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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十四章 第四回イベントに参加しました
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14-19 幕間・十二月十一日

 シンラとクロードが、アーサーとハルからある報告を聞かされて「……どういう事なの」「解せぬ……」した二日後の事。

 [始まりの町]にある一軒の宿屋で、四人の男女が密談していた。

「という事で、クリスマスパーティーをやるからどうかなって」

「……何でそうなる? お前ら、今の状況解ってんのか?」

 密談……かな? 密談だよ、密談だね。

 宿屋の一室を借りてジンとヒメノ、【森羅万象】のアーサーとハルが顔を突き合わせていた。余談であるが、ここはジンとヒメノ・ヒイロが初めて出会った時に利用した場所だ。


 会話の内容は、先日ジンが送ったクリスマスパーティーのお誘いについてである。アーサーの指摘は最もだが、ジンは努めて笑顔で答える。

「不正疑惑の件なら、心配は要らないよ」

「はい、公式見解も出ましたし!」

 ジンのみならず、ヒメノまでそんな事を言う。楽観し過ぎていないか? とアーサーは思うが、それを言及する前にハルがテーブルに身を乗り出した。

「私は不正なんてしてないって、信じてました!」

 力強くそう言うハルに、ヒメノが嬉しそうに応える。

「ありがとうございます、ハルさん♪」

 そのまま、互いにニッコリと微笑み合い手を取り合う。


――なんという、天使同士。

――天使と天使のコラボレーションかよ、最高じゃないか。


 ジンとアーサーの思考がほぼ一致した。互いにそれを察し、苦笑いしてしまう。仲いーじゃん。


 空気が緩くなりつつあるので、ジンは何とか表情を引き締め直してアーサーに声を掛ける。

「……それに、スパイを炙り出す作戦を実行する予定でね」

「……スパイ、だと?」

 スパイ……その言葉を聞き、アーサーは視線を鋭いものに変える。


 スパイの存在、それについてはシンラからも言及されている。その根拠も含めて、だ。

 この件について動いているのは、シンラ・クロード・ハル・アーサーのみである。故に、この四人から話が漏れているとは思えない。

 つまりジン達は、【森羅万象】とは別枠でその事について辿り着いた。そう判断して良いだろう。

 しかも、スパイを炙り出す作戦。そうなるとジン達は、相当な確度でスパイを特定しているのでは無いだろうか?


――シンラさん……【七色】にスパイが何か企んでいるって情報提供する件、頓挫したよ……。


 押し黙って、厳しい視線を向けるアーサー……しかしジンは平然とそれを受け止めて、話を続ける。それくらいの視線でどうにかなるほど、ジンはやわでは無いのだ。

「グランっていうプレイヤーが、色々口を滑らしてくれたからね。掲示板でも、話題になっていたけど……知っている?」

 グランという固有名詞と、掲示板で話題になっている……その二つの言葉に、アーサーは表情が歪みそうになるのを必死に抑えた。

「……あぁ、知っているよ」

 グラン……その名前は現在、AWO全体に広まっている。【七色の橋】を晒し上げ、返り討ちに遭ってアカウント停止を食らった愚か者として。


 アーサーはもう、疑う余地なしと判断した。グランが言及した、準決勝での不正行為……ジンが、それに気付いていると。

 しかしジンは、その事について切り出さない様だ。

「……何も言わないのか?」

「言って欲しいのかな?」

 あぁ、これは間違いない。諦めたアーサーは、目を伏せてジンに問い掛ける。

「準決勝で、不正があった。その事について、お前は気付いてるな?」

 そんなアーサーの言葉を予想していたのか、ジンは表情を緩めて応えた。

「アーサーがやった訳じゃないし、クロードさんにも考える所があったんじゃない? それに今更だし、わざわざ火に油を注ぐ事は無いさ」

 誰が主導で不正をしたのか、そこまで気付いている。ジンの言葉からそう察したアーサーは、ひとまず軽く頭を下げるに留めた。


 本題は、ここから。ジンはそう考え、アーサーとハルに向けて話し始める。

「問題は、何故その事をグランが知っていたか……そこだと思う。決勝トーナメントの参加者しか知らない情報を、部外者が知っていた……これは、情報漏洩があったとしか思えない」

「……それで、スパイか?」

「だとしたら【森羅万象】の幹部って事になるけどね……これ以上は部外者の干渉になるから、言わない方が良いかな?」

「……いや、いい。お前は無闇矢鱈に吹聴するような奴じゃない」

 それにジンや【七色の橋】が、その件で自分達にマウントを取る様な存在には思えない。ならばもう、色々とぶっちゃけて対等な関係を構築する方が手っ取り早いだろう。


「で? スパイを炙り出すって、どうやるんだ」

「それは、協力してくれるって事かな」

 流石に協力者以外に、そこまでは言わない。言外にそう言われたアーサーは、シンラとクロードの指示を仰がなければならないと判断した。


「……済まん、返答には時間をくれ。トップ二人と話し合いたい」

「シンラさんと、クロードさん……うん、あの二人なら大丈夫かな」

 ジンの返答に、アーサーは少し驚いた。

 自分とハルに対する態度から、ある程度の信頼は得ていると思っていた。しかしシンラやクロードとは、そこまで交流を重ねている訳ではない。それでもジンは、あの二人ならば込み入った話をしても良いと思っているらしい。


「……次はギルドとしての話し合い、かな」

「それでは、本題ですね! クリスマスパーティーはどうしますか?」

「あ、その話に戻るんですね……お呼ばれして良いなら是非!」

「まぁ、俺も……その、興味はあるかな」

 ちなみにそのパーティーに参加する予定の面々について聞かされたアーサーとハルは、目を見開いて驚くのだった。

次回投稿予定日:2022/1/29(観戦エリア・3)

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― 新着の感想 ―
[良い点] あくまで本題はクリスマスパーティーwスパイ問題などがあったとしても通常運転ある意味これがジンくんとヒメノちゃんの強さの一つでしょうね。
[一言] 真面目にクリスマスパーティの名を借りたギルドトップ会議になってそうだなぁ・・・ 表立っては能天気、しかし深慮遠謀もこなしますか 前者はジン・ヒメノ、後者はヒイロ・レン+ハヤテかな?
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