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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十三章 イベント準備を進めました

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13-07 幕間・拡散する悪意

「ちょっ……何よ、これ……」

 フレイヤが掲示板を見たのは、何の気無しにだった。何か、新しい話題でも無いか? と、日頃から開いているQチャンネルを開いてみた。やはり最初に開くのは【AWO雑談スレ】である。

 そこは今や、荒れに荒れていた。


「どうした、フレイヤ?」

 彼女の表情が一変した事に気付き、ゲイルが声を掛ける。

 日頃はクールな大人の女性といったフレイヤが、こうも感情を表に出すのは珍しい……特に、今の様な、怒りに満ちた表情は。


「……掲示板が、荒れているわ。【七色】が不正をしているだなんだと、酷いものよ……」

「何!?」

 ゲイルもすかさず、システム・ウィンドウを開く。少し手間取りながら、掲示板を見始めた。


「掲示板で、一体何が……」

「さぁ……とにかく、確認してみましょう?」

「そっちは頼む。俺はヒイロ君に連絡を」

 そんな二人の会話を聞いていたゼクス達も、顔を見合わせて掲示板を開いていく。

 ケイン達古参メンバーの考えは、一貫している。


――あの子達が不正なんて、するはずがない……!


 新規メンバーは、まだ【七色の橋】を深く知らない。故に、不正をしていると聞いて即座に判断は出来なかった。

 そんな事があるのか? という疑念がある一方で……もしかしたら、という考えが頭の片隅にあるのだ。それだけ【七色の橋】が打ち立てて来た実績は、一般的なプレイヤーからするとセンセーショナルなのである。


 そして、【禁断の果実】に属する者……アレクの仲間であるドラグ。彼は内心で、ホッとしていた。ようやく、アンジェリカの為の計画が先に進む事を確信したのだ。


――運営のS氏……それが、レンの家族か。やれやれ、ついに情報屋の調査結果が出たか。ようやくアレクの機嫌が落ち着くかね……。


―――――――――――――――――――――――――――――――

139 名無し

 どうせデマだろ?

 晒しスレの情報だぜ?



140 名無し

 でも証拠があるらしいぜ

 運営に直でメッセージ送るって言ってる



141 名無し

 おいおい、マジなのか?

 本当に【七色】が不正行為?



142 名無し

 応援してたのに……

 ショックだわ……



143 名無し

 ていうか、垢BAN案件じゃね?

 これやべーだろ



144 名無し

 [虹の麓]の前なう

 扉は相変わらず閉まってら



145 名無し

 【七色の橋】の実力は本物だよ

 こんなデマに踊らされるなよな



146 名無し

 中高生がイキっちゃったかぁ

 ろくな大人にならねーだろこいつら



147 名無し

 >145

 本人乙www



148 名無し

 七色名無し出て来いや、説明しろよ!



149 名無し

 >140

 その証拠とやらは何なんだ?



150 名無し

 引退案件かな、これ



151 名無し

 運営から情報をリークされてたって、いつからだよ



152 名無し

 思えば、第一回でもう異常だったよな



153 名無し

 お前ら、そうやって騒ぎたいだけの便乗野郎だろ



154 名無し

 そもそも刀とか和装とか、どうやって手に入れたって話だな

―――――――――――――――――――――――――――――――


 その掲示板を見ていたのは、無論【桃園の誓い】だけではない。

 掲示板を巡回するのが趣味な、【森羅万象】のラグナ……彼はその話題を目にして、驚きで目を見開いた。

「は……!? お、おい!! オリガ、これ見ろ!!」

「あん? 何だよ一体……はいぃ!?」

 第二回イベントで対戦し、敗北した相手……そんな【七色の橋】の不正疑惑。その話題には、驚きを禁じえない。


「俺、クロードさんに伝えて来る!」

「あぁ、そうしてくれ! シンラさん! シンラさーん!」

 ラグナは慌てて、ギルドホームの工房で装備強化をしているクロードの下へ。オリガは広間の中心にある、リラクゼーションスペースのソファに腰掛けるシンラへと駆け寄る。


「あら、どうかしたの〜?」

 間延びした声で、オリガに問い掛けるシンラ。その近くで同じくくつろいでいた、アーサー達も何事かと視線を向けた。

「一大事っす! 実は【七色の橋】が、運営の誰かから情報をリークされてたって疑惑が……!」

 その言葉を耳にして、エレナは視線を細めた。


――蓮織? 珍しいわね、私達に何も言わずにこんな情報を流すだなんて……。


 普段ならば、アレクはエレナ達と協議してから情報公開を行う。その上で、そこからの対応を周知するのだ。

 しかし現時点で、それが【禁断の果実】末端の構成員であるグランの独断専行だとは気付いていなかった。


―――――――――――――――――――――――――――――――

155 名無し

 多分だけど第一回の時には運営情報を得てただろうね

 じゃなきゃ、大ギルドに先んじてユニークゲットできないっしょ



156 名無し

 えぇぇ?

 あの子達がそんな事するかなぁ……



157 名無し

 【七色の橋】が持ってるスキルの正体わからんかったけど

 まさか運営に攻略法を教えて貰って手に入れてたとはね



158 名無し

 この前だけどアンジェリカがユニークゲットしてたろ?

 あの祠みたいなのの場所を教えられてたとか?



159 名無し

 クソじゃん、【七色の橋】

 人が真面目にゲームやってる裏でズルとかふざけんな



160 名無し

 不正に入手したスキルや装備は

 いくつくらいあるんだろうね



161 名無し

 こうなってくるとあの外見も怪しいかもね

 目立ちたいモテたいからアバターをバチバチに弄ってるかも



162 名無し

 てか情報をリークした運営って誰だよ

 そこ特定しないと駄目だろ



163 名無し

 俺は【七色の橋】を信じてる

 あの忍者さんがいるギルドやぞ

―――――――――――――――――――――――――――――――


 同じ頃、【遥かなる旅路】もその情報を目にしていた。彼等はフィールド探索中だったのだが、周囲のプレイヤーが騒ぎ出した事でそれを知った。


「……にわかには信じられんな」

 書き込みが加速していくスレッドを見ながら、カイセンイクラドンはそう告げた。腕を組んで眉間に皺を寄せる様子を見れば、傍目に見ても不機嫌である事が窺い知れる。


「そうですね……中学生とはいえ、我々が知るレンさんは正々堂々とした女の子という印象ですし……」

 ルシアはカイセンイクラドンの言葉を肯定し、【七色の橋】が不正をしていると思えない……思いたくない、と考えている様に振る舞う。

 それは彼女も無意識で行った、スパイである事を察知されない様にという印象付けの演技だ。


 そんなルシアに、タイチも同意といった意見を口にする。

「だよなぁ……実際に会ったあの子達は、ちゃんとしてる子達って感じだったし」

 だが、それに異を唱えるメンバーも居た。

「もしかしたら、一部のメンバーだけが不正に手を染めたんじゃないか?」

「まぁ、全員が全員そうだとは決まってないよな」

「でも、プレイ中にそんなのバレないか? 余程の考えなしじゃない限り、情報の出処を疑問に思うだろ」


 そのやり取りを耳にしつつ、サブマスター・トロロゴハンは掲示板を見ていた。今見ているのは、雑談スレである。

 書き込まれている内容をよくよく確認し、トロロゴハンは更に確認しようと問題の晒しスレを開いた。


―――――――――――――――――――――――――――――――

164 名無し

 そもそも、この情報ってどうやって手に入れたんだろな

 【七色の橋】のメンバーか、仲良いギルドの連中じゃなきゃわからんのでは?



165 名無し

 この書き込みしたヤツ誰だろ?



166 名無し

 口では正々堂々とか言っといて、蓋を開けたらこれか

 クズ過ぎる



167 名無し

 証拠とやらが提示されないと信憑性に欠けるよな



168 名無し

 運営はこれ気付いてんのかな

 気付いたら内部監査とかするんじゃない?



169 名無し

 もう運営に通報メッセージ送ったんじゃね?

 【七色の橋】も終わりか……

 あと、情報流した運営メンバーも



170 名無し

 [虹の麓]の前に着いた

 なんかプレイヤーが集まって騒いでるw



171 名無し

 そもそも大規模ギルドに匹敵する小規模勢力なんておかしいんだよな

 謎はすべて解けた



172 名無し

 第三回イベントで上位に入ったのは実力かな?

 もしかしたら、それも運営の好みとか知ってたからじゃね?



173 名無し

 いやでも第二回イベントでは純然たる実力で勝ってたろ



174 名無し

 >170

 シュプレヒコール状態な



175 名無し

 これ結構いろんなスレで拡散されてるぞ



176 名無し

 >168

 そのSとかいう運営メンバーが実在してたら

 懲戒解雇処分待ったなしだな



177 名無し

 >172

 運営がどの辺を高く評価するのかが解ってたか

 確かに有り得るな



178 名無し

 憶測で騒ぎ立てるのやめろよな

 自分の目で見たものを信じろよ



179 名無し

 >173

 不正で手に入れた強スキル使って実力もクソもねーよ

―――――――――――――――――――――――――――――――


 【魔弾の射手】のメンバーは、大学生が中心の少数精鋭ギルド。あとは社会人二人と、高校生一人である。

 故に集まる時間も遅く、夜八時以降になる事がほとんどだ。


 今日も今日とて、そのくらいの時間にログインしたレーナ。パーティメンバーの表示を見ると、既にログインしているのはビィトのみだった。

「あれ、珍しい……」

 彼はリアルの仕事が多忙で、この時間からログインするのは珍しいのだ。同時に、他のメンバー……女子大生のジェミー・ミリア・ルナ・シャインや、高校生のメイリアが居ないのも珍しい。


 ともあれレーナは、ホームの広間へと向かう事にする。部屋でのんびりしていても良いのだが、なんとなく広間へ向かった方が良いと思ったのだ。


「おはようございまーす」

 仕事先やバイト先に出勤する様に、挨拶をするレーナ。それに気付いたビィトは、彼女に顔だけを向けた。

「おはよっす……レーナちゃん、大事件だよ。懸念していた事が、現実になった」

 懸念……その言葉を聞いて、レーナは先日の初音夫婦との会話を思い出す。

「……何かあったんですか?」


 苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべつつ、ビィトはシステム・ウィンドウを可視化させる。

「晒しスレに、【七色の橋】が不正行為をしていると書き込んだ馬鹿が居る。あの二人が言っていた事が、いよいよ現実になったって事だね」

 そう告げると、ビィトは視線を掲示板からレーナに移し……戦慄した。何故ならば、レーナの視線が冷たく鋭いものに変化していたのだ。


 この世界には、怒らせてはならないタイプの人間が居る……そして、レーナは決して怒らせてはならない部類に入る女性だ。

 ビィトはそれを、よく知っていた……だからこそ、心の中で頭を抱える。


――どこの馬鹿か知らないが、やってくれたね……全く、救いようがないな。


 掲示板に書き込んだ愚か者が、誰にどう処理されるかは解らない。しかし、ろくな未来が待っていないのは確実だ。

 少なくとも彼女レーナの前に姿を現した場合、心に深い傷を刻み込まれる事だろう。


「先輩達がログイン次第、作戦会議で良いですね?」

 冷え切った声色で、そう告げるレーナ。そんな彼女に、ビィトは頷く事しか出来ない。

 しかしふと、そんな殲滅者の顔が揺れる。それはいつものレーナの表情であり、どこか不安げだった。

「……ちょっと、心配なので。ジン君にメッセージを送ってみます」

 レーナの言葉に、ビィトは頷いて言葉を返す。

「そうだね。俺は作戦会議に備えて、情報を集めとこうか。そっちは、お願いできる?」

「了解」


―――――――――――――――――――――――――――――――

180 名無し

 掲示板のネタカキコに顔真っ赤にしてんのか?

 明確な証拠がない内から騒ぎ立てるのはお前らの悪い癖だぞ



181 名無し

 運営Sとやらが本当に情報リークをやらかしてんのかな?

 そもそもユートピア・クリエイティブってセキュリティ厳しいらしいぞ



182 名無し

 この話題がめちゃくちゃ広まってんな

 もう【七色の橋】は表に出て来られないんじゃね?



183 名無し

 和装手に入れたけど捨てようかな

 仲間と思われたらヤバいかも



184 名無し

 これって【桃園の誓い】や【魔弾の射手】も関係してんのかな

 あいつらも異常性能の持ち主だろ



185 名無し

 今きたけど、マジか

 【七色の橋】きたねぇな



186 名無し

 爽やかイメージで売ってるアイドルのスキャンダルみたいだな

 裏では色々とドロッとしてる感



187 名無し

 これツブヤイターでも拡散されてんぞ



188 名無し

 もしこれが冤罪だったらどうするのかね

 カキコした奴どう責任取るのかな



189 名無し

 運営Sが【七色の橋】とどんな関係なのか気になるな

 誰かの家族とか?



190 名無し

 そういえば【七色の橋】のPAC(パック)にエクストラボスいるわ

 ジョシュアっていう爺さんな

 エクストラクエストクリアしてんのは確実じゃない?

―――――――――――――――――――――――――――――――


 【聖光の騎士団】のギルドホームも、蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。

「マジかよ、【七色の橋】の奴ら!!」

「ふざけんなっての!!」

「道理で俺等が勝てない訳だ……マジでクソだな」

「運営のメンバーから情報を貰って、レアスキルやレア装備を集めてりゃあ強くなるわな」

「最低ね……いくら中高生が中心でも、そのくらいの分別は付くはずでしょうに」

 晒し情報肯定派の面々は、あちこちで騒ぎ立てる。

 無論、その中には【禁断の果実】に登録している者も居た。アンジェリカの近くで策略を巡らせる者が、新たな策を発動させたのだと判断したのだ。


 とはいえこの晒し情報、信じる者もいれば信じない者もいる。何せ、彼等はイベント等で活躍する【七色の橋】の姿を目の当たりにしたのだ。

「これ、本当の事かな? 俺にはどうも、誰かが嘘を吹聴しているとしか思えない」

「信じてるヤツも多いけどな……俺も、偽情報だと思うよ」

「だよなぁ……あの決勝戦のやり取り、あれは演技なんかじゃないだろ」

「あぁ、彼等の正々堂々……俺は信じたいな」

 そんな会話をする、数名の男女。


 その内の一人が、注意を呼び掛ける。

「とりあえず、騒ぎ過ぎるのは良くないと思います。この件に対して、どう対応するのか……ギルドマスターの見解を待ちましょう?」

「そうだな、【ホープ】の言う通りだ」


 あちらこちらでそんな会話がされており、ギルドホーム内はその話題で持ちきりになっていた。

 その中を歩くアレクは、いつも通りに存在感を薄めて彼等の反応を確認し……その内心で激しく怒り狂っていた。


――誰が先走りやがった!? 不正疑惑は、イベント直前に拡散して【七色の橋(あいつら)】が集中砲火を受ける為の切り札だったのに……!!


 イベントまで、まだ二週間程の時間がある。その間に【七色の橋】と運営が、この騒動を収束させる可能性は大いに有り得る。少なくとも、アレクはそう思っていた。

 もしも運営が公式に「運営Sと【七色の橋】の間で、情報の提供があった事実は認められなかった」と言えば、それで騒動には一応は決着が付く。


――クソッ……!! どうする……!?

次回投稿予定日:2021/11/15(本編)


レーナさんブチギレ記念(謎)

【絵心の無い作者が魔弾の射手を描いてみた】

挿絵(By みてみん)

男性陣は左からクラウド・ディーゴ・ビィト。

女性陣は左からルナ・メイリア・レーナ・ジェミー・ミリア・シャインです。


銃? トレスだよ(白目)

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔弾の射手はやはり近未来的なコンバットスーツ?な感じで味が出てるね
[一言] 拡散される悪意と、確証の無い情報で勝手に憤るモノ達。そして色々な所に飛び火する悪意と妬み。 この切っ掛けを作った奴や、誤情報で【七色の橋】を悪し様にに罵ったモノ達が、真実が判明した時にどうす…
[良い点] 比較的に冷静な旅路のご夫婦・怒りのメーターが振り切っているレーナさんがいる魔弾と各ギルド詳しく状況が書かれていてよかったです [一言] アレクと愉快な仲間たちがこのデマ炎上事件にどう落…
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