短編 純愛の行方
サブタイから察しました?
【七色】カップルズの短編集、最後はハヤテとアイネです。
私、巡音愛ことアイネは、今現在……ちょっと、緊張でいっぱいいっぱいになっています。
その原因は、私の恋人……相田隼君ことハヤテ君のお部屋に、お呼ばれしたからです。
もしかして、ジンさんとヒメちゃんみたいに……そ、添い寝? 私達、まだ中学生だし、それは早くないかな? でも、あの新婚夫婦は普通に添い寝するのが普通! みたいに、一緒に部屋に入って行ったし……。
いや、そうだよ。あの二人はゲーム内とはいえ、夫婦なんだから! 私達はまだ、恋人止まりで……。
「アイ? 何か百面相してるけど、大丈夫?」
「ふぁっ!? う、うん! アイネは大丈夫です!」
考え事の最中に声を掛けられたので、思わず高速戦艦みたいな返事になってしまった。うぅ、ハヤテ君も不思議そうな顔しちゃったよ……。
「疲れてるところに、ごめんッス。アイにちょっと、話があってさ」
「ううん、大丈夫。それで、話って?」
ハヤテ君がベッドに腰掛けたので、私もその横にお邪魔する。おぉ、この部屋のベッドも快適。簡素なベッドではあるけれど、普通に寝心地が良いんだよね。流石はユージンさんだ。
「えーと、これ。スパイ達の件が片付いたら、言おうと思ってたんだ」
そう言って、ハヤテ君が私に差し出したのは……箱だ。ちょっと高価そうな物を収めるのに使う様な、四角い箱。
もしかして、これは……!? それに、言おうと思ってたって……これってもしかしなくても、もしかするのでは!?
「……ハヤテ君、これって、まさか……」
私がそう言うと、ハヤテ君が首を縦に振る。いつも飄々とした雰囲気のハヤテ君だけど、今はちょっと緊張した様子だ。
「うん、指輪……アイ、俺と結婚して欲しい」
もしかして……プロポーズ? これ、プロポーズだよね? プロポーズですね!?
「ハヤテ君ッ!!」
もう嬉しいとか大好きとか、ありがとうとか大好きとか、いろんな気持ちが溢れてしまいそうだった。いても立ってもいられなくて、私はハヤテ君に抱き着いてしまう。あれ? 今大好きって二回?
「アイ……えっと、オーケー……で、良いのかな?」
「うん……っ!! ありがとう、ハヤテ君……すっごく嬉しい……!!」
ふと、私の脳裏にあの時の光景が思い浮かぶ。ジンさんとアンジェリカさんの戦い、その終盤での問答。二人で育てていくものが、愛情という言葉。あの時は感動しただけだったけど、今ならその意味がとてもよく解る。
ハヤテ君と私……お互いの気持ちが通じ合って、育んで来た絆こそが愛なんだ。
「……見ても良い?」
「うん、見て欲しい」
箱をそっと開けると、そこには鳥を模した指輪が二つ収まっていた。
「鳥……?」
「誕生鳥ってのも、あるらしいんス。ジン兄達と被るのを避けようと思ってたら、俺の名前の漢字が隼だからって、皆が」
ほほう、皆とな。つまりジンさんだけじゃない、という事だ。当然、ヒイロさんとヒビキ君……それに、マキナさん。恐らくクベラさんも巻き込んだんだろう。
「教会、いつ行く?」
私は指輪を眺めながら、ハヤテ君の肩に頭を寄せる。大好きな……愛している人と、こういう相談をするのって憧れてたんだよね。
「クリスマス……は、やっぱりアレッスよね」
「皆でパーティーだもんね。あ、でも現実では……」
「勿論、デートしよう。恋人になって、初めてのクリスマスだもんね」
「うんっ♪」
ハヤテ君の愛情が、言葉や態度から伝わって来る。あーもう、本当に幸せっ!!
「だからその前か、後かなーとは思ってる。でもアイに希望があるなら、それに沿うッスよ」
「えへへ、ありがとう。でもハヤテ君となら、いつでも大丈夫だよ」
ともあれ、仲間達に打ち明ける必要もあるし……あぁ、それがあるね。クリスマスのタイミングに、皆に報告するのが良いんじゃないかな? その時なら全員、集まるものね。
ハヤテ君にそう言うと、笑顔で頷いてみせてくれた。うん、やっぱり私は……彼じゃなきゃ、ダメだなって思った。
「ハヤテ君……不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」
「こっちこそ。これからもよろしく……ずっと」
次回投稿予定日:2022/5/30(短編のおまけ)
ちなみにアイネの誕生鳥はキジです。桃太郎のお供でお馴染みですね。
鳥言葉を描かなかったのは、わざとです。だって「出る杭は打たれる」なんだもの……アイネは打つ側じゃん。彼氏と一緒に、悪人限定で。
ハヤテとアイネが七色の橋編・短編集のトリでした。
鳥だけに!!
おっと「今夜は冷えますね」。
次回の短編は、本気の本気でおまけです。