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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十四章 第四回イベントに参加しました
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14-01 第四回イベント開幕しました

【忍者ムーブ始めました】をご閲覧下さる皆様へ。


大変長らくお待たせ致しました。待たせ過ぎたかもしれません。待たせ過ぎました。


蛇足は控えて、簡潔に。

あれやこれやのご期待に、応えられるように描きました!

それでは第四回イベント編、始めます!

 十二月二十日。多くのプレイヤーが、待ちに待った日がやって来た。アナザーワールド・オンライン、第四回イベント……GvGイベントが、いよいよ開始するのである。

 ジン達【七色の橋】も、この日の為にレベリングや素材・アイテムを集めて準備をして来た。大半のメンバーはレベルキャップまでレベルを上げ、夏から本格的に始めたヒビキ・センヤ・ネオンもレベル53に到達している。

 この成果は、エクストラクエスト攻略や大規模PKを戦い抜いた事……それが大部分を占めている。


 イベントに参加するプレイヤーは、システム・ウィンドウで参加者を設定。メンバーを確定させ参加申請を送る事で、イベントに参加する事が出来る。


 また、この段階で応援現地人(NPC)も決定する事となる。選択出来るのは、使用する武器やステータスの傾向のみだ。

 例えばメンバーに、壁役を入れたいとする。その場合はステータス傾向はVIT、装備は大盾を選択。それ以外のステータスやスキル、性別や体格はランダムで決定される。

 ジン達は応援者を採用する必要があるので、それらの設定も早めに済ませてある。


 また応援NPCに振り分けられるステータスポイントは、運営管理AIによって決定される。しかし、全て一律という訳ではない。

 というのもプレイヤーの数が少なければ少ないほど、応援NPCに振り分けられるステータスポイントは多くなるのだ。これは大人数のプレイヤーが居るギルドとの差を、可能な限り少なくする為の措置だろう。


 ちなみに今回のイベントには、メーテル・カーム・ボイドも参加する事になっている。

 その理由は勿論、戦闘要員としてではない。

「婆やには戦う力は無いけれどねぇ、あんた達の身の回りのお世話くらいは出来るよぉ」

「戦場の士気を上げるには、やはり美味い料理でしょう。腕の振るい甲斐がありますね」

「親方とユージンの旦那だけでは、装備の修繕が追い付かないかもしれませんからね。俺も頑張らせて頂きますよ」

 彼等の役割は、後方支援。拠点でメンバーや応援者のサポートをする、その為の参加である。


「拠点が用意されているとはいうが、十分な設備があるとは限らない。それに食材も、簡単に手に入る状況ではないかもしれないね」

 ユージンはその為に、大量の素材や食材を用意してきた。それらが入っているのは、稀少なアイテムの≪無限鞄≫。アイテムの収納上限が無い、激レアアイテムだった。

 これは先のガチャ大会で手に入れた、生産職ならば喉から手が出るほど欲しい逸品である。


「拠点が完成するまでは、防衛メイン。【隠密】対策に、【感知】持ちは分散して配置だな」

「そして拠点が完成次第、打って出る……ですね」

 ギルドクリスタルを守る必要性がある為、拠点の防衛力は重要だ。それまでは、無理な作戦は取れないだろう。


「その為にも、まずは情報が必要になる。ジンには負担をかけるけど……」

 情報収集に長けるのは、本来ならばハヤテやマキナといったメンバー。しかし二人は単独行動が出来るレベルではあるが、ギルド単位のプレイヤーを相手にして撤退出来るだけのスペックは無い。


 白羽の矢が立つのは、やはりジン。AWOに存在する全プレイヤーの中でも、最速と称されるAGI極振り忍者。

 偵察と生還、その両方をこなせるのは彼しか居ないだろう。

「心配ご無用。その大役、しかと承ったでゴザル!」

 ジンは仲間達を鼓舞するように、忍者ムーブで応える。そんないつも通りのジンに、他の面々は信頼を滲ませた笑顔で頷いてみせた。


 そんなやり取りをしていると、全員のシステム・ウィンドウが自動的にポップアップする。ウィンドウには、金髪の青年の姿が映っていた。柔らかく微笑むその青年は、初めて見る顔だ。


『アナザーワールド・オンラインをお楽しみの皆様、私の名前は【セイン】。第四回イベントのイベンターを務めさせて頂きます。プレイヤーの皆様へ、ご連絡致します。間もなくアナザーワールド・オンライン第四回イベント、ギルド対抗サバイバルが開始されます。イベント参加を希望される方は、システム・ウィンドウより……』

 それはイベント開始五分前の、運営からのアナウンスだった。いよいよだと、ジン達は配置に付く。


「開幕から、遭遇戦とはならないと思うが……モンスターが居る可能性もある、いつでも動ける様にしようか」

 ユージンがそう言うと、ミモリはメーテルに視線を向けた。

「お婆ちゃん達は、真ん中に居てね。私達が守るから」

「あぁ、足は引っ張らない様にしないとねぇ。気を付けるんだよ、皆」

 生産PAC(パック)を中央に、後衛メンバーがそれを囲む。更にその前に立つのは、近接メンバーだ。


「ジンさん」

 前に立つジンに、ヒメノが声を掛ける。その呼び掛けに振り返るジンは、既に口元を≪闇狐の飾り布・参≫で隠している。

「うん? どうしたでゴザル?」

 いつも通りのジン。ヒメノの、最愛の旦那様。彼とならば、どんな相手でも怖くない……その圧倒的な信頼感は、出会った頃から変わらない。


「雨、止ませましょうね!」

「無論にゴザル!」


 寺野家でのやり取りを知らない面々からしたら、何の話だろう? と思ってしまう。

 どういう意味なのか、それをレンが聞こうとした時……全員の耳に、運営イベンターであるセインからのアナウンスが届いた。


『プレイヤーの皆様へご連絡致します。これよりイベント参加プレイヤーをイベントエリアへ、観戦プレイヤーを観戦エリアへ転送します。転送、百二十秒前』


 ちなみに観戦エリアに転送されたプレイヤー達は、いくつかの場所に分散される。それはNPCのバーだったり、レストランだったり、映画館だったりだ。その間はログインもログアウトも自由だし、通常マップとの行き来も可能である。

 しかし戦闘に参加するプレイヤーがログアウトした場合、二度とイベントエリアには入れない。

 ちなみに観戦エリアでの放映開始は、イベント開始から十分後となる。


 何はともあれ、いよいよ戦いの舞台へと転送される。


「怪我するんじゃないよ、可愛い子供達や」

「お腹が減ったら、声を掛けて下さいね」

「装備は必ず、最良のコンディションに仕上げます」

 いつもの雰囲気を崩さない、生産PAC(パック)のメーテル・カーム・ボイド。


「さて、美味そうな相手が居たら有り難いがな」

「集団戦なら、経験がある。任せときな」

「くっくっ……ようやく、存分に暴れられるというものよな」

 戦闘と聞いて戦意を顕にする、元・エクストラボスのセツナ・ジョシュア・カゲツ。


「お嬢様、いつでもご指示を。最良の成果を挙げてご覧に入れましょう」

「お姉ちゃん、頑張りましょうね!」

「主様……このリン、どこへでもお供させて頂きます」

 各々の武器を握り締め、主の横に並び立つリン・ヒナ・ロータス。


「う~、よしっ! やるぞぉ!!」

 贈られた和装に身を包み、グッと拳を握る配信者・コヨミ。

「ワイもやったるわ! 商人舐めたらあかんでぇ!」

 甚平姿にミスマッチな拳銃を構えるのは、商人ロールプレイヤー・クベラ。

「ふふっ♪ 皆、サポートは任せて!」

 華やかな和装姿で、≪魔楽器・笛≫を握るはアイドル回復役ヒーラー・リリィ。

「気合十分だね、皆。僕もたまには、張り切ってみようかな」

 腕を組みながらそう言って笑うのは、最高峰の万能生産職人・ユージン。


「うん、大丈夫……皆と一緒なら、怖くない!」

 表情を引き締め、愛用している短槍を強く握り締める熟練プレイヤー・マキナ。グレードアップされたその装備から、武将の様な見た目である。


「どこまでやれるか解らないけど……僕も、頑張ります!」

 グッと拳を握り締め、戦意を滾らせる近接格闘職・ヒビキ。このイベントに備え、軽装鎧も新たに身に着けて重厚感を増している。


「きっと大丈夫、私達は最高のチームだもの」

 畳まれた傘を大切そうに持ちながら、そう言って微笑む魔法職・ネオン。正式版の新衣装も、実に彼女の雰囲気にマッチしている。


「にひひ、第二回は観戦側だったからね! さぁ、暴れるぞー!」

 嬉々とした様子で腰に挿した刀を撫でる、前衛職・センヤ。新装備と新衣装を引っ提げての戦闘イベント初参加だが、気負いは全く見受けられない。


「わ、私も……や、やる時は……やる、かも?」

 そう呟いてポーチからハンマーを取り出す、鍛冶職人・カノン。新衣装を身に纏うだけではなく、親友からの勧めで今回は伊達メガネを外している様だ。


「イベントエリア限定の薬草とかあったら、拾っといてくれるとお姉さん嬉しいなー」

 普段通りの明るい調子でそんな事を言うのは、調合職人・ミモリ。他の面々に比べて大胆な衣装ではあるが、彼女のその明るさ故か健康的な色気を滲ませている。


「いよいよです、準備は宜しいでしょうか?」

 大太刀を右手に、大盾を左手に持つ要塞和装メイド・【酒吞童子】のシオン。


「こういうサバイバル、俺の得意分野ッス!」

 そう言って愛銃≪FAL型アサルトライフル≫を担ぐ最凶の銃使い・【一撃入魂】のハヤテ。


「鍛え上げた技で、皆の道を斬り拓くよ!」

 地面に聖なる薙刀を突き立てて、凛々しい笑みを浮かべている侍少女・【百花繚乱】のアイネ。


「これが、新装備のお披露目でもありますね。どんな反応が見れるでしょうか」

 そう言って悪戯っぽく笑いながら、ユニーク装備である魔扇で口元を隠すお嬢様巫女・【神獣・麒麟】のレン。


「新しい武器もありますし、全力全開でいきますっ!!」

 カノンやユージンの拵えた新兵器を手に、気合十分といった雰囲気の一撃必殺巫女・【八岐大蛇】のヒメノ。


「何というか、こんな時でもいつも通りだな……」

「まぁまぁ。これこそ、ウチって感じでゴザルよ」

 苦笑しつつ両手に妖刀を構える、ギルドマスターを務める鎧武者・【千変万化】のヒイロ。

 そんなヒイロに反応を返しつつ、肩に乗ったコンを撫でる最速の忍者ロールプレイヤー・【九尾の狐】のジン。


『五……四……三……』

「よし、行くぞ!!」

『ニ……』

「「「応ッ!!」」」

『一……イベントエリア、観覧エリアへの転移を開始します。プレイヤーの皆様、ご武運を祈ります』

 そのアナウンスが流れると、ジン達は光に包まれていった。


************************************************************


 光が収まると同時に、ジンは頬を撫でる風を感じる。目を開けて周囲を見ると、そこは森の中であった。

「ここが、イベントエリア……」

 システム・ウィンドウを開いて、ジンはマップを確認する。しかしマップには自分達の居る位置……その半径五百メートルほどしか、描かれていない。

「移動によって、表示範囲が広がる……そういう事かな」


 ヒイロは周囲を見渡し、そこにポツンと建つ建物に注目する。

「あれが、俺達の拠点……かな」

 拠点の外見は、あまりしっかりしている様には見えない。木造のそれでイベント期間を乗り切るのは、難しいと思わせるものだった。


「現地人の装備に、ノコギリや金槌があるのはこの為だろう。拠点のインフラ整備も、このイベントのキモという訳さ」

「生産職がおらんくて、現地人も戦闘メンバーで固めとったら……」

「ギルドクリスタルが、破壊しやすくなる……やはりAWO運営、中々に良い趣味している」

 そう言うユージンは、どことなく楽しげである。やはり、生産職としてのサガだろうか。


 他の面々も、システム・ウィンドウを見ながらステータスや状態を確認している。

「空腹ステータスも、やはりありますね」

「空腹で戦闘不能になるプレイヤーも、出て来そうですよね」

「脳筋は生き残れない、って事?」

「極論ですが、そういう事ではないかと」


 そんな仲間達に、レンは苦笑いを浮かべてしまう。

 ついにイベント開始とあって、気分が高揚しているのは理解している。しかしこのイベント、初動が肝心なのだ。レンはそれを、深く理解していた。


 仲間達の注目を集めるように、レンが二回手を叩いた。

「まずはやる事を進めましょう?」

 そんなレンの号令に、異論を口にする者は居ない。流石、サブマスターなお嬢様である。


 仲間達が意識を今後の動きに戻した所で、レンはヒイロに視線を向ける。

「さて、まずは現地人と合流ですね。ヒイロさん?」

「あぁ、拠点に入ってみよう。きっと、そこに彼等は居るはずだ」

 まずやるべき事は、この二日半の戦いを共にする者達との合流。


 木製の建物の扉をノックし、ヒイロは屋内に向けて声を掛けた。

「失礼、誰か居るだろうか?」

 そう声を掛けると、中から人の気配が感じられた。足音が扉の方へ近付き、すぐに何者かの手によって扉が開かれる。軋む音を響かせながら開いた扉の向こうには、ケイン達と同じ年くらいの青年が立っていた。


「待っていたぜ。あんたらが、俺達の雇い主だな」

 すぐにそう言ってみけた男に、ヒイロは頷いてみせる。

「あぁ。俺はヒイロ、この【七色の橋】のギルドマスターだ」

 そんなヒイロの名乗りに、青年も一つ頷いて応える。

「俺はしがない傭兵なんぞしている、【ダナン】だ。一応、俺がここの連中のまとめ役をしている。宜しくな」

「こちらこそ、宜しく。頼りにさせて貰うよ」

 そう言って、二人は握手を交わす。ファーストコンタクトは、中々に良い滑り出しと言って良いだろう。


 そして、拠点の中央……そこに、それは存在した。オブジェクトの一つは、拠点内で一番頑丈そうな台座。

 そして、その台座の上に鎮座するモノ。例えるならば、ラグビーボール程の大きさの結晶体。これが、ギルドクリスタルだろう。


 ギルドクリスタルについて、調べたり確認したりしたい所だ。しかし、その前にやるべき事がある。

 ヒイロはダナン達に視線を向け、声を上げる。

「まずは俺達に力を貸してくれる君達に、渡したい物がある」

 ヒイロがそう言うと、シオン・ミモリ・カノンがシステム・ウィンドウを操作して収められていたアイテムを出す。


「……これは」

「俺達が製作した装備だ、是非使って欲しい」

 応援NPCは、PAC(パック)同様にある程度の戦闘が可能なAIを搭載したNPC。しかし、装備はそこそこの装備しか与えられていない。

 それを想定していた【七色の橋】は、戦力の底上げになると考えて彼等の装備を用意していた。


 鎧は具足風の物で、男女どちらが使用しても違和感の無い物。

 武器は刀・大太刀・小太刀・長槍・短槍・大盾・弓矢・金棒と多岐にわたる。

 服も和装から、普通のチュニック等まで様々だ。正に、選り取りみどり。ここに【七色の橋】が製作した物を欲するプレイヤーが居れば、目を輝かせている事だろう。


「……これは驚いた、どれもいい装備だな。あぁ、助かる。ありがたく使わせて貰うさ」

 ダナンはそう言って、仲間達に声を掛ける。

 ダナンの呼び掛けに従って、応援NPC達は自分に適した装備を手に取っていく。その表情から、喜んでいるのが解る。


 ダナン達に配ったのは、取引掲示板に出品する物と同程度の品だ。それはつまり、現在の最前線である第三エリアで通用する性能を持つ装備。

 実は騒動のせいで、装備の売れ行きもあまり良くない。その為、イベント準備期間中は店仕舞していたのである。販売を委託しているクベラも、騒動から派生するトラブルを避けて販売を中断していたし。

 故に、これらの装備を用意するだけの余力はあったのだ。


「さて、それでは拠点のアップグレードといこう。生産メンバーの皆は、手を貸して貰えるかな」

「はいはーい!」

「お、お手伝い……します……!」

「ワイもやるで!」

 ユージンの呼び掛けに、ミモリとカノンが動き出す。そんな二人にクベラが続き、生産PAC(パック)三人もそちらへと向かった。

 プレイヤーとPAC(パック)の七人、更にそこへ生産向けの構成にした応援NPC十三人が続く。


「じゃあ、俺達は周囲の警戒と探索を進めよう。リリィさんとコヨミさんは拠点内で手伝いをしつつ、ギルドクリスタルの防衛と調査をお願いします」

 ギルドクリスタルの情報は、現地でなければ解らない事もあるだろう。その為、ギルドクリスタルについての確認や検証が必要となるのだ。


「はい、解りました!」

「了解です!」

 二人はしっかりと頷いて、ヒイロの指示に同意してみせた。彼女達は防衛戦力として割り当てられた、八人の応援NPCと共に生産メンバーの方へと歩いていく。


――アイドルのリリィさん、配信者のコヨミさん……二人が俺達と行動を共にしている所を見られて、その活動に影響を及ぼすのは避けないとな。


 二人に共通するのは、ファンからの好感度だ。彼女達もそれを承知の上で、バッシングを受けているギルドに参加してくれている。

 自分達の活動に、支障が出る可能性がある。二人にとっては大事な存在である、ファンが離れる危険性がある。それでも、自分達と共に戦う事を選んでくれた。


 ならば自分達は、彼女達の為に出来得る限りの事をしなければならない。それは、【七色の橋】の総意である。

 基本的には、裏方でサポートを担当。必要な場面では、力を借りる。それは二人からも、了承を得ている。


……


 拠点組に後を任せ、ジン達は外へと出た。

「よし……拠点防衛は、俺とレン・シオンさんとヒメだな……そうなると」

 ヒイロはダナンに歩み寄り、声を掛ける。

「ダナン、今良いかな」

「あぁ、何だい」

 傭兵らしく、指示待ちをしていたダナン。雇い主のリーダーであるヒイロの声掛けに、「仕事かね?」といった雰囲気だ。


 しかし、ヒイロが声を掛けた理由は別にある。

「応援者の皆にも一緒に行動して貰うけど、誰と誰が連携がうまいとかあるかな? 最大限、君達の力を生かせる組み合わせでいければと思っているんだ」

 ギルド【七色の橋】は、プレイヤーとPAC(パック)が見事に調和したギルドと言って良い。そんな彼等だからこそ、戦場を共にするダナン達をただのNPCと考えていなかった。


 彼等は一人の人間、そして戦友となる存在。だからこそ、彼等がどうすれば戦いやすいか。どうやったら、連携が出来るか。それを突き詰める。


 そんなヒイロの反応に、一瞬だけ目を見開くダナン。しかし、すぐにニカッと笑い頷いてみせた。

「オーケー、今回のクライアントは大当たりだ。必要な人数と、役割を教えてくれ。振り分けについて、俺も検討に参加するぜ」


 拠点周囲の警戒は、ヒメノ・ヒイロ・レン・シオン。こちらに参加する応援NPCは、ダナンを含めた三十一名だ。合計、二十六人である。


 そして周辺の探索は、三チームに分かれて行う。PAC(パック)とコンビを組み、それを二組一チームにしたのだ。

 ハヤテ・カゲツとアイネ・ジョシュアの、契約チーム。

 センヤ・リンとヒビキ・セツナの、火力と速攻を旨としたチーム。

 ネオン・ロータスとマキナ・ヒナで、安定した戦力を保有するチームだ。

 更にそのチームに、六人ずつ応援者を配置。十人でパーティを組む形である。


 さて、ここで名前の挙がらないメンバー……ジンが居る。

「ヒメ、コンを頼むでゴザル」

「はい! 任せて下さい♪」

 ヒメノがコンに「おいでー」と呼び掛けると、コンは嬉しそうにヒメノの胸元へと飛び込んだ。それを抱き留めると、コンはスルリとヒメノの身体を登って肩に収まる。


「ママの言う事を聞くでゴザルよ、コン」

「コンッ!」

 まるで「任せて、パパ!」とでも言っているように、コンがジンに応える。そんなコンに、ジンもヒメノも頬を緩めた。

 イベントであっても、変わらぬラブラブ新婚モード(ペット付き)である。


 しかし、すぐにジンの表情から笑みが消える。視線を森の中へ向けると、ジンはスッと身体を沈み込ませた。

「それでは、いざ……」

 しゃがみ込み、両手を地に付くジン。それは、クラウチングスタートの体勢だ。


「コンちゃん、行きますよ?」

「コンッ!!」

 コンは「任せて、ママ!」とでも言わんばかりに、一鳴きしてジンに視線を向ける。


「ジン、頼んだ!」

「存分にどうぞ、ジンさん」

「ジン兄、気を付けるッスよ!」

「頑張って下さい、応援してます!」

「ジン様、ご無事のお帰りをお待ちしております」

「ファイト! ジンさん!」

「こっちは任せて下さい♪」

「ファイトです!」

「ジンさん、お願いします!」

 そんな仲間達の声援に、ジンは頷きのみで応える。


 その目付きは、アスリートのそれだった。

 全力で走る事に、神経を集中させていく。イメージするのは、最適なフォーム。研ぎ澄まされていく精神、埋没していく意識。

【七色の橋】が誇る最速忍者の、全力疾走モードである。


「いきます!! よーいっ!!」

「コンッ!!」

 ヒメノとコンの、連携プレー。可愛いと可愛いのコラボレーションによる、スタートの合図。

 そんな愛妻と愛獣の可愛らしさは後で堪能するとして、今のジンにはやはりこれ。


「参るッ!!」

 忍者ムーブをしながら、そのAGI性能を全て解放。

 それは陸上時代含めて、過去最高のスタートダッシュ。全身全霊の疾走により、地面に生えていた草が巻き上がった。

 進行方向を見ていなければ、確実に見逃してしまうであろうジンの背中。それはみるみる内に、小さくなっていった。


「……な、何だあ、あの速さ……」

「一体、何がどうなって……」

 ジンの全力スタートダッシュ……応援NPC達は当然、それを初めて目の当たりにした。その規格外の速さに、目を皿の様にして凝視し……ジンの姿を見失う。


「っていうかあの兄ちゃん、一人で大丈夫なのか?」

 ダナンがヒイロにそう問い掛けると、ヒイロはニヤッと笑ってみせた。

「あぁ、大丈夫。あいつはジン……俺の親友で、世界最速の忍者だ」

 どことなく誇らしげにそう告げるヒイロに、ダナンはポカン……とした顔になってしまう。


 そんなダナンの肩を叩き、ヒイロは全員に聞こえる様に声を張り上げた。

「さぁ、俺達も行動だ! 行こう!」

 ギルドマスターのその号令を受け、【七色の橋】のメンバー達は一斉に拳を突き上げて「おーっ!!」と唱和した。

【今回描きたかったもの】

ヒメノとコンのコラボによるスタートの合図


次回投稿予定:2021/12/24(本編)

作者からのささやか過ぎるクリスマスプレゼントとして、12/24と25に連続更新します!

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― 新着の感想 ―
[一言] >「いきます!! よーいっ!!」 「コンッ!!」 イベント後のPVに採用されるカットはここですか?w それにしても拠点ありでこうとは、戦闘のみの小規模ギルドは早々に退場しそう・・・NP…
[良い点] いい! よーい!コンッ! バヒューーーーーン! [一言] 【七色の橋】がんばれー!
[良い点] いよいよ始まりました第4回イベントGvG。七色の橋以外のギルドがどう動くか気になりますね。とくに忍者ふぁんくらぶここですよ。ここが今回イベントでどれほど活躍するのかが1番楽しみです。
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