキルカウントを稼ぎに行ってしまった。更には彼の指示を受けて、ギルドメンバーも他プレイヤーに身勝手な競争を吹っ掛けてしまっている。

 プレイヤー同士の共闘という前提が、崩れてしまっているのだ。


「どうするヒイロ君、レンさん」

 ケインは眉間に皺を寄せ、プレイヤー達の乱戦を見ていた。プレイヤーを纏め上げる必要があるものの、乱戦状態にある現状では困難を極めるだろう。

「俺達の話を聞いてくれるプレイヤーが、どれ程居るかによりますね。あんな無茶はいつまでも続かないはず……なら、彼等が注意を引き付けている今がチャンスでは?」

 鋭い視線で、ヒイロがそんな提案を口にする。

「……と言うと?」

 意外そうな表情のケインに、ヒイロは顔色一つ変えずに頷いてみせる。

「あんな戦い方では、必ずボロが出る。死に戻りするのも、時間の問題です」


 ヒイロの言う通り、ギルバートも他の突出したプレイヤー達も、被弾が増えている。HPを回復したとしても、その隙にモンスターの攻撃が入るのは明白だった。

 これが協力しながらの攻勢ならば、もっと安定した戦いが出来るだろう。


「確かにね。という事は、つまり……」

「彼等が死に戻りするまでに、防衛ラインを築きましょう」

 それは、ギルバートを始めとした面々を囮にするという事だ。

「それならば、今の内に動くべきですね。私はヒイロさんの意見を支持します」

 黙ってヒイロの意見を聞いていたレンが、賛意を示す。

「……そうだな、俺もヒイロ君に賛同しよう。まずは、プレイヤーの説得か」

「それは私が担当しましょう……一応、以前は最前線に居ましたからね」


 レンがそう言うと、一人の少女が言葉を発した。

「お話し中失礼ますね~! それ、私にも協力させて貰えませんか?」

 そこに立っていたのは、見目麗しい可憐な少女……レンと同じく、最前線に参加していたプレイヤー。

「あなたは、さっきの……」

 その少女のプレイヤーネームは、リリィ……アイドルながらも、攻略最前線に参加する支援職プレイヤーであった。


「先程は助かりました! それで、皆さんとなら協力出来ると思いまして……」

そんなリリィの言葉に、ヒイロとレン……そしてケイン、ミリアが顔を見合わせ、頷き合う。

「このままでは、門に到達するモンスターが出て来てしまうな。つまり……」

「えぇ。プレイヤー同士が協力し合わなければ、敗北は必至でしょうから」

 リリィの真剣な表情に、ヒイロ達も頷く。モンスターの軍勢をギルバート達が押し留めている内に、行動を起こさねばならない。

「レンさん、私と貴女で声を掛けるのが効果的ですよね」

「そうですね。善は急げと言います、行きましょう」

 顔を見合わせて頷き合った二人は、急ぎ後方に居るプレイヤー達の下へと駆けていった。


************************************************************


 その頃南側の門でも、プレイヤーとモンスターの戦闘が繰り広げられていた。その中心にいるのは、当然アークだ。

「防衛ラインを維持する、盾持ちは並べ。槍使いが一当てし、剣使いがトドメだ」

 矢継ぎ早に、繰り出される指示。それに従うプレイヤー達が、モンスターを次々と駆逐していく。


 最高レベルプレイヤーであるアークは、β時代から名前を知られている有名人だ。そんなアークの指揮下に入り、共に戦うプレイヤーは少なくない。

「アークの指揮下にいりゃあ、安全だろ」

「あぁ、貢献度は二の次だ。まずは門を守らねぇとな」


 南では門の防衛を第一とし、無理に突出するプレイヤーは少ない。理由は簡単で、早い段階でアークがギルドメンバーに指示を出して、迎撃ラインを形成したからだ。

 特にアークが率先して防御を担当しているのを見て、他のプレイヤー達は先走る事を躊躇った。右に倣え状態ではあるのだが、現状ではそれで上手くいっていた。


 また目には目を、射撃には射撃を。プレイヤーとモンスター、後衛同士の攻防が繰り広げられていた。魔法や矢が空を飛び交い、雨となって戦場に降り注ぐ。

 しかし、戦況は、プレイヤー側の優勢で進んでいた。その理由はプレイヤー側にあって、モンスターには無いモノがあるからだ。そう、戦略である。


 モンスターの後衛部隊は、愚直にプレイヤーの前衛を狙っている。それに対しプレイヤー側の後衛部隊は、モンスターの後衛を優先して狙っているのだ。

 耐久力が高くないモンスター軍団の後衛は、その数をどんどん減らされていく。それはモンスター側の援護射撃が減っていくという事だ。


 その頃ヒメノ達も、防衛の為に腕を振るっていた。

「後方の敵を優先ですね!!」

「はい、魔法や弓を使うモンスターを優先しましょう!!」

「近付いて来るモンスターは、私が引き付けるですよー!!」

 ヒメノはルナ・シャインと組んで、モンスターの後衛部隊を狙い攻撃に参加していた。


 そんな中、異彩を放つのはやはりヒメノである。

「【ラピッドショット】!!」

 複数のモンスターを貫通して進んで行く、致死の一撃。前衛も後衛も、まとめて蹴散らす一本の矢。それが連続して放たれていくのだ。

 その光景を横目に見ているプレイヤーは、口元を引き攣らせるしかなかった。


************************************************************


 北側の門でも、プレイヤー同士が協力し合いながらモンスターに立ち向かっていた。しかし、その毛色は少々他の門とは異なる。

 後衛を務めるプレイヤーが、モンスターの前衛を狙って攻撃する。足を止めた所を、前衛プレイヤーが一気呵成に仕留めていくのだ。その間、モンスターの後衛からは攻撃がほとんど飛んで来ない。


 理由は言うまでもなく、ジンだ。

 AGIを生かして前衛モンスターを擦り抜け、後方へと突撃。後衛モンスターの注意を引き付け、単騎駆けを敢行しているのだった。

 やっている事は、ギルバートと変わらないように思える。しかしジンの目的はハイスコアではなく、後衛モンスター達に前衛を攻撃させない事だった。

 その為に、ジンは後衛モンスターのヘイトを稼ぎ、攻撃を避け、反撃して数を減らしていく。


 射撃準備が必要な弓矢や、詠唱が必要な魔法。それらの攻撃手段は、ジンの前では隙を晒す事に他ならない。

「【一閃】!!」

 小太刀を振るい、モンスターの首を狙って斬り付ける姿は正に忍者。そんなジンを狙い矢を放つゴブリンアーチャーだったが、ジンは武技無しでバック宙返りして避ける。練習して良かった、バック宙。


 モンスターのヘイトを稼ぎ、他のプレイヤーに攻撃させない……それは、ジンにとっては普段通りのプレイングだ。

 最近のパーティメンバーの役割分担は、まず鉄壁の盾であるシオンが敵前衛を食い止める。ヒメノやレンが、それを屠る。ユージンが製作した≪鬼神の右腕≫を手に入れたヒイロも、主に攻撃役に回る事が増えた。そこで遠距離攻撃を行うモンスターがいれば、今のようにジンが注意を引き付けるようになったのだ。

 大規模戦闘の中にあって、普段の戦略が思わぬ効果を発揮しているのだった。


 更に、ジンはある事実に気付いていた。プレイヤーと違い、モンスターの攻撃はモンスターに当たるという事だ。ジンを狙った矢を避けた所、モンスターに命中したのを目撃したのである。

 そこからは、敵の同士討ちを狙って回避行動に勤しんでいた。飛び交う矢を避け、魔法を回避し続けていく。


 ジンの後衛撹乱により、プレイヤーは落ち着いてモンスターに攻撃を繰り出せる。弓矢や魔法で進行を妨げ、そこに前衛が雪崩込むという戦法でモンスターを討伐していく北門のプレイヤー達。

 後衛モンスターが攻撃しない分、前衛を担当するプレイヤー達の被弾は東西南北で最も少ない。


 ……


 モンスターとの交戦地点を大きく迂回して、切り立った崖の上に辿り着いたレーナ。眼下には、モンスターとプレイヤーがぶつかる主戦闘区域が広がる。狙撃には絶好のポイントであった。

 見晴らしの良い高所に陣取ったレーナは、暫定パートナーの回避技術を見ながら苦笑する。単独でモンスターの後衛を封殺するなど、正気の沙汰ではないのだが……それを、黙々とこなすジンがよく見えた。

「流石は忍者、速い速い……ふふっ、凄いね」


 ともあれ、彼女は観戦する為にここに来たのではない。気を取り直して、準備を始める。

「さぁて、援護射撃を始めようかな!!」

 クロスボウではなく、普通の弓を構えるレーナ。ここからは、狙撃手として行動する為だ。クロスボウは威力も一定であり、発射までに要する時間も短い。ただしより強力な攻撃を撃ちたい場合や、より遠い距離を狙うならば弓の方が適しているのである。


 レーナは矢をつがえ、弦を引き絞る。そのまま狙いを定めると思いきや、レーナはおもむろに矢を放ってみせた。

 放たれた矢は一直線に飛び、ジンに襲い掛かろうとしていたモンスターの頭部を撃ち抜いた。クリティカルヒットである。モンスターはその一撃でHPを全て刈り取られ、膝から崩れ落ちる。

 無造作に放った割には、その一射は最高の結果を生み出す……それが、彼女の持ち味。


「やっぱり、射撃は上取りだよね」

 滑らかな動作で次の矢を弓につがえ、すぐに放つ。放たれた矢が、またもやモンスターの頭部を撃ち抜いてみせた。これもまた、クリティカル発動のライトエフェクトが発生した。

 レーナはそれを喜ぶでも、驚くでもない。淡々と次の攻撃に移る。速射にして百発百中……レーナの狙撃は、ヒメノとはまた違った異質な光景である。


 しかし狙撃はヘイト値が溜まりやすい。もっと言えば、クリティカルを出せば更にヘイト値が上昇してしまう。レーナに気付いたモンスター達が、接近して攻撃しようと武器を振り上げながら駆け出す。

 ゴブリンやオーク、オーガ等の醜悪なモンスターが、群れを成して迫って来る……これは、中々にショッキングな光景だ。女性ならば、ゲームと解っていても身の毛もよだつシーンである。


 しかし、レーナはそれを冷たい視線で見るだけだ。

「良いのかな、()()()()()()()()()()()?」

 そう言って、形の良い唇を笑みの形に歪めた。もし、モンスター達のAIが人間と変わらないレベルのモノならば、何故笑えるのかと疑問に思った事だろう。

 その答えは、モンスターの背後から迫っていた。

「【一閃】!!」

 連続して振るわれるは、忍者の小太刀。モンスターの首を狙った攻撃は、全てクリティカルとなった。


 ジンを始めとする、刀持ちの面々が会得している【刀剣の心得】。そのスキルは、唯一の武技である【一閃】を強化させるパッシブスキルで固められている。

 その中に【奇襲】と【斬首】というものがある。これらは共に【一閃】のクリティカル発動率と、STRを上昇させる効果を持っているのだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――

【奇襲Lv6】

 効果:【一閃】発動時、攻撃対象のモンスターの標的になっていない場合、クリティカル発動率を30%向上、STRを7.5%向上。


【斬首Lv2】

 効果:【一閃】発動時、攻撃対象のモンスターの首に攻撃が命中した場合、クリティカル発動率を10%向上、STRを5.5%向上。

―――――――――――――――――――――――――――――――


 この二つのパッシブスキルの効果で、ジンの【一閃】は強化されている。その上クリティカルヒットともなれば、モブモンスター程度では耐え切れるはずもない。

 あっという間に、四匹ほどのモンスターを屠ったジン。そのまま距離を取ると、残ったモンスター達はジンを忌々し気に睨んだ。これでレーナに向いたタゲは、再びジンが担う事になる。


 モンスターの魔法や弓矢の攻撃が、ジンに向けて飛ぶ。それを回避し、レーナから離れるようにジンは移動していく。

 逃がしはしないと追い掛けるモンスター達だが、それもまたジンとレーナの戦略。モンスター達がレーナから十分離れた所で、ジンは再び縦横無尽に駆け回り小太刀を振るう。

 遠距離攻撃や魔法には、射程距離が設定されている。モンスターの行動パターンとして、射程距離外の標的を攻撃する際、標的に向けて駆け寄るのだ。無防備に、ただただ無防備に。

 そうなれば、良い的なのだ。レーナがタゲを取っても、駆け寄って来る無防備な間に狙撃で仕留められる。ジンはその為に、レーナから距離を取ったのである。


「うんうん、ベストな距離だね!」

 レーナが矢をつがえ、すぐに放つ。レーナは弓使いであり、当然基本スキルは【弓矢の心得】だ。【弓矢の心得】の習熟度を上げて行けば、射程距離も徐々に伸びて行く。モンスターよりも長い射程距離で、レーナは攻撃が可能。

 数の差など、この二人の前では無いも同然。この二人が出張った時点で、後衛モンスターは詰んでいるのだった。


 ……


 更にもう一人、北には刀を手にしたプレイヤーが居た。黒尽くめの男性プレイヤーである。彼は腰にもう一本の刀を携えているが、今は右手に握った黒い刀のみで戦うつもりらしい。

 そんな彼は、ジンやレーナとは反対側の側面に居た。ジン達同様、後衛モンスターを次々と斬り捨てているのだ。


 しかしジンの様に、回避してモンスターの相手をしているのではない。モンスターの放つ攻撃を、刀で防いでいるのだ。矢を刀で弾くのは、難易度は高いが不可能ではない。

「【一閃】」

 異質なのはモンスターの魔法を、()()()()()()()()()()()()事であった。その際、彼は【一閃】を発動している。モンスターではなく、魔法を斬る為に武技を発動していた。モンスターを倒す為に放つのは、通常攻撃である。


 これはスキルにスキルをぶつけ、相殺させるシステム外技術。運営はこれを【スキル相殺】と呼称していた。

 そう言うと簡単に思えるかもしれないが、実際に成功させるのは至難の業だ。スキル相殺が成功するのは、相手の攻撃の芯を捉えなければ成功しない。失敗すれば、自分がダメージを受けてしまうのである。


 ジンの速さや、レーナの命中度に匹敵する異様さ。DEX値の高さもあるが、それだけが理由でないのは明白だ。

 陰の祠でユニークスキルを手にし、エクストラクエストを攻略してユニークアイテムを手に入れた彼こそが、暫定ランキングで3位という好成績を示したユアンである。


************************************************************


 そんなプレイヤー達の戦闘を、いくつものモニターが設置された部屋で見守る者達が居た。このゲームの運営に携わる面々である。

「競争が勃発した東に、安定した戦闘の西……個別のグループに分かれた南に、突出するプレイヤーが貢献する北か……」

DKCぜんさくよりもアクが強いプレイヤー多過ぎだろ……」


 DKCとは、ドラゴンナイツ・クロニクルというVRMMORPGの略称だ。アナザーワールド・オンラインを運営する彼等が、開発・運営に携わった人気作である。

 二年前にサービスを終了したが、復活を望むユーザーからの声が多数寄せられた。しかしながら、大人の事情でそれは叶わなかったのだ。

 故に、新作であるAWOの注目度は凄まじいものがあった。


「DKCでもトッププレイヤーとして君臨していた連中は、今作でも健在か」

「アークやギルバートですね。彼等はβテストでも、好成績を残していましたし」

 MMORPGというゲームは、その仕様の上でプレイヤー間の競争が少なからず存在する。数が限られたアイテムやスキルが隠されており、プレイヤーならば誰でもそれを手中に収める事を目的としている。

 その場合、古参のプレイヤーやVRMMOに慣れ親しんだプレイヤーが有利になるゲームが殆どだ。


 しかしAWOは少しばかり毛色が違った。VR初心者や、MMORPG初心者でも、ある程度は強くなれる……そんなゲームを実現しようとしていた。これは、AWOのプロデューサーの意向だ。

 その結果生まれたのが、エクストラクエストだった。その内の一つが、『特定ステータスを向上させる代わりに、他のステータスを半減させるユニークスキルを得られるエクストラクエスト』である。

 第一回イベントで、それが実を結びつつある。ジンやヒメノ、ユアンといった無名のプレイヤー。それが、上位に食い込む活躍を見せている。


「まぁ、見応えはあるな……予定調和が続いていたDKCよりも、今回のイベントは面白い」

「私達の仕事は増えますけどね」

「交代制とは言え、きちんと休める環境なんだ。他のゲーム運営なんぞ、人手不足で家にも帰れないなんてしょっちゅうだからな」

「というか、俺達もそうだったじゃないですか……」


 DKCがサービス終了したのは、彼等が所属していた会社が倒産したからであった。それをとある有名企業が買い取り、更にもう一つの有名企業と合同で新設会社を立ち上げたのだ。

 二大企業によって復活を遂げた、人気ゲーム製作会社……そのニュースは、国内外で随分と話題になった。

 その第一作として立ち上げられたAWOプロジェクトには、十分な開発費用と人員が投入されている。それなりに仕事は多いのだが、過去会社ぜんしょく他会社よそさまと比較したらホワイトと言っても良いくらいだ。


 アナザーワールド・オンラインを製作し、運営する会社。大企業ファースト・インテリジェンスと、六浦財閥が共同で立ち上げた新設ゲーム会社。


 その名前は【ユートピア・クリエイティブ】という。

和装勢、パーティメンバー以外と絡むの巻。

VRMMOならではの競争があれば、全プレイヤー共通の目的の為に協力するプレイヤーも居ます。

私もちょっとしたMMOをやっていますが、コミュ障を発揮して細々とプレイしております。


次回投稿予定日:2020/7/5

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