15-03 電撃作戦を開始しました
ギルド対抗サバイバルイベント……それは単純なGvGではなく、サバイバル要素を含められたイベントだ。
装備のメンテナンスに、消費アイテムの補充。そして空腹度を満たす為の、食材の調達。故に、モンスターの配置は各ギルドにとって無視出来ない要素である。
各ギルドはモンスターを狩る為に編成を調整し、それなりの人員を投入する。
そんな中、二人のプレイヤーが応援NPCを連れて行動していた。彼等はギルド【戦場の支配者】に所属するメンバーだ。
既に三回のギルドクリスタル破壊を受けており、これ以上の損害を避けようと慎重に行動している。
「くそ……ここらには【キラーホーネット】が居ねぇのか?」
「やっぱり北側の、森の方なんだろうな……あっちは【七色】の拠点がある、接近に気付かれたら落とされるぞ」
今回のイベント期間中に限り、入手したアイテムはデスペナルティでドロップする事は無い。しかし、五回戦闘不能に陥るとイベントエリアから退去となる。
故にモンスター狩りも、周囲に警戒しながら行わなくてはならないのだ。
「行くだけ行ってみるか? 素材が不足している今、多少の危険は覚悟の上だ」
「……仕方ない、警戒を怠るなよ。応援者のアンタらも、周囲に注意しろよな」
相手がNPCで、今回のイベントでしか関わらない相手。そんな意図もあり、上から物を言うプレイヤーは少なくない。むしろ大多数が、そういったプレイヤーだ。
内心ではそんなプレイヤーに好感度を下げながらも、応援NPC達は黙って頷く。
そんな時だった。
「おい。あちらから、何かが……」
接近している……そう言おうとした応援NPCだったが、それ以上の言葉を続けられなかった。
近付いて来ているのは、集団だった。大半が応援NPCだが、その中心を歩くのはプレイヤーとPACである。
その人数は、パッと見ただけでも二十人を超えている。そしてその全員が、和風の装備で身を固めていた。
「な……【七色の橋】……!?」
「あ、あの人数で……まさか、【支配者】の拠点襲撃か!?」
脳裏に浮かぶのは、戦国時代を舞台にしたドラマやアニメで見覚えのあるシーン。そう、合戦に赴く武将の出陣だ。
二人は素材採取を諦め、慌てて撤退。【七色の橋】襲来を告げるべく、猛ダッシュを開始するのだった。
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既に観戦エリアでも、プレイヤー達がモニター前に集まっていた。それぞれのモニターに映し出されるギルドが、行動を開始する様子を見る為だ。
その大半はイベントマップを表示したり、掲示板を開いて過去の情報と照らし合わせたりと余念がない。
「モンスターがあちこちに現れて、また昨日とは違った展開になりそうじゃないか?」
「トレインしてモンスターを敵陣にぶつけるとか……まぁ普段なら、MPKだけどな」
「PvPやGvGなら、それも一つの戦略になるしなぁ」
そんな言葉を交わしながら、観戦するプレイヤー達はいくつものモニターに視線を向ける。自分の贔屓にしているギルド、応援しているギルドの様子を見たいからだ。
すると、一人のプレイヤーが有名ギルドの様子について言及した。
「来た! 【聖光】のメンバーが拠点から出て来たぞ!」
先頭を行くのは、金色の長い髪の女性。一部が縦ロールになっており、どこぞの漫画のご令嬢の様な風体の人物だ。しかし歩く姿は姿勢が良く、気品を感じさせる堂々としたもの。本物のお嬢様だと言われても、納得の立ち振る舞いである。まぁ、実際にお嬢様なのだが。
「アリステラお嬢様だ!」
「帯同しているのは、やっぱりセバスチャンか」
十五人での作戦行動らしく、その中で真っ先に目に付くのはセバスチャン。
更に十三名のギルドメンバーを加えた一団は、迷う事無く一直線に進軍していた。その進路上にあるのは、ギルド【天国への扉】の拠点である。
しかし、出るのが一グループだけであるはずがない。
「おっ!? シルフィとベイルも出て来たぞ!」
銀髪を靡かせて、同じく十三名のプレイヤーを率いて姿を見せた姉弟。堂々としたその姿から感じ取れるのは、【聖光の騎士団】の本気だろう。
更に、それでは留まらない。
「おい、更にアークとライデンだ! ルーちゃんもいるぞ!」
「三グループで、拠点攻めだろうな……となると、ギルバートは温存か?」
「あとは、クルス……それに金髪に青のメッシュ入った、綺麗なお姉さんな……いや、ギルバートが出て来た! 一緒に居るのは……ヴェイン!?」
それぞれ、拠点から出た面々。それは六十人を振り分けた、四方同時の進軍だった。
「周囲を一掃する気だ……【聖光】が本気で動き出したぞ!」
アーク率いる集団は東、ギルバートの率いる集団は北へ。シルフィは西、アリステラは南だ。この進軍から察する事が出来るのは、やはり周囲の制圧だろう。
するとあちらこちらで、他のギルドについての情報が上がり始めた。
「【白狼】が動いたぜ! 見るからに主力部隊だ!」
「ヒューズ……そこにレイル、カナン、アリエスだ」
「白狼のトップ四人だな。それぞれ、やっぱ四方に分散か」
ギルド【白狼の集い】も、【聖光の騎士団】同様に四チームを出撃させた。彼等は他の主要ギルドと比べて、然程囲まれてもいない。故に、ここで主力を投入しての作戦行動を開始したのだろうと想像に難くない。
「こっちもだ。【森羅万象】も、四チーム出しやがった! 自分等の周囲のギルドを一掃する気か!?」
ギルド拠点から出陣したのは、クロード・アーサー・オリガ・ラグナがそれぞれ率いる四チーム。やはりバラバラの方角へと、歩みを進めている……最も、アーサーチームは素早い移動なのだが。
「かもしれないな……離れた場所のトップギルドと戦う前に、周りを片付けるんじゃねぇか?」
大規模ギルドの一角、【森羅万象】も主戦力部隊を投入しての同時制圧へ打って出た。その真意は、やはりこの先に控える主要なギルドとの戦いを見越してのものだろう。
「おい! 【七色の橋】はどうだ!?」
「あと、【桃園の誓い】や【魔弾の射手】!!」
「他には……やっぱり【暗黒】か?」
思い付く主要なギルドの名前を出して、情報を求めるプレイヤー。その数は、一人や二人ではない。その喧騒はあちこちで拡大し、観戦エリア全体に波及していく。
中にはギルドではなく、個人名を出す者も多い。そして注目度が上がったプレイヤーといえば、深夜の大規模乱戦でその力を見せ付けたプレイヤーだ。
「セスさんとスオウはどこだ!? ケリィ様は!?」
「え……誰、それ……それより【天使の抱擁】はどうだよ?」
「さてはテメー、夜は寝てたな!?」
「寝てたよ、普通に……何があったんだよ!?」
騒がしくなって来た観戦エリアの面々は、これからの展開に期待感を懐きながら思い思いにイベントを見つめる。
そんな中、一人のプレイヤーが身を乗り出してモニターを凝視した。
「ん? 【七色の橋】……妙だな」
「何だ、また【七色】か? 何かヤベーもんでも出して来たか?」
誰もが「【七色の橋】が何かをした」と聞くと、とんでもない何かがある……というイメージを植え付けられている。過去二回の戦闘系イベント……そして第四回イベント一日目。いつだって、彼等はプレイヤー達の度肝を抜き続けてきたのだ。
しかし、最初に【七色の橋】について言及したプレイヤーは首を傾げる。
「いや、珍しいなって……ジンさんが、出撃しないで跳ね橋を上げていたんだよ。もしかして、拠点防衛かな?」
彼が目撃したのは、ヒイロ・ハヤテ・ヒビキ・マキナがそれぞれメンバーを引き連れ出撃する様子……そしてジンが跳ね橋を上げる様子だった。他のギルド同様に、外へ出たのは四チーム体制。それは不思議でも何でもないが、ジンを拠点に残す理由が分からない。
しかし、一人のプレイヤーが不自然な点に気が付いた。
「……待てよ? 拠点に残ってんのは、何人だ? あれだけの人数が出たんなら、九十人は超えてるんじゃないか?」
ヒイロのチームを映すモニターに視線を向けると、そこにはレンとシオンの姿があった。三人のPACである、セツナ・ロータス……料理人のカームまで同行している。その人数、ざっと見て二十人は居る。
「おっ! ハヤテの所はアイネちゃんと、カノンちゃん……あと、クベラだっけ? 商人も居るぞ!」
更にハヤテ・アイネ・カノンのPACである、カゲツ・ジョシュア・ボイドの姿もあった。こちらも、二十人前後の集団だ。
「こっちは……センヤちゃんとヒビキきゅん……ユージンさんに、ミモリさんだな。そして、何故おばあちゃん……?」
「もう一チーム……マキナ君、ネオンちゃん、リリィちゃん……だな?」
プレイヤー、PAC、そして応援NPC。その姿を見て、誰もが興味を引かれていた。そして、問題はその人数である。
「あれ? 待て待て、人数おかしくないか? 四チームとも、二十人は越えてるよな……?」
「ジン以外だと、姫様……それに、くノ一とヒナちゃんが居ない……?」
「ヨミヨミも居ないわよ! 情報は正確に!」
「お、おう! せやな!」
「最少人数での、拠点防衛か? 普通ならやらんけど」
「まぁジンさんとヒメノちゃんなら、二人だけでもオーバーキル……って、ハァッ!?」
一人が[風雲七色城]のモニターに視線を向けると、唐突に大きな声を出した。
「どうした!!」
「何があった!?」
「何も無い!!」
「何だよ、脅かすなよ……」
「違うんだ、何もない……いや、誰も居ないんだよ!! 【七色の橋】の拠点が、もぬけの殻だ!! さっきまで、少なくともジンさんは居たのに!!」
拠点に誰も居ない。そんな発言を耳にして、観戦プレイヤー達は一斉に城を映すモニターに視線を向けた。
「「「……」」」
跳ね橋が上がった、[風雲七色城]。城壁の上に揺らめく松明の炎が無ければ、静止画にも見えたかもしれない。そして、城壁内部には誰一人として映っていなかった。
「「「また何か、とんでもない作戦か!?」」」
これが今日初めての、観戦プレイヤー達の心が一つになった瞬間である。
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ジンとヒメノ、コヨミの三人は拠点の跳ね橋を上げた後、PACのリン・ヒナ……そして、神獣・コンを連れて行動を開始していた。
その移動速度は、少人数である事を差し引いても速い。当然、その理由がジンにあるのは明白だった。
ジン本人は言うに及ばず、PACのリンも相当な速度で行動可能なAGI特化。
しかしコヨミはSTR・VIT型で、移動速度は並程度だ。ヒメノはジンが、ヒナはリンが抱えて移動するが……では、コヨミはどうしてこの速さで移動出来たのか?
その理由は、現状ではジンしか持ち得ていないある要素のお陰であった。
「ありがとう、コンちゃん。ちょ、ちょっと速過ぎて怖かったけど……」
「コンッ(どういたしまして、コヨミお姉さん)!!」
黄金色の獣の背に、しっかりと捕まっているコヨミ。彼女は、その獣に乗って移動していた。
その獣……正体は当然、ジンの神獣・コンである。最も、そのサイズは普段とは異なる……というのも、大きくなっているのだ。細身のプレイヤーくらいなら、背に乗せられるくらいに。
「コンちゃん、成長するとこうなるんですねー」
「まさかプレイヤーが乗れるサイズになるとは、予想外でゴザったな」
神獣であるコンは、普段の姿は幼体である。しかしレベル15まで育った所で、コンはスキル【成体化】を習得したのだ。
このスキルを使用すると、コンは今の成長した姿に変身出来るのである。
「さて、では作戦開始でゴザルな」
「はい! じゃあ……【クイックチェンジ】!」
ヒメノが装備を切り替えて、四門大砲≪桜吹雪≫を背負った状態に変化する。そして砲塔を向けるのは、ギルド【魂の咆哮】の拠点だ。
「ジンさん、準備OKです!」
「じゃ、行って来るでゴザル!」
「お気を付けて!」
ヒメノとコヨミ、そしてリンとヒナ・コンに見送られたジンは、素早く移動を開始した。全力疾走とは違う、慎重かつ物音を立てない様に配慮した足取りである。
流石に【魂の咆哮】も拠点襲撃を警戒しているのだが、視線を向けただけではジンの姿は捉えられない……なにせ、今のジンは【ハイド・アンド・シーク】を発動しているのだ。
ジンは隠密状態を維持したまま、まんまと【魂の咆哮】の拠点内……その建物の側にまでやって来た。そこでシステム・ウィンドウにあらかじめ入力しておいたメッセージを送信すると、ヒメノのウィンドウにメッセージの着信が届いた。
「それじゃあ行きます! 砲撃開始!」
ヒメノは【ゴーストハンド】の両腕で、大砲を操作。立て続けに四発の砲弾が発射された。
「何だぁっ、今の音はぁっ!!」
「爆発音……いや、違うぞぉっ!!」
「全員、防御態勢いぃっ!!」
やたらと叫ぶ【魂の咆哮】のメンバー達なのだが、警戒態勢MAX状態だからなのか。それとも、もしかしてギルド名が【咆哮】だからだろうか。元からこうなのか。
しかし無慈悲に襲い掛かる砲弾が、建物の目前に着弾。入口の扉周辺が破壊され、同時に付近にいたプレイヤー達が爆風で吹っ飛んだ。
地面を転がるプレイヤーや、応援NPC達。襲撃を察知して、砲弾が飛んで来た方角へと視線を向ける。
「あっちの方からだったぞぉ!!」
「今のは大砲かぁ!? まったく、どこのどいつだぁ!!」
生き残ったプレイヤー達が、臨戦態勢でバタバタと拠点の入口へ駆け出す。建物内に居た者達も、何が起きたのかと建物から出て来た。
それが落ち着いた頃合いに、ジンは拠点内に潜入。クリスタルを守る様に立つ、一人のプレイヤーの姿を確認した。
――ギルマスの【ブルース】氏……【感知】で確認するも、伏兵は無し。
それを確認したジンは、一息でブルースに接近して小太刀を構えて武技を発動した。
「【空狐】」
「だ……誰だぁッ!?」
静かな声と、微かな物音。接近した際に生じる室内の空気の流れの変化、そして全身に駆け巡る悪寒。それを感じたブルースは、襲撃に備えようと武器を握る手に力を籠める。
しかし、もう遅い。
「【一閃】、【デュアルスライサー】、【ラピッドスライサー】……!!」
二刀小太刀から繰り出される、【一閃】。更に【短剣の心得】の武技を織り交ぜた、必殺の【チェインアーツ】。それはブルースだけでなく、その背後のギルドクリスタルも狙ったものだ。
ブルースが倒れると同時に、ギルドクリスタルが砕ける音が室内に響いた。また、攻撃した事で【ハイド・アンド・シーク】の効力が切れてジンは隠密状態を解除される。
「な……な……なんじゃこりゃああぁぁっ!!」
やっぱり叫んだ。もうこの人達は、そういう人達なのだろう。
ブルースは倒れ伏しながらも、侵入者を見ようと視線を巡らせ……紫色のマフラーを靡かせる少年の背を目にした。
「【七色】の……ジンだとぉっ!?」
ギルドクリスタル破壊を達成すると、ジンは即座に建物の外へと出る。砲撃からここまでの所要時間は、ほんの一分半程度の出来事だ。
「【天狐】」
空中へと跳び上がり、ジンは更に【ハイジャンプ】を発動。【ハイジャンプ〜流星の如く〜】で、ヒメノとコヨミ達が待つ地点の上空へと一気に移動してみせる。
「うわぁ……本当に一瞬でやっちゃった……」
ポカーンとしてしまうコヨミに対して、リンとヒナ、コンは嬉しそうだ。
「主様も奥方様も、流石です」
「お姉ちゃんと、お義兄ちゃんですからねー」
「コンッ!(パパとママは凄いんだぞぉ!)」
そんな二人と一匹の様子を見ながら、コヨミはふとある事を考える。
――私もPACや神獣が欲しくなるなぁ、これは……。
思った以上に、高性能なAIを搭載したパートナーとペット。そのステータス次第では、自分に足りない要素を埋めてくれる存在になるだろう。
これからもこのゲームを続けて、そして配信者として活躍していきたい。その為にも、PACや神獣は心強い存在として……そして、家族の様な存在となってくれるのではないか? コヨミは、そんな予感を覚えていた。
それはそれとして。
「に、忍者だとぉッ!?」
「それに、ヒメノちゃん!! あと、めっちゃ可愛い子も一緒だぞぉ!!」
「くノ一にヒナちゃん……豪華メンバーじゃないか!!」
「あのピンク髪の女の子が乗っているのは……狐さんかぁ!?」
地面に着地したジンを目撃し、その場に立つ面々を目の当たりにした【魂の咆哮】の面々。その姿を見て、心の底から驚愕の声を上げていた。腹に力を込めて、大声で。
「声がおっきい人達ですね」
「まぁ、驚くのも無理はないですけどね」
ヒメノとコヨミの苦笑交じりの言葉を背にしながら、ジンは【魂の咆哮】の面々に向き直る。
丁度そのタイミングで、拠点内の異変に気付いたプレイヤー……そして、ギルドマスターであるブルースが声を張り上げた。
「お前達たち、済まん!! ギルドクリスタルが破壊された!! 破壊したのは、奴らだ!!」
断末魔の声に気付いたメンバーのお陰で、間一髪で≪ライフポーション≫による蘇生に成功したブルース。彼の声を受け、ギルドメンバー達がジン達に視線を向ける。その視線に混じるのは、驚き・怒り・対抗心・警戒……ジン達を脅威と見做す感情だった。
それに対するジンの反応は、実に淡々としたものであった。
「不意打ち失礼。このイベントはGvGとの事なので、裏をかくのも戦術の内……恨むなとは言わぬでゴザルよ」
そんな宣言に、【魂の咆哮】の面々は何とも言えない表情になる。
フェアプレー精神の忍者じゃないのか、不意打ちは卑怯じゃないかと言えればどれだけ楽だろうか。
しかし、口が裂けてもそんな事を言えるはずも無い。何故ならば、このイベントはギルドとギルドがクリスタル破壊をかけてぶつかり合うイベントなのだ。戦略を駆使するのは、至極当然の事である。
更に言えば、彼等を卑怯者と罵る事など出来るはずが無い。昨日の【七色の橋】を標的とした、複数のギルドによる襲撃作戦……そこに、彼等も参加していたのだから。
真っ向から少人数で、戦術を駆使してギルドクリスタルを破壊した彼等。それに対して自分達は、他のギルドと同調して大人数での全方位襲撃。
果たして、どっちが卑怯だろうか……この【魂の咆哮】は、それを自覚できるだけの理性がある面々であった。
「ちぃ……やってくれたな、【七色の橋】!!」
ブルースは背筋を伸ばし、ジンにビシッと人差し指を突き付ける。しかし、その表情に浮かぶのは悪感情などではない……純粋な、戦意を滾らせた笑みだ。
「恨みはしねぇ!! 卑怯者とも言う気はねぇ!! だが、それで終わらせるつもりも無いぞ!!」
無事に帰れると思うなよ? とでも言わんばかりに、不敵な笑みを浮かべるブルース。
しかしジンは、それに応じはしなかった。
「ならば拙者達に、追い付いてみせるでゴザル」
そう言って、ヒメノを抱き上げた。既にヒメノも四門大砲≪桜吹雪≫を外し、普段の装備である。
ブルース達が面食らったのは、決して二人の仲睦まじい様子を目の当たりにしたからではない。このまま撤退するとは、全く思っていなかったからだ……いや、いきなり抱き上げる親密な様子も、やっぱりあるかも。
「な、何ッ!? 逃げるのか!?」
「まぁ、そういう戦術なので……ほんと、恨んでも良いんで。真っ当に相手を出来ず、済まないでゴザル」
リンもヒナを抱き上げて、姿勢を低くして足に力を込めている。コンはコヨミを背に乗せたまま、ジンに合わせて動く気満々だ。
ジン・リン・コン……最速忍者とそのPAC、神獣の最大の武器は速さ。それを駆使した、電撃戦……それが、【七色の橋】の策の肝だ。
「では、いざ!! 疾風の如く!!」
逃がしてなるものかと、慌てて駆け出した【魂の咆哮】。だが、次の瞬間にはジン達の姿を見失っていた。
「くそっ、やられた!!」
「ギルマス、どうする!?」
苦々し気に声を上げる、ギルドメンバー達。しかしブルースも二日目に漕ぎ着けたギルドのマスターを務めるだけあり、決して戦略を理解できない愚か者ではなかった。
ジン達がやったのは拠点に潜入し、正面に砲撃を撃ち込んだ混乱の隙にクリスタルを破壊するというもの。事実を並べれば、単純明快。理に適っているし、ジン達の持ち味を生かした戦略だ。
「……チッ、やられた!! 次はこうはいかないぜ、【七色の橋】のジン!!」
そう言って、ガハハと笑うブルース。細かい事はさておき、相手を認めるだけの度量を持つ……彼は、そういう男であった。
次回投稿予定日:2022/7/5(幕間)
忍びなれども忍ばない? いやいや忍者は忍ぶ者、古事記にもそう書かれて……書くまでもないや。




