13-20 訪問しました
今回はある登場人物視点での話となります。
(すぐに誰か解りますけどね)
今、このゲーム……アナザーワールド・オンラインで起きている、とある騒動。それはギルド【七色の橋】が運営のメンバーと繋がっており、ゲーム情報をリークされているという不正疑惑。
運営の公式発表で、その疑惑は否定された……けれどあれから数日経っても、未だにゲーム内じゃなく現実でやっている。運営が【七色の橋】と運営Sを庇っている。そんな声が、掲示板では上がっているらしい。
恐らくこれは、【七色の橋】だけの問題じゃないんだと思う。もっと、多くのプレイヤー……それこそ大規模ギルドや中規模ギルドも巻き込んだ、悪意の温床が存在するんだと思う。
その根拠と思われる点が、ここへ来てあちらこちらで顔を覗かせた。
きっかけとなったのは、【七色の橋】の新メンバーであるマキナを脅そうとした、カイト。
そしてハヤテが怪しい動きをしていたと言った青年、ジェイク。
他のギルドに先んじて、西側の第三エリア到達を果たした【聖光の騎士団】。情報屋を使ってその攻略法を見つけ出したメンバー、アレク。
それに次いで【森羅万象】と【遥かなる旅路】も、同タイミングで第三エリアに到達した。北側の第三エリアに到達は出来なかったけど、【暗黒の使徒】がギミックを解除した。
この三つのギルドの中にも、カイトの仲間が潜んでいる……その可能性が、極めて高い。
特に【森羅万象】は、第二回イベントの決勝トーナメントに進出したメンバーしか知り得なかっただろう情報が漏れていた。恐らく、幹部の中にカイトの仲間がいるんだと思う。
そして……恐らく第三エリア到達の攻略法は、自分達の同盟から漏れたもの。その情報を漏らしたのは、【七色の橋】の姉妹ギルドである【桃園の誓い】のメンバー。
最も怪しいと思われるのは、中途加入メンバーのドラグさんだ。
もし予想が当たっていたとしても、今はまだ彼等の目的が解らない。
だけど、多分……目に付いたギルドの評価や戦力を削ごうとしている。そんな気がする。
ギルドに潜伏して、それをする理由……それは「名のある集団を崩壊させる事を愉しむ愉快犯」か。もしくは、「そうする事で利益を得る誰かの為」だと思う。
スパイ、情報屋、大規模ギルドや中規模ギルド、同盟相手……スパイと特定出来ているのはカイトのみで、それについてはハヤテとマキナが対応している。
今、僕に出来る事は……。
「どうかしましたか?」
コンを撫でていた、最愛の人。ずっと黙り込んでいた僕を、心配してくれていたみたいだ。
「ごめん、考え事をしていたよ」
新しい専用装備……≪戦衣・桜花爛漫≫を身に纏った、僕のお嫁様。
華やかさを増したその装備は、ヒメの発育の良い体型を最大限に生かす素晴らしいデザインだと思う。正直可愛いし、綺麗だ。
しかし、胸元や足……そこから覗く、黒いインナーウェア。下着の上に着ている、見せ下着と解っていても……やっぱり、他の男に見せたくない気持ちがある。
「……?」
僕に見つめられて、どうかしたのかな? と言わんばかりに小首を傾げるヒメ。
可愛い、可愛すぎる。抱き締めちゃダメかな? いや僕だって健全な男子高校生なので、それなりにアレなんですよ。我慢しているだけなんです、マジで。
というか、このお嫁様ですよ? 神がこの世に齎した、可愛いの擬人化ですよ? このお嫁様を前にして、節度を保っている僕って凄くない? 誰か褒めて。
そんな葛藤を必死に心の奥底に押し込めていると、僕のシステム・ウィンドウに通知が来た。
「あれ? ジンさん、通知が来たんですけど……これって? 誰からのメッセージですか?」
「……うん、ちょっと考えていた事があってね」
ヒメと僕のシステム・ウィンドウは、リンクしている。だから僕にメールやメッセージが届けば、ヒメの方にもそれが通知されるのだ。
しかし、例外がある……自分のアカウントでしか見る事が出来ない、外部ネットワークは別。
それは公式サイトのアカウントページだったり、掲示板サイトだったり。そして、ソーシャル・ネットワーク・サービス……ツブヤイターやRAINも、ヒメには通知しか見えない。
ちなみに今ヒメには、『ジンのRAINアカウントにメッセージが届きました』としか表示されていないはずだ。
僕はシステム・ウィンドウを可視化して、ヒメと一緒にメッセージを確認する。夫婦の間に、隠し事は無しでいきたいのだ。ヒメに押し付ける気はないけどね。女の子だもの、色々あるだろう。
ともあれ僕はメッセージを確認した。確認して、後悔した。しかし、虎穴に入らずんば虎子を得ず……ここは意を決して、やるしかない。
「う、うん……まぁ、大丈夫かな? よしヒメ、今日はちょっと二人で出掛けようか」
「え……あの、このメッセージって? あの、ジンさん?」
「あ、皆が揃ったよ。詳細は、皆と一緒に説明するから」
「ジンさん? えっ、あの……!!」
しかし……大丈夫かなぁ。
『ギルドメンバー総員、頭領様のお越しをお待ち申し上げております!!』
この熱量、果たして耐え切れるかな……僕。
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ギルドメンバーとゲストメンバーの了承を得て、僕とヒメは始まりの町[バース]へと向かった。今回は完全に隠密行動……なので、和装は装備欄から外しての行動になる。
僕はいつぞや使用した、フルプレート装備。装備のステータス強化が受けられないので、めちゃくちゃ重い。
ヒメは、ローブを装備した魔法職の装いだ。どこからどう見ても、オーソドックスな駆け出し魔法職にしか見えない。
ステータス的に、逆にすればいい? うん、今気付いたよ。ここで役割チェンジしたら、僕とヒメってモロにバレるけど。ともあれこの装備なら、僕とヒメで前衛後衛のコンビにしか見えないだろう。
だというのに。
「お待ちしておりました頭領様、御姫様。私はココロ……これより、我等がギルドホームへとご案内させて頂きます」
ココロさん……ウチの高校の先輩である、浦島さんが僕とヒメを特定してみせた。どういう事なの?
あと、姿は見えない。これは多分【隠密の心得】の【ハイド・アンド・シーク】だろうな。町の中では使えないから、町の外のポータル・オブジェクトを指定したのか。流石、忍者ギルド……。
「はわ……っ!?」
突然の姿なき声に、ヒメが驚いている。だろうね、僕も驚いた。普段は驚かせる側だからなぁ……え、自覚あったのかって? つい最近した。コヨミさんと初めて会った時とかに。
「も、申し訳ありません! 御姫様を驚かせてしまうとは……この非礼、腹を切ってお詫びを……」
「ココロさん、それ忍者じゃなくて侍では?」
姿を見せないココロさんは、ロールプレイの為なのかトンチンカンなセリフを言う……本気じゃないよね?
「ともあれ、このままここに留まっては目立つかと。まずは南門から入り、大通りを西側へ向かって歩いて下さい」
ここから一番近い南門から入って、西か。ともあれフルプレートの装備で重いけど、何とか頑張って歩くとしようかな。
町の中に入ってからは、何気ない普通の装備で身を固めたプレイヤー達とすれ違う。その度に、この先どう歩くのかをナビゲートされた。
「この先、三つ目の十字路を左へ曲がって下さい」
「赤い看板の武具店があります、向かって左隣の路地裏へ進んで下さいませ」
「緑の装備で身を固めた弓使いが見ている方向と逆へ進んで下さい」
もうちょい、解りやすいナビゲート出来ませんか!? これ、忍者かな!? スパイよりスパイらしい事してないかな、僕達!!
そうしてやっと辿り着いたのは、何の変哲もない屋敷だった。ギルドホームとしては、割と普通のヤツ。ちなみに、町中にある出来合いのものっぽい。
門の所に差し掛かると、部外者がギルドホームに来訪した時にポップアップするウィンドウが表示される。その内容は『ギルド【忍者ふぁんくらぶ】のギルドホームに訪問しますか?』という感じだ。
僕とヒメは顔を見合わせて頷き合うと、【YES】ボタンをタップする。その直後、アナウンスが僕達の脳裏に届いた。
『ギルドホームの訪問が許可されました。この許可は60秒後にリセットされます』
ボタンをタップして2秒程度なんですけど、承認が速過ぎやしませんか。
ともあれ、僕とヒメはそのまま屋敷の敷地内へと進んだ。
……
「うわー、凄いですね!!」
「うぼぁ……」
目を輝かせるヒメだが、僕は頭を抱えたい衝動でいっぱいだった。
外観は洋風建築物だけど、内装は完全に和風だった。問題はそこではない。
木板の床、うん良いね。
和風の壁紙が貼られた壁、オーケー良い感じ。
エントランスの中央に置かれた、ある意味ではメチャクチャ見慣れた人物を彫ったらしい像。これはアカンやつ。
壁に飾られた水彩画、描かれているのは同じくどっかの誰かさん。勘弁して欲しい。
はい、全部僕です。本当にありがとうございました。嘘です、誰か助けて下さい。
そしてエントランスの扉から正面にある扉まで、正座した人達が一斉に頭を下げている……もう僕のライフはゼロよ!!
『ようこそお越し下さいました、頭領様、御姫様!!』
唱和しないで下さい!! ドン引きです!!
「わぁ……忍者さんがいっぱいですよ、ジンさん!!」
「この状況でその感想!? ヒメ、本気で大物だね!?」
ウチのお嫁さん、引くどころか感動してんだけど!?
すると奥の方で正座していた女性と男性が立ち上がり、ササっと僕達の前に移動して膝を付く。
「お待ち申し上げておりました、頭領様。私はこの【忍者ふぁんくらぶ】の会長を務めております、レイチェルと申します」
「同じくご来訪下さいまして、心より感謝申し上げます。副会長を務める、コタロウと申します」
「あ、はい……どうも、【七色の橋】のジンと申します」
「えーと、妻のヒメノと申します」
ヒメが自分を妻と言った事で、僕より忍者ムーブしている人達が一斉に顔を見合わせました。忍者ムーブ、疲れました。
「おぉ……なんと仲睦まじきお姿……!!」
「こんな至近距離で、お二人のご尊顔を拝謁できるとは……!!」
「今年度AWOベスト夫婦、むしろ永遠のベスト夫婦の座は安泰ですな!!」
おい、泣いてる人いるぞ。大丈夫か、これ。もしかして早まったか、僕。
「頭領様、御姫様!! 御前失礼致します、私ココロと申します!!」
「同じく、イズナと申します!! その節は、私共の催しにお越し下さいましてありがとうございました!!」
浦島先輩と、来羅内先輩じゃん。わー、くのいちだすごいなー。
「あっ、文化祭の時の占い研究会さん!!」
「「覚えて頂き、光栄です!!」」
ヒメ、ちゃんと覚えていたんだね。流石だなぁ。
あれ? というか……この二人って?
「えーと、レイチェルさんに、コタロウさん……ですよね?」
「「はっ!!」」
見覚えが、あるぞ?
「レイチェルさん、確か最初のイベントで南門の方に居ました? それにコタロウさんも、北門の最前線で……」
「「覚えて頂けていたのですか!?」」
わぁ、めっちゃ目をキラキラさせてる。え、そんなに? というか、見覚えのある人ばっかりな気がするぞ?
それはともかく、ちょっと気になる……嘘です、めちゃくちゃ気になる事を聞いてみる事にする。
「あの、僕の像とか絵とか……あれ、何ですか?」
「はっ! 頭領様の勇姿を再現したく、生産に長けた者が作成した物に御座います!!」
すると、数名のプレイヤーが前に出てまた膝を付いた。え、このポーズ流行ってんの? んな訳ないか。
「頭領様の御姿を絵画にさせて頂きました、【ディルク】と申します!!」
「あちらの像を製作させて頂きました、【ヘルマー】で御座います!!」
「私は【ロイド】と申します!! 頭領様の活躍を、書籍にしてみました!!」
「そしてそれを漫画にしてみました、【タスク】で御座います!!」
「頭領様、お会い出来て光栄です!! 私は【ハヅキ】と申します!! こちら、頭領様のフィギュアを製作してみました!!」
この人達、ゲームで何をしてんの? 何してくれちゃってんの? あれ、ファンギルドってどこもこんな感じなの? マジで半端ないんだけど、どうしようこれ?
「わぁ!! ジンさん!! これ、このフィギュア!! 凄いですよこれ!!」
お嫁様や、察して旦那のこの気持ち。君もこれが自分なら、戸惑うでしょ?
「流石は御姫様、これの価値を解って頂けますか!! こちらはポーズも自由自在で、手の換装パーツも完備した渾身の一品にございます!! 今は変身なさった御姿のフィギュアを鋭意製作中でして、こちらも八割方は完成しております!!」
え、何それ。マジで凄い。自分のフィギュアじゃなかったら、もうちょい素直に感動出来たかも。
「……あの、これってどこで購入出来ますか?」
買わないで、そんなもん!? 本物がここに居るでしょ!?
「はっ!! こちらは非売品で、【忍者ふぁんくらぶ】メンバーの共有財産となっております!!」
売りに出されてないだけ、マシか。絶対やめてね、一般プレイヤー向けに販売とか。後で、釘を刺しておこう。ごっすんと刺しておこう。
「ですが!! 頭領様と御姫様への献上は当然、考えていた次第!! どうぞお納め下さい!!」
いらねぇ!?
「わぁ!! ありがとうございます!!」
待って!? マジですか、ヒメ!?
「でも、皆さんが頑張って作ったものですよね? ですから、ちゃんと代金はお支払いさせて下さいね!」
「「「御姫様ッ!!」」」
僕はいったい、何故ここに来てしまったんだろう。
「さて、頭領様と御姫様。その御姿も大変素敵では御座いますが、慣れぬ装備では窮屈では御座いませんか? 普段の御姿にお召し替えならば、場所の用意が御座います」
レイチェルさんや、そんなに平伏しないで。こちとらただの男子高校生なんです、正直心苦しさが先に立つんです。
「あ、そうですね。ジンさんも慣れない装備で窮屈そうですし、お願いして良いですか?」
「無論に御座います!! では、コタロウと【ハンゾウ】は頭領様を!! ココロとイズナは、御姫様をご案内せよ!!」
「「「「はっ!!」」」」
ごめんなさい、僕ここで着替えて良いですか? ダメ、そっかー。
ちなみに僕とヒメ、この時大事なことを忘れていました。
「うおおおおぉぉぉっ!!」
「なんと素晴らしいお召し物!! ブラボー!! おぉ、ブラボー!!」
「頭領様、御姫様ッ!! 素敵です、とても素敵過ぎてうおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「尊死!! 不可避!! 我が生涯に、一片の悔い無し!!」
「素敵……ッ!! これは私の描く薄い本が、厚い本になるわ!! そして熱くなるわよ!!」
「あ、あのっ!! フィギュア製作用に、スクショをお願い出来ませんでしょうか!? 是非に!! 是非にぃっ!!」
「これはヤバい!! ヤバいぞこれは!! 尊さが助走付けて心臓を鷲掴みに来てる!! ハートキャッチにきてるぞおおおおおっ!!」
「キタ!! キタキタキタキタァッ!! 創作意欲が!! 湧いてきたあああああああああああっ!!」
「お前ら!! さぁ、素材の数を数えろ!!」
「創作意欲、それもまた欲望!! さぁ、その欲望を解放しろ!!」
「俺も行くぞ!! 創作やらして貰うぜ!! 創作スイッチ、オン!!」
「頭領様と御姫様!! 俺達の最高の希望だ!! さぁ、ショータイムだ!!」
「ここから、ずっと頭領様と御姫様のステージだ!!」
「俺の創作意欲がトップギアだぜ!!」
「御二人を再現した創作に!! 命、燃やすぜ!!」
「ファンギルドの運命は、俺達が変える!! ノーコンティニューで、描いてやるぜ!!」
「やはり御二人はっ!! ベストマアァッチ!! 彫像のポーズはッ!! 決まった!!」
「何か、描ける気がする……!! 俺は最高最良の絵を描く!!」
後半の連中、平成二期で揃えて来やがった……出来るぞこいつら。荒んでる? 仕方ないでしょ、これじゃあ。
そう、これまで公にしていなかった新装備……僕とヒメは、うっかりそれに着替えてしまったのだ。
僕の≪忍衣・夜天疾走≫と、ヒメの≪戦衣・桜花爛漫≫……これは今までの装備を、グレードアップしただけのモノではない。
ユージンさん監修・センヤさんデザイン・シオンさん作の、メイド・オブ・三位一体。性能もさることながら、見た目の方も更にグレードアップしているのだ。
「しかし見事なデザインですね……それに作りも実に素晴らしい!!」
「はい、お二人の魅力を最大限に引き立たせているかと!!」
……うん、まぁ。なんていうか、僕達だけじゃなく仲間も褒められるのは……悪い気はしないよね。
「あー、まぁそう言って頂けると、嬉しいでゴザル。これは仲間達が作ってくれた、渾身の作品でゴザルから」
『忍者ムーブキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』
くそぅ、僕のうっかりさん……こうなることを予測してくれよ、僕……。
よし、ここでも忍者ムーブは封印しよう、そうしよう。
……
ひとまず僕とヒメは、通された客間でお茶を頂いている。羊羹も出されたんだけど、普通に美味しかった。
「さて、頭領様。この度のご来訪ですが、どの様なご用件でしょうか」
やっと話が進められそうで、一安心だよ。ここに来るまで、ゲーム内時間で二時間は掛かってる。だって何かスクショ撮られたり、握手したりでさ……断れ? 無理。ヒメがノリノリだったんだもの。
ともあれ、まずは彼等に対するお礼を言わないと。
「まずは先日、ウチのメンバーに助言を貰ったそうで。ギルドメンバー一同、感謝しています」
そう、先日の晒し騒動……その時、マキナ達を助けてくれたのは彼等だったらしい。
感謝の言葉を言いたくて、学校で会った浦島先輩と来羅内先輩にお願いしたのだ……ギルド【忍者ふぁんくらぶ】の人達に、会えませんかって。
今になって思う、早まった。しかしお礼は言いたかったし……どうしてこうなった。
そんな僕からの言葉に、サブマスターの男性・コタロウさんが頭を下げて来た。
「……流石は頭領様、その程度の事でお言葉を頂けるとは思っておりませんでした」
大袈裟じゃありません? 落ち着いてよ、アンタ僕よりもずっと年上でしょ? そんな簡単に頭を下げないで。
「我々は、当然の事をしたまでです。ですが頭領様のお力になれたのであれば、これ以上の幸福はございません」
レイチェルさんも、仰々しい事を言わないで。僕なんて、ただの普通の男子高校生でしかないんです。
これはもう、さっさと話を進めよう。でないと僕のメンタルが持たないかもしれない。
「それで、本題なんですが……」
僕がそう切り出すと、ギルド【忍者ふぁんくらぶ】の全員が押し黙る。話を聞く気はあるらしいので、一安心だ。
彼等を巻き込む事、そして迷惑を掛けるかもしれない事。それは非常に心苦しい。
しかし、先輩達の話を聞いて……これしか無いと思った。
「こちらのギルドメンバーの誰かに、情報屋・スオウに接触して欲しいんです。もちろん謝礼はしますし、情報料はこちらが負担します」
次回投稿予定日:2021/12/13(幕間)
カッとなって描いた、反省はしていない。