14-11 幕間・シナリオ崩壊
【七色の橋】を狙った、複数ギルドの包囲網が形成される中。それに加わらないギルドも、少なからず存在した。
その内の一つである、【聖光の騎士団】。ギルドマスターであるアークと、参謀であるライデン。二人から出された指示は、攻撃と防御に分かれるというものだった。
防御は勿論、拠点防衛。その人数は生産職人である十名を含めた、七十名。
そして攻撃部隊は、十五名ずつの二組だが……攻撃対象となるのは、【七色の橋】ではなく中小ギルドだった。
「彼等が【七色】を狙って戦力を集中するなら、僥倖だね」
「あぁ。こちらは手薄な拠点を落とし、ポイントを稼ぐ。ギルバート、準備は良いな?」
「あぁ、任せたまえ相棒。ギルドの為に、全力を尽くそうじゃないか」
初代トップスリーは、いつになく親密な様子で声を掛け合っている。
そんな三人の脇で、不服そうにしているのは現サブマスターのシルフィだ。
「何でアタシは留守番なんだ、出たって良いじゃないか」
どうやら彼女は、前線に出られないのが不満らしい。そんなシルフィに対し、弟のベイルがやれやれといった表情をする。
「姉さんは、さっき散々出たじゃないか。こっちだって、フォローするのにポーション類をかなり消費したんだ。補充が終わるまで、姉さんは防衛だよ」
「ブーブー」
「子供か!?」
姉弟仲は良いらしく、そんなやり取りに【聖光】メンバーは苦笑してしまう。イベント中とは思えぬ緩い空気だが、緊張を解すのには良いのかもしれない。
そんなシルフィに対し、攻撃班の一チームを率いるアリステラ。彼女はいつになく燃えていた。
「必ずやアーク様とギルドに、勝利の二文字を捧げてみせますわ!」
この辺りは、決してブレないアリステラお嬢様。しかしそういった状況で、彼女が何かしらの細かいミスをするのだ。その事を知るセバスチャンは、執事ムーブをしつつ釘を刺す。
「お嬢様、あまり肩に力を入れ過ぎぬようご注意下さい。それが無ければ、お嬢様に敗北の二文字はあり得ないのですから」
「解っておりますわ! しかし気合いが入るのは、悪い事ではないでしょう!」
「気合いが入ると、空回りするではありませんか……」
そんなセバスの苦言を聞き流しているのか、アリステラは意気揚々とチームメンバーの下へ歩き出した。
「ふむ、俺は防衛担当か」
「はい、宜しくお願いします!」
ライデンの補佐として、クルスに配置指示を伝えたルー。いつもの調子で頷くクルスに、ルーはニッコリと笑ってみせた。
「クルスさんが盾を構えているだけで、皆安心出来ますよ」
これはおべっかではなく、本心だ。クルスの守備は安定しており、後衛職としてはその背中に頼り甲斐を感じるのである。最もライデンに想いを寄せるルーなので、クルスに靡くというわけではないが。
そんなルーの混じり気無い言葉に、クルスはいつもの仏頂面ながらもしっかりと頷いてみせた。
「そうか。ならば、敵を後衛に近付ける訳にはいかないな。全力を尽くして守ろうじゃないか」
「はい、ライデンさんも頼りにしていると言ってました!」
「ほぅ、軍師殿が……それは光栄の至りだな」
クルスも古参メンバーだけあり、ライデンの手腕には全幅の信頼を置いている。そんなライデンが、自分を信頼していると言われたら悪い気はしない。
と、そこへ一人の女性が歩み寄って来た。
「あ、クルスさん! 今回、私も防衛担当になりました。全力で援護しますね!」
「む、ホープか……あぁ、どうか宜しく頼む」
そこで、クルスの表情が和らいだ。どうやら、ホープに対しては仏頂面を向けられないらしい。その様子を見て、ルーは「おぉ……!?」と目を見開いた。
――これは、アレかな? そういうアレなのかな? クルスさんに、春が来てるのかな? それはそれは、うふふふ……。
ホープさん、ちゃんと既婚者って言った? 忘れてた? そっかー。
そんな賑やかな幹部と、それに付き従うメンバー達。それを遠巻きに眺めながら、アレクは内心で歯嚙みしていた。
――クソッ、予定外だ……!! アークやライデンなら、【七色】攻めに加わると思っていたのに……!!
第二回イベントでの敗北……第四回イベントは、その借りを返す絶好の機会だ。他のギルドにやられる前に、自分達が……といった雰囲気になると思っていた。
そうして【七色の橋】攻略に主戦力を投入している間に、【天使の抱擁】が【聖光の騎士団】を落とす……そういうシナリオだったのだ。
――このままだと、【聖光】を攻めるのは困難になる……!! 何とか【七色】を攻めさせて、互いに疲弊させないと……!!
アレクがそんな事を考えていると、拠点外の偵察をしていたプレイヤー達が帰還した。彼等を率いていたのは、その実力が公に知れ渡ったヴェインである。
「いやぁ、読みは大当たりだったねぇ……」
いつもならばヘラッと笑っているヴェインだが、今この時はその笑顔に翳りが見える。アレクはそれに気付いて、歩み寄った。何かしらの情報が、彼から得られると考えたのだ。
「ヴェインさん、お疲れ様です」
アレクはいつも通り、親しみやすそうな態度で声を掛ける。
「お? アレクか。いきなりチームを率いる形になったけど、大丈夫そうかい?」
「えぇ、まぁ何とか……チームの皆も、頼りになりますしね」
「そうか、それは何よりだよ」
自分を気遣う様子のヴェインに、当たり障りのない返事を返すアレク。そして、本題を切り出す。
「それで、偵察はどうでしたか?」
「あぁ、とんでもないモノを見ちゃったよ……いやぁ、更にエグい存在になっちゃって、まぁ……」
「……は?」
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「何でだよ、ヒューズさん! 今がチャンスじゃないか!」
ギルド【白狼の集い】の拠点では、ある人物がギルドの方針に異を唱えていた。
ヒューズが出した方針は、勿論【七色の橋】を攻めるのは見送るというものだ。
「お、おい! 落ち着けよレイヴン!」
「確かにチャンスではあるけどよ、大半のギルドが戦力を投入してんだぜ? 競争率バリ高なんだ、無理に加わらなくても良いだろうが」
至極最もな意見で、レイヴンを諭そうとする仲間達。しかし、レイヴンは何とか【七色の橋】への敵意を煽ろうと声を上げる。
「お前ら、あの時の事を忘れたのか!? 土下座させられたんだぞ、俺等は!!」
させられたのではなく、自発的にしたのだ。それすらも忘れているあたり、彼はあまり頭がよろしくないらしい。
興奮しているレイヴンに、ヒューズが落ち着いた様子で声を掛ける。
「レイヴン、謝罪の際に礼を尽くすのは当然の事だ。よく考えてみろ、現状で【七色の橋】を攻めるメリットは低い。俺達はそう判断したんだ、それでは不服か?」
冷静に諭すヒューズだが、レイヴンは納得出来ないとばかりに声を荒げた。
「当然です! あんなガキんちょ共に、でかいツラされて黙ってるなんて!!」
流石にこれ以上は、見過ごせない。そう考えたヒューズは、レイヴンに厳しい視線を向けた。
「なぁ、レイヴン。一度冷静になって、周りを見てみろ」
言われて、レイヴンはようやく気が付いた。仲間達が自分に向ける視線から感じ取れる、疑念や不信感に。
自分が孤立している……その事に気付いたらしいレイヴンに、ヒューズは努めて冷静に言葉を続ける。
「今、戦力を分散するのは得策じゃない。皆、それを重々理解している。レイヴン……お前は何故、【七色】攻略にそこまで執着するんだ?」
ヒューズがそう言うも、レイヴンは視線を逸して黙ったままだ。不満たらたらなのは、その態度から誰もが解った。
しかし今はイベント中であり、ギルド全員が協力して戦う必要がある。そんな状況下で、不和を齎そうとするレイヴンへの視線は厳しい。
「あいつ、グランと結構仲良かったよな……」
「もしかして、グランだけじゃなくあいつも……」
「だとしたら、獅子身中の虫じゃね?」
「そういや、【七色】のヒイロが言ってなかったか? スパイって……」
そんな仲間達の会話は、レイヴンにも届いた。それを否定するかの様に、レイヴンは声を荒げる。
「……っ!! わ、解りましたよ!! 従います、ちゃんと言う事聞きますって!!」
――クソッ……!! このままじゃ、いつまで経ってもポイントが溜まらない……!! アンジェちゃんに会うには、ポイントを溜めないと……どうにかして、ポイントを……!!
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一方、【七色の橋】拠点攻略に戦力を投入したギルド。彼等はギルド【覇道】……二十五人のプレイヤーで結成した、小規模ギルドだ。
彼等の拠点は今、攻撃を受けていた。
「おい、大丈夫か!?」
「くそ……っ!! 何だってんだ、これは!!」
現在は二十人のメンバーが、【七色の橋】の拠点へと向かっている。残る五人と、二十人の応援NPC……それが、拠点防衛に残した人数だ。既に応援NPCは、大半が戦闘不能である。
黒い球体が投げ込まれると、プレイヤー達は慌ててそれから距離を取る。
「ま、また爆発だ!! それに、東側の防衛部隊が……!!」
その言葉通り、マップに表示される応援NPCの光点は黒く塗り潰されている。これはカラーカーソルと同じ色で、黒く塗り潰されている場合は戦闘不能になっている事を意味する。
東側に配置した応援NPCは、全滅している……それが、マップで解るのだ。
すると、東側から人影が飛び込んできた。爆発によって発生した炎で見にくいが、数は四名……そのシルエットから、女性だと解る。
「はっ!? ここまで攻めて来たのか!?」
「クソッ、舐めた真似しやがって!! こっちはギルド【覇道】だぞ、返り討ち……に……?」
炎に照らされたプレイヤー四名は、黒い現代風の装備で身を固めていた。その手に持っているのは、銃だ。
そして、彼女達の姿は見覚えがあるものだった。それは第二回イベントで、【遥かなる旅路】や【聖光の騎士団】を相手に猛威を奮ったプレイヤーである。
黒髪猫目の美女に、銀髪ロングの美女。亜麻色の髪をサイドテールにした美女に、外国人らしき金髪の美女。
手にするのはアサルトライフル、ショットガン、マークスマンライフル、サブマシンガンと多岐にわたる。
「【魔弾】!? 【魔弾の射手】が、攻めて来やがった!!」
「マジかよっ!? な、何で俺等がこんな目に……!!」
既に、防衛戦力は残り僅か。このままでは、成す術無く倒されてしまう。そんな未来が間近に迫っており、彼等は泣き言しか口に出来ない。
そんなプレイヤー達の様子を前にしても、彼女達の心は揺らがない。何故なら、ここは戦場。そして、射程に捉えているのは敵なのだから。
「これより、ギルド【覇道】を制圧する」
感情を感じさせないミリアの宣言に、レーナが応える。
「了解、突入作戦を開始します」
そう告げたレーナの目は……冷たく、鋭いものだった。
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「【七色の橋】の拠点攻略は、考えるな。その競争に参加するよりも、そちらに戦力を割いているギルドの拠点を攻め落とすぞ」
そう告げるのは、【森羅万象】のサブマスターであるクロードだった。
立場的にはギルドマスターの下になるが、戦闘においては彼女の指示が優先される。そしてクロードの横で、ニコニコと笑っているシンラは何も言わない。クロードの指示に、異論は無いという事だろう。
そうなれば、クロードの指示に従い作戦を開始する。それが、ギルドとしてのルールである。
しかし、それでは都合の悪い者もいる。当然、【禁断の果実】のメンバーだ。
「そ、それよりも! 第二回イベントで敗北した【七色の橋】へのリベンジをするべきでは!?」
声を上げたのは、ヘレンという女性だ。
そんな否定意見に、クロードは冷たい眼差しを向けて口を開く。
「そうか、なら君がやって来るといい。賛同する者は、連れて行って構わない」
それはつまり、好きにしろ……という事である。しかしながら、その言葉の裏に別の意味合いが込められているのは明らかである。
それは「決定事項に変更は無い」であり「やるならば自分の責任でやれ」という事だ。
「え? あ、その……し、しかし……」
思いの外、冷たい対応をされた……そう感じたヘレンは、戸惑いを隠せない。
しかし普通に考えれば、当然の事だ。ギルドとはプレイヤーの集合体であると同時に、共同体なのだ。
人が集まっただけでは、ただの集合体。そこに秩序があるからこそ、共同体たり得るのである。
そして、その秩序を維持する役割を担うのがギルドマスターとサブマスターだ。
トップの決定に異を唱えるには、明確な根拠が無くてはならない。そうでなくては、秩序を乱す事になるのだ。
それを理解しているからこそ、エレナは助け舟を出した。
「まぁまぁ、一度落ち着きましょう? クロードさん。確かに、確実性の高い方を選ぶのは解るわ。でも今回のイベントは、【七色】への借りを返す機会である事も確かだと思うの」
努めて、穏やかに。それでいて、【七色の橋】に対する感情を利用するかの様に。エレナはクロードの決定を、再考させようと試みた。
「それについて、何か策があるのかしら?」
そんなエレナの問い掛けに、クロードははっきりと頷いてみせる。
「あぁ、それは既に決まっている。有象無象を間引いた後、邪魔の入らない状況で雌雄を決する」
つまり第二回イベントの様に、真っ向勝負を仕掛けようというものだ。
それは今回のイベントで重視されている、戦略も何も無い発言。それはどうなのかと、エレナは反対意見を口にしようとする。しかし、その前に。
「成程、確かにそれはアリだな!!」
「うむ……彼等とやるならば、対等な条件が望ましいだろう」
「あぁ……第二回の借りを返すならば、尚更だな」
オリガが、ラグナが、そしてアーサーがクロードの言葉に賛同する。
更に、同じく幹部メンバーである少女達もそれに続いた。
「ふふふふ……今度は絶対に、私の矢で射貫いてみせるわ……」
「コワッ、アイテル怖いよ! でもまぁ、リベンジマッチなら存分に、邪魔が入らない状況が良いよねぇ!」
「二人では相打ちだったけど……でも、皆と一緒なら。うん、勝てる……」
「そうだね! 皆で力を合わせれば、負けないよ!」
その上、幹部以外からも賛成意見が出て来る。
「雌雄を決したい相手と戦うならば、最大限フェアな条件で戦う。私は、素晴らしい考えだと思います。それでこそ、トップギルドの在り方かと」
「ヴェネさん……あぁ、そうだな。やっぱ、あいつらと戦るなら、全力勝負が良いな……!!」
「だな!! それに【聖光】とも、いい加減どっちが上かケリを付けないとな!!」
「【旅路】や【桃園】、【魔弾】もいるしな!」
「そうだな! まずは決戦に向けて、場を整えないと!」
――……まずい。このままでは【七色】攻略の影で、【天使】がポイントを稼ぐというシナリオが崩れる……!!
エレナが焦りを覚えていると、拠点周辺の監視をしていたプレイヤーが駆け寄ってきた。
「シンラさん、斥候班が帰還しました!」
「は~い、今行くわね~」
いつものゆるふわモードで、拠点へと帰還した斥候達の所へと歩き出すシンラ。彼女はその笑顔の下で、期待と不安を同時に抱いていた。
――さてさて、鬼が出るか蛇が出るか……それとも出るのは、狐の尻尾かしら。
帰還した斥候役を務める三名のプレイヤーは、その表情に疲労の色を滲ませていた。
彼等は【七色の橋】の拠点攻略の様子を、遠巻きに確認して来たのだ。三人という少人数でそれを決行させたのは、無理に拠点攻めに参戦させないようにという意味合いを含んでいる。
そして、肝心の報告。
「現在、【七色の橋】は突入したプレイヤーの集団を退けています。大きな損害は無いのではと」
それは、シンラも予想していた通りの展開だ。【七色の橋】の実力を考えれば、不思議でも何でも無い。
何故ならば、自分達も同じ事が出来る。
最低限の連携しか出来ず、心の底で他ギルドを出し抜こうとしているプレイヤーの集合体。その人数が百や二百であったとしても、大した脅威では無い。
「そうなの~、やっぱり彼等は流石ね~」
「ただ、その……シオンを除く、第二回イベント参加メンバーの姿が……」
皆まで言わずとも、シンラは解っている。
「そりゃそうよね~。だって自分達の拠点を攻めるのに、相手は主力を投入しているんだから~」
「は?」
相手がわざわざ弱みを晒してくれているとなれば、自分とて同じ行動に出るだろう。そして、今から実行する作戦もそれに乗っかる形なのだ。
「それじゃあ、私達も始めましょうか~? 主力が不在になったギルドの拠点を、少数精鋭で攻め落とす……うふふ、チャンスタイムね~」
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そして【七色の橋】の拠点を攻撃する為に、手薄になったギルドの拠点。既に拠点を守っていたプレイヤー達は、戦闘不能に陥り姿を消している。
砕け散ったギルドクリスタルを前にしているのは、【桃園の誓い】の面々だ。
「【七色】襲撃に参加はしない。これは解るが、【七色】救援もしない……か。意外だな、正直」
レオンがそう言うと、マールもそれに同意した。
「そうね、ケイン達なら……彼等の援護をするかと思ったんだけど」
そう言いながら、ギルド【掲示板民の俺達】の拠点を後にする。
現在、防衛戦力が削減されているギルドの拠点攻略を敢行しているのは二チームだ。
まず、ケインとイリスが率いるチーム。参加しているのはダイスと、PACのマークとファーファ。そして応援NPCは、六名のみである。
そして、レオンが率いるチーム。こちらはマール・ヒューゴ・バヴェルが参戦している。こちらにも、応援NPCを六名割いている。
拠点防衛にゼクス・フレイヤ・ゲイル・チナリ・ドラグ・ヴィヴィアン・ゼクトの七名。ゼクスのPACであるラウラ……そしてフレイヤが契約したPACである【スティード】もこれに参加し、残りの応援NPCも全員が揃っている。
そして今、見事に成果を挙げてみせたレオンチーム。
「……バヴェルさん、今いいっすか?」
「はい、ヒューゴさん。どうかしました?」
バヴェルへの対応が、丁寧なものになっているのはご愛嬌。しかしヒューゴも、自分なりに考えて抱いた疑問を解消したい。故に、彼に問い掛けてみる。
「ケインさん達さ、【七色】を助けに行かないのって……何でなんすかね? 俺なら、助けに行くけどなぁ……」
「うーん、彼等の本心は僕にもわかりませんね」
例えば、ダイスが窮地に陥っているなら? 自分ならば居ても立ってもいられず、彼を助ける為に行動を起こすだろう。
そう思ったヒューゴは、ケイン達がどう考えているのかと疑問を抱いたのだ。
「ただ、そうですね……僕には親友が居るんですが、もし僕の親友がその状況に居るとしたら……きっと僕は、彼の救援には行かないでしょう」
それは、今のケイン達と同じ様に。
「それは、本気で意外ね……」
「あぁ……俺も同感だ」
そんなバヴェルの言葉が意外だったのか、レオンとマールも会話に加わる。
ちなみにレオン、バヴェルに対して苦手意識を抱いてもおかしくない。実際に、少し抱いているレオンなのだが……彼はバヴェルと意思疎通を図り、彼の考えや言葉を理解しようと努めている。
――甘えてなんていられない……俺だって、【桃園】の一員なんだ。皆の為に、もっと……もっと、しっかりしないといけない。
そんな思いから、彼は仲間達との対話を増やす様にした。この行動が、【桃園の誓い】全体の交流を活発化させる様になったのだ。
それを見たマールとヒューゴ……そしてこの場に居ないゼクトとヴィヴィアンも、レオンの考えに賛成だった。バヴェルを含めたメンバーとの、対話の機会を増やしていったのだ。それは、イベント戦での連携にも繋がる。その為にも、彼等は積極的に意思疎通を図っていた。
しかしただ一人、ドラグだけが苦手意識を引き摺りバヴェルを避ける様にしている。
「ふむ……俺も助けに行く側だろうか。なぁ、何故なんだバヴェルさん?」
レオンの問い掛けに、バヴェルは苦笑しながら答えてみせた。
「彼なら、自力で返り討ちにするでしょうから。それも、完膚なきまでに、徹底的に」
そう言うとバヴェルは、システム・ウィンドウを開いてマップに撃墜を示す印を書き込む。これでギルドメンバーに、【掲示板民の俺達】を撃破済みだと共有できる。
「もしケイン君達が、僕と同じ考えだとしたら……こう考えているかもしれません」
次の目的地を見定めながら、バヴェルは自分の考えを明かした。
「彼等を狙う連中の本拠地を攻めて、前も後ろも叩き潰す」
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ギルド【黄金の時代】の拠点。そこで、五名程のプレイヤーがのんびりと寛いでいた。主力メンバー十名が【七色の橋】の拠点攻略に向かい、最低限の防衛戦力として彼等は待機しているのだ。
拠点攻略が始まって三十分程……拠点に攻め入るプレイヤーは、一人として現れない。
「へへ、あいつらうまくやってるかな」
「【七色】を潰せば、俺等も有名ギルドの仲間入りじゃん?」
「どのギルドも、【七色】に夢中だ。こっちは気楽なもんよ」
緊張感など微塵も感じられない、そんなやり取り。多くのギルドが【七色の橋】襲撃に参加していると確信している彼等だったが……平穏な時は、終わりを告げる。
拠点周辺を警戒していた一人……【ロナウド】が、応援NPCに防衛線を任せながら撤退して来る。その表情には、焦りの色が浮かんでいた。
「敵襲!! 敵襲ーっ!!」
その声と同時に、防衛線を守る応援NPCがバタバタと倒れ始めた。
「何、この戦況でか?」
彼等は仕方が無いなと言わんばかりに、緩やかに立ち上がる。ロナウドはそんな仲間達に苛立ちながら、急かすように声を荒らげる。
「早くしろよ、やべぇのが来たんだって!!」
「マジかよ、どこのギルドだ?」
「そりゃあ、【な……なあぁぁっ!?」
ギルド名を口にしようとしたロナウドは、後方から飛んで来た矢を食らって即死した(ゲーム的な意味で)。
「ロナウド……ッ!!」
「おいおい、マジかよ……【七色の橋】!! 敵は【七色の橋】だ!!」
和装を身に纏う、プレイヤー。しかも、何度もイベントでその活躍を衆目に晒した二人。そして今、拠点を攻められて苦しんでいるはずと思い込んでいたギルド。
「ジンとヒメノだ……!! 嘘だろ!? たった二人で、攻めて来やがった!!」
次回投稿予定日:2022/1/10(本編)




