15-19 観戦エリア・7
『【八岐大蛇】のヒメノ……参ります!!』
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「やったー!!」
「これで勝つる!!」
「これがヒメノちゃんの【変身】か……」
「ジンさんの【変身】と似てるね」
「顔のとこ……マスク部分? が、やっぱ違うんだな」
「キツネじゃなくて、ヘビの顔なのか……?」
「ヒメノちゃんが【八岐大蛇】って自分で言っていたし、そうなんじゃないかな」
「やっぱジンが【九尾の狐】で、ヒメノちゃんは【八岐大蛇】なんだな」
「あの高STRに、ジンさんのAGIだもんな? 似た様な系統のスキルを持っているのは、間違いないんだろうな」
「やっぱりユニークじゃね? 羨ましい」
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『は、はは……最悪じゃねぇか』
『これ、やばくない?』
『もうやだ、この夫婦』
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「PKerドン引きwww」
「ただでさえ、STRオバケのお姫様だからな」
「わかる、わかるぞwww」
「俺も当事者だったら、同じ反応してたwww」
「ところが傍から見る分には、最高な状況であってだな」
「うおおっ!! 戦槌を弾き返した!!」
「ちょwww 軽く小突いただけで戦闘不能だぞwww」
「一撃必殺過ぎるwww」
「世界よ、これが一撃必殺少女だ……」
「誰に向かって言っているんだ、お前は」
「これなんてラスボス?」
「止まるんじゃねぇぞ……」
「止められるはずが無い」
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『痺れさせてあげるわ!!』
『嫌です!! 【クイックドロウ】!!』
『え!?』
『はぁっ!?』
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「またヒメノちゃんは、そういうwww」
「”嫌です”ウケたwww」
「さっきは手で持ってブッ刺したけど、今度は投げたなw」
「あー、やっぱり死んだwww」
「これはもう、勝ち確だなぁ」
「大番狂わせは無かったな」
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『えーい、もうヤケよ!! やってやるわよ、とことん!!』
『どっせーい!!』
『ちょっ……おまっ……!?』
『私の方が、先約でしょ!!』
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「ヨミヨミイイィィッ!!」
「おーい、円卓の騎士が泣いてるぞー」
「感無量なんだろうよ」
「まぁ、コヨミちゃんかっこかわいいから仕方ないね」
「おい、PKerもコヨミちゃんを気に入ったみたいだぞw」
「配信見に行くって言ってるもんなw」
「PKerすら魅了するコヨミちゃん」
「いやだって、あんな活躍見せられたらなぁ」
「俺も次回の配信、絶対見に行こう」
「これは同接数がやばくなる予感w」
「いけー、ヒメノちゃん!!」
「よし、ヒナちゃん回復間に合う!!」
「これで形勢逆転だな」
「やっぱり、【七色】は……いや、何だあいつら!?」
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『ハッハアァッ!!』
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「……は?」
「……あっ」
「……おい」
「……!?」
「死体蹴りだと、あの野郎!!」
「おい、誰だよあいつ!!」
「こいつら、仮設Bだ!!」
「ヒメノちゃん、逃げろ!!」
「あぁ、ヒナちゃんが!!」
「ヒメノちゃん……!!」
「逃げて、ヒメノちゃん!!」
「ジンさん、はよ……!!」
「あっ……【変身】が、もう……!!」
「やめろクズ共ッ!!」
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『【閃乱】【一閃】!!』
『【デュアルスラッシュ】!!』
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「ジンさぁぁぁぁん!!」
「間に合ったー!!」
「ナイス、ナイス旦那!!」
「ってか、グレイヴまで来てんぞ」
「どうしたんだ、あいつ……」
「やっちまえ、ジン!!」
「ブッ殺希望」
「スーパー忍者タイム来るぞ!!」
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『余計な邪魔しやがったばかりか、死体蹴りなんてクソみてぇな真似しやがって……テメェら、覚悟は出来てんだろうなァ……!!』
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「( 'ㅂ')ヒッ!?」
「こわ……っ」
「ブチギレてんぞ……」
「グレイヴ的に、死体蹴りはギルティなのか……」
「いや、まぁ常識で考えたらそうなんだけど……」
「【漆黒の旅団】のPKerの発言と考えると、激しく違和感が……」
「死体蹴りはグレイヴの美学に反するんだろ、戦闘狂っぽいし」
「おいおい、あいつら顔色真っ青だぞ」
「ちびってんじゃねーの? 雑魚っぽいし」
「イベントに参加してない俺等の台詞じゃないけどな……」
「主犯のやつ、顔覚えとこ」
「安心しろ、スクショは撮影済みだ」
「やはり通報か、いつ実行する? 私も便乗する」
「花○院やめろ」
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『ヒメ、下がるでゴザルか?』
『……いいえ』
『私のヒナちゃんを傷付けた事……絶対に許しません……!!』
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「ヒメノちゃん……」
「こんなの応援せざるを得ないよ」
「まだ中学二年生なのに、何て強い子なんだ……」
「おじさん、涙が出ちゃうよ……」
「何で俺はあの場に居ないんだ……今あそこに居たら、ヒメノちゃんの肉壁にでも何にでもなるのに……」
「見守ろう、ヒメノちゃんの勇姿を……!!」
「頑張って、ヒメノちゃん!!」
「やっちゃえ、ヒメノちゃん!!」
「ヒメノちゃん、ファイト!!」
「負けるな、ヒメノちゃん!!」
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『野郎共、この姫さんを援護してやれ!! こいつらゴミクズ共を、一匹たりとも逃がすんじゃねェぞ!!』
『って訳だ、忍者。今回だけは、手ェ貸してやる』
『コヨミ殿!! リン、コン!! 標的は仮設ギルドBのプレイヤー、【旅団】の彼等と共闘するでゴザル!!』
『だそうよ、コヨミちゃん……殺し合いは一旦、お預けね』
『今、物凄いやばいルビふりしてません!? ねぇ!?』
『はぁ……ったく、あの人は……』
『≪メダル≫をここで使う羽目になるとはね。まぁ良いわ、これはこれで面白そうだし』
『って事らしい、くノ一の姐さん。今だけは共闘と行こうや』
『……良いでしょう』
『コン……(ブッ殺……)』
『狐さんや、今やべー事考えてね? 大丈夫か?』
『ジンさん、グレイヴさん』
『どうしたでゴザル?』
『手短にしてくれや』
『一つ、やりたいことがあります……時間を稼いで欲しいです』
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「共闘だと!?」
「グレイヴ、あんた漢だよ……!!」
「何だこの展開、バチクソ胸熱なんだけど!!」
「仮設B……あいつら終わったな……」
「仮設B終了のお知らせ」
「調子に乗って乱入したら、双方の逆鱗に触れてブチ転がされる展開ですねわかります」
「いや、本当にアレは酷いからな。むしろ何でアレやったんだ」
「アバターネームは”PIERTOR”?」
「読めないんですが」
「検索したけど出て来なかった」
……
「ヒメノちゃんの護衛に、ジンさんとグレイヴ……コヨミちゃんは、戦っていた短剣使いと共闘ですか」
「蘇生した二人は、そのままコンビ組んでいるな」
「【旅団】同士は解るんだが、コヨミちゃんと短剣使いはすげぇ連携プレイしてんぞ!!」
「短剣使い……名前は、リーパー? 死神じゃないですか、やだー!!」
「リーパーね、覚えた」
「そのリーパーが、コヨミちゃんの攻撃後の隙を埋めているね」
「これは良い連携だな」
「リンちゃんは曲剣使いの男と一緒に、キツネさんは魔法職の男と組んでるな」
「こっちも息ピッタリ」
「というか、リンさんもキツネさんもAGI高いからな。組んだ相手のフォローはお手の物なんだろうよ」
「あいつらの名前、覚えておこう。エリザ、アッド、グリム、ムジーク……」
「あのキツネさんは、コンだっけ?」
「コン、さん……!!」
「キツネのコンさん、ボスにしか見えません」
「ボスを飼う忍者」
「むしろジンさんがフィールドボスじゃん」
「温厚誠実なフィールドボスか……攻略本が厚くなるな」
「攻略出来るといつから錯覚していた?」
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『準備、出来ました……!!』
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「あれは、ヒナちゃんの……!!」
「ヒメノちゃん、まさかヒナちゃんの武器を使って……?」
「システム・ウィンドウをポチポチしていたのは、このためか」
「んー、あの杖って【森羅】のシアも持っていたよな」
「確かあれは、≪聖女の杖≫ってヤツだ。ガチャ排出アイテムだよ」
「ヒナちゃんは聖女だったのか……」
「そして今、ヒメノちゃんも聖女と化したのか」
「いやしかし、ヒメノちゃんのINTでは大した威力にならないんじゃないか?」
「炎の蛇も、耐えられていたからな……まぁ、エリザのMNDが高いせいもあるかもしれんが」
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『……【我等は比翼の鳥、連理の枝】』
『可愛い義妹の為、拙者の分も託すでゴザルよ』
『はいっ!! ヒナちゃんと、私と……皆の分で!!』
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「ん?」
「何だ、今の」
「夫婦間でしか解らないやり取り」
「比翼の鳥に、連理の枝か……つまり夫婦という事な訳ですが」
「比翼の鳥とは、雌雄それぞれ目と翼が一つずつで、常に一体となって飛ぶという想像上の鳥。連理の枝は、根元は別々の二本の木で幹や枝が途中でくっついて、木理が連なったもの。男女の離れがたく仲むつまじいことのたとえ。男女の情愛の、深くむつまじいことのたとえ。相思相愛の仲ということ」
「ググったんか」
「つまり、どういう事だってばよ?」
「二人はラブラブ」
「それは知ってる」
「まぁ、何かのスキルだろうな」
「あれは……昨夜も、ヒメノちゃんが使っていた」
「例のスパイ騒動か?」
「あぁ……ヒメノちゃんがそれを使った後、ジンさんのSTRがガン上がりしていたんだ……恐らく、ヒメノちゃんのSTRを借りたんだと思う」
「という事は、ヒメノちゃんにジンがINTを貸したんじゃないか?」
「そうか、道理で……」
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『【ディバインフォール】!!』
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「わお」
「これは凄い!!」
「神罰が下ったようにしか見えんな」
「ああ、仮設BのHPが根こそぎ散っているな」
「自業自得なんだけどね」
「読めないさん以外、死体蹴りしたヤツの巻き添えじゃん」
「死体蹴りの後でヒメノちゃんを囲んでたろ、同罪だよ」
「そう言われればそうだな。奴らは死体蹴りについては何も言わないで、ヒメノちゃんをよってたかって……あ、キレそう」
「俺はもうキレてる」
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『く、クソが……っ!!』
『死体蹴りなんてする、テメェの方がクソだろうが。ふーん……【PIERTOR】? なんて読むんだ、これぁ』
『あ、それ【ピーター】って名前らしいっす』
『読めねぇな。スペルミスだろ、コレ』
『うっせぇな!!』
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「まさかのスペルミスwww」
「えぇぇ、あれってピーターだったのかwww」
「ピーターだと、普通は【PETER】だよね?」
「そのはずだな」
「うわ、これは恥ずかしいやつ!!」
「この様子がAWO中に広まったら、こいつ恥ずか死するんじゃない?」
「それ、俺は一向に構わん!!」
「マジでウケるwww」
「今日……いや、第四回イチの爆笑案件じゃんwww」
「ん? おい、ヒメノちゃんが!!」
「何を……」
「ま、まさか殴っちゃうのか!?」
「まぁ、そうされて当然の奴だし良いんじゃね」
「でもそれやったら、ピーター(笑)と同類になっちゃうだろ!!」
「ヒメノちゃん、気持ちは解るがダメだ!!」
「いや……ジンさん、止めないつもりじゃね?」
「あのジンさんが止めない? それってつまり……」
「あ、あ……ヒメノちゃん……!!」
「いったあぁ!?」
「いや……!! 顔の横だ!!」
「地面がめちゃくちゃ陥没してるんですが」
「あれもアウトなのでは?」
「当たらなければ、どうという事は無い」
「それは避ける側のセリフな」
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『私はあなたを殴りません。でも……あなたは自分がやった事が、どういう事か解っていたんだと思います』
『二度としないで下さい』
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「わからされた」
「ヒメノちゃん激おこだったのね……」
「それでも殴らなかったのは、ヒメノちゃんの優しさなんじゃろうな」
「殴らんで正解だよ。あんなのに触れたら、ヒメノちゃんが汚されちゃう」
「激おこぷんぷんヒメノちゃんだったのか」
「激おこスティックファイナリアリティぷんぷん丸ドリームじゃないのか」
「そこまで行くと、世界が滅びるよ?」
「お前はヒメノちゃんを何だと思ってんの?」
「それにしても、中学生の女の子に諭されるピーターさん。プークスクス」
「NDKした気持ちでいっぱいです」
「ブレン様したい気持ちでいっぱいです」
「m9(^Д^)プギャー」
「愉悦!!」
「ピーター……マナー違反から恥を晒し、返り討ちにあっただけの人生だったな」
「あいつ、今後ログイン出来んのかな」
「何食わぬ顔でプレイしていたら、勇者って呼んでやってもいい。勿論、悪い意味で」
「仮設Bはもうダメだろうね……」
「二十人で二百ポイント。損失はでかいだろうし、ここから浮上は出来ないだろうさ」
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『不正なんてしている奴等にゃあな、心の中に驕りが絶対に生まれんだ。それは態度や視線、動きや攻撃にも出る。お前らにゃぁ、そんなモンは微塵もねェ……それが全てだろうよ』
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「……グレイヴさん!!」
「かっけー……!!」
「くそっ、イケメンが、イケメンがまた増えた……っ!!」
「これはグレイヴさんと呼ばざるを得ない」
「くっ……PKerなのに、ちょっと良いかもって思っちゃった……!!」
「グレイヴ△」
「惚れてまうやろ!!」
「まぁPK行為については賛否両論あると思うけど、少なくともグレイヴ達の態度は嫌いじゃない」
「イケメンで強い……しかも、心もイケメン」
「嫌いじゃないわ!!」
「ルナDさんお久し振りです、帰れ」
「優良PKerか」
「PKに優良もクソもあるかよ」
「おや? ヒメノちゃんが……」
「どうしたんだろ…………はぁ!?」
「お礼に回復……か。天使かな? 天使だったわ」
「ヒメノちゃんに癒して貰えるとか、それなんてご褒美?」
「癒されたい……ヒメノちゃんみたいな美少女に癒して貰えるなら、PKerに堕ちるのもやぶさかでない……!!」
「少なくとも、テメェはダメだ」
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『だから、それは感謝なんかじゃなく……俺等に借りを作らない為って事にしとけ。それなら、こっちにゃ否はねぇよ』
『アンタ、本当に何でPKerなんてするんでゴザルか』
『マジ勿体ないですよ、顔も性格もイケメンなのに』
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「ジンさんとヨミヨミが、俺達の言葉を代弁してくれたwww」
「ほんとそれなwww」
「まぁ、プレイスタイルというか、嗜好の問題なんだろうけどねw」
「しかしまぁ、あぁいうPKerなら居ても良い……のかな?」
「汚い手を使ってPKする奴等よりは、千倍マシだよ」
「正々堂々と勝負吹っ掛けて来る訳だし、格下狙いはしないって言うし……その辺りが本当なら、まぁ」
「ん? ヒメノちゃん?」
「拠点に帰還って、どうしたんだろ……」
「何かあったのかな……」
「もしや、ヒナちゃんが泣いているとか!?」
「それははよ帰らなきゃね」
「そういう感じではなさそうだけど……」
「ふーむ、何か新しい能力でも目覚めたか?」
「能力って、お前w それ言うなら、スキルだろ」
「新しいスキルオーブを手に入れたか?」
「いやいや、まさかねーw」
「そうはならんやろ」
なっとるやろがい。
次回投稿予定日:2022/10/30(本編)