15-27 激動の最終日6-風雲七色城-
クリスマスプレゼント・ふぉーゆー。
\そぉい!!/
三╰( `•ω•)╮-=ニ=一=三【本編】
イベントマップ各地に出現した、エリアボス達。それは当然、【七色の橋】の拠点も例外ではない。
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■拠点【七色の橋】
【七色の橋】(36人)
シオン・ミモリ・カノン・ユージン・クベラ、応援者ダナン、応援NPC30人
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「撃ち方用意……撃てぇ!!」
クベラの号令に従って、応援者達が大砲を撃つ。砲弾は巨大なモンスターに殺到し、その身体に着弾し爆ぜた。エリアボス……ランドドラゴンのHPが削られるが、その数値は微々たるものだ。
「なんちゅー硬さや!! 大砲の固定ダメージが、軽減されてるんか!?」
そう言って、視線を眼下の戦場に向けるクベラ。そこではエリアボス討伐よりも、【七色の橋】を下す事を優先したプレイヤー達との戦いが繰り広げられている。
「エリアボスだけやなく、他のギルドが同時に来るなんて……タイミング最悪やんけ」
「クベラ、さん……大丈夫です、きっと……あ、あそこには……シオンさんが、います……から」
砲弾を大砲に籠めながら、カノンは緊張感を滲ませた表情でクベラにそう告げる。
「……まぁ、シオンさんの鉄壁ぶりは、解っとるけど……相手が、なぁ……」
……
仲間達の信頼を背負った最硬の盾職・シオンは、拠点の正門部で迫る敵を迎え討っていた。
「うわ、硬っ……!!」
「これだけ攻撃しても、削れないのか……!!」
そう口にして、顔を顰めるのは【ベビーフェイス】のリッドとファルス。どれだけ攻撃を加えても、平然としているシオンを前にして内心では冷汗をかいている所だ。
積年の恨みを晴らし、自分達の評価を上方修正したい……そんな願望があった彼等は、この終盤でいよいよ【七色の橋】攻略に打って出たのだった。ちなみに、攻略できるとは誰も言っていない。
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【ベビーフェイス】(22人)
リッド・ファルス、PACシャダ・PACエル、応援NPC18人
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そして彼等と同様に、シオンの防御を抜いて拠点内に突入を目論んだギルドがいる。
「流石は【七色の橋】……」
「実力は本物だ……しかし!!」
「我々はリア充を爆発させるまで!! 諦めん!!」
「「「リア充爆発しろ!! リア充爆発しろ!!」」」
プレイヤー十一人で攻め込んで来た、アレな人達。何か無駄に存在感のある、PKギルド【暗黒の使徒】の皆さんである。
ちなみに拠点に来て早々、何かシオンからリア充の気配を察知。彼女もめでたく、彼等の標的となった模様。実際、全然めでたくない。
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【暗黒の使徒】(11人)
シン・フォウ・ギア、プレイヤー8人
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そして、もう一つのギルド……こちらは、【ベビーフェイス】や【暗黒の使徒】も含めて苛烈な攻撃を繰り広げていた。
「ふむ……中々に楽しい戦いだな」
「防御力もだけど、攻撃手段も結構面白いわね? いやぁ、やっぱ来てよかったわ~」
「あぁ、あの落雷攻撃とかヒヤッとしたけどな」
戦意を滾らせ、眼をギラつかせているもう一つのPKギルド。かつての因縁からではなく、純粋に強いプレイヤーと戦いたい……そんな期待を胸にして攻めて来た、【漆黒の旅団】だ。
ギルドメンバーを纏め上げるグレイヴが、信頼を置いているサブマスターのアッド。そしてリーパーとグリムという三人を中心にした、精鋭メンバーでの襲撃だった。ていうか、グリムとリーパーでグリムリーパー……不穏。
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【漆黒の旅団】(26人)
アッド・リーパー・グリム、プレイヤー8人、応援NPC15人
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そんな強力なギルドの面々を前にして、涼しい顔で大盾≪鬼殺し≫を構えて立つシオン。彼女は単独で門前に立ち、敵ギルドの注意を引くという役割を遂行していた。最も、単独とは桟橋での戦闘を単身繰り広げているだけである。彼女の背後……桟橋の終点に待機する応援者達は、防御を固めて侵入者を防ぐ役割を果たしていた。
この【七色の橋】のギルド拠点……誰が呼んだか[風雲七色城]は堀で囲まれており、桟橋を通らなければ突入は困難な造りである。桟橋以外から潜入しようとしたギルドの面々が居るには居たが、彼等は塀を乗り越えられずに堀に落ちる羽目になったのだ。そのまま溺死による戦闘不能で、成果を得られないままにリスポーン。中々に居た堪れない。
そしてシオン達は現在、その桟橋をわざと下ろしていた。これは敵ギルドを、一カ所に集中させてるのが目的だ。最もこの作戦は、シオンの防御力が無ければ出来ない戦術である。
そんなシオンは戦闘を繰り広げる傍ら、冷静に戦況分析を続けていた。全てはお嬢様と、親愛なる仲間達の為。彼女はこのイベントを勝利で終える為、全力を尽くしていた。
――あの武技を解禁すれば、瞬殺も可能……ですが、それはもっと強力なギルドが来た時に取っておくべきですね。
シオンがこれまで使用していなかった、【酒吞童子】のいくつかの武技……彼女はそれを、初めて公の場で使用する覚悟だった。
しかし現在大戦中の、【ベビーフェイス】【暗黒の使徒】【漆黒の旅団】の精鋭……彼等を相手にしても、特に問題は無いと判断している。切り札を使わずとも、凌げる相手……シオンは、そう判断している。事実、現在の戦況はシオンが優勢……決して、自惚れや過信ではない。
問題なのは、今エリアボスを相手取っている面々。彼等がエリアボスという”不安要素”を取り除き、自分達に牙を剥いた場合……これまでの戦術が、通用するという保証は無いだろう。
何せ、彼等は自他共に認めるトップギルドの面々なのだから。
……
「ふむ、【七色】の砲撃でもあの程度のダメージ……恐らく、第一エリアに配置されていたランドドラゴンとは一線を画すステータスでしょうね。しかしながら、挙動や攻撃パターンは変化はありません。落ち着いて取り組めば、確実に下せる相手です」
眼鏡をクイッと片手で上げ、冷静に分析結果を口にするのはセバスチャン。【聖光の騎士団】幹部の一人であり、アリステラに仕える執事である。実際には彼女の兄で、御曹司で、執事でも何でもない。
「好敵手との決着を付ける戦いに、水を差そうだなんてお行儀が悪くてよ? エリアボスだろうと、邪魔はさせませんわ!!」
仲間を牽引する様に、先頭に立って駆け出すアリステラ。その姿を見たギルドの平メンバーであるタイガが、仲間達に声を掛けて後に続く。
「よし、アリステラさんに続くぞ!!」
「「「うおおおおっ!!」」」
チーム一丸となって二日間行動を共にして来たからか、一体感を感じさせる。
そんな仲間達を支援すべく、セバスチャンは魔法詠唱を開始。彼のスキル【マルチタスク】は、こういった戦況で真価を発揮する。同時に二つの支援魔法で、仲間達のステータスを補強する事が出来るのは大きな強みだ。
そんな支援行動の傍らで、セバスチャンはシオンに意識を向けていた。
――相変わらずの様だな、【七色の橋】のシオン……その澄まし顔、必ず私が崩してみせるぞ。
何か、不穏な気配を漂わせていた。
公衆の面前で扱き下ろされ、惨敗させられた為か? 第二回イベント以降、彼女の存在が常にセバスチャンの脳裏にちらつくようになった。何かある度に、不意に彼女の顔が浮かぶのだ。
ちなみに実例を挙げると、有力者の娘を紹介された時に「彼女の方が立ち振る舞いが美しいな」とか。後は自分の容姿に自信を持つ女性が何か言っている際には「悪いとは言わないが、彼女に比べると些か……」とかである。
あれ、これってやっぱりアレな感じじゃない? とってもアレな。
――君のその美しい顔を、歪めてみせよう。いや、それ以上に……いやいやいや、私は何を考えて……だが、しかし彼女を……ンンッ、今は先にエリアボスだ、うん。
何か色々と拗らせたらしく、セバス氏はシオンにクソデカ感情を向けていた。それも結構、アレな感じのやつ。これはあかん。
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【聖光の騎士団】(15人)
アリステラ・セバスチャン・タイガ、プレイヤー12人
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正面から突撃を敢行する【聖光の騎士団】……その姿を見たある一団を束ねる男は、ニッと口元を吊り上げて剣を掲げた。彼等は【白狼の集い】……そのギルドマスター率いるチームだ。
「よし、俺達も負けてられないぞ!! さっさとこのでかいトカゲを、駆除しちまおうぜ!!」
「応援者の皆、お願いね!! さぁ、行くわよ!!」
ギルドマスターであるヒューズの号令に続き、応援者を率いて遠距離攻撃を開始したのはアリアス。【白狼の集い】の古参メンバーであり、ヒューズに並々ならぬ想いを寄せている女性である。
二人の言葉に威勢良い返事をした応援者達が、気合十分と駆けていく。
その様子を見て、一人のプレイヤーは苦笑した。
「で? これで、【七色】に借りを返せますかね?」
彼もまた、古参メンバーの一人。ヒューズとは現実でも交流のある青年で、名を【メギド】という。
メギドはヒューズが、【七色の橋】に受けた恩を返す為にここに来たと察していた。スパイ達の件、そして無実の罪を着せた実行犯の所属していたギルド……その事を気に病んでいるのだと、察していた。
だが、ヒューズはそれを認めないだろう……彼はあくまで、【七色の橋】を倒す為に来たのだと言うだろう。メギドも、それを察していた。
「借り? 何の話だ? 俺等は、【七色】を倒しに来たんだぜ」
――ほら、やっぱり。
白々しいと思いつつ、これもヒューズらしさだとメギドは思う。不器用ではあるものの、筋を通そうという姿勢は決してブレない。だからこそ、自分達は彼の下に居るのだ。
「はいはい……それじゃあ他のギルドに取られる前に、俺等が美味しい所を頂きましょうかぁ!!」
そう言って駆け出すメギドは、戦鎌を振り被る。
――こう見えて、俺だってさ……【七色】には感謝してんだぜ? だからよ……!!
「テメェは死んどけ、クソトカゲッ!!」
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【白狼の集い】(14人)
ヒューズ・アリアス・メギド、PAC1人、応援NPC10人
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そして【聖光の騎士団】と【白狼の集い】に合わせるように、エリアボスに苛烈な攻撃を繰り出す面々。その装いを見れば、誰もがある単語を口にするだろう……「あ、忍者だ」と。
「エリアボスであろうと、【七色の橋】に手出しはさせんぞ!! 【一閃】!!」
刀でエリアボスに斬り掛かる、忍装束の青年。ジンのファンギルド【忍者ふぁんくらぶ】の副会長を務める、コタロウである。
「コタさん、やる気満々ですねぇ……ま、私もやりますけどね?」
そんな彼と並んでエリアボスとの戦いを繰り広げるのは、ジン達と同じ高校に通う少女。占い研究会で某夫婦と遭遇しハイテンションになっていた、ココロだ。
「ランドドラゴン相手だと、私の細剣は効果薄めですね……コタさんはどうですか?」
「うむ、流石はカノン様の刀だ。ランドドラゴン相手では、多少ダメージは軽減されるが……それでも、素晴らしい性能なのは間違いない」
コタロウの持つ刀は、打刀。これはどうやら、【七色の橋】が販売していたものらしい。カノンが鍛えたこの一振りは、ユージンも太鼓判を押す出来である。強くないはずが無かった。
コタロウ……本名【火野 満矢】は、二十五歳の社会人だ。そんな彼がジンの人柄を目の当たりにし、そして心酔したあの瞬間……そこから、【忍者ふぁんくらぶ】の歴史が始まった。
彼が掲示板にそのギルドを結成すると書き込んだのを目にした面々も、まさかここまで存在感を発揮するギルドになるとは思わなかっただろう。いろんな意味で存在感バリバリだもの、今。
しかしネタに走っていそうでありながら、その実ネタに走りつつ、ガチで忍者ロールプレイを徹底し、ジンに認知され協力要請を受けるまでに至ったギルドだ。同志達を率いて駆け抜け続けたコタロウも、またこのイベントで存在感を増したプレイヤーの一人であるのは間違いないだろう。
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【忍者ふぁんくらぶ】(15人)
コタロウ・ココロ、プレイヤー13人
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一方、エリアボスが迫った位置から離れた場所……そこでも[風雲七色城]に突入する事が可能な、桟橋が下ろされている。その桟橋に立つ、黒髪・黒目・黒服の青年……ユージンは、フッと頬を緩めた。
「実に良い動きだ、諸君。その動きをものにするまでに、眠れない夜もあっただろう」
何でボディビル選手権の掛け声みたいなことを、何の脈絡もなく言い出したのやら。ともあれ、そんなネタに走るだけの余裕がある……という事だろう。
その背後に控えるは、ミモリと応援者十名だ。彼等はシオンの守る区画と同様、ユージンの防衛ラインを超えたプレイヤーに対応する為に居るのだが……正直、出番は未だ無い。
「……ユージンさん……凄い……」
ステータス系ユニークスキル……運営が神獣系と呼ぶユニークスキルを保有する、極振りプレイヤー。ジンやヒメノと同じ条件でありながら、ユージンは二人とも何かが異なる気がしてならない。
【天使の抱擁】のティマイオスを、徹底的に叩き潰した時と同様……ユージンはかすり傷一つ負わず、相手を圧倒している。迫る攻撃を尽く避け、受け流す。逆に彼の攻撃は必ず相手に当たり、クリティカルヒットが発生。そのHPを刈り取り、敵を地面に這い蹲らせている。
――力や速さじゃない……DEXは戦闘において、クリティカル発生率と遠距離攻撃の命中率補正しかないステータスだもの。それなのに……ジン君やヒメノちゃんとは違う、底知れない強さ……!!
そんな底知れないユージンの前で、危機感を募らせているのは二つのギルド。
「謎のプレイヤー、ユアン……その正体が、まさか生産職人の頂点に立つユージンだったなんて……ね。それも、死ぬほど強いし……」
そう口にした赤毛の女性……【真紅の誓い】のサブマスター・スカーレットは、どう攻めたものかと困惑顔でも思案し続けていた。
そんなスカーレットと距離を置きつつ、並ぶように立つのは【ラピュセル】のメンバーであるテオドラである。彼女もまた、ユージンの力を目の当たりにして警戒度マックスで表情を歪めていた。
「なんて強さ……一体、どんなカラクリなの……」
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【真紅の誓い】(35人)
スカーレット、プレイヤー15人、PAC4人、応援NPC15人
【ラピュセル】(26人)
テオドラ、プレイヤー3人、PAC2人、応援NPC20人
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多勢に無勢を覆し、銃剣を駆使して戦うユージン。彼が守るこの門は、正しく難攻不落という言葉がピタリと当て嵌まるだろう。
桟橋の中央に立つ彼は、自然体でそこに佇んでいる。ただそれだけのはずなのに、【真紅の誓い】も【ラピュセル】もそれ以上は先に向かえない……そんな気がしてならなかった。
――悪いわね、勝太……多分、【七色】は落とせない……!!
心の中で、クリムゾンこと【塚井 勝太】に謝罪するスカーレット。彼女の本名は【笹井 公絵】といい、クリムゾンの幼馴染である。社会人になった今でも、交流のある二人……ぶっちゃけ【暗黒の使徒】案件なのだが、恋人という訳では無い。まだ。今が一番、甘酸っぱい時期である。
そんなピュアピュアな状態が続いているのは、クリムゾンとしては「長年の付き合いである為、互いに気心知れた間柄……しかし、今の関係を壊したくなくて一歩を踏み出せずにいる」状態。ヘタレというなかれ。
スカーレット的にも「ここは相手から告白して欲しい」という、乙女モード全開の理由からなのでどっちもどっちかな。
そんな二人の様子はギルメンにもしっかり筒抜けで、この恋路の行方を見守っている。クリムゾンもスカーレットも容姿と性格から人気があるのだが、誰も言い寄らないのは二人の関係がギルド内では周知の事実だからだ。
一方テオドラ……本名【麻尾 沙枝子】も、ユージンの力に圧倒されていた。彼女もまた、大切な存在であるアナスタシアからチームを託された身だ。だというのに、拠点に攻め入る事も出来ないのが現状。故に彼女は、敬愛するアナスタシナアへの想いを心の中で呟いていた。
――お姉様、申し訳ありません!! 必ず、【七色】を落とすと言ったのに……そしてお姉様に褒めて頂いて、ハグとかして貰えるはずだったのに!! なんとか、なんとかしますから!! だからどうか、どうか私を捨てないで下さいっ!!
呟いたと言ったな、あれは嘘だ。めっちゃ叫んでるわ、これ。ツイートじゃなくて、シャウトやんけ。
アナスタシアこと【守和田 詩香】は高校時代、男性プレイヤーによって謂れもない中傷を受けた事があった女性である。紆余曲折を経てそれを乗り越えた時、彼女は同じ目に遭っている女性プレイヤーの支えになろうと今の方針を固めた。その過程で知り合った面々と結成したギルドが、LQO時代のギルド【フローラ】だ。
そんなアナスタシア達だが、AWOを始めて間もない頃……ある女性プレイヤーを助けた事がある。いや、助けたはずだった。
彼女は男性プレイヤー達に囲まれ、しつこく声を掛けられていた。そこを颯爽と助けたのが、アナスタシア達だったのだが……実は彼女、男性は守備範囲外という癖のある嗜好の持ち主だった。はい、テオドラさんですね。
テオドラは、自分を助けてくれたアナスタシアに心酔……を超えて、ガチ恋状態になってしまった。それも自分が百合の人と勘付かれない様にしつつ、アナスタシアの懐に潜り込んで最終的には彼女の唯一無二になろうとしているのだった。結構、深度深め。
そんな二つのギルドの実情はさておき、彼女達はユージンに苦戦を強いられているのだが……ユージンはあえて、彼女達を全滅させずに戦いを継続していた。
理由は簡単で、誰も居ない桟橋に一人で佇んでいたら何かあると警戒される可能性があるからだ。一人で桟橋に仁王立ちしていた場合、シオンが守る桟橋との視覚的な差が生まれる。そうすると、シオン側に敵が流れてしまうかもしれない……彼女に敵を押し付ける訳にはいかないと、わざと戦闘を継続させているのだ。
それは裏を返せば、一気に彼女達を全滅させる手段がある……という事でもある。
そんな中、ユージンは拠点目指して駆けてくるプレイヤー達の姿を認識した。
「おや、メイ達じゃないか」
「……やっほー」
銃剣を肩に担ぐようにして、笑みを浮かべるユージン。その視線の先には、可愛がっている孫娘とその仲間達が居た。
「ユージンさんか……こりゃあ簡単には通してくれないよなぁ」
「ラスボス登場って感じです!」
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【魔弾の射手】(18人)
メイリア・ビィト・シャイン、応援NPC15人
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「ま、【魔弾の射手】……!?」
「このタイミングで……ん? でも、敵じゃない感じですか?」
スカーレットもテオドラも、【魔弾の射手】がどう動くのかを読み切れないでいる。【魔弾の射手】と【七色の橋】は交友関係があると、彼女達もどうやら知っているらしい。
「【真紅】に【ラピュセル】……しかも、この人数を相手にしてんのか……相変わらずのバケモノっぷりだなぁ」
「ははは、ビィト君。人をバケモノにしないでくれないかな? どっからどう見ても、胡散臭いけど気の良いおっさんだろう?」
「自分で胡散臭いって言う所、ユージンさんらしいです!」
「そんなに褒められると、照れるなぁ」
「「褒めてないよね、絶対!?」」
ゆる~い会話に、思わず【真紅の誓い】側も【ラピュセル】側もつられてしまった。イベント最終日の一幕とは思えない。
しかし、その直後……ユージンの雰囲気が一変した。
「あー……済まないね、君達。もっとお相手してあげたいのは山々なんだが……どうやら、それどころじゃなくなりそうだ」
ユージンがそう口にすると、その場に居る全員の背筋に悪寒が走る。ユージンの表情からは余裕が消え失せ、視線は厳しいものに変わっていた。
「……おじいちゃん?」
「ごめんね、メイ。今度、ちゃんと埋め合わせはする」
そう告げて、ユージンは右手で握っていた銃剣を上に放り投げ……自由になった右手の人差し指を、虚空に滑らせていく。指先が通過した箇所には、光の線が軌跡として残っている。
「……それは、まさか……!?」
メイリアが、信じられないものを見た様な表情で口調を荒げた。物静かな彼女が、感情を露にするのは非常に珍しい。
ユージンの指先が光の線で形を成していくのは、何かの図形か紋様……もしくは、刻印。
「何だ、あれは……?」
「何かの、スキル……?」
戸惑うスカーレットやテオドラの言葉を、ユージンは口の端を吊り上げて肯定する。
「そう、これは【クレストエンチャント】……という、スキルだ」
刻印が完成すると同時に、ユージンは重力を受けて自由落下して来た銃剣をキャッチ。刻印に向けて、突き付ける。
「続きは、またの機会に……【風竜】」
銃剣の切っ先から発生する、風魔法で編み上げられた龍のシルエット。それが刻印を通り抜けると、【風竜】のエフェクトが更に強い光を纏った。【風竜】は【真紅の誓い】と【ラピュセル】の中間……【魔弾の射手】の目前に突っ込み……桟橋に接触すると、弾けた。
「うおおぉぉっ!?」
「きゃあぁぁっ!?」
「なにこれぇっ!?」
突風と化した【風竜】によって、三つのギルドの面々が一斉に上空に打ち上げられる。そのまま地面に落下すれば、確実に戦闘不能。運よく堀に落ちたとしても、そのまま溺れて戦闘不能になるだろう。
実際、大半のプレイヤーが墜落。【魔弾の射手】はプレイヤー三人が、【真紅の誓い】はスカーレットと数名が、【ラピュセル】はテオドラだけが堀に落下。よじ登ろうにも、それを阻止する構造で不可能。桟橋の上に立つユージンに、視線を向けざるを得ない。
しかし、メイリアだけは気付いた……ユージンが、かつてない緊張感を滲ませているのだ。
「……ま、まさか……?」
彼がそこまで警戒する存在……思い当たるのは、ただ一人。
「こんにちは」
唐突な一網打尽の攻撃によって静寂が訪れたその場に、響き渡るのは鈴を転がす様な声。耳当たりの良い声色は、いつまでも聞いていたいと思わせる不思議な魅力を持っている。
「来ると思っていたよ」
その声に対するユージンの返答は、どことなく暖かさを宿している。先程までの彼の声色とも、ジン達に対する声色とも違う……それは、彼を知る者ならば誰もが感じ取る事が出来るだろう。
「二十八人……それなりに多いが、ここを通す訳にはいかなくてね。悪いけど、やる気なら相手になろう」
ユージンがそう告げると、彼女と共にここまで来たプレイヤー達は戦意を滾らせて武器を構える。
「たった一人で、俺等を相手にする気か?」
「ユアン……いや、ユージンか。悪いがやらせて貰うぜ」
「ケリィさん、やっちまいましょう!!」
同行者達の言葉に、彼女……ケリィは首を横に振る。
「生半可な実力だと、周りに転がっている人達の後を追う事になりますよ?」
未だ蘇生猶予時間は尽きておらず、三つのギルドの面々は地面に倒れ伏している。堀の中の面々も、何とか戦線復帰できないかと試行錯誤している状態だ。
それらの光景を見て、ケリィの同行者達……仮設ギルドCの面々は、口を噤む。彼等が押し黙ったのを確認したケリィは、ふわりと笑みを浮かべてみせた。
「彼の相手は私が」
そう言って、腰に差していた細剣を抜くケリィ。一つ一つの挙動からして美しく、敵味方問わずに彼女から視線を外せなくなっている。
「何か、言うべき事はありますか?」
ケリィがそう呼びかけると、ユージンはフッと笑う。
「その時間は、今じゃないだろう? ここは戦場で、君と僕は……珍しい事に、敵同士だ」
「ふふっ、そうですね……ユーちゃんが敵になるのは、初めてです」
二人の会話は、親密な間柄である事が窺える。仮設ギルドCの面々は、「てめーケリィさんとどういう関係だゴラァ」といった視線が向けられている。最も、その程度の睨みでどうこうなるユージンではない。サラリと受け流している……というより、彼等は意識の外にある。
「それじゃあ、剣で”おはなし”でしょうか?」
「ああ、”おはなし”は銃剣でしようか」
すると二人は、同時に武器を構え……本気の戦意を、その全身から滾らせた。
「さぁ、それじゃあ初めての……」
「えぇ、私達の初めての……」
「「夫婦喧嘩の時間(だ)(です)!!」」
……
「「「「「「……夫婦ッ!?」」」」」」
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【仮設ギルドC】(28人)
ケリィ、プレイヤー27人
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いやー、おどろいたなー(棒)
まさかユージンさんとケリィさんが、ふうふだったなんてなー(棒)
\そぉい!!/
三╰( `•ω•)╮-=ニ=一=三【次回投稿予定日:2022/12/25(本編)】




