03-05 中間結果発表されました
北門で戦闘を繰り広げるジン。両手の小太刀と高いAGIを武器に、モンスターを次々と斬り捨てていく。
その姿を見たプレイヤー達は、あまりの速さとクリティカル発生率の高さに驚愕する。しかし、決して悪感情を抱かれてはいなかった。
「むっ、背後失礼!!」
プレイヤーの死角から襲い掛かるモンスターに接近したジンは、右手の≪大狐丸≫を振るう。
「【一閃】!!」
激しいエフェクトが発生する一撃。モンスターのHPを削り切ったジンは、プレイヤーに振り返る。
「無事でゴザルか?」
「あ、あぁ! ありがとう!」
「なんのなんの、プレイヤー同士助け合いでゴザル! しからば御免!!」
あまりにナチュラルな忍者ムーブに、プレイヤーは苦笑いしつつもジンを目で追いかける。
「忍者……忍者さん、ありがとう」
ジンはこうして、プレイヤーの支援をしながら駆け回っているのである。プレイヤー達からすると、心強い味方であった。
……
イベント開始から戦い続けること、一時間程。周囲のモンスターを掃討すると、進軍が止まった事にプレイヤー達は気が付いた。
「これで終わり……じゃないよな」
「まだ四分の一だ、ここからが本番じゃないのか?」
「敵の強さも、ここから上がりそうだよな……」
不安そうにするプレイヤー達だったが、ジンはそれどころではなかった。
「……どこかなー」
周囲を見渡して、知り合いの姿が無いかを探しているのだ。
というのも先程の戦闘で、気が付いた事があったのである。ジンに襲い掛かって来たモンスターの何割かは、矢が刺さって死んでいったのだ。この北門に居て、弓矢を使い、ジンを援護してくれる様なプレイヤー……彼の知る限り、心当たりは一人しかいない。
そこまで考えた所で、ジンは後方から駆け寄って来る女性の姿に気付いた。
「やっぱり!!」
それは、先日知り合ったプレイヤーの女性……レーナである。
レーナに駆け寄ったジンは、会釈をして挨拶する。
「こんにちは、レーナさん。さっきの援護はやっぱりレーナさんでしたか」
ジンの言葉に、レーナは微笑みを浮かべて頷いてみせた。
「こんにちは、ジン君! 気付いていたんだね、余計なお節介だったかな?」
「いえいえ! 助かりました、ありがとうございます!」
互いに、フレンドはそう多くない。そんな中、この北門にランダム配置されたのも一つの縁だ。
「ジン君達は、集合場所とか決まっているのかな? 私達は、北門集合なんだけど」
「僕達は南ですよ。変更が無ければですけど、今はメッセージが届かないからなぁ……」
一時間経過して尚、メッセージ機能は復旧していない。ずっとこのままなのか、あるいは何か条件があるのか……今は考えても、答えは出ない。
「だよねぇ。そうだ、メッセージが使えるようになるまで共闘しない?」
「えぇ、是非お願いしたいです!」
ユージンは生産職人である為、外壁の内側に居るとジンは予想している。そうなると、このエリアで組めるのはレーナ一人だ。
そんな和やかな会話を交わす二人に、周囲のプレイヤー達から視線が集まる。
「あれが、忍者……」
「若いな……」
「あぁ。しかし、あの動きは凄かったな」
「忍者さん、マジ忍者」
紫色のマフラーを靡かせて疾走する、忍者の姿を見たプレイヤー達。その姿を見ていない者は少ないのではないかと思う程に、ジンは縦横無尽に駆け巡っていたのだ。
駆け回るジンを観察するのは困難だったが、今は小休止。ジンも足を止めているので、その顔や装いに目を向けるプレイヤーは多かった。
そして、ジンと会話するレーナである。
「あの女性……可愛くね?」
「ふ、ふとももがぁ……!!」
「馬鹿野郎、それよりもパイスラだ……っ!!」
「本当にありがとうございます!!」
彼女は以前と違い、ノースリーブのチュニックを装備。下は黒い革のショートパンツを履いており、白い太腿とのコントラストを生み出していた。手にはグローブ、脚はロングブーツで守られている。
そして背負った矢筒が、中々ににくい仕事をしていた。チュニックごしでも解る豊かな胸部装甲の間を、皮のベルトが通過しているのである。男性プレイヤーの視線がそこにいくのも、致し方なし。
「……見られてるねぇ」
「そうですね。場所を変えます?」
折角の小休止なのだ、視線を気にしてゆっくり休めないのはよろしくない。しかし、レーナは苦笑して首を横に振る。
「私は大丈夫、ジン君に任せるよ?」
「そうですか? 僕もまぁ、普段からこんな格好しているもんだから……慣れました」
互いに表情を覗き、無理をしている訳では無いと判断する二人。そのまま連れ立って、近くの手頃な岩へ向かう。
プレイヤー達の視線を浴びながら、岩に腰かける二人。その時だった。
『プレイヤーの皆様へお知らせします。東西南北全ての門で、第一陣の撃退を確認致しました。素晴らしい戦果です!』
運営のアナウンスに、北門に集まったプレイヤー達から歓声が上がった。
『なお、現在メッセージ機能が使用できない原因を突き止めました』
その台詞に、ジンとレーナが顔を見合わせる。
「運営が使えなくしているのでは?」
「多分、彼女はプレイヤー連合の司令官的な位置づけなんじゃないかな。要するに、ロールプレイだよ」
「あぁ、成程」
身も蓋もない言い方なのだが、事実その通りである。
そんな二人の会話を他所に、運営がアナウンスを続ける。
『どうやら特殊な能力を持ったモンスターが、メッセージ機能の妨害をしている模様です。各門に三体ずつのモンスターが潜伏していると、報告が上がっています』
誰が報告しているのか疑問だが、運営ちゃんは台本を読んでいるだけなのだ。質問は受け付けません。
『そのモンスターを倒す事が出来れば、メッセージ機能が復旧すると思われます。ただ、外観までは報告が上がって来ておりません。現地で捜索し、討伐するしかありませんね!!』
長い台詞も、もうすぐ終わりだよー! とばかりに、声がどんどん大きくなっていく運営ちゃん。ヤケクソっぽい。
『最後ですが、現在の総合ポイントランキングをトップ20まで発表致します! 皆様、上空をご覧下さい!!』
その言葉に、ジン達は空を見上げた。あぁ、青い。
そんな青空に、光の線が走って行く。それらが繋がり四角形を形成すると、枠の中に文字が映し出された。
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【中間総合ランキング】
1位【レン】
2位【ジン】
3位【ユアン】
4位【ヒメノ】
5位【アーク】
6位【レーナ】
7位【ヒイロ】
8位【ダイス】
9位【クロード】
10位【シオン】
11位【アーサー】
12位【ギルバート】
13位【フレイヤ】
14位【レイチェル】
15位【ケイン】
16位【シンラ】
17位【シルフィ】
18位【イリス】
19位【リリィ】
20位【ミリア】
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その中間結果発表は、ジンにもレーナにも衝撃を齎した。当然、周囲に居るプレイヤー達にも……むしろ、全プレイヤーと言っても差支えは無いだろう。
「ホワッ!? 僕が2位!?」
「えっ!? 私、6位!?」
ジンとレーナは、呆然としてしまった。なにせジンはまさかの2位、レーナは6位と高ランク入りである。予想外のランキング結果で、二人は硬直してしまった。
「あ、あの忍者さん……2位のジン?」
「あの美女の名前は、6位のレーナか……ナイスだ運営っ!!」
「レーナちゃんかぁ……可愛いなぁ」
「レーナさん、ね。よし、覚えた!!」
「ジン君……そんなに凄いプレイヤーだったのね」
「これは、声かけちゃう? かけちゃおうか?」
不用意な発言で、プレイヤーネームが広まっていく二人。しかし、硬直したままの二人はそんな事に気付いてなどいなかった。
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東側の門でも、中間結果発表を見たプレイヤー達が混乱の極みに達していた。
「おいおい、アークが5位かよ!?」
「レ、レン様が1位はまだ解る……でも、それ以外が意味不明だ!!」
「ジン? ユアン? ヒメノ? 誰だそれはっ!!」
「アークとギルバートのワンツーフィニッシュって言ったの、誰だよ!!」
騒然とするプレイヤー達の中で、ギルバートは冷静な風を装っていた。傍から見ると涼しい顔をしており、「まだ本気出してないだけだから、まぁ順当な結果だよね」とでも言わんばかりだ。
しかし、内心では腸が煮えくり返る様だった。
――この俺が12位だと……!? 有り得んっ!! レアスキルにレアアイテムを所持している、この俺がっ!?
まさか2位のジンが、それ以上のモノを持っているとは露知らず。ギルバートは中間結果に不服を抱いていた。
……
「1位ですか、頑張った甲斐がありますね」
「流石レンさんですね、お見事です!」
幾分、嬉しそうな声色で呟いたレン。その隣で、リリィが素直な称賛の言葉を贈る。
「リリィさんも、19位おめでとうございます」
「ありがとうございます。更に頑張りますよー♪」
支援と回復を主とするリリィが、19位にランクインするのも中々に驚異的と言って良い。モンスター討伐の方が、当然ポイントは高いのだから。
すると、レンは最前線から一人の少年が歩いて来るのに気が付いた。
「……ヒイロさん! それに、ケインさんも」
和と中の甲冑姿のヒイロ・ケインのコンビは、特に目立つ。わざわざ外壁の方まで歩いて来たのは、自分と合流する為だろう。
「済みません、リリィさん。パーティメンバーの方が見つかりましたので、私はその方と合流しますね」
「解りました、また機会があればご一緒しましょう♪」
「はい。それでは、失礼致します」
一礼して、外壁から降りる階段へと向かうレン。彼女の背中を見送って、リリィは外壁の下に視線を向ける。
――ヒイロさん……あの人が、そうなのね。それにあの人は以前、最前線に一度だけ参加したケインさん……だったかな?
ランキング7位のプレイヤーであり、先程は自分を助けてくれた少年。
一度だけ、最前線のレイドパーティに参加した実力派パーティのリーダー。
そんな二人に駆け寄るレンに、リリィは口元を緩める。
――ご縁があれば、また一緒に戦いましょうね。
……
レーナのパーティメンバーである、前衛職のミリア。彼女は、堅実な戦いぶりで20位にランクインしていた。
しかし余裕がある訳ではない。周囲のプレイヤーに合わせながら一人で戦う労力は大きく、思いの外苦労する。
――やっぱり、ここは合流すべきね。
フレンドリストを確認すれば、ここにはヒイロが居る。彼に共闘を申し出て、受け入れられるならばメッセージ機能が復旧するまで共に戦う。
MPK事件の際に知り合った彼は、ミリアからするととても理知的で温和な少年だ。協力を仰ぐには最適な人物だろう。
――そもそも、ジン君達のパーティメンバーは良い人ばっかりだし……あら?
目立つ風体のヒイロを見付けるのに、然程時間はかからなかった。しかし、彼が一緒にいるのはジンとヒメノではない。
派手な中華風の甲冑を身に纏う男性と、蒼銀の髪を持つ少女と会話しながら歩いていたのだ。その姿から、彼はパーティメンバーと合流出来たのだろうと推測する。
――他にも、パーティメンバーが居たのね。どうだろう、受け入れてくれるかしら?
一瞬迷うものの、声を掛けないという選択肢は愚策だろう。一人で戦うのも、正直しんどい。
そう思ったミリアは、ヒイロに声を掛ける。
「ヒイロ君!」
ミリアの声に振り返るヒイロ。ミリアの姿を認めると、穏やかに微笑んでみせた。同時に、左右にいる彼のパーティメンバーも振り返ったのだが……そこでミリアは驚き、目を丸くする。
「恋、ちゃん……?」
「あ……貴女は……」
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「ヒメノさん凄いです!」
「本当に凄い! 4位になるだなんて!」
シャインとルナに褒めちぎられて、ヒメノは照れ照れしていた。もじもじする姿は、実に可愛らしい。
「わ、私は……ルナさんやシャインさんに協力して貰ってですから……」
本人はそう言うものの、その圧倒的な攻撃力が貢献度の大半を占めている。
どんなモンスターも、矢が当たれば死ぬ。貫通して後ろのモンスターも死ぬ。武技の効果でSTR値が半減しても、そんなの関係ねぇ!! とばかりに死ぬ。
モンスターからしてみれば、溜まったものではないだろう。
そんなヒメノ、某掲示板の影響で名前が広く知れ渡っていた。元々、一撃必殺少女という通り名で有名だったのもある。周囲のプレイヤーから注目されるのも、無理はなかった。
そんなヒメノに注目するプレイヤーの中に、一人の男が混じっていた。
――嘘だろ……!? あのアークよりも、ランクが高いだって!?
彼の名は【ローウィン】、待機場でヒメノ達を口説こうとしたプレイヤーの一人だ。
この南門でヒメノを見掛けた彼は、彼等の視点から見れば馬鹿にされた事に対する報復を考えていた。しかし、ヒメノの弓使いとは思えない戦いぶりに気圧されたのだ。
更に様子を窺い、報復する術を考えていたのだが……会話を盗み聞きしていた所、彼女がランキング上位に入った事を知ってしまった。
同じ名前のプレイヤーの可能性など、考慮していない。彼女の放った矢の威力を目の当たりにすれば、疑う余地など無い。
彼等の報復行為が成功する可能性は限りなく低く、最初から彼等は詰んでいたのだった。
一方、アークはレイドメンバーと合流していた。当然その視線は、ヒメノに向いている。
「お、おい……アークさんが一撃必殺少女を睨んでるぞ……」
「トップじゃない事が、相当不満なんじゃないか……?」
アークに聞こえないように、小声で話すメンバー達。アークが自分より上のランクに入ったプレイヤーに対し、怒りを感じているのだと察していた。
しかし、その予想は大間違いである。
――ヒメノ……ランキング4位になるのも、頷ける。あの矢の破壊力ならば、当然だな。
彼は、素直にヒメノの上位入りを賞賛していた。内心で。勿論、彼女以外の三人にも興味はある。
1位入賞のレンは、レイドで散々共闘してきたプレイヤーだ。最近はレイドに参加していないが、その間に更なるレベルアップを果たしたのだと推測する。
2位のジンと3位のユアンは初めて名を聞くが、自分を超える貢献度だ。相応の実力者なのだろうと、アークは確信していた。
――俺のギルドに加わって貰いたいものだな。
アークはギルバートと共に、プレイヤーギルドを立ち上げた。その名も【聖光の騎士団】である。既に加入希望者が殺到しており、ギルドメンバーは百を越えた所だ。
しかし頭数だけが揃っても、意味は無い。アークが望むのは、最強の二文字だけなのだから。
今回のランキング上位者の勧誘を、進める必要があるだろう。特に、これまで無名だった面々は。
そして、まず最優先で声を掛けたい少女。視線の先で、仲間と談笑しているヒメノだ。
アークがそんな計画を練っていると、空気を読めないプレイヤーがヒメノに対する感想を口にした。
「それにしても、ヒメノちゃんか……あんなに可愛いのに、すげぇよなぁ」
鼻の下が伸びていた。そんなプレイヤーに対し、他のプレイヤーは「何言ってんだこいつ!?」とか「空気読めよド阿呆!!」とか思っていた。アークが機嫌を損ねると思ったからである。
しかし、彼らは何も解っていなかった。
――それには全面的に同意だな。あの可憐な容姿からは、想像もつかない力だった。
口に出さず、ただその言葉に耳を傾けるアーク。周囲のプレイヤー達は、無言でヒメノを見るアークが怒っていると勘違いしていた。
そんな気まずい空気に気付かずに、KYプレイヤーが言葉を更に続ける。
「あの見た目に、あの実力だしなぁ。笑ってる姿を見たら、ただの可愛い女の子なのにな。それにしても、あの和服はどこで手に入れたのかね……にしても、本当に可愛いぜ」
絶好調なKYっぷりに、周囲のプレイヤーが戦々恐々としている。アークが怒りで爆発しないかと、心配しているのだ。
だが、やはり彼らは何も解っていなかった。
――確かに、あの和装は見事な物だな。清楚な彼女に良く似合っている。巫女服と弓道風の鎧……彼女の可憐さと強さを引き立てる、最高の衣装じゃないか。
生産大好きおじさんに聞かせてあげたい感想である。最も彼はその言葉を口に出さないので、そんな日は訪れないのだろうが。
とはいえ、見た目的には仏頂面で押し黙っているアークである。怒りで暴発しないように耐えているのだろうと、周囲のプレイヤー達はヒヤヒヤものだ。
こんな気まずい状態は、まだまだ続きそうであった。
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西門の前、フィールドの最前線。思い思いに休息をとるプレイヤー達の中で、シオンとゼクス・イリスは談笑していた。
「いやぁ、シオンさんのお陰で安定したなぁ」
「割と噛み合ったよねー。やっぱり盾役ってありがたいわー」
「お役に立てたようで、何よりでございます」
真顔で一礼するシオンに、周囲のプレイヤーは不機嫌なのかとハラハラしていた。しかし、ゼクスとイリスは知っている。これは、いつもの事である。探索時や戦闘時、シオンはレンを守る為に常に気を張っているのだ。
「ゼクス様の遊撃も的確でしたし、イリス様の魔法攻撃も素晴らしいものでした」
そんなシオンの賞賛に、二人は苦笑する。
「ジンにゃ劣るがな!」
「レンさんには劣るけどね!」
おどけながらそう言うと、シオンは苦笑いした。
これが他のプレイヤーならばそんな表情を見せなかっただろうが、ケインとゼクス・イリス……彼等は、シオン達にとって親交の深いパーティだ。こんな表情を見せるのも、信頼関係がしっかり構築されている事の現れである。
そんなシオン達に、近付く男が一人。
「よぉ、シオンさん。それに、確か……ゼクスさんとイリスさんだったか?」
突撃槍を背負った槍使い……攻略最前線プレイヤーの一人、ダイスである。有名プレイヤー同士の会話に、周囲で休息をとっていたプレイヤー達の視線が集まる。
「ご無沙汰しております、ダイス様」
「こんにちは、ダイスさん。お久し振りですね」
「よっ、元気そうだな」
丁寧な態度のシオンとイリス、軽い調子で挨拶をするゼクス。そんな出迎えの態度に、ダイスは頷いてニッと笑う。
「モンスターがやたらと流れていたが、納得行ったぜ。シオンさんの【ウォークライ】かい?」
「然様でございます」
門の正面はガラ空きだったにも関わらず、モンスターはシオン達の方へと流れていた。ダイスはそこから、挑発の武技である【ウォークライ】によるものと判断した。
「そうかいそうかい。でだ、ちょっと物は相談なんだが……メッセージ機能を妨害しているモンスター、そいつを優先して叩かねぇか?」
ダイスが切り出したのは、先程の運営アナウンスに対する作戦を練ろうという申し出だった。
「俺と前線で戦ってくれた奴らは、同意してくれてな。おたくらの力も借りれるなら、是非借りたいんだよ」
メッセージ機能の復旧は、パーティを組んでいるプレイヤーからすれば一刻も早い方が良い。それは、シオン達も同じだった。
「俺は賛成だ」
「勿論、私も」
ゼクスとイリスが、視線をシオンに向ける。決定権は委ねるという視線だ。
「解りました、私共も協力致しましょう」
シオンの答えに、ダイスは男臭い笑みを浮かべた。
「助かるぜ、あんたらが居てくれたら百人力だ」
……
「……驚きました。西門のプレイヤー、大半が協力関係になるとは」
「ダイスさん、凄いねぇ」
「カリスマって奴か。俺にゃあ無理だわ」
三人は、ダイスの呼び掛けに応じて集まったプレイヤー達の数に唖然とする。戦闘に参加した面々は、大半が集まったのだ。
「盾役がモンスターを引き付けて、前衛職が攻撃! 足に自信のある奴が、標的の捜索! 遠距離攻撃出来る奴は、後ろから援護! これでどうだ!?」
威勢のいいダイスの声が、プレイヤー達に響き渡る。その作戦に、否を唱える者は居なかった。
そんな一致団結するプレイヤー達の視界に、土煙が上がるのが見えた。モンスターの、第二陣だろう。
「おっしゃ!! 盾部隊は任せるぜ、シオンさんよ!」
「畏まりました、ここから先へは一匹たりとも通しません」
第一陣を撃退して、十五分後。再び、モンスターの大侵攻が再開されるのだった。
衝撃の中間ランキング。
次回投稿予定日:2020/6/30