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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第三章 第一回イベントに参加しました
33/573

03-05 中間結果発表されました

 北門で戦闘を繰り広げるジン。両手の小太刀と高いAGIを武器に、モンスターを次々と斬り捨てていく。

 その姿を見たプレイヤー達は、あまりの速さとクリティカル発生率の高さに驚愕する。しかし、決して悪感情を抱かれてはいなかった。


「むっ、背後失礼!!」

 プレイヤーの死角から襲い掛かるモンスターに接近したジンは、右手の≪大狐丸≫を振るう。

「【一閃】!!」

 激しいエフェクトが発生する一撃。モンスターのHPを削り切ったジンは、プレイヤーに振り返る。

「無事でゴザルか?」

「あ、あぁ! ありがとう!」

「なんのなんの、プレイヤー同士助け合いでゴザル! しからば御免!!」

 あまりにナチュラルな忍者ムーブに、プレイヤーは苦笑いしつつもジンを目で追いかける。

「忍者……忍者さん、ありがとう」

 ジンはこうして、プレイヤーの支援をしながら駆け回っているのである。プレイヤー達からすると、心強い味方であった。


 ……


 イベント開始から戦い続けること、一時間程。周囲のモンスターを掃討すると、進軍が止まった事にプレイヤー達は気が付いた。

「これで終わり……じゃないよな」

「まだ四分の一だ、ここからが本番じゃないのか?」

「敵の強さも、ここから上がりそうだよな……」


 不安そうにするプレイヤー達だったが、ジンはそれどころではなかった。

「……どこかなー」

 周囲を見渡して、知り合いの姿が無いかを探しているのだ。

 というのも先程の戦闘で、気が付いた事があったのである。ジンに襲い掛かって来たモンスターの何割かは、矢が刺さって死んでいったのだ。この北門に居て、弓矢を使い、ジンを援護してくれる様なプレイヤー……彼の知る限り、心当たりは一人しかいない。

 そこまで考えた所で、ジンは後方から駆け寄って来る女性の姿に気付いた。

「やっぱり!!」

 それは、先日知り合ったプレイヤーの女性……レーナである。


 レーナに駆け寄ったジンは、会釈をして挨拶する。

「こんにちは、レーナさん。さっきの援護はやっぱりレーナさんでしたか」

 ジンの言葉に、レーナは微笑みを浮かべて頷いてみせた。

「こんにちは、ジン君! 気付いていたんだね、余計なお節介だったかな?」

「いえいえ! 助かりました、ありがとうございます!」

 互いに、フレンドはそう多くない。そんな中、この北門にランダム配置されたのも一つの縁だ。


「ジン君達は、集合場所とか決まっているのかな? 私達は、北門集合なんだけど」

「僕達は南ですよ。変更が無ければですけど、今はメッセージが届かないからなぁ……」

 一時間経過して尚、メッセージ機能は復旧していない。ずっとこのままなのか、あるいは何か条件があるのか……今は考えても、答えは出ない。

「だよねぇ。そうだ、メッセージが使えるようになるまで共闘しない?」

「えぇ、是非お願いしたいです!」

 ユージンは生産職人である為、外壁の内側に居るとジンは予想している。そうなると、このエリアで組めるのはレーナ一人だ。


 そんな和やかな会話を交わす二人に、周囲のプレイヤー達から視線が集まる。

「あれが、忍者……」

「若いな……」

「あぁ。しかし、あの動きは凄かったな」

「忍者さん、マジ忍者」

 紫色のマフラーを靡かせて疾走する、忍者ジンの姿を見たプレイヤー達。その姿を見ていない者は少ないのではないかと思う程に、ジンは縦横無尽に駆け巡っていたのだ。

 駆け回るジンを観察するのは困難だったが、今は小休止。ジンも足を止めているので、その顔や装いに目を向けるプレイヤーは多かった。


 そして、ジンと会話するレーナである。

「あの女性……可愛くね?」

「ふ、ふとももがぁ……!!」

「馬鹿野郎、それよりもパイスラだ……っ!!」

「本当にありがとうございます!!」

 彼女は以前と違い、ノースリーブのチュニックを装備。下は黒い革のショートパンツを履いており、白い太腿とのコントラストを生み出していた。手にはグローブ、脚はロングブーツで守られている。

 そして背負った矢筒が、中々ににくい仕事をしていた。チュニックごしでも解る豊かな胸部装甲の間を、皮のベルトが通過しているのである。男性プレイヤーの視線がそこにいくのも、致し方なし。


「……見られてるねぇ」

「そうですね。場所を変えます?」

 折角の小休止なのだ、視線を気にしてゆっくり休めないのはよろしくない。しかし、レーナは苦笑して首を横に振る。

「私は大丈夫、ジン君に任せるよ?」

「そうですか? 僕もまぁ、普段からこんな格好しているもんだから……慣れました」

 互いに表情を覗き、無理をしている訳では無いと判断する二人。そのまま連れ立って、近くの手頃な岩へ向かう。


 プレイヤー達の視線を浴びながら、岩に腰かける二人。その時だった。

『プレイヤーの皆様へお知らせします。東西南北全ての門で、第一陣の撃退を確認致しました。素晴らしい戦果です!』

 運営のアナウンスに、北門に集まったプレイヤー達から歓声が上がった。


『なお、現在メッセージ機能が使用できない原因を突き止めました』

 その台詞に、ジンとレーナが顔を見合わせる。

「運営が使えなくしているのでは?」

「多分、彼女はプレイヤー連合の司令官的な位置づけなんじゃないかな。要するに、ロールプレイだよ」

「あぁ、成程」

 身も蓋もない言い方なのだが、事実その通りである。


 そんな二人の会話を他所に、運営がアナウンスを続ける。

『どうやら特殊な能力を持ったモンスターが、メッセージ機能の妨害をしている模様です。各門に三体ずつのモンスターが潜伏していると、報告が上がっています』

 誰が報告しているのか疑問だが、運営ちゃんは台本を読んでいるだけなのだ。質問は受け付けません。

『そのモンスターを倒す事が出来れば、メッセージ機能が復旧すると思われます。ただ、外観までは報告が上がって来ておりません。現地で捜索し、討伐するしかありませんね!!』

 長い台詞も、もうすぐ終わりだよー! とばかりに、声がどんどん大きくなっていく運営ちゃん。ヤケクソっぽい。


『最後ですが、現在の総合ポイントランキングをトップ20まで発表致します! 皆様、上空をご覧下さい!!』

 その言葉に、ジン達は空を見上げた。あぁ、青い。

 そんな青空に、光の線が走って行く。それらが繋がり四角形を形成すると、枠の中に文字が映し出された。


―――――――――――――――――――――――――――――――

【中間総合ランキング】

 1位【レン】

 2位【ジン】

 3位【ユアン】

 4位【ヒメノ】

 5位【アーク】

 6位【レーナ】

 7位【ヒイロ】

 8位【ダイス】

 9位【クロード】

 10位【シオン】

 11位【アーサー】

 12位【ギルバート】

 13位【フレイヤ】

 14位【レイチェル】

 15位【ケイン】

 16位【シンラ】

 17位【シルフィ】

 18位【イリス】

 19位【リリィ】

 20位【ミリア】

―――――――――――――――――――――――――――――――


 その中間結果発表は、ジンにもレーナにも衝撃を齎した。当然、周囲に居るプレイヤー達にも……むしろ、全プレイヤーと言っても差支えは無いだろう。

「ホワッ!? 僕が2位!?」

「えっ!? 私、6位!?」

 ジンとレーナは、呆然としてしまった。なにせジンはまさかの2位、レーナは6位と高ランク入りである。予想外のランキング結果で、二人は硬直してしまった。


「あ、あの忍者さん……2位のジン?」

「あの美女の名前は、6位のレーナか……ナイスだ運営っ!!」

「レーナちゃんかぁ……可愛いなぁ」

「レーナさん、ね。よし、覚えた!!」

「ジン君……そんなに凄いプレイヤーだったのね」

「これは、声かけちゃう? かけちゃおうか?」

 不用意な発言で、プレイヤーネームが広まっていく二人。しかし、硬直したままの二人はそんな事に気付いてなどいなかった。


************************************************************


 東側の門でも、中間結果発表を見たプレイヤー達が混乱の極みに達していた。

「おいおい、アークが5位かよ!?」

「レ、レン様が1位はまだ解る……でも、それ以外が意味不明だ!!」

「ジン? ユアン? ヒメノ? 誰だそれはっ!!」

「アークとギルバートのワンツーフィニッシュって言ったの、誰だよ!!」

 騒然とするプレイヤー達の中で、ギルバートは冷静な風を装っていた。傍から見ると涼しい顔をしており、「まだ本気出してないだけだから、まぁ順当な結果だよね」とでも言わんばかりだ。

 しかし、内心では腸が煮えくり返る様だった。


――この俺が12位だと……!? 有り得んっ!! レアスキルにレアアイテムを所持している、この俺がっ!?


 まさか2位のジンが、それ以上のモノを持っているとは露知らず。ギルバートは中間結果に不服を抱いていた。


 ……


「1位ですか、頑張った甲斐がありますね」

「流石レンさんですね、お見事です!」

 幾分、嬉しそうな声色で呟いたレン。その隣で、リリィが素直な称賛の言葉を贈る。

「リリィさんも、19位おめでとうございます」

「ありがとうございます。更に頑張りますよー♪」

 支援と回復を主とするリリィが、19位にランクインするのも中々に驚異的と言って良い。モンスター討伐の方が、当然ポイントは高いのだから。


 すると、レンは最前線から一人の少年が歩いて来るのに気が付いた。

「……ヒイロさん! それに、ケインさんも」

 和と中の甲冑姿のヒイロ・ケインのコンビは、特に目立つ。わざわざ外壁の方まで歩いて来たのは、自分と合流する為だろう。

「済みません、リリィさん。パーティメンバーの方が見つかりましたので、私はその方と合流しますね」

「解りました、また機会があればご一緒しましょう♪」

「はい。それでは、失礼致します」

 一礼して、外壁から降りる階段へと向かうレン。彼女の背中を見送って、リリィは外壁の下に視線を向ける。


――ヒイロさん……あの人が、そうなのね。それにあの人は以前、最前線に一度だけ参加したケインさん……だったかな?


 ランキング7位のプレイヤーであり、先程は自分を助けてくれた少年。

 一度だけ、最前線のレイドパーティに参加した実力派パーティのリーダー。

 そんな二人に駆け寄るレンに、リリィは口元を緩める。


――ご縁があれば、また一緒に戦いましょうね。


 ……


 レーナのパーティメンバーである、前衛職のミリア。彼女は、堅実な戦いぶりで20位にランクインしていた。

 しかし余裕がある訳ではない。周囲のプレイヤーに合わせながら一人で戦う労力は大きく、思いの外苦労する。


――やっぱり、ここは合流すべきね。


 フレンドリストを確認すれば、ここにはヒイロが居る。彼に共闘を申し出て、受け入れられるならばメッセージ機能が復旧するまで共に戦う。

 MPK事件の際に知り合った彼は、ミリアからするととても理知的で温和な少年だ。協力を仰ぐには最適な人物だろう。


――そもそも、ジン君達のパーティメンバーは良い人ばっかりだし……あら?


 目立つ風体のヒイロを見付けるのに、然程時間はかからなかった。しかし、彼が一緒にいるのはジンとヒメノではない。

 派手な中華風の甲冑を身に纏う男性と、蒼銀の髪を持つ少女と会話しながら歩いていたのだ。その姿から、彼はパーティメンバーと合流出来たのだろうと推測する。


――他にも、パーティメンバーが居たのね。どうだろう、受け入れてくれるかしら?


 一瞬迷うものの、声を掛けないという選択肢は愚策だろう。一人で戦うのも、正直しんどい。

 そう思ったミリアは、ヒイロに声を掛ける。

「ヒイロ君!」

 ミリアの声に振り返るヒイロ。ミリアの姿を認めると、穏やかに微笑んでみせた。同時に、左右にいる彼のパーティメンバーも振り返ったのだが……そこでミリアは驚き、目を丸くする。


「恋、ちゃん……?」

「あ……貴女は……」


************************************************************


「ヒメノさん凄いです!」

「本当に凄い! 4位になるだなんて!」

 シャインとルナに褒めちぎられて、ヒメノは照れ照れしていた。もじもじする姿は、実に可愛らしい。

「わ、私は……ルナさんやシャインさんに協力して貰ってですから……」

 本人はそう言うものの、その圧倒的な攻撃力が貢献度の大半を占めている。

 どんなモンスターも、矢が当たれば死ぬ。貫通して後ろのモンスターも死ぬ。武技の効果でSTR値が半減しても、そんなの関係ねぇ!! とばかりに死ぬ。

 モンスターからしてみれば、溜まったものではないだろう。


 そんなヒメノ、某掲示板の影響で名前が広く知れ渡っていた。元々、一撃必殺少女という通り名で有名だったのもある。周囲のプレイヤーから注目されるのも、無理はなかった。

 そんなヒメノに注目するプレイヤーの中に、一人の男が混じっていた。


――嘘だろ……!? あのアークよりも、ランクが高いだって!?


 彼の名は【ローウィン】、待機場でヒメノ達を口説こうとしたプレイヤーの一人だ。

 この南門でヒメノを見掛けた彼は、彼等の視点から見れば馬鹿にされた事に対する報復を考えていた。しかし、ヒメノの弓使いとは思えない戦いぶりに気圧されたのだ。

 更に様子を窺い、報復する術を考えていたのだが……会話を盗み聞きしていた所、彼女がランキング上位に入った事を知ってしまった。


 同じ名前のプレイヤーの可能性など、考慮していない。彼女の放った矢の威力を目の当たりにすれば、疑う余地など無い。

 彼等の報復行為が成功する可能性は限りなく低く、最初から彼等は詰んでいたのだった。


 一方、アークはレイドメンバーと合流していた。当然その視線は、ヒメノに向いている。

「お、おい……アークさんが一撃必殺少女を睨んでるぞ……」

「トップじゃない事が、相当不満なんじゃないか……?」

 アークに聞こえないように、小声で話すメンバー達。アークが自分より上のランクに入ったプレイヤーに対し、怒りを感じているのだと察していた。

 しかし、その予想は大間違いである。


――ヒメノ……ランキング4位になるのも、頷ける。あの矢の破壊力ならば、当然だな。


 彼は、素直にヒメノの上位入りを賞賛していた。内心で。勿論、彼女以外の三人にも興味はある。

 1位入賞のレンは、レイドで散々共闘してきたプレイヤーだ。最近はレイドに参加していないが、その間に更なるレベルアップを果たしたのだと推測する。

 2位のジンと3位のユアンは初めて名を聞くが、自分を超える貢献度だ。相応の実力者なのだろうと、アークは確信していた。


――俺のギルドに加わって貰いたいものだな。


 アークはギルバートと共に、プレイヤーギルドを立ち上げた。その名も【聖光の騎士団】である。既に加入希望者が殺到しており、ギルドメンバーは百を越えた所だ。

 しかし頭数だけが揃っても、意味は無い。アークが望むのは、最強の二文字だけなのだから。

 今回のランキング上位者の勧誘を、進める必要があるだろう。特に、これまで無名だった面々は。


 そして、まず最優先で声を掛けたい少女。視線の先で、仲間と談笑しているヒメノだ。

 アークがそんな計画を練っていると、空気を読めないプレイヤーがヒメノに対する感想を口にした。

「それにしても、ヒメノちゃんか……あんなに可愛いのに、すげぇよなぁ」

 鼻の下が伸びていた。そんなプレイヤーに対し、他のプレイヤーは「何言ってんだこいつ!?」とか「空気読めよド阿呆!!」とか思っていた。アークが機嫌を損ねると思ったからである。

 しかし、彼らは何も解っていなかった。


――それには全面的に同意だな。あの可憐な容姿からは、想像もつかない力だった。


 口に出さず、ただその言葉に耳を傾けるアーク。周囲のプレイヤー達は、無言でヒメノを見るアークが怒っていると勘違いしていた。

 そんな気まずい空気に気付かずに、KYプレイヤーが言葉を更に続ける。

「あの見た目に、あの実力だしなぁ。笑ってる姿を見たら、ただの可愛い女の子なのにな。それにしても、あの和服はどこで手に入れたのかね……にしても、本当に可愛いぜ」

 絶好調なKYっぷりに、周囲のプレイヤーが戦々恐々としている。アークが怒りで爆発しないかと、心配しているのだ。

 だが、やはり彼らは何も解っていなかった。


――確かに、あの和装は見事な物だな。清楚な彼女に良く似合っている。巫女服と弓道風の鎧……彼女の可憐さと強さを引き立てる、最高の衣装じゃないか。


 生産大好きおじさんに聞かせてあげたい感想である。最も彼はその言葉を口に出さないので、そんな日は訪れないのだろうが。

 とはいえ、見た目的には仏頂面で押し黙っているアークである。怒りで暴発しないように耐えているのだろうと、周囲のプレイヤー達はヒヤヒヤものだ。


 こんな気まずい状態は、まだまだ続きそうであった。


************************************************************


 西門の前、フィールドの最前線。思い思いに休息をとるプレイヤー達の中で、シオンとゼクス・イリスは談笑していた。

「いやぁ、シオンさんのお陰で安定したなぁ」

「割と噛み合ったよねー。やっぱり盾役ってありがたいわー」

「お役に立てたようで、何よりでございます」

 真顔で一礼するシオンに、周囲のプレイヤーは不機嫌なのかとハラハラしていた。しかし、ゼクスとイリスは知っている。これは、いつもの事である。探索時や戦闘時、シオンはレンを守る為に常に気を張っているのだ。


「ゼクス様の遊撃も的確でしたし、イリス様の魔法攻撃も素晴らしいものでした」

 そんなシオンの賞賛に、二人は苦笑する。

「ジンにゃ劣るがな!」

「レンさんには劣るけどね!」

 おどけながらそう言うと、シオンは苦笑いした。

 これが他のプレイヤーならばそんな表情を見せなかっただろうが、ケインとゼクス・イリス……彼等は、シオン達にとって親交の深いパーティだ。こんな表情を見せるのも、信頼関係がしっかり構築されている事の現れである。


 そんなシオン達に、近付く男が一人。

「よぉ、シオンさん。それに、確か……ゼクスさんとイリスさんだったか?」

 突撃槍を背負った槍使い……攻略最前線プレイヤーの一人、ダイスである。有名プレイヤー同士の会話に、周囲で休息をとっていたプレイヤー達の視線が集まる。

「ご無沙汰しております、ダイス様」

「こんにちは、ダイスさん。お久し振りですね」

「よっ、元気そうだな」

 丁寧な態度のシオンとイリス、軽い調子で挨拶をするゼクス。そんな出迎えの態度に、ダイスは頷いてニッと笑う。


「モンスターがやたらと流れていたが、納得行ったぜ。シオンさんの【ウォークライ】かい?」

「然様でございます」

 門の正面はガラ空きだったにも関わらず、モンスターはシオン達の方へと流れていた。ダイスはそこから、挑発の武技である【ウォークライ】によるものと判断した。


「そうかいそうかい。でだ、ちょっと物は相談なんだが……メッセージ機能を妨害しているモンスター、そいつを優先して叩かねぇか?」

 ダイスが切り出したのは、先程の運営アナウンスに対する作戦を練ろうという申し出だった。

「俺と前線で戦ってくれた奴らは、同意してくれてな。おたくらの力も借りれるなら、是非借りたいんだよ」

 メッセージ機能の復旧は、パーティを組んでいるプレイヤーからすれば一刻も早い方が良い。それは、シオン達も同じだった。


「俺は賛成だ」

「勿論、私も」

 ゼクスとイリスが、視線をシオンに向ける。決定権は委ねるという視線だ。

「解りました、私共も協力致しましょう」

 シオンの答えに、ダイスは男臭い笑みを浮かべた。

「助かるぜ、あんたらが居てくれたら百人力だ」


 ……


「……驚きました。西門のプレイヤー、大半が協力関係になるとは」

「ダイスさん、凄いねぇ」

「カリスマって奴か。俺にゃあ無理だわ」

 三人は、ダイスの呼び掛けに応じて集まったプレイヤー達の数に唖然とする。戦闘に参加した面々は、大半が集まったのだ。

「盾役がモンスターを引き付けて、前衛職が攻撃! 足に自信のある奴が、標的の捜索! 遠距離攻撃出来る奴は、後ろから援護! これでどうだ!?」

 威勢のいいダイスの声が、プレイヤー達に響き渡る。その作戦に、否を唱える者は居なかった。


 そんな一致団結するプレイヤー達の視界に、土煙が上がるのが見えた。モンスターの、第二陣だろう。

「おっしゃ!! 盾部隊は任せるぜ、シオンさんよ!」

「畏まりました、ここから先へは一匹たりとも通しません」

 第一陣を撃退して、十五分後。再び、モンスターの大侵攻が再開されるのだった。

衝撃の中間ランキング。


次回投稿予定日:2020/6/30

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[気になる点] トッププレイヤーを追い抜いて主人公の一行が上位を飾る、と言うのはお約束なので良いのですが、全サーバー統合してるはずなのにランクインしてる面子が主人公所属鯖オンリーと言うのは引っかかりま…
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