15-17 観戦エリア・6
イベント二日目の昼時は、観戦者達も休息の時間となっていた。イベント参加者達が休憩を取っており、大きな動きが無いのも一つの要因だ。夜の活動に備えて、仮眠をとる者までいるくらいだった。
そうして昼時が終わりに近付くと、各ギルドも動きを見せ始めた。それに伴い、観戦していたプレイヤー達もイベントモニターの周囲へと再び集まり始める。
「大モニター、何でそこを映してんの?w」
「いや、案外おしゃぶりが活躍しててw」
「何だかんだ、イベントでよく見るよな」
「意外と生き残ってて草」
「いや、あいつら弱くはないだろ。レベリングはちゃんとしてるっぽいし、装備も整えているっぽいぞ。あいつらはただ単に……」
「おい、【七色】からハヤテ達が出て来たぞ!」
「大モニター映して! 早く!」
「いつも、張り合う相手が悪いだけなんだよなぁ……」
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『ハヤテ君、後ろで援護しててね! 大丈夫、もう誰も通さないから!』
『落ち着いて、アイ……大丈夫だから』
『あ、あの……クベラさん、無茶しないで、下さい……ね?』
『大丈夫やから、そんな心配せんといてや……』
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「……さっきの【魔弾】戦、アイネちゃんやカノンさんの方が引き摺ってる……w」
「ハヤテが惨敗した時、マジで狼狽えてたよな……」
「撤退を指示したハヤテの顔も、かなりマジだったけどな」
「いやぁ、でもしゃーなくね? 【魔弾】の二人、マジで強かったし」
「メイリアの強さはヤバかったな……ハヤテも強かったけど、あの娘は更にその上ってカンジ」
「ミリアも相当だろ? アイネちゃんとあんないい勝負するプレイヤーって、初めてじゃないか?」
「にしても、クベラは商人だよな? 捨て身の砲撃でミリア落としてたし、大活躍じゃん」
「和装も何か、将軍様お抱え商人みたいな感じじゃない?w」
「将軍様って誰だよwww」
「ヒイロ君でFA」
「将軍……【将軍】……うっ、頭が……!!」
「それはマジでやめてあげろ下さい」
「お? そうこうしていたら[風雲七色城]に、敵ギルドが!!」
「その名前、定着したねぇ……(笑)」
「どれどれ……流石に大規模って事は無いか?」
「違うな、多分中小規模」
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『……ひぃっ!?』
『な、なんてことだ……!!』
『俺達のイベント、終了のお知らせだな……』
『あっ、これは詰んだわ』
『相手が、あの夫婦だなんて……!!』
『ヨ、ヨミヨミ!? ヨミヨミじゃないっすか!!』
『あの狐は、何だ……? ってか、あれってモンスターだよな……?』
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「……あれ、どこ?」
「【スライムスレイヤー】かな」
「あー、あいつらか。午前中、マキナ達にやられてたぞ」
「到着早々、絶望してんじゃねーかw」
「でもあいつら、自分の意志で[風雲七色城]に攻め込んで来たんだろ? 何で絶望してんの?」
「守ってんのがあの夫婦だからだろ」
「俺等はジンさんとヒメノちゃん・ヨミヨミが守ってるの知ってるけど、イベント参加中の連中はそれを知らんからな」
「成程、そう考えると絶望の底に叩き落とされるのも無理ないな」
「後が無さそうだし……絶望があいつらのゴールなんだな」
「仮面バイクさんやめろや」
「でも、それ以外なら勝てると思ったのかな?」
「いやぁ……ヒイロ・レン様・シオンさん組はアカンやつ」
「ハヤテ・アイネ・カノン・クベラ組も無理ゲーだろ」
「マキナ氏・ネオンちゃん・リリィちゃん組には負けてるしな」
「ヒビキきゅん・センヤちゃん・ミモリさん組はワンチャン……とか思えるかもしれんけど」
「そこにはユージンさんがいるんだよなぁ……」
「どう足掻いても絶望じゃねーか!!」
「これは魔法少女が魔女化するまであるな」
「僕と契約して絶望して魔女になってよ!! ……って、やめてあげて」
「お、ギルマスのヤツが鼓舞……? してる、のか?」
「ローレンス、必死過ぎて草生えるw」
「まぁ、仕方ないんじゃね? 相手は最速と最強ぞ?」
「うーん、この噛ませ犬感よ……」
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『行きます!! 【シューティングスター】!!』
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「ほらもう!! ヒメノちゃんはまた……w」
「開幕対軍宝具ワロタw」
「えっぐ……大半が落ちたぞ……」
「即死流星群だな」
「そしてジンさんとコヨミちゃんが接近して……」
「くノ一さんも速いな、流石ジンさんのPAC」
「リンちゃんだっけか」
「あのくノ一は、”ちゃん”ってより”さん”って感じ」
「わかりみが深い」
「あ、ヒメノちゃんの方に三人……」
「心配無いだろ、だってヒメノちゃんだぞ?」
「ほーら、【蛇腹剣】でまとめて……いや、一人残った!?」
「あぶなあぁいっ!!」
「ヒメノちゃん、逃げて!!」
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『えいっ!!』
『ええええええええぇぇっ!?』
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「「「ええええええええぇぇっ!?」」」
「矢を手でぶっ刺す弓職、初めて見たwww」
「そりゃ驚くわw」
「それでHP全損するのが、また(笑)」
「別に矢は弓から撃たなきゃいけないって決まりはないからな……w」
「あいつ、めっちゃテンパってんな。マジウケるw」
「実際、矢をブッ刺しても攻撃判定あるのな?」
「みたいだね。まぁ普通のプレイヤーが同じ事やっても、カスダメだろうさ」
「ヒメノちゃんくらいのSTRが無いと、意味ないか」
「あぁ、終わったな」
「速っw」
「流石が過ぎるわw こりゃ、難攻不落w」
「これ、延々と似た様な光景が続くだけでは?」
「姫様とヨミヨミの可愛さ、ジンさんの格好良い忍者ムーブを堪能する時間かな」
「リンさんとヒナちゃんもだろ」
「キツネちゃんもだろ!!」
「それな!!」
「うんうん、わかる」
「ん? ヒメノちゃんの様子が……?」
「どうしたんだ?」
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『気付かれたみたいだな? さっすが、【七色の橋】……』
『……【漆黒の旅団】』
『あぁ、お前等にブッ潰された【漆黒の旅団】さ』
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「なん……だと……!?」
「PKギルドじゃないですか、やだー!!」
「いや、むしろ良い展開だ!! ブッ潰されろ!!」
「PKer死すべし、慈悲は無い」
「ジンさん! ヒメさん! やっておしまい!」
「お前はどこから目線なんだ?」
「ん? 待て待て待て……今アイツ、何て言った?」
「【七色の橋】が、【旅団】をブッ潰した……?」
「……俺の聞き間違えじゃないみたいだな」
「そんな事ある?」
「そうはならんやろ」
「なっとるやろがい」
「ちょっと男子ー! 定番の流れはやめなよー!」
「でも確かに、最近は【漆黒の旅団】の話を聞かなかったよな?」
「いやまぁ、言われてみればそうだけど……」
「元々、PKerは大っぴらに活動するプレイスタイルではないだろ」
「でも第二回でも名前は聞かなかったぜ?」
「まぁPKerなら、決闘イベントに出てきてもおかしくはない……のか?」
「ある意味、PKerってPvP専だもんな」
「ん-、でも事前に告知されている報酬次第じゃないかしら?」
「第一、PKerだぞ。真っ向勝負する連中かよ」
「とにかくあいつの言葉が本当なら、もしかして【旅団】は第二回の前には壊滅していたって事だろうな」
「で、それをやったのは……」
「【七色の橋】だな」
「つまるところ、お礼参りか。ならどっちにしろ、ジンヒメ夫婦の餌食だぜ!」
「まぁ、そうなるかー」
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『あんがとよ、あのクソッタレどもをブッ潰してくれて。お陰でギルドはそのまま、俺等が乗っとれたんだ。感謝してるぜ、お前等にはさ』
『『……はい?』』
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「「「「「はい?」」」」」
「お礼参りって、本当の意味でのお礼じゃねーか!!」
「奴等が、ギルドを乗っ取った!? どういう事だ!?」
「しかも、それを感謝してるってさ」
「わけがわからないよ」
「インキュベーターは円環の理に導かれてどうぞ」
「導かれるのは魔法少女の方だ。いや、論点はそこじゃないんだけども」
「あー、待て待て。以前の【旅団】っていうと……」
「プレイヤーを大人数で囲んで、KILLするって感じだな」
「相手は問わない、気に入らない相手はとことん付け狙うらしい」
「誰も居ないと思っていたら、いつの間にか囲まれているんだってさ」
「クソじゃんか」
「サイテー」
「ラブー! ラブー! クズー!」
「ラブ〇フちゃんは銭湯に帰ろうね」
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『あのカス共みてぇに、弱いヤツを狙うのはクソダセェ。それに大人数で囲んで、数の暴力でKILLするのも恰好悪ィ。だろう?』
『まぁ……確かに、格好良くは無いと思います』
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「PKはするけど、手段を選ばないって訳じゃない……のか?」
「成程、これがPKの美学か」
「いやはや、納得だね!!」
「いやいや、思考停止すんな。やってる事はあくまでPKだからな」
「PK行為に美学もクソもあるかよ」
「まぁ何でもありの奴等よりはマシなだけで、迷惑行為なのは変わらないわな」
「制限されてないだけで、PKはノーマナー行為だしね」
「強い奴と全力で戦いたいだけの戦闘狂だろ、ありゃあ」
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『先代ギルマス……つまりディグルのアホが、お前等の情報を送って来てな。多分、お前等への復讐目的なんだろうが……逆にこの戦いは、俺等にとっては再出発になるバトルにさせて貰うぜ』
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「ギリィ……」
「ん? 何か変な音しなかったか?」
「歯軋りみたいな音だったな」
「……ま、いっか」
「お、ジンさん達は受けて立つっぽい」
「やっちまえー!」
「ぶっころせー!」
「下品な掛け声やめんかい」
「始まった!!」
「グレイヴ……だっけか、あいつも速いな」
「流石、戦い慣れている感があるな。動きもすげぇぞ……」
「これは、流石のジンさんも楽勝とはいかないか……!?」
「おっ、他のメンバーも……」
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『INTはそこまで高くないんでしょ、お姫様ッ!!』
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「ええぇ~……まさか突っ込むとは……」
「確かにヒメノちゃんのSTRは高いが、その分他のステータスは然程高くない……魔法攻撃はINT不足で、そこまでダメージを受けないとふんだか」
「縛るヤツは? 第二回イベでやってたろ」
「一人縛っても、後ろに二人いるからな。それも込みで、突撃かましたんじゃないか?」
「だがリンちゃんとヒナちゃんの援護も、流石って感じだぜ」
「ヨミヨミとキツネちゃんも、良い動きだな。そこまで不安材料は無いんじゃね?」
「というか今更だけど、キツネちゃん大きいな。ヨミヨミが乗れるくらいだもんな」
「肩や頭に乗れるサイズが、一気にでっかくなったもんな。どうなってんだ?」
「これは掲示板で情報流してくれるのを待つしかないな」
「ハヤテ君なら、ハヤテ君ならきっとやってくれる……!!」
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『そんなに悠長に狙っても、当たってなんてあげないわよ?』
『それはどうでしょう? 【縮地】!!』
『な……っ!?』
『なんてね?』
『!?』
『あなたに転移技があるのは、第二回イベントで予習済み。私も同じ状況なら、その戦術を取るでしょうね……羨ましいスキルだわ』
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「ああぁっ!! ヒメノちゃんが!!」
「ていうか、未だにあの転移スキルの正体が解らないんだよな」
「ジンも使っていたよな? って事は、ユニークではないと思うんだが……」
「第二回で既に習得済みだったよな?」
「第二回より前……ってなると、やっぱウルトラレア?」
「情報が無いよなぁ」
「いや、第一回で何かあったという可能性は?」
「第一回……まさか、四神ボス!?」
「それよりヒメノちゃんが麻痺してんぞ!」
「これは流石のヒメノちゃんも、無理か……」
「ジンは……ダメだ、グレイヴが行かせてくれない……!!」
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『ああぁっ!! すっぽ抜けたぁ!!』
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「おぉっ!?」
「ちょwww」
「なんぞ!?」
「当たったぁぁwww」
「痛そーw」
「ヒメノちゃんにしてみればラッキー、PKerにはアンラッキーなw」
「コヨミちゃんwww」
「でも、ヨミヨミは今、武器が手元に無い事に……!!」
「あぁぁ、ジタバタしてる……かわいいけど」
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『『ぐふっ……!?』』
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「うそーんwww」
「ラッキーヒット二連発www」
「なんて運が良いんだ……w」
「草生えたわwww」
「神掛かったラッキーアタックw」
「しかし、お陰でヒメノちゃんが助かったぞ!!」
「おっ……これは二対三か?」
「あっ……あっ、ヒナちゃん……」
「ヒナちゃん、やられちゃった……!!」
「まだ蘇生は間に合う……けど……」
「通せんぼするPKer、まぁ当然か」
「ん? ヒメノちゃん?」
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『……押し通らせて貰います』
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「……ん? んんんん?」
「……あれ、待って? あのポーズ……」
「何か、見覚えがあるんだけど……」
「えぇと、確か……」
「あれ、ジンがあのスキルを使う時の……」
「そうそう、同じポーズだね。流石、ラブラブ新婚カップ……ル……だ」
「……って事は、まさかあぁっ!?」
「嘘だろ!?」
「もう駄目だぁ、オシマイだぁ……PKどもが」
「来ちゃう!? 来ちゃうの!?」
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『【変身】!!』
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「キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」
「きちゃったああああああああああ!!」
「最強夫婦が、更に最強に……いいぞ、もっとやれ!!」
「【七色の橋】全員で変身キボンヌ」
「それなんて戦隊……」
「【異世界戦隊】でないのは確かだ」
次回投稿予定日:2022/10/20(本編)