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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十三章 イベント準備を進めました
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13-18 幕間・女性陣と男性陣

「さて、珍しくこうして女性メンバーのみで集まったけれど……」

 レンがそう言うと、彼女と共にテーブルを囲む女性陣が苦笑する。ギルド【七色の橋】の拠点であるギルドホーム、通称[虹の麓]。二階にあるリラクゼーションスペースで、女子会が催されていた。

 ちなみに男女別行動は非常に珍しい……カップル率が高いギルドなので当然だが、とても珍しいのだ。


 何故そうなったかと言うと、原因はジンとハヤテからのお願いだった。

「男性陣でちょっと、作戦会議したいんだ」

「悪いんスけど今日は、女子会でもしてて貰えないッスか?」

 その発言から、間近に迫ったイベント……の先にある、クリスマスの為。それくらい、女性陣はお見通しだった。

 ともあれ彼女達は、気付かないフリをしてそれを快諾。こうして、女子会と相成った。


「何というか、こう……クリスマスが近付くとそわそわしない?」

 アイネがそう言うと、他のメンバーは苦笑いを深める。だって、見るからにソワソワしているんだもん。

「アイちゃんって、結構ロマンチストだもんね」

「いやいや、普通じゃない? って、そんなロマンチストじゃないと思うし」

 ヒメノの発言を否定するアイネ。しかしどこからどう見ても乙女チックなロマンチストです、本当にありがとうございました。

「知らぬは本人ばかり……ね」

 レンの呟きが、全てを物語っている気がする。


 お茶やお菓子を口にしながら、のんびりと過ごす女性陣。そこで、ネオンが同学年の四人に視線を向けて問い掛けた。

「皆はやっぱり、デートとかするのかな?」

 そんな彼女の問い掛けに、真っ先に答えたのは【七色の橋】の御姫様だ。

「えへへ、一緒にお出掛けしたいねって話をしてるよ」

 とろけるような、ふにゃっとした笑顔。恋人と過ごす初めてのクリスマスだ、いつにない幸福感で笑みが零れるのも当たり前だろう。


 ヒメノの表情を横目に見ながら、次いで応えるのはレンだ。

「まぁ、そこの夫婦はそうでしょうとも……私は一応、ヒイロさんに予定を空けておく様には言われてるけど」

 まだ明確なお誘いではないらしいが、しっかりと予定を空けておいて欲しいとお願いしているらしい。もう一気に誘えよ、ヒイロ。

 ただまぁ、ヒイロもヒイロで考え無しではない。初音家の予定とか、そういった予定が入る可能性も考慮しているのだ。最も、レン様ならばパパンを睨みつけてでも予定を空けるだろう。


「私はヒビキを家に呼ぶよ~。毎年恒例なんだよね、クリスマスパーティー」

「あ、そうなんだ。家族ぐるみの付き合いなんだっけ?」

「そうそう! ウチの両親も張り切ってるんだよ」

 センヤは毎年恒例のクリスマスパーティーを、両家族で行うらしい。しかしセンヤの話を聞く限り、もしかしたら子供よりも親の方が楽しみにしているのかもしれない。


「アイネさんは、ハヤテさんとデートですか?」

 コヨミが興味津々で問い掛けると、アイネは照れ笑いしながら頷いてみせた。

「初めて一緒に過ごすクリスマスだから、デートしようって言われて……」

 どこからどう見ても、彼氏との初クリスマスデートを楽しみにする乙女である。ちなみにハヤテはデートの時に、ちゃんと定時にはアイネを家まで送り届けている。なので、巡音家でのハヤテの評価は非常に高いらしい。


「ネオンちゃんは……予定とかは?」

 まだカップルではないネオンに、レンが問い掛ける。もしネオンが誘われていないならば、マキナに発破をかける所存。

 しかしながら、ネオンからの返答は受け身なものではなかった。

「えっと……その、マキナさんをデートに誘ってみようかなって……」

「「「「「「おぉ~!!」」」」」」」

 ネオンから、マキナを誘う……これはマキナがヘタレと思われるかもしれない。しかし彼は過去にイジメに遭っており、人間関係に大なり小なり支障を来している。それを考慮し、ネオンは自分からアクションを起こそうと考えていた。

「とても宜しいかと。頑張って下さいませ、ネオン様」

「ありがとうございます。うまくいくと良いんですけどね」


 ネオンを激励するシオンに、レンは悪戯っぽい視線を向ける。小悪魔スイッチ・ON。

「シオンさんも、その日はお休みして構いませんよ?」

 そんなレンの一言に、シオンはいつものクールな表情のまま否定の言葉を向けた。

「他意しか感じられない、お優しい御言葉だけ頂戴しておきます、お嬢様」

 かつてはこれで、レンも口を閉ざしていた。しかし【七色の橋】という心穏やかに過ごせる場所を得たレンは、シオンへの親密度も上がっている。なので、これで引き下がりはしなかった。

「え~、だってダイスさんに誘われ……」

「お・嬢・様?」

 凄むシオンに、レンはようやく小悪魔ムーブを止める。これ以上はシオンを本気で怒らせる、それが解っているからだ。

 とはいえ、こういったやり取りはお互いが楽しんでいる。なので両者共に、相手が不快に感じないラインを攻めているのであった。


「イベントが終わっても、クリスマス・正月と忙しいよね」

 第四回イベントは二十日……そしてクリスマス、正月とイベントは目白押しだ。中学生組は冬休みに入って余裕があるが、メンバー全員がそうではない。

「ミモリは……バイト、だっけ?」

 カノンが問い掛けると、ミモリは何でもない事の様に頷いてみせる。

「そうよ? クリスマスだからケーキの予約が多くてね」

 クリスマスをお一人様で過ごすという事だが、彼女はそれについて何とも思っていないらしい。自分から、アルバイトのシフトを入れている。


「あ、ケーキ屋さんでしたっけ?」

「うふふ、そうよ~♪ それが終わったら、カノンと一緒にそっちに行く予定」

「またみんなで集まれますね~!」

 ミモリにとっては恋人を作って過ごすよりも、弟分や妹分……そして親友カノンやシオンと過ごす事の方が優先度が高い様だ。彼女らしいといえば、らしい。


「カノンさんは、クリスマスの予定は?」

「私は……予定は、特に無い……よ?」

 センヤが曇りのない目で、そう問い掛ける。そんなJCの興味の視線を無碍に出来ず、カノンは正直に答えた。

 そんなカノンに、ミモリがにんまりと笑って声を掛けてみせた。

「カノン、クベラさんを誘ってみたら? 現実は無理でも、ゲームでは会えるでしょ」

「なな……っ!? 何でクベラさんが? 何で!? ねぇ何で!?」

「わぉ、私でも初めて見るリアクション……」

 クベラの名前を聞いて、カノン大爆発。彼女もやはり、クリスマスに一緒に過ごせたら……とは考えていたらしい。

 そんなカノンの様子に、ミモリは驚きつつ……後でクベラを焚き付けなければ、と決意を新たにしていた。


「コヨミさんは、クリスマスは予定はあるんですか?」

 コヨミが高校二年生であると、今回組むメンバーは聞いている。なので、アイネは内心でワクワクしながら質問してみた……が、彼女の期待は裏切られる。

「家族みんなで外食ですね! その後、帰ってから配信しようかなーと」

 花のJKなのだが、Vアイドル目指して邁進するコヨミはデートとか彼氏とかよりそっちらしい。

 ちなみにコヨミも学校ではモテるのだが、告白などは全て断っている。理由は簡単、アイドルになる……その為には、恋人を作っている場合じゃない。案外、ストイックな性格であった。


「私は、テレビ番組の生放送に出演予定ですね。その後も仕事があるので、普通に帰って寝るだけでしょうか」

 リリィもコヨミに続いて、色気の無いクリスマスになるらしい。とはいえ、彼女は現役アイドル。お仕事が優先なのだ。

 それにリリィも仕事・学業・ゲームと、三足の草鞋わらじを履いている。恋にかまけている暇は無い……という考えなのだろう。


 しかしリリィ・コヨミのアイドルコンビは、ほぼほぼいつも通りの生活になってしまう。折角のクリスマス、何か無いか? とヒメノは考えた。

「あ! それなら、夜はここに集まりませんか? 他のフレンドさんも誘って、クリスマスパーティーをしましょう!」

 純真無垢なヒメノ、そんな提案をしてみせる。


 まぁそれも当然で、彼女はまだ中学二年生……お泊りデートなど、許される歳ではない。日中から夕方までは恋人とデートして、夜は皆で集まれたら楽しいだろう……そんな風に考えていた。


 ちなみに忍者な彼氏だが、彼も彼で年齢や立場をしっかり弁えた少年である。

 互いの両親を心配させるなど、あってはならない。なので必ず門限までに、ヒメノを星波家まで送り届ける様に徹底している。そんなジンに、星波夫妻も娘を任せられると安心しているのだった。


 ともあれ、ヒメノからのパーティーの提案。これに、コヨミとリリィも笑みを零した。

「わあ、良いですね!」

「ありがたいのですが……いいんでしょうか?」

 手放しで喜ぶコヨミに対し、リリィは若干遠慮気味。そんなリリィに、レンがクスリと笑って声を掛ける。

「リリィさん、ヒメちゃんが気を使ったと思っていません? 単に、お二人と遊びたいだけですよ。勿論、私もですが」

 そんなレンの言葉に、他の面々も追従する。リリィはそこまで言われては……と折れ、コヨミも満面の笑みで微笑んだ。


 他のフレンドはどうだろう? と女性陣は考え、すぐに名前が出たのは今回のイベントでゲスト参加するユージンとクベラ。

「それに【桃園の誓い】と【魔弾の射手】かな?」

 姉妹ギルドである【桃園の誓い】……そして同盟を組んだ事もある【魔弾の射手】ならば、呼んで問題無い。この考えは【七色の橋】女性陣だけではなく、リリィも同意を示していた。

 ちなみにコヨミは、【桃園の誓い】や【魔弾の射手】にも会えるのか……と、緊張と期待の両方である。


 しかしそこで、ヒメノが思わぬ人物の名を挙げた。

「ギルバートさんやライデンさんは誘えないかな?」

「「「「「えぇぇ……?」」」」」


「いやだって、ライデンさんはともかく……」

「でもあれ以来、ギルバートさんは真面目になったんだってジンさんが! 私もフィールドで会ったけど、普通にお話出来たよ?」

 ジンと仲良く会話している所を思い浮かべ、ヒメノはニコニコしている。

 実際、現在のギルバートは現実でもゲームでも、あらゆる事に真面目に取り組んでいる。


「まぁ、情報屋の件でもアドバイスを貰ったし……そうだ。後はライデンさんの為にも、ルーさんを呼びましょう」

 ライデンとルー、今が旬の二人である。ここは一つ、ライデンの後押しをして情報屋の件での借りを返すのもアリだろう。

 ギルバート? 暴言の件があるので、あれでチャラだ。


 何故、ライデンとルー? と解っていないコヨミに、アイネが説明して彼女も納得。そして、事情を知った後の第一声がこれである。

「それは、とても興味深いですね!」

 自分の恋愛はそっちのけで、他人の恋愛には興味津々らしい。


************************************************************


 一方、男性陣。工房に集まったのはヒイロ・ハヤテ・ヒビキ……そして引っ張って来られた、マキナとクベラが並んで座る。

 その前に立つのは、忍者とアロハ甚平おじさんだ。

「はい、折角なので! 野生のプロにご同席願いました!」

「持ち上げ過ぎだよ、ジン君。さて……それで今回の相談内容は、結婚指輪の自作という事で構わないかな?」

 講師役のユージンが問い掛けると、彼女持ちの面々がハッキリとした返事を口にした。

「はい!」

「そうッス!」

「お願いします!」

 それに対しマキナは、何と返答したものかと口ごもる。

「そ、その……僕は、えぇと……」


 ハッキリしないマキナに対し、クベラは立ち上がって異を唱える。異議あり! らしい。

「ちょお待ちや! 何でワイまで!?」

 しかしながら、逃げようと思えば逃げる事は十分可能だった。それでも付いてきたからには、今すぐは無理でもいずれは……という考えがあるのはお見通し。


 故に、ユージンはクベラの異議を流して話を進める。

「ともあれ既に成立済みの三人は、デザインについて考えてみると良い」

 彼女持ち三人が「はーい!」と返答し、用意された紙とペンに向かう。


「流さんといて、ユージンさん!」

「流さないとも。あぁ、流すつもりは無いよ。それで、マキナ君……彼女に、告白したいのかな?」

 明瞭簡潔な、ユージンの問い。それに対し、マキナは逡巡した様子を見せるが……やがて、ハッキリと返事をしてみせた。

「……はい。結婚システムはまだ……ですがその、自分の気持ちをネオンさんに伝えたいとは思っています」

 その為の、プレゼント作り。マキナが指輪製作という問いに返事をしなかったのは、それが理由らしい。

「うん、良いね。おっさんは全力で応援するよ」


 マキナから視線を外したユージンは、クベラをロックオン。マキナに対する視線より、少し優しさが足りてない気がする。

「さて、次はクベラ君だね?」

「い、いつもは頼りになるユージンさんが……何か難敵にしか見えへん……」


 たじろくクベラだったが、ユージンは構う事なく本題に入る。やはりちょっと、優しさが足りない。

「告白はするのかな?」

 またも、簡潔な問い掛け。それに対し、クベラもいよいよ観念した。


「い、いや……でも、俺は社会人で、相手は大学生だし……それに、人見知りじゃないですか? 困らせるだけなんじゃないかなって……」

 しどろもどろになって、そんな泣き言を口にするクベラ。しかしながら、ユージンはニッコリと笑って少年達に振り返り……サムズアップをかました。

「はい、カノン君が好きだという言質貰いました!」

「「「「「わー!!」」」」」

 拍手をするジンとヒビキ・マキナ、サムズアップをかますヒイロ、指笛を吹くハヤテ。唐突に始まる、謎の盛り上がり。


 そこで、クベラはようやく理解した。しまった、言わされた!! と。

 しかし、時既に遅し。とりあえず、ユージンに向けて恨みがましい視線を向けて叫ぶ。

「謀られた!? 謀ったな!?」

「シャ○!!」

「うっさいわ!!」

 もう、とにかく照れくさい。それをごまかす様に、ユージンのシ○アネタに乗っかってしまう。なに、これ。


 クベラが顔を赤くしながら肩で息をするのを見て、ユージンは苦笑気味だ。尚、視線には優しさが戻って来ている。

「まぁ、一つアドバイスをしよう。大学生なら大丈夫だと思うよ、僕は。勿論、ちゃんと弁える所は弁えないといけないけれどね」

 流石に在学中に妊娠……などとなったら、大問題。しかし、節度のある交際ならば問題は無い。ユージンは、そう言っているのだ。


「う……そ、そうなんですか?」

「そういうものさ。第一、君は歳の差がある……というだけで諦められるのかい?」

「……それは、その……」

 ユージンに悩みの種を指摘され、クベラは戸惑う。


 その姿に、ユージンはフッと笑って彼の肩に手を置いた。

「……やれやれ。それじゃあもう一つ、人生の先輩からアドバイスだ」

 視線を彷徨わせていたクベラだが、いつになく真面目な調子のユージンの声に顔を上げる。そうしなければならない……そんな直感がしたのだ。


「自分の気持ちに素直になってみたらどうだい? クベラ君がどうしたいかが、一番重要なんだから」

「……気持ちに、素直に……」

 その言葉を反芻するクベラに、ユージンは一つ頷いてアドバイスを続ける。

「一緒に居たい、側に居て欲しい、幸せにしたい……そう思えるなら、それは本気で彼女が好きって事だろう?」


 そう言われ、クベラはカノンの顔を思い浮かべる。

 戸惑いながら、辿々しくも会話するところ。鍛冶の時は、真剣な表情で誰よりもパワフルに行動する所。自分の言葉で、照れながらも微笑むところ。

 そんな彼女の、誰よりも側に……そこまで考えて、クベラは自分がここまで彼女に惹かれていたのかと驚いてしまう。


 クベラの表情の変化を見逃さず、ユージンは肩に置いた手を引きながら佇まいを直す。

「後悔するのが怖いなら、それでも良い。ただ行動をせずに後悔するのだけは、避けるべきだと思う。よく言うだろう? 倒れるなら、前のめりにって。まぁ大丈夫だよ、多分」

「あんた、安心させたいの? 不安にさせたいの? どっち?」

 ようやく、調子を取り戻したクベラのツッコミ。しかし覚悟を決めた様な表情に、ユージンは頷いてみせた。


――人生の先輩……か。ほんと、いくつなんだこの人は……。


「で、デザインはどうかな?」

 ユージンが視線を向けると、指輪のデザインを考えていた三人は苦戦していた。

「く……っ!! ジンのデザインを真似するだけじゃ、駄目だ……!!」

 ヒイロは新世界の神のように頭を抱え、苦悩していた。本気度がエグい。


「デザインって、こんなにムズいんスね……ジン兄もセンちゃんも、すげーな……」

 ハヤテはハヤテで、思うようなデザインにならないらしい。同時に敬愛する兄貴分と、【七色の橋】の名デザイナーの実力を改めて思い知らされている。


「何か、しっくり来ないんですよね……これは、かなり難儀しそうだなぁ……」

 腕を組みながら、自分の描いたデザインに首をひねるのはヒビキだ。描かれているのは割とありふれたデザインで、ピンと来ないらしい。


 中々に苦戦している三人に対し、ユージンはジンへと話を振ってみる。

「ふむ……ジン君から、何かアドバイスは?」

「え? あ、そうですね……僕が考えた時は、ヒメの指にそれを嵌めた時を思い浮かべてました」

 イメージするのは、デザインよりもヒメノがメイン。指輪はあくまで、その次に来るもの。


 そんな制作秘話を受け、生徒三人は目を丸くした。

「……それで、あのデザイン? ジン、意外と多芸だな……」

「っていうか、ジン兄も結構な上級者じゃね?」

「センヤちゃんの指にか、う~ん……」


 更に、ジンは自分が製作した時の事を振り返る。あの時ジンの中に明確なイメージが生まれたのは、ユージンに相談したあの時だ。

「あと僕は誕生花と誕生石って、モチーフありきだったよ。まずはそっちを突き詰めるのも、良いと思う」

 ヒメノの誕生花である桜と、ピンク色のダイヤモンド。常に左手の薬指で輝くそれを思い浮かべ、三人は更に頭を悩ませる。

「モチーフ……やはりそこか」

「でも、誕生花と誕生石は二番煎じになる……うーん……」


――被りたくないのかな? 同じでも良いと思うんだけど……。


 未だ悩む三人に、ジンはそんな感想を抱いてしまう。

 しかしながら、そこは男の子。親友であろうと、兄貴分だろうと、憧れの存在であろうと、対抗意識が無いわけではない。

 ジンと同等か、より良い物を作りたい……という気持ちがあるのだった。


 ともあれ、このままでは製作に手を付けられない。ユージンはそう考え、アドバイスをする事にした。

「それなら、他のものをモチーフにするのも良いんじゃないかな? 例えば誕生星、誕生鳥なんか」

「そんなのまであるんですか!?」

 誕生日を象徴するのは、花や石だけではない。そんなアドバイスに、三人は「それだ!!」と食い付いた。


「あるよー。ちなみに僕のオススメは誕生寿司だ」

「SUSHI!?」

「……いや、それはちょっと……」

 勿論、これは冗談である。


 更にジンも、思い付いた要素を口にする。

「あとは、相手の好きなもの? もしくは、お互いの共通点とか、趣味とか?」

「そうだね、その辺りが割と鉄板だ」

 星が好きなら、星をイメージした物。鳥が好きなら、鳥を象った物。そういったモチーフがあってこそ、デザインは進んでいく。


 三人だけでなくマキナとクベラも、一緒になってジンとユージンの解説に耳を傾ける。いよいよもって、デザイン教室っぽくなってきた。

「僕も最初は、九尾の狐と八岐大蛇で……とか悩んでたなぁ」

「そのモチーフにすると、かなり大変ッスね……」

 冗談めかしてそう言うジンに、ハヤテは苦笑してしまう。その二つだと、かなり敷居が高いデザインモチーフだろう。


 そこでジンが、仲間達のデザインを見てある事を思い付く。

「僕もクリスマスプレゼントに、指輪とは別に作ろうかなぁ。最近、彫金はやっていなかったし……首飾りとか?」

「良いね。折角だし、僕も何か作ってみようかな」

 ユージンまでもがそう言い出したので、生徒五人は顔を見合わせる。


「それは是非、参考にさせて貰いたいな」

「ブレイクスルーのヒント、おなしゃす!」

「えっと……僕も、是非」

「首飾り……えっと、僕も見ていいですか?」

「あー、その、俺も……ワイも見学希望で……」

 男性陣もまた、クリスマスに向けて本格始動していた。

次回投稿予定日:2021/12/8(幕間)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ユージンさん、さすがですね。 今回のクリスマスを切っ掛けに、マキナがネオンへ告白を決意します。 そして、年の差やカノンの性格を気にして、カノンへの好意を表に出せなかったクベラが、諦めないと…
[良い点] 女子会&男子会のお話。対アレク一派対策の合間の一息つくお話にホッコリしました。以外にジンくんはデザイン関係の才能あり?将来リアルで婚約指輪のデザインしてしまいそうですよジンくんは。 [気に…
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