14-20 観戦エリア・3
「夜は暇だなぁ……ほとんどのギルドが休憩中だ」
「いいや、俺は夜中に何か起こると見てるね。暗殺! 奇襲! 殺り放題!」
「うわぁ……(ドン引き)」
「注目するのはやっぱり、大規模三つと【七色】と【桃園】か?」
「【旅路】を忘れるなよ」
「あと【暗黒】な」
「【おしゃぶり】生きてるかなー?」
「もう【七色】襲撃も落ち着いたか……というか、もう諦めたかな?」
「諦めるしかないだろ、あんなん……無理ゲー過ぎる」
「というか、あの大群を相手に凌ぎ切った【七色の橋】はヤベーw」
「いや、でも……なぁ……?」
「最硬のシオンさんに、新進気鋭の新人達……そこにリリィちゃんとヨミヨミ、大商人に生産帝王だからなぁ」
「凄惨帝王の間違いだろ……(震え声)」
「PACもエグかった……あんなん、ラスダンの魔王の城みたいなもんだろ……」
「ボスラッシュじゃなくて、同時にボスがお出迎えするとか鬼畜仕様な……」
「しかしアレだな、ほとんどの有名ギルドは【七色】襲撃を逆に利用した感じだったよな」
「あぁ、気持ち良いくらいに快進撃だったな」
「……いや、【天使】はそうでもないか?」
「襲撃開始からポイントどれくらい増えたんだっけ?」
「えーと、落とした拠点は六つだった気がするな」
「他に比べたら、振るわなかったなぁ」
「いや、でもさぁ……序盤が上手く行き過ぎてただけじゃないか? 他のギルドの襲撃にうまく便乗した感じだったじゃん」
「……確かに、そのパターンばっかりだったな」
「それって、偶然なのかな? 何度も連続してそんな事が起こる?」
「考え過ぎだって……たまたま、運が良かっただけだろ? 多分」
「というか、そもそも【七色の橋】襲撃がタイミング良過ぎるんだよな。そっちこそ、偶然とは思いにくいんだけど」
「……まぁ、確かに……」
……
「ジンさんwwwww」
「お? どうした?」
「いや、【七色の橋】の拠点見てみw 楽しそうだぞw」
「盛り上がってるけど……何やってんだろ、こいつら?」
「カメラの角度変えてみな、月がバックに来るように」
「えー……はっ!? これはっ!!」
「映えるっ!! 成程、これは良いシーン!!」
「【七色の橋】が楽しそうで何よりです(笑)」
「他のギルドはどんなん?」
「【聖光】はー?」
「見た感じ、普段と変わらんなぁ。いつもよりも、和やかかもだけど」
「以前はもっと、ガッチガチだったよなぁ」
「アークが普通に、他の連中と話しているだけでも相当な違和感」
「む……? ライデンさんとルーちゃん、前より何か……距離近くないか?」
「おっと、そこに気が付きますか」
「んー、【森羅】は少し妙な雰囲気? 何人か様子が変だな」
「シンラさんは!? シンラさんは居る!?」
「拠点内に入ったのが見えたよ」
「何で……何で拠点の中は見えないんだ……!! シンラさんのご飯シーンをスクショして、それをおかずに白米食おうと思ってたのに!!」
「お前みたいなのが居るからだろうよ……」
「上級者過ぎない?」
「他に、目立ったギルドは?」
「【天使】かねぇ。アンジェリカと組むのをローテーションしようぜとか、楽しそうに話してるぞ」
「本人公式ファンギルドみたいなモンだからなぁ……【七色の橋】とは違ったエンジョイギルドかね?」
「その割には、何か機嫌悪そうなのが居るぞ……どうしたんだろうな」
「さぁ……? アンジェリカに近付けないから、とか?」
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「そろそろ……心なしか、眠気が……」
「一眠りしようかね……確か、上の階で個室借りれるんだっけ」
「俺はまだ起きてるぜ、ここからが本番だろうからな!!」
「深夜帯こそ、ゲーマーの本領発揮だろ!!」
「ふっ、夜更かしこそゲーマーの嗜みよ」
「ここからが本当の戦いだ!!」
「あ、そうっすか……じゃあ、おやすみ」
「面白い事が起こるなら、やっぱここからだよなぁ」
「俺は【七色の橋】の拠点を見守る事にするぜ!」
「あっ、ずるい」
「俺はシルフィの姐御推しなので、【聖光】見てるわ」
「それなら私は【桃園の誓い】を見ておくわ。ダイス様の勇姿を目に焼き付けねば!」
「じゃあ俺は【森羅】のハルちゃんを見守るわ」
「私は【旅路】ね……トロロさんハァハァ」
「……あ、はい」
「誰か【天使の抱擁】見てくれー」
「んじゃあ俺が! アンジェちゃんの、寝顔をガン見する!!」
「で、お目当てのプレイヤーは?」
「「「「「多分、拠点の中。見れない」」」」」
「ですよねー!!」
……
「あれ? 【天使の抱擁】の拠点から、青い髪のイケメン少年が出て来たんだが」
「イケメン? あー、そいつか。確か前線部隊のチームで、リーダー格だったはずだな」
「んー? そんなリーダー格様が、何で一人で歩いてんだ?」
「えーと、この先にある拠点って……」
「敗退済みの、【宴】の拠点だ。あそこは確か、生産職がほとんどのギルドだったかな」
「あぁ。戦闘はほぼ、PACと応援NPCに頼り切りだったな。まぁ、生産ギルドと考えたら、無理もないが」
「で、アイツは何の為にあんな場所に行ったんだ?」
「知らんよ、用でも足しに来たんじゃね(鼻ほじ)」
「いや、そこはお花を摘みにって言おうぜ」
「違う、そうじゃない」
……
「【桃園の誓い】、メンバーが増えてるよねー」
「ねー。しかも、結構有名なプレイヤーだっけ?」
「レオンにマール、ゼクトはね。眼鏡の人と、若いにーちゃん……あと、あの魔職の娘は知らん」
「ヴィヴィアンを知らないとか、マジ?」
「ん? もしかして、【聖印】の……? え、移籍してたの?」
「あれ?」
「どした? 何かあったか?」
「いや、ケインが出て来てたんだけど……」
『皆、集まってくれ! ギルドクリスタルが無いんだ!』
『クリスタルの破片は無かったし、多分だけど盗まれたのかも。周囲を探ってみるしか無いかしら』
「おっ!?」
「本当に、何か起こったぞ!!」
「もしかして、クリスタルを盗み出したのかな!?」
『ケイン! 不審な奴がいる! こっちだ!』
『やはり、盗まれたか……! 皆、追うぞ!』
「おーおー! これは面白そうだ!」
「逃げてる奴、見れる?」
「えーと……あ、こいつか! 速いな!」
「丈の長いローブで姿を隠してるけど……この体格だと、女か」
「おい! こっちで【聖光】が動いた! こっちも、クリスタルを盗まれたらしい!」
「マジ!? このタイミングで、同時にって事は……」
「どこかのギルドが、クリスタルを盗む作戦を実行したって事だな」
「その場で破壊する方が早いだろ? 何でそんな回りくどい真似をするんだ?」
「知るかよ!」
「その場で破壊したら、敵に囲まれてやべーとかそんなのじゃねーか?」
「なぁ……【森羅万象】まで、同じ状況だぞ?」
「【旅路】もよ! プレイヤー全員で追っ掛けてるわ!」
「【天使の抱擁】の建物から出て来て、逃走してる奴がいる!」
「ん……? おい、あのモニター……あれ、【白狼の集い】か!?」
「【白狼】まで、同じ状況……?」
「……何かそっちは、騒がしいな? 【七色の橋】は平穏そのものだぞ」
「うん、メンバーも普通に居るし……」
「【七色】だけ、こいつらに狙われていないのか……?」
「いや、あの城だぞ? 単純に、入れないだけじゃないか?」
「流石、[風雲七色城]……」
「ちょwww おまwww」
……
「なぁ、さっきの青髪のヤツ……あいつが向かったのって、確か【宴】の拠点だったな?」
「そうだけど、どうした?」
「いや……【聖光】から逃げてる奴、そっちの方向へ向かってるっぽいんだよ……」
「……ちょっと待てよ?」
「確認してみよう……」
「間違い無い。クリスタルを盗んだ奴等は、【宴】の廃拠点を目指してる」
「既に敗退したギルドの拠点に、何故……」
「まさか【宴】の亡霊が、諦められずに……!?」
「【宴】なら観戦エリアに転送されて、居酒屋で残念会やってたぞ。かなり楽しそうだったけど」
「違ったかー」
「じゃああいつらは何者なんだ……?」
「それは俺が聞きたい」
「普通に考えたら、青髪のヤツの手下か。クリスタルを盗ませて、まとめてそぉい!! かな?」
「まぁ【天使の抱擁】は、来るもの拒まず去る者追わずっぽいからな。色んなやつが入るだろうさ」
「拠点に戻らないのは、多分だけど失敗した時のリスクを避ける為か? 【天使】が集中砲火を浴びない為に、廃拠点を利用してるのかも」
「……何か引っ掛かるな。なぁ、本当に【七色の橋】は何とも無いのか?」
「あぁ、平和そのものだぜ。ほら、忍者さんおるぞ」
「ふむ……何かあれば、ジンが走る。ジンが走ってないから、【七色】は何ともなってないって事だな」
「まぁ、ジンから逃げられるヤツが居るとは思えんしな……」
「……いや、待て! あの忍者、ジンさんじゃない!」
「「「えっ!?」」」
「よく見ろ、左手の薬指に指輪が無いぞ! ヒメノちゃんとの結婚指輪!」
「え、じゃああのヒメノちゃんも……!?」
「拡大しろ!! よく見るんだ!!」
「え……? 何で……?」
「別人……だと……!?」
「そうか……もしかして、ここに居るのは全員……」
「「「「「変装した応援NPC!?」」」」」
次回投稿予定日:2022/1/30(本編)
【円谷 弾志】様へ
ご感想で頂いていた、[風雲七色城]という名称を使わせて頂きました。
素敵なネーミングありがとうございます。イベント限定にするの勿体ないなぁ←