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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十五章 第四回イベントに参加しました・弐

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15-25 激動の最終日4-激化-

 ジン達が【聖光の騎士団】と、激しい戦闘を繰り広げているその頃。イベントマップの他の場所でも、最終日まで生き残ったギルド同士が遭遇戦の真っただ中だった。

 熾烈な戦い振りは、イベント終盤に相応しい熱い攻防と称して差し支えない。力と、技量と、勝ちたいという強い意志。そのぶつかり合いが、ギルド同士の戦いを更に白熱させていく。


 イベント終了まで、残る時間は僅か。それでも最終日まで生き残った彼等のほとんどは戦い、そして勝ち残る事を選んだ。それはやはり、プレイヤーとしてのさがだろうか。

 彼等、VRMMOプレイヤーの多くは負けず嫌い。だからこそ、勝つ為に死力を尽くして戦うのだ。


……


「うぉぉぉっ!!」

 銀色の装備に身を包み、大剣を振るう長身の青年。彼の気合いの篭った剣閃は、相手のプレイヤーを捉えるには至らなかった。

「……成程、これが【竜の牙(ドラゴンファング)】のサブマスターの力ですか」

 彼に相対するのは、白銀の長髪と同じく白銀の装備を身に纏う女性。ギルド【ラピュセル】のギルドマスターを務める、アナスタシアだ。

 彼女は涼し気な表情で、青年に向けて短剣を突き出す。青年はそれをバックステップで回避し、二人の応援者と合流する。

「おっと! はは、やるじゃあないか……初日に攻めた時には、アンタ居なかったよな」

 青年……【竜の牙(ドラゴンファング)】の二人いるサブマスターの片割れ【バッハ】は、そう言って大剣を構え直す。


 実はイベント初日にバッハは、仲間を引き連れて【ラピュセル】のギルド拠点を襲撃していた。とはいっても、彼の狙いであったギルドクリスタルの破壊には至らなかったのだが。

 理由は簡単で、一足遅かった。某忍者少年の開幕疾走作戦の最中、【ラピュセル】のギルドクリスタルは破壊済みだったのである。


―――――――――――――――――――――――――――――――

【ラピュセル】(25人)

 アナスタシア、プレイヤー3人、PACパック1人、応援NPC20人


【竜の牙】(19人)

 バッハ、プレイヤー6人、PACパック2人、応援NPC10人

―――――――――――――――――――――――――――――――


「初日に戦った連中も良かったが、アンタは別格だ!! もっと楽しもうぜ、【ラピュセル】のマスター!!」

 心の底から、楽しそうに戦うバッハ。しかし、それに対するアナスタシアは涼しい態度を崩さない……いや、むしろ彼女の視線に冷たい感情が混じっている様に窺える。

「申し訳ありませんが、私はPvPをそこまで楽しいものとは感じません」

 冷ややかな温度を感じさせるその言葉を口にして、アナスタシアは手にした剣を構える。

「ただ、必要があるから戦うだけです……【フリージングアロー】!!」

「魔法!? しかも……氷の魔法だと!?」


 氷の魔法……【氷魔法の心得】は、【火魔法の心得】等の様に店で購入出来ない。故に手にしていないプレイヤーは少なくはないが、多くもないという微妙なラインだったりする。

 というのも店売りの魔法スキルは火・水・土・風・雷と定番のラインナップに、支援・回復といったサポート魔法。アナスタシアが使用した【氷魔法の心得】は、ガチャでしか手に入らないのである。

 ちなみにガチャ産の魔法には、他に光・聖といったものもある。巷では闇属性や、草属性もあるのではないか? と囁かれていたりするのだ。

 そしてガチャ産という事は、課金をするか特別な条件をクリアしなければ手に入らないと同義。事実、【竜の牙(ドラゴンファング)】には使い手が居ない。故に、バッハは驚いたのだ。


 それはさておき、アナスタシアの魔法を避けたバッハは口元をニヤリと歪める。

「この程度で……っ!!」

 避けてしまえば問題はない……そう考えたバッハは、アナスタシアに接近して反撃に出ようと前に出る。しかし、その前にアナスタシアのPACパックである戦士【リューシャ】が立ちはだかる。

「邪魔すんなっ!!」

「お断りです」

 バッハの大剣を、盾で受け止めるリューシャ。彼女はそのままバッハの相手をするかと思いきや、身を翻して距離を取った。

「あぁん!? 逃げんのか!?」

「さて、それはどうでしょう?」


 すると、バッハに向けて【ラピュセル】の応援者が襲い掛かる。彼等はバッハに攻撃を一当てすると、早々に距離を取っていく。

「チマチマと、うざってぇなぁ!!」

 大剣を振るうバッハだが、彼は気付いていない……それが、アナスタシアの術中だと。彼は迎撃と反撃に意識を集中している為、足が止まっている。そしてPACパックと応援者に気を取られ、アナスタシアから注意を逸らしてしまっているのだ。


 それは【森羅万象】のシアとの戦闘で、彼女を撤退させるまでに至った戦術。足を止めたバッハは、アナスタシアの魔法効果範囲内に留まり続けてしまったのである。

「終わりにしましょう……【コキュートス】」

 アナスタシアの魔法が発動したのを察知した【ラピュセル】のPACパックと応援者達は、即座にバッハから離れていく。事前に戦術について話し合っていたのだろう、一切の迷いがないスムーズな撤退だ。

 逆に彼女達の戦術についてなど全く知らない【竜の牙(ドラゴンファング)】側は、危険を察知し動き出すまでにタイムラグがあった。そのタイムラグが命取りとなり、バッハと二人の応援者は【コキュートス】による極寒の冷気に呑み込まれていった。


「サブマスっ!?」

「アナさん、やった!!」

 バッハの様子を見た【竜の牙(ドラゴンファング)】のメンバーは、悲痛な叫び声を上げる。それとは対照的に、【ラピュセル】のメンバーからは歓喜の声が上がった。

 そして【コキュートス】の効果が終了し、バッハと応援者二人が戦闘不能となった。アナスタシアのチームが即座に接近し、彼等を蘇生しようとすれば阻もうと構える。

「ちっ……やられたぜ……」

 口惜しそうにそう呟くバッハを横目に、アナスタシアは内心で溜息を吐く。しかしその直後、バッハが告げた言葉は予想外だった。


「アンタ、強いじゃねぇか。気に入ったぜ、今度は俺が勝つからな!」

 その言葉に込められた感情を、アナスタシアは敏感に察していた。それは興味と、好感だ。その感情を察知した彼女は……嫌そうな表情を浮かべた。

「そうですか。でも、私も負ける気はありませんので」

 そう言い残して、アナスタシアは駆け出す。バッハが戦闘不能になったならば、仲間達の支援に向かうのが得策。戦況のバランスは確実に自分達に傾いているのだから、当然の帰結である。

 仲間の元に駆けながら、アナスタシアは内心で独り言ちる。


――彼の様子を見るに、私達がLQOで【フローラ】というギルドで活動していた事には気付いていないようですね。


 そう……彼女達【ラピュセル】はかつて、LQOをプレイしていた。しかし第一回イベントの後くらいには、AWOに移籍していたのだ。

 その理由はLQOがその時点で、サービス終了になるのが確実視されていた事……そして【竜の牙(ドラゴンファング)】や他のギルドから、距離を取りたかった為である。


――かつての同郷である【竜の牙(ドラゴンファング)】は、やはり要注意ですね……あまり関わらない方が良さそうです。皆にこれ以上、()()()()()()はさせたくありませんからね。


 実は【ラピュセル】と【竜の牙(ドラゴンファング)】には、LQO時代に因縁が生まれていた。

 バッハ達は気付いていなかったが、【竜の牙(ドラゴンファング)】の末端メンバーによって【フローラ】の女性プレイヤーが被害を受けていた。被害と言ってもしつこく勧誘されたり、言い寄られたりといったものではあるのだが。ひどいギルドの場合は、運営から罰せられないギリギリのラインで嫌がらせをされたりという事もあった。


 彼女が二人の友人と共に立ち上げた、【フローラ】の後継ギルド【ラピュセル】。その方針はゲームを楽しむのと同時に、「悪質な男性プレイヤーの被害を受けている女性プレイヤーを助ける」というものである。

 VRMMOはアバターというもう一つの身体を使い、現実と変わらないリアルな感覚で冒険できるゲームだ。しかし、そのリアルな感覚は良い事ばかりではない。不快な出来事に直面すれば、それも現実と大差ない実感を与えられる。それで心に傷を負う場合も、有り得るのだ。

 アナスタシア達はそういった不愉快な出来事から、女性プレイヤーを助けるギルドを目指して【ラピュセル】を結成したのである。要するに、女性プレイヤーの駆け込み寺みたいなものだ。


――AWOは運営がしっかりしているお陰で、割とマシですが……最初は警戒していたプレイヤーも、割と最近は普通らしいですし。


 警戒していたプレイヤーが居るらしい。それは例えば、女性になら誰彼構わず声を掛ける騎士とかだろうか? 某エースも、女性プレイヤーを侍らしているハーレム系主人公もどきという印象を受けているかも。後はやはり、しつこくナンパしてくる五人組とかかもしれない。

 ちなみに彼女達がAWOに参入し活動し始めた頃に、とあるギルドのホームでちょっとした事件があった。その事を聞いたら、彼女達は某お姫様を助けようと行動していたかもしれない。某忍者のお陰で、大事には至らずに済んだけど。


――さて、とりあえず……この戦いを終わらせましょうか。


 アナスタシアは内心で抱いている不愉快な感情を押し留め、涼し気な表情を崩さずに行動を再開。仲間達と戦闘を繰り広げる【竜の牙(ドラゴンファング)】のプレイヤーに向けて、≪儀式剣≫を駆使して魔法を放ってみせた。

 時を同じくして、バッハは蘇生猶予時間が尽きて消滅していったのだった。


************************************************************


 ギルド【ラピュセル】と【竜の牙(ドラゴンファング)】の戦場から、南南西に位置する地点……そこに、小規模ながらも注目を集めているギルドの拠点がある。そのギルドの名は、【桃園の誓い】だ。

 拠点の建物から離れた場所で今、激しい戦いが繰り広げられていた。

「今度こそ勝つぞ、【桃園の誓い】!!」

 長剣を振るい襲い掛かる【真紅の誓い】のギルドマスター・クリムゾン。それに応戦しているのは、【桃園の誓い】のゼクトだ。

「おたくも存外、しつこいなあ!! 【真紅】のマスターさんよ!!」

 大盾でクリムゾンの剣を防ぎ、彼がこれ以上進めない様に阻んでいるのである。


――これ以上、来ないで欲しいもんだ……同時に四つのギルドが攻めてくるとか、なんの嫌がらせだよチクショウめ!!


 四つのギルドによる、同時侵攻。そう、攻めて来たのは【真紅の誓い】だけではない。むしろ【真紅の誓い】は与しやすい相手であり、警戒度はそこまで高くない。だからこそゼクトは、応援者を引き連れて彼等を食い止める役を買って出たのだ。


 問題は、二つ目と三つ目のギルドである。

「ふははははっ!! また腕を上げたか、ゼクス!! 」

 縦横無尽に駆け回り、熾烈な斬り合いを繰り広げる三人のプレイヤー。

「俺達と同レベルとはな……!! しかも、動きが更に洗練されていやがる!!」

 彼等は俊足を駆使して戦う者同士であり、各々のギルドにおいて最速と称される者達だ。

「へっ!! ”神速”と”閃光”からお褒めの言葉を頂けるとは、光栄だなぁ!!」

 そして彼等は、三人共に【スピードスター】をレベル上限まで上げ切ったAGI特化型。装備でステータス半減を補い、一般的なプレイヤーを凌駕する速さで名を馳せる面々。

 【桃園の誓い】のゼクス、【聖光の騎士団】のギルバート、【森羅万象】のアーサー。この場に某忍者が居ない事が残念だが、それを差し引いたとしても豪華な対戦カードであった。


 更に状況は、混戦を極めている。チナリは【森羅万象】ラグナと交戦し、その近くではオリガとヴェインによる攻防が繰り広げられている。

 そして三つ目のギルド……これが、また面倒な連中であった。

「うおおぉっ!! リア充を殴るまで、倒れるものかあぁっ!!」

「俺達は、リア充を……爆発させるんだっ!!」

「……怖いんですけど」

「ヴィヴィアン様、ご安心を。私達がお守りしますから」

 はい、もう察しましたね? ゼクスから託されたPACパックラウラや応援者の援護を受けた、ヴィヴィアンの魔法攻撃を喰らう男達。彼等はケイン&イリス、ゼクス&チナリを狙って突撃して来たあの人達。リア充撲滅が三度の飯より好きなのかもしれない、【暗黒の使徒】である。


―――――――――――――――――――――――――――――――

【桃園の誓い】(38人)

 ゼクス・チナリ・バヴェル・ゼクト・ヴィヴィアン・PACパックラウラ・応援NPC32人


【聖光の騎士団】(14人)

 ギルバート・ヴェイン・ホープ、プレイヤー11人


【森羅万象】(13人)

 アーサー・オリガ・ラグナ、プレイヤー10人


【真紅の誓い】(35人)

 クリムゾン、プレイヤー15人、PACパック4人、応援NPC15人


【暗黒の使徒】(11人)

 ダリル・ビスマルク、プレイヤー9人

―――――――――――――――――――――――――――――――


 そんな混迷を極める【桃園の誓い】の拠点だが、その中でも異質な迫力を放つ戦いを繰り広げる二人が居た。

「……はっ!!」

「くっ……!!」

 スキル【ゴーストハンド】で操る二振りの中華剣と、手にした中華剣で戦う青年・バヴェル。対するは刀を駆使して戦う美女・ホープである。

 激しく動き回る攻防戦により、二人の戦闘は目まぐるしいという表現がピッタリである。その激しさの割に剣技の技量自体も高く、観戦するプレイヤー達の注目を集める。


「【桃園】の新メンバー……中々強いねぇ。ホープさんの腕は、バケモノレベルなのに」

「バケモノがそう言うなら、バケモノなんだろうさ」

 他の戦況を確認しつつ戦っていたヴェインとオリガは、バヴェル対ホープの激しい戦いに面食らっていた。ちなみにオリガにバケモノ呼ばわりされて、ヴェインは本気で首を横に振った。謙遜無しである。

「例えば俺が、まぁフィールドボスだとしよう。そうしたら彼女、エリアボスだからね」

「物凄い例えだな……」

 とは言っても、ヴェインがそこまで絶賛するのも納得できる。それだけ、ホープの技量は高く……そして、美しい。


――あの美人さん……アーサーやクロード姐さんみたいに、剣術を修めているんじゃないか?


……


 五つのギルドが入り乱れ、ぶつかり合う戦場。そこから少し離れた地点に、まだ生き残っていたギルドが身を潜めていた。

「やべぇな……あの乱戦に加わるのは、絶対に無理だろ……」

「同感だよ。しかし、それならそれでやりようはある……【隠密】で姿を隠して、拠点に侵入しちまおう」

 彼等は【片翼の堕天使】というギルドで、敗退寸前まで追い詰められている。それ故に名だたるギルドの大乱戦に巻き込まれない様、慎重に行動しているとは本人達の弁だ。

 そんな彼等が生き残る為に、取ろうとしてる手段は潜入してのクリスタル破壊。卑怯臭いかもしれないが、これもまた戦術の一つである。


「よし……【隠密】持ちは三人、お前達の働きに全てが掛かっている。頼んだぞ!!」

「「「了解!!」」」

 ギルドマスター【クライド】の言葉に力強く返事をした三人は、スキルを発動させようとする。しかし、【ハイド・アンド・シーク】が発動しない。

「何故スキルが……?」

「……まさか!?」

 味方に見られている場合ならば、【ハイド・アンド・シーク】は発動する。それはPACパック、応援者も含まれる仕様だ。

 では何故か? 当然、味方以外に見られているからに他ならない。


 次の瞬間、応援者の一人が唐突に倒れた。その身体に残されたダメージ痕は、近接攻撃や魔法攻撃とは全く異なっている。

「弾痕……!?」

「くそっ、狙われているぞ!! 警戒しろぉ!!」

「銃使い……まさか、()()()()が……!!」

 正解だとでも言わんばかりに、立て続けに何かが飛んで来た。それも一方向からではなく……三方向から。

 その攻撃が飛んで来る方向に視線を向けると、そこには黒髪の美女が銃を構えている姿があった。

「【魔弾の射手】……っ!!」


 躱そうとしても、弾丸が身体アバターを撃ち抜いてくる。盾で防御しようとしたら、別方向からの弾丸が背後から迫る。

 混乱してしまい態勢を整える事が適わず、【片翼の堕天使】達はあえなく全員が戦闘不能になってしまった。


「く、くそ……っ!! 卑怯だぞ……!!」

「……いや、俺達の戦術も、人の事は言えん」

「でもっ!! クライドさん!!」

 潔く、敗北を受け入れる……そんな表情で、クライドは時間が過ぎるのを待つしか出来ない。


――それにしても、ずっとここで待ち伏せていたのか? 【桃園の誓い】を守る為に……それとも、利用しているのか?


 そんな事を考えていると、遠くから接近して来るプレイヤー達の姿を見つける。その出で立ちを見れば、どこに所属しているギルドか一目瞭然。それに、第二回イベントで猛威を振るった……それはもう、ヤバい感じで猛威を振るった二人がいる。


「【七色の橋】……!?」

「ハヤテと……アイネ……!!」

「最凶カップルじゃんか!! もうやだー!!」

「安心しろ、もう脱落決定になった俺らにゃ関係ない……」

「自分で言って落ち込むなや」



 ハヤテ達も進路の先で、【片翼の堕天使】がその場に倒れている事に気付いている。そしてその身体アバターに残っているダメージ痕から、どんな武器で倒されたのかも察する事が出来た。

「【魔弾】ッスね」

「あはは……ですよねー……」

「難敵だね。それも、最悪のレベルで」

「ハヤテさんが、一度倒されてますもんね……今度はこちらが勝ちましょう!」

 味方として肩を並べる時は、頼りになる相手。しかし敵として戦う場合……特に今回の様に、舞台がサバイバルでありGvGとなった時は手強いにも程がある。


「ネオンさん、俺から離れないで。俺は鎧を着込んでいるから、ダメージが軽減できる」

 マキナはネオンにそう呼び掛け、庇う様に前に出る。照れや躊躇いが見受けられない事から、危機感を強めているのだろう。それを察して、ネオンはマキナに更に一歩近付いて頷く。

「は、はい!」

 そんな二人を横目に、ハヤテも真剣な顔つきで頷いてみせた。

「うん、マッキーとネオンさんはそれが良い。じっちゃん、アイとカゲっちゃんを頼むッスよ」

「あぁ、任せとけ」

 ジョシュアの力強い返答に二ッと笑みを浮かべ、ハヤテは応援者達に指示を出す。

「他の皆も、盾装備の人と組んで動いて欲しいッス」


「それで、どうするのじゃ主。二度敗けるつもりはないのじゃろ?」

 挑発的な流し目で、己のマスターに声を掛けるカゲツ。彼女も己の主が負ける所を見るのは、癪に障る。故にハヤテがどう動くのか、ここでそれを明言して貰いたいという感情があった。

 順調に好感度は上昇し、既にカゲツはハヤテを裏切る事などあってはならないと考えていた。それほどに、彼と【七色の橋】に対する想いは強いものになっているのだ。


 そんなカゲツの言葉に、ハヤテはニヤリと笑ってみせた。先に居るであろう難敵ゆうじん達の行動を警戒する視線は、正に猛禽類の如き鋭いものになっている。

「当然。俺は最後尾で、皆の後ろから狙撃する。【一撃入魂】も、ガンガン使うッス」

 ユニークスキルも出し惜しみせず、ここで全力を出す。その言葉にアイネは……そしてマキナとネオンも、異を唱える事はしない。それだけ、【魔弾の射手】は驚異的な実力を持つ相手だ。

「【魔弾】側も、盾役を務める応援者を連れているはずッス。俺等銃使いは、盾が無いと力を発揮出来ないしね。最初の狙いは応援者……本丸を攻めるのは、その後。でも、相手も同じ事を考えるはずッス。だから盾による警戒は、絶対に怠らないようにね」

 盾ならば≪銃≫属性の攻撃を完全に無力化できるし、鎧は固定ダメージを軽減できる。そしてハヤテの様な特殊なスキルを持たない限り、銃によるダメージは固定。対策をした上で臨めば、最低でも一撃死は無い。


「その為にも、まずは炙り出しッスね。ネオンさん、カゲっちゃん、頼める?」

 ネオンとカゲツ。二人は魔法職であり、高威力の魔法攻撃を放つ事ができるメンバーだ。

 ネオンの場合は、武器に宿された武装スキル【チャージング】。カゲツに至っては言うに及ばず……ハヤテにユニークスキルを渡したものの、魔法限定でMPを上乗せし効果を上昇させることが出来る。それが、彼女の持つ【魔女】というスキルの本領だ。


「それじゃあ……やってみます!」

「遠慮なく撃つが、良いのじゃろ?」

 そう言いながら、二人の詠唱は滞りなく進む。当然ながら二人を狙った攻撃が加えられるが、ジョシュアと盾持ちの応援者達に守られる。

 そうして二人の魔法は完成し、後は発動するだけ。

「【バーニングカノン】!!」

「【ハリケーンピラー】!!」

 ネオンの火属性魔法が放たれ、草木が茂る場所に飛んでいく。同時にカゲツの狙った場所に、吹き荒ぶ竜巻が発生した。

「あっぶな!」

「……やはり、かなりやるね」

 魔法に巻き込まれまいと、物陰から飛び出すのは【魔弾の射手】のプレイヤーと応援者達。長い髪をサイドポニーに結った美女・ルナ……そして金色の髪が特徴的な長身の青年・ディーゴだ。


 魔法が放たれなかった、三つ目のポイント。そこに潜んでいた女性は、炙り出された二組を見て姿を現した。

 長い黒髪に、猫っぽい目元が特徴的なプレイヤー。手にした銃を構えながら、不敵な笑みを浮かべてハヤテ達に声を掛けた。

「ふふっ……それじゃあ、あそぼうか!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――

【七色の橋】(17人)

 ハヤテ・アイネ・マキナ・ネオン、PACパックカゲツ・PACパックジョシュア・応援NPC11人


【魔弾の射手】(18人)

 レーナ・ディーゴ・ルナ、応援NPC15人

―――――――――――――――――――――――――――――――


次回投稿予定日:2022/12/20(本編)


2022/12/14・・・タイトルに-●●●-追記

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― 新着の感想 ―
[良い点] LCOからの移籍組も今後絡んできたりするのだろうか。しかし、属性魔法までガチャ含めて豊富ってのは解析班泣かせw 某騎士くんは更正したんです…。 桃園周りの大乱戦はもはやどこを見れば良いの…
[良い点] 好カードの目白押し これぞ バトルロイヤル [一言] この大会は  大混戦の様相を呈してますので 皆様 大混乱にならずに 繰り返し ご覧下さい
[良い点] 激戦、混戦、大乱戦。各ギルドが各々の持てる力を持って戦いは続いていく。ゼクスvsアーサーvsギルバートに最凶カップルのリベンジ戦と熱い対戦カード次々と戦場にて組まれていきますね。いやこのイ…
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