14-26 乱戦を繰り広げました
第四回イベントが開催されている今日は、十二月二十日。アンジェリカが第七のユニークスキル【八咫烏】を入手してから、今日で二十八日が経過となる。
アンジェリカ本人のレベルは現在、43。一カ月足らずでここまで来たのは、ユニークスキルとファンの協力……そして、【禁断の果実】の支援があったからこそだろう。
そしてアンジェリカが【譲羽】で譲渡されたステータスポイントは、280ポイント。毎日欠かさずステータスポイントを譲り受けている為に、普通にプレイしていても得られないポイントを手にしている。
合計で369ポイントとなったアンジェリカのステータスポイントだが、15ポイントが減って354ポイントとなっている。これは、【八咫烏】の武技……その必要コストとなるステータスポイント消費によるものだ。
そんなアンジェリカと斬り合うは、風のユニークスキル【九尾の狐】を持つAWO最速の忍者・ジン。ユニークスキルや装備で底上げされたAGIの合計値は、全プレイヤー中最高となる559ポイントである。
例え全てのステータスポイントがAGIに振られていても、アンジェリカではジンの疾さに追い付けない。
追い付けないはずだった。
「く……っ!!」
「凄い……君は本当に、速いんだね」
そう言いながら、アンジェリカはジンに向けて刀を振るう。その刀を避けつつ、ジンは必死に思考を巡らせる。
アンジェリカの様子が普段通りであるのに対し、ジンは真剣そのものだ。それも無理のない事で、アンジェリカは現段階でジンよりも速いのである。
その証拠に、ジンの左頬にはダメージエフェクトが一筋だけ刻まれている。これは戦闘開始の直後、アンジェリカの攻撃が掠った際に付いたものだった。
――【八咫烏】は、第七ステータスのユニークスキルじゃないのか……!? 僕と同じくらいのAGIが無ければ、この速さは有り得ない……!!
アンジェリカの刀を避けて、ジンは反撃とばかりに小太刀を振るう。その一太刀がアンジェリカに掠ると、彼女の頭上にダメージ数値が浮かぶ……が。
――たったの、3ダメージ? だとすると、VITも相当に高いはずだ……。
このダメージ量では、ジンの奥の手……【閃乱】を発動させた【一閃】によるラッシュでも、大ダメージを与える事は困難だろう。
更に言うと、その手段を使えるのは自分が相手の攻撃を完全回避できる場合だけ。自分を上回る速さを発揮するアンジェリカの前で、HPを大幅に削る【閃乱】を使えば命取りになる。
アンジェリカを警戒しつつ思案するジンを見て、アンジェリカは自然体のまま口を開く。
「君は、【九尾の狐】なんだよね?」
そう言うと、アンジェリカはジンに迫りながら刀を振るった。
その刀を、決して食らってはならない。生存本能に従い、アンジェリカの刀を避けたジンは大きく距離を取る。
「じゃあ倒したら、石になっちゃうのかな」
ジンに回避された……その事を大して気に留めず、アンジェリカはジンに視線を向け言葉を続ける。そんな彼女に対し、ジンは最大レベルの警戒をしながら軽口で返す。
「……九尾の狐が悪しき獣というのは、近年の創作とご存知でゴサルか?」
「ううん、知らなかった。そうなんだ」
そんな会話をしながらも、アンジェリカは再びジンに接近。ジンはそれを躱しながら小太刀で反撃し、激しい応酬を繰り広げる。
――集中しろ。ユージンさんの教えを思い出せ。仲間達との打ち合いを思い出せ。ギルやアーサーとの戦いを思い出せ!!
全神経を集中させながら、ジンは同時にアンジェリカの攻略法について思案を巡らせる。
異様に高い、アンジェリカのAGIとVIT。STRも、同様に高い可能性があるのではなかろうか。だとすれば、彼女の刀を喰らえば一撃死も有り得る。
INTが高ければ、魔技の威力は相当なものになっているはず。逆にMNDが高いと、こちらの魔技が通用しないかもしれない。DEXが高ければ、彼女の攻撃がクリティカルになる確率も上がる。
そんな事を考えながら、ジンはアンジェリカの攻撃を回避し続ける。
――第七のステータスは、戦闘能力に直結するステータスは限られる……。
最大HPやMPを強化する、LIFとMNA。そして回復・支援系スキルを強化するSPT。
取得経験値やドロップ率、生産効果を向上させる他の三つによるものとは思えない。
残る一つは、ジンも取得しているCHR。これは、パーティメンバーのステータスを強化するものだ。
――第七ステータスは、本人の攻撃力や防御力には影響しない……いや、待てよ?
そこで、ジンはある事に気付いた。もしも【八咫烏】が第七ステータスを強化するならば、戦闘能力に直結しない数値を倍にする程度のものだろうか。
――第七ステータスは、どれも補助的なステータスだ。もしも【八咫烏】の効果が、既存のステータスを補助する力があるなら……。
ジンが辿り着いた、一つの仮説。それは”ステータスの数値を振り分け直す事が出来る”というものだった。
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魔技【替羽】
効果:ステータスポイントをランダムに4ポイント消費して発動。ステータスポイントを任意で組み替える。
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ステータスポイントを組み替える事が出来る……それは事前に情報を得ていれば、相手に応じて有利なステータスに変更できるという事だ。
しかしその代償として、ステータスポイントを4ポイント消費する……これは、普通のプレイヤーがレベルを二つ上げて得られるポイントに相当する。それを消費するという事は、二レベル分の成長を無かった事にするに等しい。
故にこのユニークスキルの力については、アレク達からも提言されていた。魔技の使用には、慎重を期すようにと。
これまで使用した【八咫烏】の武技は七回。主に性能を確認する為に、デメリットを承知で発動させた。
そして【替羽】は、二回発動させた。最初はその性能を確認する為に……そして二回目は、イベント開始直前のタイミング。アレク達から指示され、ステータスポイントを振り分け直した時である。
全ては【禁断の果実】が、特に厄介な存在と目していたジンとヒメノに対抗する為に。
とは言っても、それでもアンジェリカのAGIはジンには届かないはずだった。何せAGI特化のユニークスキルに、AGI極振りの所有者である。それを第七ステータス特化スキルが、簡単に超えられるはずがない。
確かに【八咫烏】の力だけでは、ジンには届かない。しかし彼女の持つもう一つのユニークスキルが、それを可能にしていた。
第二エリア一歩手前に存在するマップ、[腐食の密林]。そこにに住む”あるNPC”の試練を乗り越える事で、ユニークスキルが手に入れられる……アイネがジョシュアから、【百花繚乱】を入手した様に。
その名は、【益者万友】……フレンド登録を交わしたプレイヤーの数を、ステータス強化に繋げる事が出来るユニークスキルである。
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ユニークスキル【益者万友Lv5】
説明:友愛の絆を己の力に変え、人々を救済し続けた聖人の力。
効果:フレンド登録を交わしたプレイヤーの数だけ、一定時間中に任意のステータス+0.5%。
選択後、24時間は変更不可。この24時間は、ゲーム内時間とする。
スキルレベルが上がる事で、選択できるステータスが解放される。
スキルレベルが上がる事で、効果継続時間が5分延長される。
選択対象:STR・VIT・AGI・DEX
継続時間:25分
友愛人数:1674人
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元々、このユニークスキルは【禁断の果実】のメンバーが見付けて来たものだった。ユニークスキルの詳細が判明していなかった当初は【八咫烏】の、第七ステータス以外を半減させるデメリットを解消する程度のスキルだと思われていた。
その全容を知れたのは、アンジェリカがエクストラボス【ネフタル】の試練を完遂してからだった。その予想を上回る性能のユニークスキルに、アレク達は本気で喜んだ。
これによりアンジェリカは、ユニークスキルを持つ極振りプレイヤー……目下の悩みの種であるジンやヒメノを、上回るだけの力を発揮する事が可能だと。
「はっ!」
小さく声を漏らしながら、刀を振るうアンジェリカ。傍から見たら可愛らしい戦いぶりに見えるかもしれないが、それを受けるジンからしてみれば可愛いなどとは微塵も思えなかった。
彼女のステータスがどれだけ上がっているのかは解らないが、初撃が掠っただけで相当なダメージを受けたのだ。当たれば死ぬ、そう考えてジンは必死に凌ぐ。
その攻撃を刀でいなし、避ける。アンジェリカの攻撃を防ぎながら、懸命に思案する。しかし、いくら必死に考えを巡らせても答えは一つしか出ない。
――彼女を上回るには、ステータス差を引っ繰り返すしかない。
ジンにも、ステータスを強化する手段がある。一つは、ユニークスキル【九尾の狐】の最終武技だ。
しかしこれは、まだ使えない。掠ったとはいえ、アンジェリカの攻撃に被弾してしまった……回避カウントがリセットされたのだ。
となると、もう一つの手段しかない。
ジンはアンジェリカの刀を、バック宙返りで回避。そして、地面に着地した瞬間にスキル発動の為の宣言をする。
「【変身】!!」
深く身体を沈めるジンの姿を隠す様に、地面で破裂音が発生する。それと同時に、ジンを覆う黒煙。
「あ、これもあったね」
アンジェリカは黒煙に巻き込まれない様に下がり、ジンの動向を見守る……と思いきや、刀を翼の様に広げた。
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■プレイヤーネーム/レベル
【アンジェリカ】Lv43
■所属ギルド
【天使の抱擁】
■ステータス
【HP】134≪+40≫(合計174)
【MP】52≪+40≫(合計92)
【STR】90≪+70≫(合計160)
【VIT】110【+300%】≪+70≫(合計510)
【AGI】110【+337%】≪+100≫(合計581)
【DEX】20≪+40≫(合計60)
【INT】20【-50%】≪+40≫(合計50)
【MND】20【-50%】≪+40≫(合計50)
【CHR】54【+85%】≪+120≫(合計220)
■スキルスロット(5/5)
【長剣の心得Lv10】【体捌きの心得Lv8】【超加速】【達人の呼吸法】【変身】
■拡張スキルスロット(3/3)
【八咫烏Lv8】【刀剣の心得Lv8】【益者万友Lv5】
■予備スキルスロット(1/5)
【感知の心得Lv6】
■武器
右手武器 長刀≪小烏丸・弐≫第七ステータス+40【破壊不能】
左手武器 長刀≪大烏丸・弐≫第七ステータス+40【破壊不能】
■防具
一式装備≪サルートのエンジェリックドレス・弐≫全ステータス+40【破壊不能】
鞄≪探索者のポーチ≫収納上限無し
■装飾品(5/5)
背中≪八咫の飾り布・弐≫HP+40、MP+40【破壊不能】
左腕≪ロモスの腕輪+5≫VIT+15、AGI+15
右腕≪サルートの腕輪+5≫STR+15、AGI+15
右耳≪ドリューのイヤリング+5≫STR+15、AGI+15
左耳≪さかなのピアス+5≫VIT+15、AGI+15
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そして……。
「【変身】」
その間に黒煙の中で紫色の光が発生し、ジンが煙を散らす様に一回転して姿を現した。
ここからは、自分のターン……とばかりに駆け出そうとするジンだったが、彼の目に飛び込んで来たのは眩い光。両手を広げたアンジェリカを包む様に、天使を思わせる純白の翼が覆う。
「……マジでゴザルか」
再び翼を広げたそこには、全身鎧に身を包んだアンジェリカの姿があった。黒い全身タイツの上に、純白と金装飾が施された姿。ヘルム部分は翼をモチーフにした、華美なマスクとなっている。
この状況下でなければ、誰もが彼女をこう称しただろう……”純白の天使”と。
「それじゃあ、続けようか」
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アンジェリカの役に立つ為に、ギルドのメンバーを巻き添えにする。そんなヤケクソ気味の自爆だったが、拠点の建物内部という状況も手伝って予想外の効果を齎していた。
大規模ギルドのメンバーが半分以上、巻き添えで戦闘不能となったのである。その状況で、他のギルドに潜んでいたスパイ達の乱入。混乱する戦況に、適応出来ないプレイヤーは次々と倒れていく。
更に慌てて屋外へと飛び出した為、仲間達と分断される者も少なくなかった。
「くっ……!! この状況、キツいな……!!」
誰が味方で、誰が敵なのか。それを判断するには、頭上のカラーカーソルで判別すれば明白だ。しかし一々相手の頭上を確認する必要がある為、思考が一時そこへと集中してしまう。
「余所見厳禁だぁ!!
そしてスパイ達は、相手が一般プレイヤーでも、重犯罪者でも構わず攻撃する。パッと見て【禁断の果実】のメンバーだと解るのは、スパイ側が追い詰められた際に前に引き摺り出された面々。そう、アレク達だ。
――恐らく、あいつらが俺達に指示を出していた連中だろう……!
――そして奴らは、アンジェに近い存在……!
――奴らに恩を売って、それをきっかけにアンジェリカと……!
そんな下心を戦う力に変えて、スパイ達はアレク達を援護する様に動いているのだ。割とどうしようも無い理由なのだが、本人達は至って本気。だからこそ、質が悪い。
アレク達もそれを察しており、彼等を利用して主要ギルドの主力メンバーとの戦闘を繰り広げている。そして戦況は、意外にも拮抗していた。
……
その乱戦にあって、安定した戦闘を繰り広げる者達も居る。それは例えば呪いの篭手を装備した鎧武者と、魔扇を携える巫女令嬢。
「おらぁっ!!」
「させるかっ!!」
レンに斬り掛かろうとするスパイの剣を、大盾に変化させた≪妖刀・羅刹≫で受け止めるヒイロ。攻撃を受けて剣の勢いが止まった瞬間、それを打刀に変化してみせる。
「【一閃】!!」
剣が弾かれたスパイに対し、ヒイロは即座にバックステップで距離を取る。
ヒイロは理解している。このまま刀で押し切る事は出来るが、時間をかけるのはこの乱戦においては得策ではない事を。
そして、自分のパートナーがこの好機を見逃さない事も。
「【ファイヤーボール】!!」
火属性で最初に覚える魔法と侮る事なかれ、【神獣・麒麟】の使い手であるレンが放つそれはとてつもない破壊力を秘めているのだ。
【ファイヤーボール】が命中したスパイのHPが、ほんの一瞬で燃え尽きる。
周囲がスパイとギルドメンバーのみであれば、広範囲攻撃で片が付く。正直なところ、他のギルドが居なければ瞬殺できる相手である。
だが今回は、他ギルドと共闘してこそ意味のある戦い。故にレンは、必要な事と割り切っていた。
この戦いの目的は、スパイの壊滅だけではない。他ギルドと肩を並べて戦う事で、【七色の橋】に向けられる普通のプレイヤーからの印象を塗り替える。
【聖光の騎士団】や【森羅万象】、【遥かなる旅路】といった有名ギルド……彼等が目的を同じくして共に戦う事で、自分達への嫌疑を払拭させる。
この案を真っ先に考えたのは、ヒイロであった。他人を巻き込み、利用する……その事を気に病みつつも、自分達に出来る最善を尽くす。「全責任を自分が取る」と言って、この策を推し進める事を提案した。
その時のヒイロの顔を思い出すだけで、レンは今でも口元が緩みそうになる。清濁併せ吞むやり方も、責任者としての資質もある……そんな恋人が愛しく、そして誇らしいから。
――だから。貴方達なんかに、ヒイロさんは傷付けさせませんよ?
……
一方、ハヤテは銃を巧みに扱いながらスパイ達を攻め立てる。目標は魔法職や弓使いを優先しつつ、アイネに群がろうとする連中だ。
乱戦の中にあって尚、その精度は衰えを知らない。なにせ彼は、元はVR・FPSプレイヤー。乱戦での立ち回りは、熟知しているのだ。
そんなハヤテと共に戦うアイネは、遠距離攻撃を一切無視して果敢にスパイ達を斬り捨てていく。ハヤテの腕を信じて、ひたすら薙刀を振るい続ける。
身体に覚え込ませた薙刀技術は冴え渡り、得物が自分の身体の一部の様な感覚すら覚える。
二人は共に技巧に秀でたプレイヤーであり、その実力は非常に高い。
それぞれゲームと習い事、そのベクトルは真逆に見えるかもしれない。しかし、それに注いできた熱量は本物だ。
そんな二人が心を通わせ、息を合わせて戦う。その姿は、共に戦う者からは頼もしさを……敵として相対する者には、手強さを感じさせる。
後衛プレイヤーが狙いを定めたり、詠唱を始めた瞬間に撃ち込まれる弾丸。アイネを狙おうとすれば撃たれ、ならばハヤテを狙おうとしても撃たれる。相手スパイが同じギルドですら無いのを良い事に、そのアバターを盾にする様に移動しながら銃を撃つ。
そして後衛がハヤテに掛かり切りである為、アイネは思う存分に薙刀を振るう。矢や魔法が飛んで来る事は無いと信じ、果敢にスパイ達に斬り掛かる。
その流れる様な薙刀捌きの前では、スパイ達は案山子同然。ただのカカシですな、という幻聴すら聞こえそうだ。
そんな二人を遠目に見るのは、スパイ集団の中核だったジェイクだ。
彼は逃げに徹し、自分を援護する様に動くスパイを犠牲にして機を待つ。自分の切り札を切るのは、まだ早い……そう考えているのだ。
――共に物理攻撃メイン……魔法職から距離を取れば、アレが使える。あの二人を倒せば、忍者を落としたアンジェと逃げてしまえば良い……。
アンジェリカがジンを倒し、ハヤテとアイネを自分が倒す。ついでにこの乱戦で、他の【七色の橋】メンバーが大ダメージを被ってくれれば尚良い。
そんな皮算用をしながら、ジェイクはチャンスを待つ。
……
「やっ! 【クイックドロウ】……そこですっ!」
「くっ……!? 射撃がっ、速いっ!?」
「近付けば、こっちが有利……!!」
「そうはさせません」
ヒメノはジンの事を心配しつつ、シオンと組んで戦闘に臨んでいた。ユージン直伝の速射法と、自身のSTR……そして、VIT特化のシオンの援護。スパイ達はヒメノの放つ矢を避けて、必死に逃げ惑う。
他のギルドに被害がいかぬ様、ヒメノは戦闘に集中している。しかし、頭の片隅ではジンの事を考えていた。
――さっきのアンジェリカさんの速さは、ジンさんと同じくらい……ううん、もっと速かったかもしれないです……。
矢を放ちながら、ヒメノはジンの無事を祈る。しかし、どうしても嫌な予感が拭えずにいた。
最高最速の忍者である、ジン。彼はヒメノにとって、最愛の存在。同時に、唯一無二のヒーローだ。
彼が敗ける所など、これまで一度も想像出来なかった。エクストラボスが相手でも、ギルバートやアーサーが相手でも。
しかし今、彼が敗北するのではないか……そんな不安が、胸の奥にこびり着いて離れない。
そんな瞬間だった。
自分の周りに黒い羽根を撒き散らしている、純白の天使。その黒い羽根に触れ、吹き飛ばされた狐面の忍者の姿。その様子が、ヒメノの視界に飛び込んで来たのだ。
「ジンさん……っ!?」
次回投稿予定日:2022/2/25(本編)




